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リテールメディアの収益は何で決まる|国内外8事例と参入の条件

リテールメディアは、何を売る事業なのか。
自社は、どの役割で参入できるのか。

リテールメディアは、小売企業が持つ通販サイト、アプリ、店頭の画面などを使う広告事業です。強みは、商品を探す人に広告を届け、買い物のデータで結果を確かめられることにあります。

ただし、画面を増やせば利益が出るわけではありません。重要なのは、広告で増えた購買と、運営に残る利益を説明できることです。

小売企業には広告を売る体制が必要です。支援会社には、データをつなぎ、効果を測る仕事があります。

本記事では、ファミマTVやセブン‐イレブン、Amazonなど国内外8事例を整理します。そのうえで、市場規模、収益の仕組み、参入方法、見落としやすい懸念を解説します。

自社に店舗がある場合も、技術や営業力を生かしたい場合も、担う役割を絞るためにお読みください。

この記事の結論

広告を置く場所だけでなく、効果測定と運営に事業機会があります。

  • 自社媒体・広告網・配信基盤を国内外8事例で整理
  • 広告にひも付いた売上と、広告で増えた売上を区別
  • 四つの参入方法から、必要な資産と責任を考える

目次

リテールメディアとは、買い物の接点を使う広告事業

リテールメディアは小売の顧客接点を使う広告事業で、広告の配信と購買の測定は別々に設計します。

リテールは「小売」、メディアは「情報を届ける媒体」です。小売が持つ顧客との接点を、メーカーなどの広告に活用します。

まず、身近な買い物で考えてみましょう。

たとえば、スーパーのアプリで新しい飲料の広告を見て、買い物に行くと売場の画面でも同じ商品が紹介されているとします。そして会員証を使って購入すると、その記録を広告の効果測定に使える場合があります。

こうした仕組みが、リテールメディアの一例です。

従来の店頭ポスターも、商品を知らせる点では同じです。違いは、配信する相手や場所を調整し、販売記録と結び付けられる点にあります。

ただし、すべての広告で「誰が見て、何を買ったか」がわかるわけではありません。店内の画面には、会員登録せずに見る人もいます。

広告を出す場所は、サイト内・サイト外・店頭の三つ

呼び方を覚えるより、どこに広告が出るかで分けると簡単です。

広告が届く場所と、確認できること
広告の場所 具体的な形 できることと確認点
小売のサイトやアプリ内(オンサイト) 検索結果の商品広告、アプリのバナー 買う直前に届けやすい。広告と通常の商品表示を区別する
小売のサイト外(オフサイト) 外部サイト、動画、交流サービスの広告 購買データなどを使って店外へ届ける。利用できるデータの範囲を確認する
実店舗内(インストア) 売場・レジ・買い物カートの画面 商品が目の前にある人へ届ける。放映回数と見た人数を分ける

三つを全部そろえることが出発点ではありません。実際、通販サイトの検索広告から始める企業も、アプリを他社の広告網につなぐ企業もあります。

つまり、誰に何を知らせたいかに合わせて選びます。

なお、OMO(ネットと店舗を一体で設計する考え方)は、買い物体験全体が対象です。一方、リテールメディアは、その接点を使う広告事業に焦点を当てます。

店舗受け取りや在庫共有まで含む全体像は、OMOの仕組みと企業事例で整理しています。

国内のリテールメディア市場は、どこまで広がったか

国内市場6,066億円の大半は、EC事業者が提供する広告への支出で、店頭画面だけの市場規模ではありません。

国内のリテールメディア広告市場は2025年推計6066億円、2029年予測1兆3174億円。将来予測を区別した比較
出典:CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト「リテールメディア広告市場調査」(2026年1月公表)をもとに、イノベーション総研作成。2025年は推計、2029年は予測。対象は国内の年間広告支出。

国内では大手通販サイトが市場を支え、店舗を持つ小売の広告事業も伸びています。上図は同じ調査の推計と予測を比べたもので、確定した売上実績を将来まで並べた図ではありません。

CARTA HOLDINGSとデジタルインファクトの調査(2026年1月公表)は、2025年の国内リテールメディア広告市場を6,066億円と推計しています。前年比129%、すなわち約29%の増加です。

2029年の1兆3,174億円は将来予測で、2025年の推計とは分けて読みます。対象は広告主による年間の広告支出で、小売や支援会社の利益ではありません。

2025年推計の内訳は次のとおりです。店舗を持つ事業者の830億円にもアプリなどが含まれ、全額が店頭画面の広告ではありません。

国内リテールメディア広告市場の内訳(2025年推計)
区分 広告主の年間支出 含まれる広告の例
EC事業者 5,236億円 ECサイトなどの広告
店舗事業者:デジタル広告 620億円 アプリ、ECサイト、購買データを使った配信など
店舗事業者:デジタルサイネージ 210億円 店舗に設置された画面の広告
合計 6,066億円 上記の合計

