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容量市場は誰が何に払う?仕組み・企業9事例・参入条件

発電所が電気をつくらなくても、収入を得ることがあります。工場の自家発電機や蓄電池も、条件を満たせば対象になります。支払われるのは電気そのものではなく、必要なときに供給できる能力です。この能力を取引する仕組みが容量市場です。

ただし、落札すれば終わりではありません。将来の実需給年度まで設備を維持し、テストを受け、供給力を出せる状態にします。実際に動かせなければ、報酬の減額やペナルティが生じます。

容量市場を理解するポイントは、「いくらで落札したか」だけではありません。誰が費用を負担し、誰が供給責任を持ち、どの設備を、いつまで使える状態にするのか。この契約と運用を一つにつなげて見る必要があります。

この記事では、容量市場の仕組みと2029年度の価格を整理します。国内9社の取り組みから、設備提供、集約、運用ソフト、市場基盤の役割も解説します。最後に、新規事業として狙える四つの参入方法と、先に確認したい七つの懸念を示します。

この記事の結論

容量市場の事業性は、落札価格より、数年先にも供給力を再現して未達を抑えられるかで決まります。

  • 容量市場は、電気の量ではなく、将来必要なときに使える供給力へ対価を払う仕組みです。
  • 国内9社の事例では、設備発掘、集約、複数市場運用、実績管理、市場基盤の分業が進んでいます。
  • 参入余地は、業界特化、機器接続、運用代行、容量契約付き設備サービスの四つです。

容量市場とは、4年後の「使える供給力」を買う仕組み

容量市場は、将来の電力需要に備え、必要な供給力をあらかじめ確保する市場です。日本では、電力広域的運営推進機関、以下OCCTOが市場を運営します。メインオークションは、原則として実際に供給する年度の4年前に行われます。

たとえば、2029年度に必要な供給力は、2025年度のオークションで調達されました。落札した事業者はOCCTOと容量確保契約を結びます。2029年度に供給力を提供できるよう、設備、燃料、通信、要員を整えます。

ここで売買されるのは、電力量のkWhではなく、供給能力のkWです。1,000kWを1時間発電した電力量は1,000kWhです。一方、容量市場がまず評価するのは、必要な場面で1,000kWを出せる状態かどうかです。

大きな火力発電所だけの市場ではありません。水力、地熱、バイオマス、風力、太陽光、蓄電池、需要抑制なども、区分ごとの条件を満たせば参加できます。小さな設備は、アグリゲーターがまとめて一つの供給力として扱えます。

OCCTOの容量市場解説では、2020年にオークションが始まった経緯と、事業者ごとの役割を確認できます。

電気を売る市場とは、何が違うのか

電力には、複数の価値があります。発電した電気を売る価値、需給のずれを短時間で直す価値、将来の供給力を維持する価値です。容量市場は、このうち将来の供給力に対価を払います。

容量市場とほかの電力市場・契約の違い
市場・契約 主に取引する価値 時間軸 主な仕事 代表的な収入・費用
卸電力市場 実際に受け渡す電力量 翌日・当日など 発電・調達量を合わせる kWhの売買代金
需給調整市場 指令に応じて出力を変える能力 秒〜時間 応答速度と継続時間を守る ΔkW・kWhの対価
容量市場 将来使える供給力 原則4年前〜実需給年度 設備を維持し、必要時に供出する kWに対する容量確保契約金額
長期脱炭素電源オークション 脱炭素電源の新設・更新を支える供給力 原則20年 投資を実行し、長期稼働する 長期の容量収入

系統用蓄電池は、安い時間に充電して高い時間に売るだけではありません。容量市場で供給力を提供し、需給調整市場で応答し、卸市場で価格差を取る運用も考えられます。ただし、同じ時間の同じ容量を二重に約束することはできません。

VPPとの違いもあります。VPPは、複数の分散設備を束ねて制御する仕組みです。デマンドレスポンスは、電気を使う量や時刻を動かす方法です。容量市場は、それらが生み出す将来の供給力に契約と対価を与える場所です。

