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自治体DXは、手続きの後ろから変える|主要8社と事業機会

自治体DXは、オンライン申請を増やせば進むのか。
申請の後ろに、紙と転記が残っていないか。

住民が手続きしやすく、職員も確認・転記・通知の負担を減らせるよう、申請の前後をまとめて見直します。国内外8社の取り組みと、実績・削減見込みの違いから、導入と新規事業の判断材料を整理します。

この記事の結論

自治体DXは、住民の使いやすさと、受付から審査・通知までの業務負担を両方改善します。

  • 基幹20業務の標準化とガバメントクラウド(国が用意する行政向けクラウド)移行は、共通する業務を変える土台になります。
  • 主要8社は、住民接点、窓口、基幹・連携、クラウド、運用という異なる役割を担います。
  • 新規参入では、手続き別SaaS、データ連携、運用一体型BPaaS、共同利用も候補になります。

自治体DXでは、オンライン申請や窓口の入力支援によって、住民の来庁・記入の負担を減らせます。一方、受け取ったデータを職員が印刷して入力し直す運用では、庁内の負担が残ります。

住民向けの使いやすさと、その後の業務の改善を両方見ることが重要です。

基幹20業務の標準化、ガバメントクラウド(国が用意する行政向けクラウド)の活用、書かない窓口は、関連しつつも別の取り組みです。どのシステムをどこへ移すかだけでなく、受付、確認、審査、決裁、通知、記録をどうつなぐかを考えます。

本稿では、制度の現在地、企業の提供範囲、導入事例の成果を分け、参入企業が担える仕事と懸念を整理します。情報確認日:2026年9月28日。

導入数・効果は、各出典に示す時点と対象業務のものです。

自治体DXとは、住民接点から庁内業務まで変える取り組み

住民が手続きを完了できることと、職員の業務を改善することを、両方の成果として見ます。 自治体DXとは、デジタル技術を使って住民サービスと行政の業務を見直す取り組みです。

住民が必要な制度を見つけ、手続きを完了しやすくするとともに、職員の確認・転記を減らして、相談や個別判断へ時間を振り向けることを目指します。

デジタル庁の窓口DX方針は、同じ情報の記入や窓口間の移動を減らす「書かないワンストップ窓口」を示しています。デジタルを使いにくい人への支援も含め、住民と職員の双方にとって便利な窓口を考えます。

業務の見直しを行わずにシステムだけを追加すると、二重入力や部署間の引き継ぎが増える場合があります。申請者が減らせる作業と、職員・委託先に新しく生じる作業を一緒に書き出し、全体で改善しているかを確認します。

成果は、システムの導入数に加え、住民の手続き完了率・待ち時間、職員の処理時間・不備対応、サービスの正確さで測ります。オンラインを使えない人が取り残されていないかも、別に確認します。

自治体DXの背景:標準化・人員の制約・住民サービス

標準化とクラウド選択を区別し、提案先の移行状況と、移行後に残る仕事を確認します。 自治体DXを考える背景は、基幹業務の標準化、限られた人員でのサービス維持、住民の利便性の改善という三つの面から整理できます。

デジタル庁は、約1,800の地方公共団体が個別に作ってきたシステムでは、制度改正への対応負担や全国へのサービス展開が課題になると説明しています。標準化の対象は住民記録、税、福祉など20の事務で、共通の仕様に沿ったシステムへの移行を進めています。

原則2025年度までの移行が目標でしたが、2026年3月末時点では、対象34,366システムのうち10,013システム(29.1%)が、翌年度以降の移行に向けて支援する「特定移行支援システム」です。これはシステム数の割合で、自治体の29.1%がDXに失敗したという統計ではありません。

事業者の開発・移行要員の不足など、遅れの事情も公表されています。

標準化は共通の基幹業務をそろえる取り組みで、地域の政策や住民支援をすべて同じにするものではありません。移行の状況は団体・システムで異なるため、提案先で完了済みの業務と、今後対応する業務を確かめます。

