投稿日:2026.09.08 最終更新日:2026.09.20
ケミカルリサイクルはなぜ難しい?主要9社と新規事業の狙い所
廃プラスチックを油や分子へ戻せば、循環は完成するのか。
主要企業は、反応炉の外で何を作っているのか。
結論は、原料品質、既存設備、長期引取、認証データを一つの商流にできるかです。主要9社と5事例から、商用化と新規参入の判断材料を整理します。
この記事の結論
ケミカルリサイクルの勝敗は、反応炉だけでなく、原料品質、既存石化設備、長期引取、認証データを一つの商流にできるかで決まります。
- 国内のケミカルリサイクルは、2024年の廃プラスチック総排出量の約3%です。
- 主要9社は、大型石化統合と、PET・PMMAなど樹脂別の閉ループという二つの方向で実装を進めています。
- 新規参入は、高度選別・前処理、樹脂別閉ループ、既存設備接続、追跡・認証データから選びます。
ケミカルリサイクルは、使い終わったプラスチックを化学原料へ戻す方法です。汚れた包装や複数素材が重なったフィルムなど、機械で溶かして作り直しにくい廃プラスチックを扱える可能性があります。
ただし、廃プラスチックを装置へ入れれば、新しい樹脂に戻るわけではありません。塩素、水分、金属、PETなどが混ざれば、設備の腐食や詰まりが起きます。再生油ができても、石油化学設備で使える品質へ整え、買い手へ届け、再生材の由来を証明する必要があります。
この記事では、ケミカルリサイクルの仕組みと国内の現状を説明します。さらに、国内外の主要9社と5つの事例を比べ、事業化を止める難所と、新規事業として参入できる場所を整理します。
目次
なぜ今、ケミカルリサイクルが注目されるのか
理由は、従来の再生方法だけでは扱いにくいプラスチックが多いからです。
食品包装には、酸素や水分を通しにくくするため、複数の樹脂やアルミを重ねた製品があります。使用後に油や調味料が残る場合もあります。機械で砕き、洗い、溶かすマテリアルリサイクルでは、品質を保ちにくい廃材です。
一方、ブランド企業は包装へ再生材を使う必要を強めています。EUの包装・包装廃棄物規則は、2030年からプラスチック包装へ再生材比率を段階的に求めます。欧州委員会の説明では、2030年までにすべての包装をリサイクル可能にする方向も示されています。
高い衛生性や透明性が必要な食品包装、化粧品、自動車、電機では、再生材の品質が重要です。化学原料まで戻せれば、石油由来の原料と混ぜ、品質を保った製品へ使える可能性があります。
つまり、ケミカルリサイクルへの期待は、廃棄物を減らすことだけではありません。難しい廃材を、品質が必要な用途へ戻す商流を作ることにあります。

ケミカルリサイクルとは?三つの再生方法の違い
プラスチックの再生方法は、大きく三つに分けられます。
マテリアルリサイクルは、廃プラスチックを砕き、洗い、溶かして、再び材料として使います。工程が比較的短く、単一素材で汚れが少ない廃材に向きます。
ケミカルリサイクルは、熱や触媒、溶剤、酵素などを使い、油、ガス、モノマーといった化学原料へ戻します。複雑な廃材を扱える可能性がある一方、前処理とエネルギーが必要です。
サーマルリサイクルは、廃プラスチックを燃料として使い、熱や電気を回収します。日本の統計では有効利用に含まれますが、新しいプラスチックの原料には戻りません。
| 方法 | 何へ戻すか | 向く廃材 | 強み | 主な難所 |
|---|---|---|---|---|
| マテリアルリサイクル | ペレット、再生製品 | 単一素材、汚れが少ない廃材 | 工程が短く、原料へ戻しやすい | 混合・劣化・臭いで用途が限られる |
| ケミカルリサイクル | 油、ガス、モノマー | 混合包装、特定樹脂、汚れた廃材 | 高品質用途へ戻せる可能性がある | 前処理、収率、設備費、由来証明 |