お金は、誰から誰へ流れるのか

容量市場の費用は、主に小売電気事業者が負担します。一般送配電事業者と配電事業者も一部を負担します。OCCTOは、これらの事業者へ容量拠出金を請求します。その原資から、契約どおり供給力を用意した容量提供事業者へ容量確保契約金額を交付します。

小売電気事業者の負担は、需要シェアなどをもとに決まります。電気を多く販売する事業者ほど、必要な供給力を確保する費用も多く負担する考え方です。需要家から見ると、容量拠出金は小売事業者の調達原価の一部になります。

容量提供事業者には、発電所や蓄電池を持つ会社だけでなく、複数の需要設備を束ねるアグリゲーターも含まれます。報酬は、設備を持っていることへの単純な賃料ではありません。実需給年度まで供給力を維持し、必要な情報を登録し、発動や市場応札の義務を果たす対価です。

容量市場で契約・供給力・お金が動く流れ
図1:OCCTOの容量市場解説、容量拠出金、実需給期間中業務の公表資料をもとにイノベーション総研作成。オークションから実需給、支払いまでの流れを示した。

事業性を見るときは、落札価格だけでなく、手元に残る金額を計算します。アグリゲーターへ委託する場合は、需要家への還元、通信、計測、運用、未達負担を差し引きます。自社で参加する場合は、登録、テスト、監視、精算を行う人員とシステムが必要です。

約定価格は、エリアと年度で変わる

2029年度を対象とするメインオークションでは、全国の契約締結総容量は約1億6,608万kWでした。経過措置控除後の契約締結総額は約2.21兆円です。エリアプライスは12,388円から15,112円/kWとなりました。

2029年度容量市場のエリアプライスと契約締結容量
エリア エリアプライス 契約締結容量
北海道 14,972円/kW 5,461,594kW
東北 15,111円/kW 16,812,309kW
東京 15,111円/kW 52,376,601kW
中部 12,388円/kW 23,902,096kW
北陸 12,388円/kW 4,388,972kW
関西 12,388円/kW 27,409,123kW
中国 12,388円/kW 9,845,137kW
四国 12,388円/kW 7,520,510kW
九州 15,112円/kW 18,363,521kW
2029年度容量市場のエリアプライス
図2:OCCTO「容量市場 容量確保契約の結果 メインオークション(対象実需給年度:2029年度)」をもとにイノベーション総研作成。価格は経過措置控除前のエリアプライス。

この価格に設備容量を掛けても、事業者の最終利益にはなりません。期待容量は設備容量と同じとは限らず、電源の特性に応じて算定します。さらに、経過措置、未達、運用委託、需要家への配分などが反映されます。

価格も固定ではありません。必要供給力、応札量、エリア間連系線、上限価格、制度変更で変わります。事業計画では、直近年度の価格をそのまま長期へ延ばさず、複数の価格と未達率で採算を確かめます。

容量市場への参加区分で、義務はどう変わるのか

参加する電源は、安定電源、変動電源(単独)、変動電源(アグリゲート)、発動指令電源の四つに分かれます。区分は、設備の種類だけで決まりません。供給計画への計上、計量単位の期待容量、設備を束ねるかどうかも関係します。

安定電源には、火力、原子力、大規模水力、地熱、バイオマス、廃棄物発電などがあります。2027年度向けメインオークション以降は、計量単位の期待容量が1,000kW以上で、3時間以上放電できる蓄電池も安定電源として登録できます。

太陽光や風力などは、変動電源として参加します。単体で1,000kW以上なら単独、小規模な電源をまとめるならアグリゲートです。天候による出力の変化があるため、期待容量の計算方法が安定電源と異なります。

発動指令電源は、需要抑制、自家発電、蓄電池などを一つまたは複数まとめ、発動指令に応じて供給力を出します。アグリゲーターを通せば、単独で1,000kWに届かない設備も参加できる可能性があります。

OCCTOの参加要件は、電源区分と供給計画の関係を示しています。自社に都合のよい区分を自由に選ぶものではありません。供給計画と整合する区分を確認する必要があります。