また、標準準拠システムへの対応と、ガバメントクラウドを使うことは区別します。後者は標準化法上の努力義務で、多古町は性能・経済合理性を比較し、一部の対象業務で別のクラウドを選んだと公表しています。

移行費だけでなく、ネットワーク、運用監視、データ連携を含む継続費用で比較します。

新規事業としての示唆は、一度の移行作業と、その後のサービス改善・運用を分けて考えることです。移行完了後も、申請データの連携、不備の確認、制度変更への対応は残るため、継続して任せてもらえる仕事を具体化します。

自治体DXを動かす三つの圧力
図2:標準化、人員の制約、住民の利便性から整理した自治体DXの背景。公的資料を参考に当研究所作成。各要因の効果を測定した図ではありません。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

自治体DXの全体像を、六つの仕事でつかむ

案内から記録まで分け、自動化する処理、人の判断、例外への対応を具体化します。 本稿では、事業を担う場所を考えるために、行政手続きを案内、申請、受付、審査、通知、記録の六つに整理します。

これは当研究所による説明上の区分で、法定の業務分類ではありません。

最初の案内では、住民が自分に必要な制度を見つけられることが重要です。サイト内検索やチャットだけでなく、質問へ答えると手続きを絞れるガイドも使われています。

申請では、入力のしやすさに加え、手続きに応じて本人確認、電子署名、決済、添付書類を扱います。すべての申請で同じ機能が必要なわけではないため、制度上の条件と利用者の手間を照合して設計します。

受付後は、不備の確認や問い合わせへの対応があります。入力時に防げる誤りを減らし、受け取ったデータを次の処理へ渡すとともに、修正依頼や代理申請などの例外を誰が扱うかを決めます。

審査・決裁では、法令、条例、個別事情に沿った判断が必要です。ルールによる計算やAIによる確認補助を使う場合も、対象範囲、根拠の記録、人による確認・訂正、誤処理時の戻し方を定めます。

通知や支払いでは、郵送、口座振込、電子交付など複数の方法を扱います。最後の記録では、処理時間、不備率、問い合わせ内容を残し、次の改善へつなげます。

AIエージェントによる自動化も、任せる処理を限定して検証します。特に住民の権利や給付に関わる処理では、操作権限と説明責任を明確にし、試験結果だけで無人運用へ進めないことが重要です。

自治体DXを支える主要8社の役割

任せたい工程と既存の契約を比べ、機能の重複と、担当が決まっていない仕事を探します。 国内外8社を、住民向けサービス、窓口、基幹・連携、運用などの役割で整理します。

紹介はランキングではなく、製品や実装の違いを理解するための例です。海外企業の機能は、日本の制度への対応や国内導入を保証するものではありません。

自治体DXを支える五つの層
図3:自治体DXの代表的な役割の整理。各社の提供範囲は重なり、掲載した会社だけが担うものではありません。公式資料を参考に当研究所作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

次の表では、主な提供機能と検討できる用途を比べます。各社の製品説明から整理したもので、すべての機能を一つの契約で利用できるという意味ではありません。

自治体DXを支える主要8社の立ち位置
企業 主な役割 提供しているもの 主な検討用途
Bot Express 住民接点 LINE上の手続き基盤「GovTech Express」 住民が普段使う接点と自治体間のテンプレート共有
グラファー 申請・案内・連携 スマート申請、手続きガイド、外部システム連携 行政手続き向けUXと申請後のデータ連携
NEC 窓口・庁内連携 スマート行政窓口ソリューション、窓口DXSaaS 書かない窓口と後続システムの連携
TKC 窓口・基幹 TASKクラウド、かんたん窓口 市区町村の基幹業務とガバメントクラウド対応
TOPPANイクイップメント 本人確認・窓口 PASiD scanⅡ、PASiD Face 職員操作と来庁者のセルフ操作による申請書作成
transcosmos 運用・BPO 問い合わせ、事務処理、デジタル運用 システム導入後の大量業務を運営する体制
OpenGov 海外の統合基盤 米国向け公共サービス・ERPクラウド 財務、調達、許認可、資産管理を同じ基盤で扱う
Tyler Technologies 海外の業務ソフト 行政、司法、公共安全、教育向けソフト 公共分野に特化した広い製品群と導入支援