| サーマルリサイクル | 熱、電気、燃料 | 再生が難しい廃材 | 安定処理しやすい | 炭素が材料として循環しない |
どれか一つが常に優れているわけではありません。再使用できるものは再使用し、品質を保てるものはマテリアルリサイクルへ回します。そこへ回しにくい廃材の一部を、ケミカルリサイクルで原料へ戻す考え方が現実的です。
ケミカルリサイクルの仕組みは、四つに分かれる
ケミカルリサイクルという言葉には、異なる技術が含まれます。事業を比べるときは、何を入力し、何を出すかを分けます。
油化・熱分解は、混合プラスチックを炭化水素へ戻す
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどを熱で分解し、油やガスに戻します。得られた油は精製され、ナフサなどと一緒にクラッカーへ入ります。
幅広い廃材を扱える可能性がありますが、塩素や酸素を含む樹脂、金属、水分を減らす前処理が欠かせません。油ができることと、石油化学原料として安定して使えることは別です。
ガス化は、合成ガスや化学原料を作る
高温で分解し、一酸化炭素と水素を中心とするガスへ変えます。その後、アンモニアや化学品の原料へ使います。幅広い廃材を処理できますが、設備が大きく、ガスの精製も必要です。
解重合は、特定樹脂をモノマーへ戻す
PETやPMMAなどを、元の分子に近いモノマーへ戻します。対象樹脂を分けて集める必要がありますが、品質を保ちやすく、ボトルからボトル、アクリルからアクリルといった閉じた循環を作りやすい方法です。
溶解・精製は、樹脂を選んで不純物を除く
溶剤で対象樹脂を溶かし、色や臭い、添加剤を除きます。分子を大きく壊さずに精製できる一方、回収する樹脂と溶剤管理が事業の前提になります。

国内のプラスチック循環で、どの位置にあるのか
プラスチック循環利用協会の2024年マテリアルフローによると、国内の廃プラスチック総排出量は911万トンでした。
このうち、マテリアルリサイクルは180万トン、ケミカルリサイクルは23万トン、サーマルリサイクルは608万トンです。単純焼却は69万トン、埋立は32万トンでした。
ケミカルリサイクルは全体の約3%です。近年、油化設備の計画は増えていますが、国内全体ではまだ小さな位置にあります。
注意したいのは、統計上のケミカルリサイクルに、高炉・コークス炉原料、ガス化による化学原料利用、油化が含まれることです。近年注目される油化だけの数字ではありません。

数字から分かるのは、設備を増やせばすぐ置き換わる市場ではないことです。廃材の回収、前処理、設備の安定運転、再生原料の利用先を同時に作る必要があります。
ケミカルリサイクル市場は、設備容量より商流を見る
民間調査には、世界市場が今後大きく伸びる予測があります。ただし、油化設備の売上、再生油、再生樹脂、技術ライセンスをどこまで含めるかで数字が変わります。単一の市場規模だけで投資を決めるのは危険です。
見るべき指標は五つあります。
- 廃プラスチックを何トン確保できるか
- 受け入れ可能な塩素、水分、金属、PETの上限はどこか
- 実際に何トンの再生油・モノマーが売れるか
- 石油化学設備や重合設備へ何日安定供給できるか
- ブランド企業が再生材の価値へいくら支払うか
公表される「処理能力」は、年間を通じて使えた量とは限りません。定期修繕、原料不足、品質外れを含めた稼働率が必要です。再生油の生産量と、最終製品へ割り当てられた再生材量も分けて確認します。
規制は需要を作りますが、採算を保証しません。欧州では再生材の使用目標が需要を支える一方、設備投資、電力、原料回収、認証の費用がかかります。日本でも、価格差を誰が負担するかが商用化の中心になります。
ケミカルリサイクル主要9社は、どこを担っているのか
主要企業を、反応技術ではなく、商流の中で担う役割から見ます。