落札後の実効性テストとリクワイアメントが収益を決める

容量市場では、オークションから入金まで時間があります。メインオークションは原則4年前です。その後、契約、実効性テスト、実需給年度の対応、年次精算へ進みます。

発動指令電源では、実需給年度の2年前に実効性テストを行います。契約した容量を実際に出せるか確認するためです。エナリスと四国電力の公開条件では、実際の発動は原則3時間前に通知され、原則3時間継続、年間最大12回です。

実需給年度には、発動実績やベースラインを登録します。OCCTOがアセスメントを行い、契約した供給力を提供できたか確認します。未達があれば、容量確保契約金額から経済的ペナルティが差し引かれます。

容量市場の参加から実需給・精算までの実務
図3:OCCTOの容量市場業務マニュアルと各社の募集資料をもとにイノベーション総研作成。参加登録、契約、実効性テスト、実需給、精算の責任を整理した。

ペナルティは例外的な出来事ではありません。OCCTOの2025年度包括的検証では、2024年度の発動指令電源で、容量確保契約金額に対する経済的ペナルティの割合は約13%でした。過大な契約容量、設備停止、連絡不備、ベースラインの誤差を前提に、損失を試算する必要があります。

発動指令へ対応する需要家の本業も守らなければなりません。工場なら品質と納期、ビルなら室温、EVなら出発時の残量があります。容量を大きく見せるより、毎回再現できる量を契約する方が、長期の利益は安定します。

容量市場を動かす国内9社は、何をしているのか

容量市場は、発電事業者とOCCTOだけで動きません。設備を集める会社、指令を届ける会社、実績を測るソフト、複数市場を運用する会社、市場システムを支える会社が必要です。

容量市場に関わる国内9社の役割
企業・組織 主な役割 対象 容量市場での取り組み
エナリス アグリゲーター 自家発電、蓄電池、生産設備 小規模設備も募集し、登録から発動・精算まで支援
四国電力 電力会社・アグリゲーター 自家発電、需要設備、蓄電池 四国エリアの設備を束ね、発動指令電源として参加
関西電力 電力会社・アグリゲーター 工場・ビルの負荷 手動または自動制御で少量の供給力も集約
REXEV EV制御 企業のEV 未使用EVの放電能力を発動指令電源へ供出
ENEOS Power 蓄電池運用代行 系統用蓄電池 容量・需給調整・卸の複数市場を運用
E-Flow 市場運用 蓄電池、需要設備 実効性テストを経て容量市場を含むマルチユース運用
東芝 AC・RA基盤 アグリゲーター、設備保有者 容量市場業務と簡易指令システムを一つの画面で支援
Sassor DER運用SaaS 蓄電池、分散設備 発動指令の供出可能量と実績を管理
日立 市場システム基盤 OCCTO、市場参加者 契約、供給指示、ペナルティ、費用回収を統合管理
設備提供と市場運用を担う容量市場の5社
図4:エナリス、四国電力、関西電力、REXEV、ENEOS Powerの公式資料をもとにイノベーション総研作成。顧客設備を供給力へ変える役割の違いを示した。

エナリスは、小規模設備を一つの発動指令電源へまとめる

エナリスは、自家発電設備、蓄電池、蓄熱槽、生産設備、空調などを募集しています。1,000kW未満でも相談でき、同社がアグリゲーターとしてまとめます。

重要なのは、参加手続きを代行するだけではない点です。設備の種類や利用状況に合わせ、どれだけの容量なら3時間継続できるかを決めます。実効性テストの結果をもとに参加容量を確定し、発動時の連絡と報酬の支払いまでつなぎます。

四国電力と関西電力は、既存顧客との関係を市場参加へ変える

四国電力は、自家発電、需要抑制、蓄電池を束ねます。電気の契約先が四国電力以外でも、四国エリア内なら相談できると案内しています。小売契約と容量市場の参加窓口を分けることで、対象顧客を広げています。