オンライン申請を導入済みでも、基幹システムへの転記や問い合わせ対応は別の担当かもしれません。製品名だけで重複・不足を判断せず、既存の契約範囲と、連携部分を誰が運営するかを確かめます。

自社が担う工程を決めたら、本人確認、決済、基幹連携、BPO(業務の外部委託)など、前後の担当者と責任を整理します。提携先を増やすだけでなく、障害時の問い合わせ窓口も一本化できるか検討します。

Bot Expressは、日常のLINEを「スマホ市役所」に変える

給付金の事例では、申請・本人確認から、給付決定後の通知・受取までをつないでいます。 Bot Expressは、自治体向けの対話型アプリケーション「GovTech Express」を提供しています。

住民は新しい専用アプリを入れず、LINEの公式アカウントから手続きを進められます。

Bot Expressの2026年9月7日の公表では、全国370以上の自治体がGovTech Expressを導入しています。自治体職員が手続きを設定し、ほかの自治体の実装例を参考にできる仕組みを紹介していますが、導入数は業務削減の効果とは別の指標です。

利用する機能は、予約、申請、給付金、防災など自治体ごとに異なります。導入済み団体の数だけでなく、自社が対象とする手続きの本人確認方法、連携先、職員が設定できる範囲を確認します。

デジタル庁掲載の美里町「高校生世代応援給付金」の事例では、2025年11月にLINE申請、マイナンバーカードによる本人確認、セブン銀行ATMでの現金受取を組み合わせました。審査・給付決定後の出金コード発行と通知などを自動化し、従来およそ3週間かかっていた受取を最短即日で可能にしたと説明しています。

最短の所要時間であり、全申請者の平均処理時間ではありません。

この事例は、申請フォームだけでなく、決定後の通知と受取までつなぐ設計の参考になります。別の給付へ展開する場合は、対象者・審査・受取方法を確かめ、LINEやカードを使えない人、障害時の代替経路も用意します。

グラファーは、オンライン申請の後ろまでつなぐ

削減の実績と見込みを分け、申請後の確認・修正・転記も含めた時間で効果を測ります。 Graffer スマート申請は、フォーム、本人確認、電子署名、決済などを行政手続き向けに提供します。

外部システム連携は、受け取った情報を庁内で入力し直す負担を減らすための機能です。

北九州市の事例(2025年12月公表)では、申請データをkintoneへ自動連携し、文書作成や決裁へつなぎました。宅地造成及び特定盛土等規制法に関する適合証明書の交付申請では、交付にかかる工数が従来の約半分になったと報告しています。

これは当該業務の結果であり、市役所全体の工数半減ではありません。

町田市の保育施設入園事務の事例(2026年4月公表)は、申請データをルールに沿って点数化・変換し、RPAで基幹システムへ取り込む仕組みです。年間約5,800時間の削減を見込んでいますが、申請内容と添付書類の照合は職員が行い、ネットワークをまたぐCSVの移動も手作業が残ります。

新たな確認作業が生じる可能性も記されており、削減実績の確定値とは区別します。

北九州市の実績と町田市の見込みを比べると、測るべき範囲が分かります。申請受付だけでなく、確認、修正、点数付け、転記、決裁までの時間を合計し、自動化した後に増える作業も含めて評価します。

NEC・TKCは、書かない窓口と基幹の標準化を担う

書かない窓口の効果と、基幹システムの移行完了は別の成果として確認します。 NECの窓口DXSaaSは、職員の聞き取りやカード読み取りで申請書の手書きを減らし、庁内システムとの連携を支援します。