EC事業者の比率は5,236÷6,066で約86.3%です(公表値から当研究所が算出)。市場全体の大きさだけで店舗向け事業を見積もらず、自社が扱う広告の種類、出稿するメーカー、運営に必要な費用まで絞ります。

調査は業界関係者への聞き取り、保有データ、公開情報に基づきます。

参入を考える際は、この全国市場の何%を取るかより、販売できる広告商品を具体化する方が先です。たとえば地域スーパー向けなら、取引メーカーの数、広告を載せるアプリの利用状況、購買データの利用条件が重要になります。

広告主が使うお金と、自社に残る利益も別です。というのも、広告取扱額には、小売や配信先へ支払う分が含まれる場合があるからです。

そのため、市場が拡大していても、個別の事業では営業費や運用費が上回り得ます。

広告主・小売・支援会社は、それぞれ何を担うか

広告主の予算と小売の接点をつなぐために、営業・配信・分析・店舗保守の担当を決めます。

広告主は、商品やブランドを選んでもらうために費用を払います。一方、小売は顧客接点や販売データを持ちます。

支援会社は、この両者をつなぐ技術と運用を担います。

たとえば食品メーカーが、未購入の人に新商品を知ってほしいと考えたとします。このとき、小売は広告枠を提供しますが、それだけでは配信は始まりません。

実際には、対象店舗と商品を決め、広告を審査し、売場に在庫があるか確かめます。そして、放映や配信を管理し、購買結果を報告します。

この仕事は、一社で抱える必要はありません。広告営業、配信システム、購買分析、店頭機器の保守などに分かれます。

逆に、役割を分けたまま責任者を決めないと、広告が出ない、商品が欠品している、集計が合わないといった問題が残ります。

ここで使うID-POSは、会員などの識別情報にひも付く販売記録です。商品別の売上だけでなく、同じ会員が何を買ったかを分析できます。

ただし、非会員や会員証を使わなかった買い物は、同じ方法では追えません。

新規事業の入口は、この役割分担の中にあります。たとえば、「広告配信システムをつくる会社」なのか、「小売の広告営業を引き受ける会社」なのかで、必要な人材も契約も変わります。

そこで、次の企業事例は、この違いに注目して読んでください。

リテールメディアを動かす国内外8事例

媒体を運営する企業と、その広告基盤・営業・測定を支える企業では、必要な強みが異なります。

同じリテールメディアでも、各社が提供するものは異なります。そこで、自社の店頭を媒体にする企業と、他の小売の広告事業を支える企業を分けて整理しました。

なお、共同事業は一つの事例として数えています。

国内外8事例の提供物と段階
企業・事業 主に提供するもの 確認できる提供段階
ファミリーマート・ゲート・ワン ファミマTVの番組・店頭広告 運営中。2026年4月に改称
セブン‐イレブン・アドコネクト 売場画面、レジ、アプリの広告 広告メニュー提供。店舗拡大は計画を区別
DearOne ARUTANAによる小売アプリ横断配信 商用提供・参加小売を拡大
Amazon Ads 他社通販サイト向け広告基盤 Amazon Retail Ad Serviceはベータ表記
Walmart Connect 自社の購買データを用いた広告・測定 商用提供
Instacart Carrot Adsによる小売向け広告基盤 商用提供
Criteo 複数小売の広告購入・管理・測定 商用提供
Unlimitail 複数小売を束ねた広告と店頭展開 広告事業を運営。新たな画面網には展開計画あり

これは売上順のランキングではありません。どの企業に勝つかを急いで決める前に、自社が顧客になる相手、組む相手、競合になる相手を見分ける一覧です。

ファミマTV:広告だけでなく「店で見たくなる番組」をつくる

ファミリーマートは、ゲート・ワンと運営する店内メディアを、2026年4月14日にファミマTVへ改称しました。従来の名称はFamilyMartVisionです。

その発表では、番組を放映する媒体であることを伝え、店舗体験を楽しくする方針を示しています。ファミリーマートの発表

同じ発表では、設置店舗は1万1,000店超、広告出稿企業は440社超で2022年度比4.5倍としています。前者は届けられる場所、後者は広告を購入する企業の広がりを示す数字です。