関西電力は、工場やビルの負荷を容量市場へ届けます。顧客が指令を受けて手動で対応する方法と、設備を自動制御する方法を用意しています。参加のしやすさと、供出の確実さを選べる設計です。

REXEVは、止まっているEVを供給力へ変える

REXEVは、企業が保有するEVを容量市場へ参加させています。未使用時のEVから放電し、複数台をアグリゲーターが1,000kW以上へ束ねます。

同社はEV1台当たり約6kWの供給力を例示しています。2028年度の東京エリアの落札価格を単純に当てはめると、年間8万円以上の総価値になると説明しています。ただし、この金額は顧客、アグリゲーター、REXEVで分配されます。車両の利用予定と必要残量も守る必要があります。

ENEOS PowerとE-Flowは、蓄電池の容量を複数市場へ配分する

ENEOS Powerは、系統用蓄電池の市場入札と運用を代行します。容量市場だけでなく、卸電力市場と需給調整市場も分析し、AIとトレーダーが入札先を判断します。

E-Flowも、系統用蓄電池を複数市場で運用しています。容量市場は4年前にオークションがあり、発動指令電源では2年前に実効性テストがあります。短期の市場取引だけでなく、数年先の容量契約を運用計画へ入れる必要があります。

東芝、Sassor、日立は、見えにくい実務をシステム化する

東芝のAC・RAサービスは、容量市場の運用業務と簡易指令システムを支援します。アグリゲーターは、設備制御と市場側の操作を一つの基盤で扱えます。

Sassorは、蓄電池などの供出可能量、指令、実績を管理するDER運用基盤を提供します。市場参加者が増えるほど、設備ごとの状態と約束済み容量を同じ画面で確認する価値が高まります。

日立は、OCCTOの容量市場向けシステムを構築しました。契約、計画管理、供給指示、ペナルティ、容量拠出金と容量確保契約金額までを統合します。容量市場は金融契約と設備運用に加え、大規模な業務システムで成立しています。

容量市場の運用を支える4社の基盤
図5:E-Flow、東芝、Sassor、日立の公式資料をもとにイノベーション総研作成。市場運用、設備制御、実績管理、市場管理の役割を整理した。

国内9社の事例から見える、価値が残る場所

第一は、設備を集める力です。制度上は参加できても、止められる設備を持つ企業を見つけ、数年先まで契約を続けてもらう必要があります。特定業界の顧客基盤を持つ会社は、この入口で優位になります。

第二は、設備の制約を理解する力です。同じ1,000kWでも、毎日使える蓄電池と、月に数回しか止められない生産設備では価値が違います。契約容量を最大化するより、未達しない量を見極める能力が重要です。

第三は、市場をまたぐ運用です。蓄電池は容量市場だけでなく、卸市場と需給調整市場にも使えます。どの時間にどの市場へ容量を割り当てるかで収益が変わります。保証条件や劣化も同時に管理します。

第四は、証拠を残す力です。発動前の基準値、指令時刻、設備の動作、供出実績、例外理由を記録します。未達が起きたとき、設備、通信、予測、現場対応のどこが原因か分からなければ、同じ失敗を繰り返します。

容量市場は、設備を持つ企業だけの市場ではありません。顧客開拓、設備診断、通信、運用、精算、データ監査にも事業機会があります。ただし、誰が未達責任を負うかを曖昧にしたまま参入すると、手数料より損失が大きくなります。