デジタル庁の案内では、窓口DXSaaSの利用は必須ではなく、業務の見直しを踏まえてサービスを選び、自治体が調達・導入するとしています。

NECは南相馬市の例として、子ども3人の家族が転入し、住民異動など五つの手続きをする場合を仮定すると、住民の手続き時間と職員の事務処理時間がそれぞれ45%減ると紹介しています。導入自治体による対象を限定した比較例で、すべての住民・手続きの平均削減率ではありません。

TKCの第60期中間報告書(2026年)によると、2026年3月31日までに、基幹システムを利用する顧客164市町村すべてが標準準拠システムとガバメントクラウドへの移行を完了しました。これは同社の対象顧客での完了で、日本の自治体全体の完了を意味しません。

移行の完了と住民サービスの改善は、成果を分けて見ます。TKCは2026年度の窓口DXSaaS提供事業者にも選ばれており、標準化した基幹と窓口の業務をどうつなぐかが、次の検討対象になります。

新規参入では、基幹を置き換える案だけでなく、既存システムとの連携、不備対応、運用支援も候補になります。制度対応の費用と移行後の保守を見積もり、顧客が現在使っている仕組みとの接続条件から検討します。

国内外のGovTechから見える、実装の違い

窓口端末、有人運用、業務ソフトの役割を分け、製品機能だけで導入効果を判断しないようにします。 続く四社は、窓口の本人確認、問い合わせ運営、部門をまたぐソフトウェアを扱います。

製品でできること、実際の導入規模、確認できる成果を分けて見ます。

TOPPANイクイップメントは、本人確認を窓口へ組み込む

大阪府豊中市の公表事例では、2026年1月26日にTOPPANイクイップメントの対面型PASiD scanⅡと非対面型PASiD Faceが稼働しました。scanⅡは職員が聞き取りながら操作し、カード情報を使って申請書を作る方式です。

PASiD Faceの「非対面」は、来庁者が端末を自分で操作し、申請書の出力まで進める方式を指します。自宅からオンラインで申請を終える意味ではありません。

顔照合などの機能は紹介されていますが、この豊中市の資料では削減時間の実測値は示されていません。窓口の混雑と支援が必要な利用者を見て、二つの方式を使い分けます。

transcosmosは、導入後の仕事を運用として引き受ける

transcosmosの2025年4月公表資料(34頁)は、神戸市の年間190万件以上の問い合わせを、Web、チャット、コンタクトセンターなどで統合運用する事例を紹介しています。チャットで解決しない内容の有人対応、電話の折り返し予約、災害に備えた二拠点運営を組み合わせています。

190万件は対応する業務の規模で、削減した件数ではありません。BPOの検討では、機械に任せる質問と人が対応する相談を分け、繁忙期の人員、研修、応対品質、個人情報管理を運用費に含めます。

OpenGovは、部門別ソフトを一つの公共サービス基盤へまとめる

OpenGovの公共サービス基盤は、財務・予算・調達と、許認可・資産管理・住民対応を共通のデータでつなぐ構成です。公式の会社紹介では、米国の市、郡、州機関など2,000以上が利用するとしています。

この数から、すべての利用機関が全製品を導入しているとは判断できません。

日本で参考にするなら、部門をまたぐデータと承認手順をつなぐ設計に着目します。日本の法令・帳票・調達要件への適合、権限と監査ログ、既存システムからの移行は別に確認する必要があります。

Tyler Technologiesは、公共分野に特化して業務を広げる

Tyler Technologiesの自治体向け製品紹介には、ERP、支払い、許認可などがあり、司法、公共安全、教育などの製品群も展開しています。公共部門の業務別に製品を提供する例として参照できます。

