投稿日:2026.09.28 最終更新日:2026.09.28
VEONとスクエア、バングラデシュのデジタル銀行免許承認を取得
ニュースの要点
通信・デジタルサービス企業VEONは2026年9月25日、金融サービス部門とバングラデシュのスクエア・グループが、同国中央銀行からデジタル銀行免許の承認を得たと発表しました。合弁での銀行事業に、傘下の通信会社Banglalinkの基盤と、スクエアの事業・流通網を活用する方針です。
Banglalinkは8月に、デジタル決済サービス「Mukto Pay」を提供するための承認も発表していました。今回の銀行免許承認は金融事業を広げる一歩ですが、銀行の具体的な開業日や商品、料金、利用実績が示された発表ではありません。通信と流通の接点を組み合わせ、金融サービスの利用を広げる狙いです。
ニュース出典:VEON「VEON and Square Group Receive Bangladesh Bank Approval for Digital Bank License」(2026-09-25)。発表原文
イノベーション総研の考察
通信会社には、日常的に利用されるサービスと、多数の利用者との接点があります。銀行業へ進む場合、その接点は新サービスを知らせる手段になります。しかし、通信を使うことと、お金を預けたり送金したりすることは別の判断です。今回の事例は、既存顧客基盤を新しい利用習慣へつなげる課題を考える材料になります。
決済から銀行へ広げても、顧客の信頼は自動では移らない
決済は、送金や支払いという場面で使われます。銀行には、資金を置き続ける、必要なときに引き出すなど、利用者が安心して継続するための役割もあります。通信サービスで接点があっても、金融面で同じ信頼を得られるとは限りません。
VEONは8月の決済サービスに関する承認に続き、銀行免許承認を公表しました。ただし、決済サービスがどの程度使われ、銀行へどのように接続するかは、今回の発表だけでは確認できません。
通信契約者の数は金融サービスを知らせる強みですが、預金や取引が継続する証拠とは別です。隣接事業へ進む企業は、既存顧客へ届くことと、新しいサービスを安心して使ってもらうことを分けて考える必要があります。
スクエアの流通網は、日常の取引をつくる接点になり得る
スクエアは製造、流通、小売などに事業を持つ企業グループです。通信と組み合わせる意味は、利用者にアプリを案内するだけでなく、店舗や取引先など、支払いが発生する日常の場面へ結び付けられる可能性にあります。
例えば、利用者が入金した資金を普段の買い物で使えるなら、口座や決済を維持する理由になります。ただし、具体的にどの店舗や取引へ接続するかは未公表であり、実現済みのサービスとして扱うことはできません。
顧客基盤を新規事業へ広げる提携では、互いの人数より、日常的に使う場面を組み合わせられるかが重要です。既存の取引がある場所へ新しい機能を入れるほうが、独立したアプリを一から習慣化させる場合とは違う導入の道筋を描けます。
銀行免許の承認と、使いやすいサービスの完成は分ける
免許は銀行事業へ進むための重要な条件です。一方、利用者から見れば、申し込み、本人確認、入出金、問い合わせなどが日々の体験を決めます。承認を得た後にも、実際に使える形へ整える作業が残ります。
通信と金融が連携する場合、利用者情報をどの目的で扱うか、問題が起きたときにどこへ連絡するかも明確にする必要があります。データや接点があることだけから、自由に相互利用できると考えるべきではありません。
規制業種への参入は、免許の取得を終点にせず、利用者が安全に取引を完了できる運用まで設計する必要があります。今回の開業時期や商品条件は未確認です。承認の発表と実際の提供開始は、引き続き区別して追いたい点です。
成長を測るなら、登録数より取引の定着を見る
デジタルサービスでは、登録しやすいことが必ずしも継続利用につながりません。特典だけで口座を開いた利用者が、その後も日常の入出金や支払いに使うかを確認する必要があります。既存サービスとの併用が続くなら、利用者にとって役割が限定的な可能性があります。
見るべきなのは、継続的に取引する人の割合、利用する場面、問い合わせや不正対策を含む運営負担です。会社全体の投資計画を、そのまま銀行の自己資本や売上見込みへ置き換えることもできません。
デジタル銀行の拡大は、口座を開いた人数ではなく、日常の取引が残る割合と運営費用で評価すべきです。他業界でも、顧客基盤を使う新規事業の計画では、接触可能な人数から実際の継続利用までを分けて見積もることが重要です。
まとめ
VEONとスクエアの免許承認は、通信の顧客接点と現地の流通網を銀行事業へつなげる取り組みです。参考になるのは、保有する顧客数をそのまま需要と見なさず、使う場面と信頼をどうつくるかを考えることです。開業後の利用定着と運営負担が、次の評価材料になります。
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執筆:イノベーション総合研究所