| 企業・共同事業 | 主な方法 | 2026年時点の取り組み | 事業化で持つ強み |
|---|---|---|---|
| 三菱ケミカル・ENEOS | 水熱分解による油化 | 茨城で年2万トン規模の設備を整備 | 既存の製油所・石化設備へ接続 |
| 出光興産・ケミカルリサイクル・ジャパン | 油化 | 市原で年2万トンの設備を完工 | 原料回収から化学品製造まで統合 |
| JEPLAN | PET解重合 | 川崎・北九州でボトル、繊維の循環を拡張 | 回収、技術、販売先を束ねる |
| 住友化学 | PMMA解重合 | 再生MMAを使ったPMMAを量産販売 | 高品質用途と顧客認定を持つ |
| マイクロ波化学 | PMMA・混合プラ | マイクロ波プロセスを共同開発 | 小型・分散型を含む装置設計 |
| ExxonMobil | 熱分解・石化統合 | Baytownで複数系列を運転 | 大規模設備と既存製造網を活用 |
| Eastman | ポリエステル分子再生 | Kingsportで年11万トン能力を掲げ運転 | 既存化学拠点と製品販売を統合 |
| LyondellBasell | 触媒熱分解 | Wesselingで年5万トン設備を建設 | 自社クラッカー・重合設備へ接続 |
| Carbios | 酵素PET解重合 | フランスで商用工場を計画 | 繊維を含むPETと技術ライセンス |
この比較で最初に見るべきなのは、企業が反応技術の前後に、どの資産を持つかです。原料、既存設備、販売先のいずれかを持つ企業ほど、技術を商流へつなげやすくなります。

九つの企業から、二つの方向が見えます。
一つは、混合プラスチックを油へ戻し、既存の製油所や石油化学設備へ入れる大型統合モデルです。もう一つは、PETやPMMAなど対象を絞り、回収から同じ樹脂へ戻す閉ループ型です。
後発企業は、同じ設備を小さく作るだけでは差別化できません。自社が確保できる廃材、既存設備、顧客用途から、どちらの形が合うかを決めます。
事例1:三菱ケミカルとENEOSは、既存設備への接続から設計する
三菱ケミカルとENEOSは、茨城県神栖市で廃プラスチック油化設備を共同で進めています。Mura TechnologyのHydro-PRTを採用し、超臨界水を使って混合プラスチックを炭化水素へ戻します。
三菱ケミカルグループの2026年説明資料では、処理能力は年間2万トン、2025年7月に設備を完工し、2025年度内の商業運転開始を予定していました。計画と実際の稼働は分けて確認する必要があります。
この事例の重要点は、反応装置だけではありません。原料調達をリファインバースが担い、再生油をENEOSの製油所と三菱ケミカルのナフサクラッカーで使う構造です。
設備を既存拠点へ置くことで、電力、蒸気、貯蔵、品質管理、製品販売を共有できます。独立した油化工場より、再生油の利用先を先に持てる点が強みです。
事例2:出光興産は、市原で回収から化学品までをつなぐ
出光興産の子会社、ケミカルリサイクル・ジャパンは、千葉県市原市に油化設備と前処理設備を整備しました。
出光興産の2026年2月公表資料によると、処理能力は年間2万トンです。商業運転は2026年4月ごろを予定していました。
前処理設備を同じ事業へ入れている点が重要です。廃プラスチックには、金属、塩素、水分、異なる樹脂が混ざります。原料を受け入れられる状態へ整えなければ、油化炉が動いても安定しません。
得られた再生油は、出光興産の石油化学製品の原料へ使います。製品を購入する企業までつながれば、再生材を使った製品の由来を説明できます。
このモデルからは、回収会社、前処理会社、化学会社、製品メーカーを別々に集めるのではなく、品質基準と引取条件を先に共有する必要が分かります。
事例3:JEPLANは、PETの回収・再生・需要を同時に作る