自社は容量市場のどこへ入れるか

近い資産を開き、自社で持つ責任と提携が必要な部分を確認します。

01 特定業界の顧客接点がある

顧客の本業を理解し、数年先まで確保できる設備と供出条件を設計します。

  • 3時間動かしても業務損失が小さい
  • 設備更新や停止予定を把握できる
  • 市場運用は専門事業者と組める
02 機器・通信技術に強い

設備状態、指令、実績をつなぎ、未達の原因を設備単位で追えるようにします。

  • 通信断時に安全側へ戻せる
  • 接続1台当たりの費用を下げられる
  • 複数市場の予約容量を分けられる
03 市場実務と精算に強い

参加登録、実効性テスト、発動、アセスメント、精算を一体で支援します。

  • 制度更新を継続して追える
  • 24時間の監視体制を持てる
  • 未達負担を契約で分けられる
04 設備調達と金融に強い

容量収入を設備サービスへ組み込み、顧客の初期負担を抑えます。

  • 容量収入なしでも返済できる
  • 長期保守と交換費を見込める
  • アグリゲーターと早期に組める
05 実効容量がまだ見えない

応札を急がず、カタログ容量と実際に供出できる量を分けて測ります。

  • 利用時間と停止条件を記録する
  • 未達を含む粗利を計算する
  • 見送り条件を顧客と合意する

NEXT STEP

次のステップ

「何kWあるか」から、「何kWを数年先にも出せるか」の事業設計へ。

顧客、設備、契約、実効性テスト、未達責任、精算を一つの構造にし、参入・提携・待機・見送りの条件を明確にします。

新規事業として容量市場へ入る四つの方法

参入方法は、自社が持つ資産から選びます。電力市場の経験が少ない会社が、最初からオークションと24時間運用を内製する必要はありません。顧客、設備、ソフト、資金のどこに強みがあるかで役割を決めます。

容量市場への四つの参入方法
参入方法 最初の顧客 提供価値 自社で持つもの 主な提携先 最初に確かめること
業界特化型の設備発掘・運用設計 工場、物流、冷凍、ビル 本業を守りながら供出できる容量を見つける 顧客接点、業務知識 アグリゲーター、設備会社 3時間続けても業務損失が出ないか
機器接続・実績管理SaaS アグリゲーター、機器メーカー 設備状態、指令、実績を一つにする 通信、データ、保守 市場運用会社 接続1台当たりの費用と障害率
容量市場の運用代行 蓄電池・自家発保有者 登録、テスト、発動、精算を代行する 制度実務、監視、精算 電力会社、保険、金融 未達を含む1kW当たり粗利
容量契約付き設備サービス 設備更新を考える需要家 蓄電池や自家発の費用を容量収入で補う 機器調達、資金、長期契約 EPC、アグリゲーター 容量収入なしでも返済できるか

業界特化型は、食品冷凍、化学、製紙、データセンターなど、設備運用が似た顧客を集めます。現場の制約を標準化できれば、営業と診断の費用を下げられます。

SaaS型は、発動指令だけを表示するのでは不十分です。使える容量、他市場へ約束した容量、故障、通信断、顧客の除外時間を同じデータモデルで管理します。

運用代行は、報酬の一定割合を受け取るモデルが考えられます。しかし、未達負担まで引き受けるなら、価格より先に実効容量を見ます。契約書では、設備故障、通信断、顧客都合、制度変更の負担を分けます。

設備サービスは、蓄電池や自家発の導入費を月額化し、容量市場の収入を一部充当するモデルです。容量収入は年度と価格で変わるため、楽観的な落札価格だけで設備投資を組まないことが重要です。

利益を失う七つの懸念

一つ目は、契約容量の過大評価です。カタログ出力ではなく、実際の利用時間、保守、気温、燃料、残量を引いた量で見ます。

二つ目は、実効性テストまで顧客と設備を維持できないことです。オークションから実需給まで数年あります。顧客の工場閉鎖や設備更新も契約へ織り込みます。

三つ目は、未達ペナルティです。2024年度の発動指令電源では、容量確保契約金額に対する経済的ペナルティ割合が約13%でした。ゼロとして採算を組むのは危険です。

四つ目は、顧客の本業損失です。電力報酬より、生産停止、温度逸脱、EVの利用制限の方が大きい場合があります。顧客の損失も事業原価として扱います。

五つ目は、制度と区分の変更です。蓄電池の扱い、期待容量、調整係数、発動条件は更新されます。特定の要件だけで成立する商品は、制度変更に弱くなります。

六つ目は、複数市場での二重約束です。容量市場、需給調整市場、卸市場へ同じ余力を重ねると、どれかを履行できなくなります。市場ごとの予約量と優先順位が必要です。

七つ目は、精算と資金繰りです。収入の交付と年次精算には時間があります。需要家へ先に報酬を払うモデルでは、運転資金を見込みます。

見送る条件も先に決めます。3時間の継続が難しい、数年先まで設備を確保できない、実績を計測できない、未達時の責任を合意できない場合です。こうした案件は、容量市場ではなく省エネやピークカットとして提供する方が合うことがあります。