画面の設置だけでなく、出稿先として選ばれる営業・番組・運営の仕組みを育てる点に注目できます。ただし、これらは広告による購買増加の効果量ではありません。

ここで売っているのは、画面の設置場所だけではありません。むしろ、番組の間に広告が入り、来店客が商品やサービスを知る接点をつくっています。

というのも、店頭で目に入る広告であっても、立ち止まって見る理由がなければ、十分に伝わらないためです。

この事例から、イノベーション総研は「媒体を育てる仕事」に注目します。具体的には、番組の企画、広告素材の調整、店舗での放映管理を組み合わせる役割です。

そのため、機器を納品する会社でも、その後の運営まで支援できれば提供範囲が広がります。

一方、放映できる店舗数を、そのまま広告を見た人数として扱ってはいけません。というのも、店内の位置、滞在時間、画面が向く方向で接触の可能性は変わるからです。

そのため、広告主に説明する際は、放映の記録、視聴の推計、購買の分析を分ける必要があります。

セブン‐イレブン:売場・レジ・アプリを、広告商品として組み合わせる

セブン‐イレブン、電通、サイバーエージェントは、2026年6月に合弁会社の設立合意を公表しました。これは、小売の顧客接点に、広告の企画・販売や制作技術を組み合わせる構想です。設立合意の発表

現在の公式ページでは、7月設立のセブン‐イレブン・アドコネクトが広告メニューを紹介しています。たとえば、売場上部の画面は、2026年8月時点で約3,700店舗に展開しており、2027年2月までに約8,700店舗へ広げる計画です。

ただし、後者は現在の設置実績ではありません。また、レジ画面やアプリの広告も提供しています。広告メニューと会社概要

たとえば飲料の新商品なら、売場の画面とアプリでは伝え方が変わります。つまり、目の前で選ぶ人には短く特徴を伝え、アプリでは商品情報を詳しく示せます。

そのため、複数の接点があることより、目的に合わせて使い分けられることが価値です。

参入企業が学べるのは、小売と広告会社の分担です。小売の取引先であっても、広告の企画と販売まで得意とは限りません。

ただし、小売に強い営業会社も、広告契約や素材審査を習得する必要があります。商品を納入する仕事の延長だけでは、運営は完成しません。

ARUTANA:自社だけでは小さい広告枠を、横につなぐ

DearOneのARUTANA(アルタナ)は、複数の小売公式アプリへ広告を横断配信する仕組みです。具体的には、小売はアプリに配信用の機能を組み込み、出す広告を審査します。

そして、広告案件の営業はDearOneが担います。さらに、2026年8月にはサンドラッググループ公式アプリの参画も案内しています。ARUTANAの公式説明

中堅小売が単独で広告主を探す場合、毎回の提案や報告が重い負担になります。一方、広告主も、小さな媒体ごとに発注するのは大変です。

そこで、複数アプリへの配信窓口をまとめることで、双方の手間を減らす事業です。

小売向けの説明では、既存アプリへのSDK(配信機能を組み込む部品)の実装と、管理画面での広告審査を案内しています。また、公式ページはID-POS連携による購買数やROASのレポートを紹介しています。

導入時には、配信できる広告と分析できる購買データの範囲・費用を別々に確認します。

この仕組みを参考に新事業を考えるなら、広告網そのものを一からつくる以外に道があります。たとえば、地域の小売への導入、アプリ改修、商品コードの整理、測定用データの接続を担う方法です。

実際、既存の広告網と組んだ方が、顧客に早く価値を届けられる場合があります。

Amazon:自社の売場にとどまらず、他の小売へ広告基盤を提供する

Amazon Adsは2025年1月、Amazon Retail Ad Serviceを発表しました。これは、他の小売が、自社の通販サイトで商品広告を提供するためのサービスです。

そして、発表時にはiHerb、Oriental Trading Company、Weee!などを挙げています。サービス開始時の発表

公式サービスページはベータ版と表記しています。具体的には、商品検索や商品詳細などに広告を載せ、購入はその小売のサイトやアプリで完了します。

しかも、広告主はAmazonで商品を売っている必要はない、と説明されています。Amazon Retail Ad Service

このモデルは、広告を出す場所と、広告を動かす技術の提供者が別であることを示します。小売が商品検索を運営し続けながら、広告の機能や広告主との接点を外部から借りる形です。

自社で通販サイトを支援している企業にとっては、広告機能の独自開発だけが参入方法ではありません。既存基盤の接続、商品データの整備、表示位置の設計も候補になります。

ただし、提供地域や対象事業者の条件があります。海外のサービスを、日本の小売がすぐ同じ条件で使えるとは扱わず、契約前に確認します。

Walmart Connect:広告の後に起きた購買を、自社の販売データで確かめる

Walmart Connectは、通販サイト、アプリ、実店舗の販売データを使った効果測定を提供しています。これは、広告との接触を自社での購買に結び付けて報告する仕組みです。