製品の広さだけでなく、対象制度の変更に誰が対応し、導入後に誰が支援するかを見ることが、自社への示唆です。ここで紹介した機能から、日本の自治体での削減率や受注可能性までは推定しません。

自社は自治体DXのどこへ入れるか

顧客接点、ソフトウェア、運用、地域網から近い入口を確認します。

01 自治体や住民との接点がある

件数の多い手続きを選び、案内から通知までを変える入口があります。

  • 対象業務と担当課を特定できる
  • 現行の処理時間を測れる
  • 利用できない住民も把握できる
02 データ連携に強い

申請データを基幹へ渡し、二重入力を減らす入口があります。

  • 標準仕様を追える
  • 例外とエラーを監視できる
  • 事故時の責任を決められる
03 業務運用に強い

問い合わせ、不備確認、入力代行までをBPaaSとして担えます。

  • 繁忙期の人員を確保できる
  • 個人情報を管理できる
  • 改善を契約へ入れられる
04 地域を束ねられる

複数自治体の共同利用と運営事務局を担えます。

  • 費用分担を調整できる
  • データ権限を決められる
  • 退出時の条件を用意できる

NEXT STEP

次のステップ

デジタル機能を、職員の仕事が減る事業へ。

住民接点、受付、審査、通知、基幹連携、運用を整理し、自社が継続して担える入口を設計します。

自治体DXで新規事業を作る四つの入口

自社が担える一つの業務から、共通化できる部分と個別対応の費用を検証します。 以下の四つは、企業の実装例から当研究所が整理した参入案です。

市場を網羅する分類や、成功が確認された参入順ではありません。自社の顧客接点、技術、運用網を生かせる仕事から検証します。

自治体DXで狙える四つの参入方法
図4:公開事例を参考に当研究所が整理した四つの参入案。需要・採算が確認された市場の分類ではなく、顧客と検証するための仮説です。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

次の表は、各参入方法について、最初に解く課題、提供内容、提携先、確認事項を対応させたものです。自社が持つ資産に最も近い一行から検討します。

自治体DXへ新規参入する四つの方法
参入方法 最初の顧客課題 提供するもの 提携先 最初に確かめること
手続き別SaaS 申請や予約が紙・電話に残る 案内、申請、本人確認、通知 ID、決済、基幹ベンダー 対象件数、不備率、利用できない住民
データ連携 オンライン申請後に転記が残る API、データ変換、エラー監視 申請SaaS、基幹ベンダー 標準仕様、例外率、責任分界
運用一体型BPaaS 職員が設定・問い合わせまで抱える SaaSと受付・不備確認・入力代行 BPO、地域人材、セキュリティ 月別件数、教育時間、再委託条件
共同利用基盤 小規模自治体が個別調達できない 共通テンプレート、共同窓口、運営事務局 都道府県、町村会、地域SI 合意形成、費用配分、退出条件

四つを同時に始める必要はありません。手続き別SaaSやデータ連携で業務を知り、運用や共同利用へ広げる順序も考えられます。

手続き別SaaSは、狭い業務から横展開する

最初の入口は、粗大ごみ、施設予約、給付、子育てなど、件数が多い手続きを選ぶ方法です。利用者と担当課がはっきりしているため、導入効果を測りやすくなります。

対象を選んだら、不備確認、通知、台帳更新まで調べます。一つの手続きで共通に使える部分と、条例・帳票・運用によって変わる部分を分け、他団体へ展開する際の改修費を見積もります。

データ連携は、申請後の二重入力を減らす

二つ目は、住民向けサービスと基幹システムの間へ入る方法です。標準仕様に沿って、入力内容を変換し、誤りを検知し、処理結果を返します。

連携では、手作業の削減とデータの正確さを両立させます。文字・住所・添付書類の扱い、基幹側の仕様変更、例外データを戻す方法を確かめ、日常の監視・復旧までサービスに含めます。