自社が容量市場へ参入できるか、五つの質問で確かめる

最初に確認するのは、設備容量ではありません。誰のどの設備を、いつ、どの条件で動かし、誰が責任を負うかです。

  1. 顧客または自社の設備を、実需給年度まで確保できるか。
  2. 原則3時間、業務を壊さずに供給力を出せるか。
  3. 設備の稼働、通信、指令、実績を計測できるか。
  4. 未達と顧客還元を差し引いても、粗利が残るか。
  5. 制度対応、市場運用、保守の足りない機能を補う相手がいるか。

五つに答えられない場合、すぐに市場参加を決める必要はありません。まず設備診断と実績計測を行い、使える容量の幅を確認します。アグリゲーターから公開条件と契約案を取り寄せ、自社で持つ責任を比較します。

イノベーション総研では、市場規模の確認だけでなく、顧客、提供価値、収益、責任、提携先を一つの事業構造にします。参入、提携、待機、見送りを同じ基準で比較することが、制度依存の企画を避ける近道です。

容量市場についてよくある質問

Q. 容量市場とは簡単にいうと何ですか?

A. 4年後を中心とする将来に必要な供給力を、オークションであらかじめ確保する仕組みです。電気の量ではなく、必要なときに発電や需要抑制ができる能力へ対価を払います。

Q. 容量市場の費用は誰が払いますか?

A. 小売電気事業者、一般送配電事業者、配電事業者が容量拠出金を負担します。OCCTOが集め、契約を果たした容量提供事業者へ容量確保契約金額を交付します。

Q. 小さな蓄電池や自家発電機でも参加できますか?

A. 単体で1,000kWに届かなくても、アグリゲーターが複数設備をまとめ、発動指令電源として参加できる場合があります。設備の利用条件と実効性テストを確認します。

Q. 容量市場に落札すると、必ず同じ報酬を受け取れますか?

A. 必ずではありません。経過措置やアセスメント結果が反映されます。契約した供給力を提供できなければ、経済的ペナルティで支払額が減る場合があります。

Q. 容量市場と長期脱炭素電源オークションは同じですか?

A. 同じではありません。どちらも供給力を扱いますが、長期脱炭素電源オークションは、脱炭素電源の新設や更新に長期の投資予見性を与える仕組みです。通常の容量市場より契約期間と投資要件が大きく異なります。

まとめ:容量市場の収益は、供給力を再現できて初めて残る

容量市場は、将来必要な供給力を確保する市場です。小売電気事業者などが容量拠出金を負担し、OCCTOを通じて容量提供事業者へ対価が交付されます。

参加できる設備は幅広く、小さな自家発電、蓄電池、需要設備、EVも、アグリゲーターを通じて供給力になり得ます。一方、落札から実需給まで設備と顧客を維持し、テスト、発動、計測、精算を行う責任があります。

新規事業の機会は、発電所の保有だけではありません。業界特化の設備発掘、機器接続と実績管理、運用代行、容量契約付き設備サービスにあります。

判断基準は、約定価格の高さではありません。顧客の本業を守りながら、数年先にも同じ供給力を再現できるか。未達と運営費を引いても利益が残るか。この二つを先に確かめることが、容量市場を事業へ変える出発点です。

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顧客接点、設備、運用、データ、資金の資産を整理し、誰が支払い、何を自社で持ち、誰と組むかを設計します。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

電力広域的運営推進機関、資源エネルギー庁、北海道経済産業局、エナリス、四国電力、関西電力、REXEV、ENEOS Power、E-Flow、東芝エネルギーシステムズ、Sassor、日立の公式サイト・公表資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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