そして公式には、広告に結び付ける売上、純増効果、ブランドへの影響など、複数の評価方法を挙げています。Walmart Connectの測定サービス

商品を知る場所と買う場所は、必ずしも同じではありません。たとえば、動画広告で知り、数日後に店舗で買うこともあります。

そのため、販売データを持つ小売だからこそ、こうした結果を測る選択肢が生まれます。

ただし、広告の後に購入があったことだけで、その全額が広告の成果とは言えません。もともとの愛用者が買った分も含まれるからです。

その点、Walmartが複数の測定方法を用意している点は、売上のひも付けと純増効果を分けて考える手掛かりになります。

新規参入の視点では、広告レポートを作るだけでなく、次の出稿判断に使える説明が重要です。というのも、広告主が知りたいのは、数字が大きいかより「予算を続ける理由があるか」だからです。

そのため、測定の対象と限界を説明できる人材が、技術と並ぶ事業資産になります。

Instacart:食品小売へ、広告機能と広告主との接点を渡す

InstacartのCarrot Adsは、小売企業のサイトやアプリなどを広告媒体にするサービスです。同社は、広告の配信技術だけでなく、Instacartの広告事業に集まる広告主の予算へ接続する仕組みを提供しています。Carrot Adsの広告需要との接続

ここで重要なのは、配信の機能ができても、買ってくれる広告主がいなければ売上は立たない点です。小売が広告営業をすべて自前で始める負担を減らすことも、サービスの価値になっています。

同社は、オンラインの広告と、画面付き買い物カートであるCaper Cartの店頭広告を組み合わせる構成も紹介しています。さらに開発者向け資料では、商品広告、表示広告、ブランドページ、効果データへの接続方法を示しています。提供する広告面、開発者向け資料

参入企業は「機器を設置したら広告収入が入る」と短絡しないことが大切です。むしろ、小売の取扱商品と広告主の出稿商品が合うこと、売場で在庫を用意できることが必要です。

つまり、広告機能、広告主、商品データの三つをつなぐ仕事として捉えると、提案の中身が具体的になります。

Criteo:広告主が複数の小売を使う際の、操作と測定の分断を減らす

CriteoのCommerce Maxは、広告主や広告会社向けの広告購入・管理基盤です。同サービスは、複数小売のサイト内広告と、サイト外の広告を一つの環境で扱います。

また、公式の説明では、商品広告はクリックに応じた課金、表示広告は表示回数に応じた課金などに分かれます。Commerce Maxの機能

たとえばメーカーが複数チェーンで広告を出すと、画面操作、商品コード、集計方法が異なります。そのため、広告を改善する前に、データをそろえる仕事が増えます。

そして、共通の管理基盤は、こうした負担を減らすために使われます。

一方、共通画面を使えば、すべての重複が消えるわけではありません。実際、公式ヘルプは、Commerce Maxの外にある広告を、同サービス内の重複排除に含めないと説明しています。

そのため、他媒体の売上報告を単純合計すると、同じ購買を重ねて数える可能性が残ります。売上のひも付けと集計範囲

支援会社の機会は、運用画面の使い方を教えるだけではありません。むしろ、複数媒体の測定条件をそろえ、予算判断に使える資料へ変える仕事です。

しかも、便利な管理基盤があるほど、何が比較できないかを説明する役割も重要になります。

Unlimitail:小売の広告を束ね、店頭への展開も分担する

Unlimitailは、欧州や中南米の複数小売をつなぐリテールメディア事業者です。たとえば、Carrefourの小型店への画面展開では、2025年6月にパリの5店舗で試験導入を始めたと公表しています。

さらに、同年10月の発表には、2027年までに最大900拠点を目指す計画もあります。ただし、これは900拠点への設置完了を示す数字ではありません。小型店への展開発表

この取り組みでは、来店客の多さや立地を踏まえて、設置先を選んでいます。というのも、小型店にも広告を届けるには、大型店と同じ画面や運用をそのまま持ち込めばよいわけではないからです。

そのため、入口やレジ周辺の動線に合わせる仕事が必要です。

また2025年12月には、Carrefour、Carmila、JCDecauxとの展開構想を公表しました。これは、施設の広告設備を管理・更新・販売する役割を分担する内容です。