運用一体型BPaaSは、職員の仕事を純減させる

三つ目は、ソフトウェアと業務運用を一緒に提供する方法です。初期設定、住民向け案内、問い合わせ、不備確認、入力代行までを組み合わせます。

職員の作業を引き受けても、事業者側の作業が増えれば原価は上がります。採用・教育・繁忙期の待機と、例外処理の時間を見積もり、顧客側と事業者側の負担を別々に測ります。

採算を考える架空例として、月1万件を1件3分で処理する従来方式は500人時です。導入後に職員120人時、委託先200人時、設定・監視40人時が必要なら、合計360人時で140人時減ります。

ただし、これに利用料や機器費を加え、時間短縮と金額の効果を分けて判断します。

共同利用基盤は、小規模自治体を面で支える

四つ目は、複数自治体がサービスと運用を共同利用する案です。共通化する仕事と団体ごとに残す判断を分け、取りまとめる主体、費用分担、運営窓口を決めます。

技術の接続に加え、合意形成と運営にも工数がかかります。データの権限、変更手続き、退出時のデータ返却を取り決め、地域の事業者などが事務局を担えるか検討します。

自治体DXへ参入するときの七つの懸念

調達、継続費用、情報管理、利用支援、例外、移行、成果の七つを導入前に確かめます。 第一は、顧客の検討・調達時期です。

予算要求、RFI(情報提供依頼)、仕様検討、公募などの予定を確認し、提案と導入に必要な期間を見積もります。すべての案件が同じ手順を通るわけではなく、契約方法と参加要件は発注者の案内で確かめます。

第二は、長期の利用費です。初期費用だけでなく、年度ごとの利用料、通信・クラウド、制度変更、保守、契約終了時の移行費を比較します。

複数年度を含む契約期間・条件は案件ごとに確認し、利用量が増えた場合の費用も示します。

第三は、個人情報とセキュリティです。誰が何の目的でどのデータを使うかを定め、再委託、操作ログ、事故連絡、保存・削除まで確認します。

サイバーセキュリティの観点と、対象データに適用される法令・自治体の要件を併せて点検します。

第四は、利用しにくい人への支援です。スマートフォン、日本語、文字入力などの条件を確認し、オンライン、対面、電話を同じ業務につながる入口として設計します。

デジタル利用率だけを上げて、申請できない人を増やさないようにします。

第五は、例外処理です。住所表記、代理申請、添付不足などの件数と処理時間を測ります。

自動化できた件数だけを成果にせず、難しい案件が一部の職員や委託先に集中していないかを確認します。

第六は、ベンダーロックイン(特定の事業者から乗り換えにくくなること)です。データ出力、API、標準仕様、契約終了時の移行支援を確認し、形式だけでなく次のシステムで再利用できるかを試します。

第七は、成果の測り方です。完了率、処理日数、不備率、問い合わせ、職員・委託先の時間を、同じ手続きと期間で比較します。

混雑期と通常期、単純な案件と例外案件を分けると、どこが改善したか判断しやすくなります。

リスキリングと業務変更を組み合わせ、担当課が改善できる体制を作ります。操作研修だけでなく、例外を誰に相談し、制度変更時に誰が設定を更新するかまで決めます。

参入・提携・待機・見送りをどう決めるか

対象業務と予算、提供責任、継続原価をそろえ、自社で担う範囲と提携する範囲を決めます。 参入を考える際は、対象業務、顧客の予算・調達条件、制度知識、本人確認、基幹連携、運用体制を照合します。

技術が動くだけでなく、安全に続けられる範囲と採算を確認します。

自社での提供を検討しやすいのは、担当課と対象業務が明確で、現在の件数・時間、改善したい成果、責任範囲、継続費用を確認できる場合です。他団体へ展開するなら、共通部分と個別改修部分も見積もります。

提携を選ぶのは、住民向けの使いやすさは作れても、本人確認や基幹連携がない場合です。逆に、BPO網はあってもソフトウェアを持たない会社は、申請SaaSやAI企業と組めます。