JEPLANは、使用済みPETを分子レベルへ戻し、再びPET樹脂へする技術を持ちます。色や金属などの不純物を除き、新品に近い品質の再生PETを目指します。
同社の特徴は、技術を単独で売らないことです。ボトル、衣類、回収企画、工場、ブランド企業をつなぎます。JEPLANの2026年4月発表では、Axens、IFPENと組み、北九州の設備でポリエステル繊維から繊維へ戻す商用規模の実証を進めています。
繊維は、ボタン、ファスナー、染料、ほかの繊維が混ざります。回収量だけでなく、解重合できる製品設計が必要です。JEPLANは、日本化薬との発表で、リサイクル時に脱色しやすい染料の基準づくりも進めています。
これは、廃棄後の設備だけでなく、製品を作る段階へ戻って設計する例です。閉じた循環では、回収しやすい製品、再生しやすい材料、買い戻す顧客を同時に作る必要があります。
事例4:住友化学とマイクロ波化学は、PMMAの品質用途を狙う
住友化学は、使用済みアクリル樹脂からMMAモノマーを回収し、再びPMMAを作る技術を進めています。2025年3月の公式発表では、化学再生MMAを使ったPMMAの量産販売を始め、LG Displayや日産自動車で採用されたとしています。
PMMAは、自動車のランプ、ディスプレイ、看板など、透明性が必要な用途へ使われます。再生材でも高い品質を示し、顧客の認定を得られることが事業価値になります。
マイクロ波化学は、マイクロ波で特定部分へエネルギーを与えるプロセスを開発しています。同社の2025年9月発表では、三菱ケミカルと開発した再生アクリル樹脂が、Honda N-ONE e:のドアバイザーへ採用されたと説明しています。
二社の事例は、「何でも処理できる」より、「この樹脂を、この用途へ戻せる」と示す強さを表しています。回収量は狭くなりますが、品質と用途が明確なほど、価格差の説明がしやすくなります。
事例5:海外勢は、大型化と商用化の時間を示している
ExxonMobilは、米国Baytownの既存石化拠点で高度リサイクル設備を増設しています。2026年2月の公式発表では、3系列目が稼働し、同拠点の年間処理能力は約2億5,000万ポンド、約11万3,000トンに達したとしています。
Eastmanは、米国Kingsportの既存化学拠点でポリエステルの分子再生を進めます。同社の公式情報では、2024年3月に初期生産を開始し、年間11万トンの能力を掲げています。
LyondellBasellは、ドイツWesselingで触媒熱分解のMoReTec-1を建設中です。当初2026年開始を掲げていましたが、2026年のサステナビリティ発表では、開始目標を2027年としています。
Carbiosは、酵素でPETを分解する商用工場をフランスで計画しています。同社の2025年年次資料では、建設再開を資金調達の条件付きで2026年第3四半期へ延期し、生産開始を2028年上期の目標としました。
海外事例から分かるのは、技術が成立しても、商用設備の資金、原料、長期引取、建設に時間がかかることです。計画の遅れは技術の否定とは限りませんが、事業計画では必ず織り込みます。
ケミカルリサイクルの商用化を止める六つの難所
ケミカルリサイクルは、反応炉の性能だけで決まりません。商用化を止めやすいのは、次の六つです。
1. 原料の量と品質がそろわない
家庭、工場、小売から出る廃材は、季節と地域で変わります。塩素、水分、金属、PETの上限を決め、検査と価格へ反映します。
2. 前処理の費用が見落とされる
選別、破砕、洗浄、乾燥、脱塩素には設備と人が必要です。反応炉の採算だけを計算すると、回収後の原料費が抜けます。
3. 処理能力と販売量が混同される
年間2万トンの設備でも、2万トンの再生原料が売れるわけではありません。停止時間、歩留まり、残渣、規格外を引きます。