ただし、発表段階の交渉や展開予定を、現在の完成実績と混同しないように読む必要があります。各社の役割と展開構想

日本の参入企業にとっても、地域店舗の設置や保守を担う道があります。ただし、画面網の規模だけでは採算は決まりません。

設置先の調整、営業、配信、故障対応を、誰がどの条件で引き受けるかが重要です。

自社の状況から、次に確認することを選ぶ

該当する項目を開くと、記事の読む場所がわかります。

01 仕組みを知りたい

広告を出す場所と各社の役割から読みます。

  • 広告主は誰か
  • 広告はどこに出るか
  • 購買まで測れるか

リテールメディアの仕組みを見る →

02 企業の取り組みを知りたい

媒体運営と支援基盤の違いを比べます。

  • 何を提供するか
  • 商用かベータか
  • 自社は競合か提携先か

国内外8事例を見る →

03 広告効果を確かめたい

買った売上と、増えた売上を分けます。

  • 比較する相手はいるか
  • 期間と対象商品は同じか
  • 値引きの影響はあるか

効果測定の考え方を見る →

04 自社の参入方法を選びたい

自社資産から担う仕事を絞ります。

  • 顧客接点を持つか
  • 営業や技術に強みはあるか
  • 不足する機能を補えるか

四つの参入方法を見る →

05 運営の採算を考えたい

広告収入から配分と運営費を引きます。

  • 小売への配分はいくらか
  • 一案件に何時間かかるか
  • 故障時に誰が直すか

採算の考え方を見る →

06 事業案を相談したい

機密情報を出さずに役割を整理します。

  • どの業態に売るか
  • 費用を払うのは誰か
  • 何がまだ未確定か

相談前にそろえる情報を見る →

NEXT STEP

次のステップ

店舗・営業・データの強みを、広告事業につなげる

店舗との接点、メーカーへの営業力、データ処理、保守体制。自社が担える仕事と、提携で補う仕事を整理します。構想の具体化や検証から事業化までの実行支援は、TeamPro Pilotsのサービスページで確認できます。

リテールメディアの効果は「買った」と「増えた」を分ける

広告にひも付いた売上と、広告がなければ生まれなかった売上を区別して出稿を判断します。

広告の後に確認できた購買と、広告がなければ起きなかった追加の購買は異なる。売上のひも付けだけでは純増効果を断定しない
出典:IAB/IAB Europeの増分効果測定ガイドを踏まえ、イノベーション総研作成。図は概念の区別であり、実際の効果量を示すものではありません。

広告の効果を読むときは、まず売上の定義を確認します。というのも、広告の後に起きた購入を集めることと、広告で追加された購入を推定することは違うからです。

そして、ここを分けると、企業の導入実績も読みやすくなります。

ROASが高くても、広告で利益が増えたとは限らない

ROAS(広告費に対する売上の割合)は、広告にひも付けた売上を広告費で割る指標です。たとえば広告費100万円に対し、対象の売上が500万円なら500%です。

この数字だけでは、500万円がすべて広告のおかげとは言えません。

同じ対象者・期間・商品の範囲をそろえ、比較試験などから「広告がなければ400万円だった」と推定できたとします。実際の売上が500万円なら追加売上は100万円、広告主にとっての粗利益率を30%と置けば追加粗利益は30万円です。

広告費100万円を引くと、30万円−100万円=マイナス70万円となります。これは計算方法の架空例で、実際の広告効果ではありません。

広告にひも付いた500万円だけを見て、追加売上100万円を算出することはできません。

実際には、継続購入や新規顧客の獲得まで考える場合があります。それでも「売上」と「利益」、「ひも付いた額」と「増えた額」を分ける原則は同じです。

小売の販売金額で計算した数値を、メーカーの利益と取り違えないことも必要です。

比較する相手と期間を、広告の前に決める

増えた分を考えるには、広告を出さなかった場合との比較が必要です。たとえば、条件の近い店舗や顧客群を比べる方法があります。

また、可能なら、対象を無作為に分けた試験で差を確かめます。一方、試験が難しい場合は推定モデルを使いますが、その前提と誤差を明示します。

IABとIAB Europeのガイドも、実験、比較対象の推定、統計モデルなどの方法を整理しています。ただし、どの方法でも同じ確かさになるわけではありません。増分効果の測定ガイド