待機すべきなのは、現行業務を測れていない場合です。処理件数、繁忙期、例外率、問い合わせ、担当者の時間が分からないと、効果も原価も置けません。

実証の受託収入があっても、その後の継続需要と採算は別に確かめます。必要な人の確認やデータ返却ができない、障害時の代替がない、利用できない住民への対応がない場合は、提供範囲を見直すか、条件が整うまで進めない判断が必要です。

長期の競争力を考えるときは、機能に加え、制度変更への対応、再利用できる業務テンプレート、例外対応の蓄積、改善を続ける体制を見ます。

自治体DXについてよくある質問

自治体DXを検討するときに、自治体と参入企業の双方から出やすい疑問を整理します。

Q. 自治体DXとデジタル化は何が違いますか

A. デジタル化は、紙や対面の処理をデジタルへ置き換えることです。自治体DXは、住民体験、業務手順、組織、データの使い方まで見直します。オンライン申請を入れても転記が残るなら、変革は途中です。

Q. 自治体DXで最初に取り組みやすい業務は何ですか

A. 件数が多く、手順が比較的そろい、担当課と成果を測りやすい業務です。予約、申込、証明、粗大ごみ、給付などが候補です。件数だけでなく、不備率と後続作業も確認します。

Q. 書かない窓口を入れれば、窓口DXは完成しますか

A. 完成しません。デジタル庁も、SaaSの導入だけでは不十分と説明しています。窓口とバックヤードの業務を見直し、案内、申請、審査、通知までつなぐ必要があります。

Q. ガバメントクラウドへ移れば、費用は必ず下がりますか

A. 必ず下がるとは限りません。共同利用や柔軟な拡張の利点はあります。一方、移行、ネットワーク、運用監視、データ転送、既存連携の費用もあります。移行前後で同じ条件を置いて比べます。

Q. 民間企業が自治体DXへ参入するには何が必要ですか

A. 対象業務の制度理解、公共調達への対応、情報管理、導入後の運用が必要です。すべてを持たない場合は、基幹ベンダー、本人確認、BPO、地域事業者との提携を先に設計します。

Q. 自治体DXの成果は、何で測ればよいですか

A. 住民側は完了率、待ち時間、来庁回数、問い合わせ回数で見ます。職員側は処理時間、不備率、転記回数、例外対応時間で見ます。使えなかった住民の数も確認し、便利さの偏りを防ぎます。

まとめ|自治体DXは住民の利便性と業務負担を一緒に改善する

住民・職員・委託先の負担を見比べ、実績と見込みを分けて事業の価値を判断します。 自治体DXでは、住民が手続きを進めやすくする改善と、職員の後続処理を減らす改善を一緒に設計します。

申請、確認、審査、通知、記録のどこを変えた結果かを分けると、他の自治体でも使える条件が見えてきます。

Bot Expressとグラファーは、使いやすい住民接点と申請の横展開を進めています。NECとTKCは、窓口と基幹業務を支えます。

TOPPANイクイップメントは本人確認、transcosmosは運用を担います。OpenGovとTyler Technologiesは、公共分野に特化した統合基盤の可能性を示しています。

手続き別SaaS、データ連携、運用一体型BPaaS、共同利用は、検討できる入口の例です。自社と提携先の担当範囲を決め、利用できない人への支援と、例外・障害対応を含む原価を確かめます。

スマートシティの記事が都市全体のデータとサービスを扱うのに対し、本稿の自治体DXは行政手続きと庁内業務が中心です。両者を混ぜず、誰のどの仕事を減らすかを明確にすると、事業の輪郭が見えてきます。

参考文献

制度、実装状況、企業の提供内容は、次の一次情報を中心に確認しました。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

デジタル庁、およびBot Express、グラファー、NEC、TKC、TOPPANイクイップメント、transcosmos、OpenGov、Tyler Technologiesの公式資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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