値引きした週と通常価格の週を比べれば、売上差には値引きの影響も入ります。同様に、季節、特売、欠品、配荷店舗数が違う場合も同様です。

そのため、「広告の有無以外で、何が変わったか」を記録しておきます。

他媒体の数字と比べる前に、四つの条件をそろえる

また、広告を見た後、何日以内の購買を数えるかという期間も、売上の見え方に影響します。というのも、期間が長い方が、通常の買い物まで含みやすくなるからです。

広告効果を比較する前にそろえる条件
確認する条件 そろえないと起きる問題
クリック後か、表示後か 興味を示した人と、画面に出ただけの人を同じに扱う
何日以内の購買か 集計期間の長い広告が有利に見える
同じ商品か、同じブランド全体か 対象商品の範囲が広い広告ほど売上が大きく見える
返品・欠品・他媒体との重複をどう扱うか 実際に残った売上や追加効果を過大に見る

この表は、どの媒体が優れているかを判定するものではありません。むしろ、条件をそろえてから、広告主の目的に合うかを比べるための確認項目です。

また、認知を広げる広告に、短期の購買だけを求めるのも適切ではありません。

集計条件の変更履歴も残します。例えばCriteoの公式ヘルプは、広告と購買をひも付ける期間などの設定を変えると、過去のレポートも遡って更新されると説明しています。

前月に保存した表と現在の画面を比べる際は、施策の変化だけでなく、集計条件が変わっていないかも確認します。

広告売上から何を引くと、事業の採算が見えるか

広告取扱額から小売への配分、配信・制作、人の作業、設備の費用を引いて採算を確かめます。

広告収入から配分費と運営費を差し引いて、残る利益を考える。広告取扱額を利益とみなさない
イノベーション総研作成。採算検討の概念図。契約により売上の計上方法や費用項目は異なります。

広告主の費用対効果と、運営側の採算は別に見ます。というのも、運営側は、広告を売って得た収入から、相手への配分と運営費を差し引くからです。

しかも、機器を持つ場合は、設備と保守の負担も加わります。

小売が自社の媒体を運営する場合

通販サイトやアプリには、広告以外の役割もあります。つまり、商品を探し、会員証を出し、注文するための場所です。

そのため、広告枠を増やしても、買い物がしづらくなれば、本業の売上を損なう可能性があります。

まずは広告の収入と費用を分けます。具体的には、営業担当者の工数、広告の審査、配信システム、効果レポートの作成が必要です。

さらに、店頭画面では、通信、電気、故障時の交換も発生します。

そのうえで、本業への影響を確認します。たとえば、アプリの離脱、問い合わせ、欠品時の苦情などです。

つまり、広告部門だけが黒字でも、小売全体で損失が出る設計は続きません。

支援会社が複数の小売を束ねる場合

広告主から受け取る金額のすべてが、支援会社の収益になるとは限りません。というのも、小売への配分、外部配信先への支払い、制作費などがあるからです。

そのため、売上総額と手元に残る手数料を、同じ数字として扱わないことが重要です。

採算を左右するのは、小売一社ごとの例外対応です。商品コードや販売データの形式が違い、毎回手作業で直すなら、参加企業が増えるほど負担も増えます。

運営側の計算も、架空例で考えてみます。広告の取扱額100万円から、小売への配分60万円、配信・制作費15万円、案件対応の人件費20万円を引くと、残るのは5万円です。

さらに共通の管理費や設備費があれば差し引きます。100万円をそのまま自社の収益と見ず、案件対応の時間が増えた場合にも採算が合うかを確かめます。

会計上の売上計上は契約により異なり、この例は案件の収支を点検するためのものです。

イノベーション総研は、広告取扱額だけでなく「一つの案件を受け、配信し、報告し終えるまでの工数」を見るべきだと考えます。というのも、単価の高い案件でも、個別対応が多ければ利益は残らないからです。

これは新規事業の事業計画でも、売上予測と併せて整理したい部分です。

リテールメディアへ参入する四つの方法

自社の強みに合わせ、媒体運営、広告の運用支援、データ接続、店頭設備の保守から役割を選びます。

企業事例を踏まえると、参入は「媒体を持つ」「運用を担う」「データをつなぐ」「店頭を支える」に分けられます。なお、以下は公表事例を基にした、イノベーション総研の参入分析です。

各社がこの分類で事業を運営しているという意味ではありません。

店舗や会員接点があるなら、特定の商品分野の媒体になる

対象顧客は、自社の売場と相性のよいメーカーです。そして、解く課題は「欲しい人に届かない」「買った結果がわからない」ことです。

そのため、アプリや通販サイトの広告と、測定範囲をそろえた報告を一つの商品にします。

この場合の収益は広告掲載料です。また、必要な資産は、使われている顧客接点、商品と販売のデータ、広告を売る担当者です。

一方、足りない配信技術や営業は、既存の広告基盤や広告会社との提携で補います。

小売が責任を持つのは、広告を載せる場所、顧客への説明、商品・在庫との整合です。見送り条件は、登録会員数は多くても実際の利用が少ない場合です。

また、広告の案件がなくても大きな設備費を払い続ける計画は、投資を先送りして見直します。

小売との営業関係があるなら、広告事業の運営を支援する

対象は、顧客接点はあるが広告専門の担当者が少ない小売です。具体的には、媒体資料の作成、広告案件の獲得、審査、配信管理、請求までを支援します。

さらに、広告主には、一つの窓口で出稿できる価値を提供します。

この場合の収益は運営受託料や、契約に基づく広告売上の配分です。必要な資産は小売・メーカーとの関係、広告実務の知識、業務を標準化する力です。

そのうえで、配信基盤、制作会社、購買分析の担当者と組みます。

責任範囲は、案件の納期、配信条件、素材の承認、請求や返金の扱いまでです。ただし、広告主が買う前提のないまま「複数小売を集めれば売れる」と考えるなら、参入を急ぎません。

むしろ、出稿側の予算と目的を確認する方が先です。

データ処理に強いなら、測定に使える状態へ整える

対象は、配信と販売のデータが分かれている小売や広告会社です。具体的には、商品コード、店舗、期間、会員識別子の扱いを整理し、広告の結果を比較できる仕組みにします。

しかも、集計画面の開発だけではなく、欠損や返品への対応まで含めます。

この場合の収益は初期接続費、継続運用料、分析案件の費用です。必要な資産はデータ基盤の実装力と、広告測定の知識です。

そのうえで、販売システムの提供会社、広告基盤、法務・情報管理の専門家と組みます。

責任範囲は、取り込む項目、更新頻度、集計条件、アクセス権限です。逆に、データを受け取れない契約や、商品コードを対応付けられない状態では、精度の高い効果測定を売りにしません。

むしろ、集計の準備を別工程として提案する方が誠実です。

店舗設備に強いなら、広告を届け続ける運用を担う

対象は、店頭画面を展開する小売や媒体運営会社です。そして、解く課題は、設置の遅れ、通信不良、放映の欠落、故障時の復旧です。

そのため、立地と売場に合わせた設置、放映の監視、交換保守を提供します。

この場合の収益は設置工事費、機器の販売・賃貸、保守運用料です。必要な資産は工事・保守網と、店舗が営業している中で作業する力です。

一方、広告営業や配信技術は、媒体運営会社や機器ベンダーと分担します。

責任を明確にしたいのは、故障の受付から復旧まで、広告を出せなかった場合の報告です。もし最低限の保守費を回収できず、未確定の広告配分だけで採算を合わせる計画なら見直します。

つまり、画面の販売ではなく、正常に放映できる状態を維持する仕事として設計します。

データ利用と広告運営で、先に押さえたい懸念

データ利用の条件、広告契約、価格・在庫の更新、緊急停止の担当を事前に確認します。

ここまで見た参入方法は、広告を売れる条件だけでは成立しません。顧客データを使えること、店舗の信頼を守れること、失敗した際の責任が明確であることも必要です。

自社で集めたデータでも、自由に外へ渡せるわけではない

たとえば、会員向けサービスのために集めた情報を、どの広告に使うのか、誰が受け取り、何と照合するのかを決めます。そのうえで、利用目的、契約、本人への説明を確認します。

個人情報保護委員会のFAQ(Q2-8)は、個人関連情報データベース等を事業に使う者が第三者に情報を提供し、提供先が個人データとして取得すると想定される場合、原則として本人同意が得られていることなどを確認する必要があるとしています。Cookieなどの識別子だから自由に提供できるわけではなく、情報の内容と提供先での使い方を確認します。

データクリーンルームは、データの持ち出しや利用を制限しながら共同分析する環境です。ただし、導入するだけで、同意や利用目的の問題がなくなるわけではありません。

そのため、具体的な設計は、法務や個人情報管理の担当者と確認します。なお、相談の初期段階で、生の購買履歴や会員情報を外部へ渡す必要はありません。

小売との取引と、広告の価値を混ぜない

メーカーは、小売との商品取引も持っています。そのため広告の出稿理由が、本当に効果を期待しているからなのか、取引関係への配慮なのかが見えにくくなる場合があります。

継続する広告商品にするには、出稿条件と提供する価値を明示します。特に、通常の仕入れ条件と広告契約を分け、広告を出さない場合の扱いも確認します。

また、強い立場を背景に購入を迫るような運営は、避けるべきです。

採算を見積もるときも、既存の販促予算を移しただけの分と、新しく獲得した予算を分けます。同じメーカー予算を部門間で付け替えただけなら、小売全体の新しい収益とは言い切れません。

広告の数字が良くても、売場で困り事が増えていないか

たとえば、配信した商品が欠品していれば、来店客は買えません。また、広告に書かれた価格と売場の価格が違えば、店舗に問い合わせが来ます。

さらに、停止すべき広告が流れ続けると、現場の負担になります。

契約時には、広告の承認者、価格や在庫の更新、緊急停止の担当者を決めます。店舗に操作を任せる場合は、その工数も費用に含めます。

広告部門の配信記録だけを見ると、こうした負担は見落とされます。放映の不具合、店員の対応、顧客の苦情を同じ運用記録に残すことが、継続できる事業への改善につながります。

自社の事業案を絞るために、何を整理すればよいか

誰が払うか、何を提供するか、使える資産は何か、何が未確定かを一枚にまとめます。

最初に決めたいのは、使いたい技術ではなく、費用を払う相手です。小売が払う事業なのか、メーカーが払う事業なのかで、提案すべき価値が変わります。

まず次の四点を、一枚にまとめます。

  • 顧客:どの業態・商品分野の、誰に売るか
  • 提供物:広告枠、運営、データ接続、店頭保守のどれを担うか
  • 根拠:使える顧客接点、販売データ、営業関係は何か
  • 未解決事項:出稿予算、測定条件、責任分担のどこが未確定か

たとえば、媒体になる力があっても、広告主を集める力が不足するなら、既存の広告網との提携を考えます。一方、広告営業には強くても販売データに接続できないなら、測定範囲を限定した商品から考えます。

すべてを自前で持つことが目標ではありません。

イノベーション総研へ相談する際も、店舗名や会員の個人情報は不要です。むしろ、「ドラッグストア向け」「メーカー営業との接点がある」といった情報から、参入する役割と不足する機能を整理できます。

Compassの無料診断で事業の現在地を確認し、事業開発の支援や相談窓口へつなげられます。

リテールメディアのよくある質問

企業名や広告の種類を知った後に残りやすい疑問をまとめました。媒体になる小売と、支援事業を考える企業の両方に共通する内容です。

Q. 店舗を持たない会社でも参入できますか?

A. 参入できます。小売の広告営業や配信運用、購買データの接続、効果測定、店頭機器の保守などが候補です。顧客接点を持つ小売や既存の広告基盤と組み、自社が責任を持てる仕事を絞ります。

Q. 店内のデジタルサイネージと同じ意味ですか?

A. 同じではありません。デジタルサイネージは、店頭などにある情報表示用の画面です。リテールメディアは広告事業の仕組みを指し、小売の通販サイト、アプリ、外部サイトへの広告も含みます。

Q. ROASが高い媒体を選べばよいですか?

A. それだけでは判断できません。広告にひも付ける期間、対象商品、クリック後か表示後かで数字は変わります。広告によって増えた購買と、粗利益から費用を引いた結果も確認します。

Q. 中小の小売は独自の広告基盤をつくるべきですか?

A. 必ずしも必要ありません。広告主を集める体制や開発費が不足するなら、既存の広告網や配信基盤との提携が候補です。自社の顧客接点と提供できるデータを確認し、独自開発と提携の費用を比べます。

出典と提供条件は2026年9月28日に確認しました。市場の推計・予測、サービスの機能、公表された実績を区別し、参入方法と架空の計算例は当研究所の整理として記載しています。

まとめ:リテールメディアは、購買と運営の両面から考える

広告主には購買への効果を、運営側には費用を引いた採算を示せることが事業化の条件です。

リテールメディアは、小売の顧客接点を広告事業につなげる仕組みです。国内外の事例を見ると、店舗を媒体にする企業だけでなく、広告需要を集める会社、配信や測定を支える会社も成長を担っています。

参入の際は、広告主には「何が増えたか」、運営側には「何が利益として残ったか」を説明できる形にします。会員数、画面数、広告取扱額の大きさだけでは、事業の価値は判断できません。

自社が持つ店舗接点、営業関係、データ処理、保守体制を並べ、どの仕事で顧客の負担を減らせるかを考えましょう。広告を置く場所ではなく、広告が役に立ち続ける仕組みを商品にすることが、参入案を具体化する出発点です。

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広告主と小売の、どの困り事を解くか

対象の業態、費用を払う相手、自社の提供物、測定できる範囲を整理します。会員情報や購買履歴は不要です。事業の入口からご相談ください。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト、IAB、個人情報保護委員会と、本文で紹介した国内外8事例の公式資料。本文の該当箇所に出典リンクを記載。参入方法はイノベーション総研の分析。

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