4. 既存設備へ入らない
再生油は、受け入れるクラッカーや製油所の品質規格を満たす必要があります。設備完成後に利用先を探すのでは遅すぎます。
5. 再生材の価値を買い手が負担しない
廃材回収と再生工程は、化石原料より高くなる場合があります。ブランド企業との長期引取、価格式、最低数量が必要です。
6. 由来を説明できない
再生原料と化石原料を混ぜる場合、製品一個ごとに物理的な再生分を追うのは難しくなります。マスバランス認証と取引記録で、投入量と割当量を管理します。
六つは別々の課題に見えますが、つながっています。受入基準が曖昧なら前処理費が増え、稼働率が下がり、買い手へ約束した数量を守れません。
商用化では、設備容量より、規格内原料と販売可能量の実績を見ます。
自社はケミカルリサイクルのどこへ入れるか
廃材、設備、顧客、品質データから、近い入口を確認します。
NEXT STEP
次のステップ
ケミカルリサイクルを、設備計画から事業設計へ。
廃材の品質、前処理、既存設備、販売先、価格差、認証を整理し、自社が継続して担える入口を設計します。
ケミカルリサイクルの新規事業で狙える四つの入口
後発企業が、巨大な油化工場を単独で建てる必要はありません。既存企業が困っている接続部分に、事業機会があります。
| 参入方法 | 最初の顧客 | 提供する価値 | 必要な資産 | 主な提携先 | 主な懸念 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高度選別・前処理 | 油化、解重合事業者 | 規格に合う廃材を安定供給 | 排出元、選別、検査、物流 | 自治体、廃棄物会社、装置会社 | 原料変動、設備稼働率 |
| 樹脂別の閉ループ | 製品メーカー、ブランド | 特定樹脂を同じ用途へ戻す | 回収網、材料知識、顧客認定 | 化学会社、成形会社、販売先 | 回収量、異物、価格差 |
| 既存設備接続・運転支援 | 化学・石油会社 | 再生原料を既存設備へ安定投入 | 品質管理、保全、工程データ | 技術会社、EPC、分析会社 | 腐食、詰まり、停止責任 |
| 追跡・認証データ | ブランド、化学会社 | 投入・割当・販売の証拠を残す | 取引データ、監査、連携API | 認証機関、ERP、物流 | 二重計上、入力負荷 |
四つの入口は、自社がすでに持つ廃材、顧客、設備、データに近い順で比べます。足りない反応技術や認証は、提携で補えます。

第一の入口は、高度選別と前処理です。顧客は油化・解重合設備です。処理量ではなく、塩素、水分、対象樹脂の規格を満たした原料量で契約します。
第二は、樹脂別の閉ループです。自動車部品、化粧品容器、家電、作業服など、自社が回収できる製品から始めます。販売先と品質条件を先に持てる企業に向きます。
第三は、既存設備への接続と運転支援です。分析、脱塩素、配管、貯蔵、保全、異常予兆など、再生油を安定して使う周辺工程を提供します。
第四は、追跡と認証のデータ基盤です。廃材の発生、輸送、受入検査、再生原料の生産、製品への割当を一つの記録へつなぎます。
CSRDの記事で説明したように、資源循環の情報も、取引先から証拠を求められます。現場の計量と品質記録へ接続できるデータ事業には余地があります。
自社は参入・提携・待機・見送りのどれか
参入を選ぶのは、自社が廃材、設備、顧客、品質データのどれかを持ち、再生原料が売れるまで責任を持てる場合です。
提携を選ぶのは、排出元や販売先を持つ一方、反応技術、化学設備、認証が足りない場合です。自社で全部作るより、技術ライセンスと既存石化設備を組み合わせます。
待機を選ぶのは、原料の受入基準、再生原料の引取価格、設備への投入条件が決まっていない場合です。待機中も、廃材の組成と量を測り、前処理後の品質を確認できます。
見送りを選ぶのは、回収量だけを根拠に大規模設備を計画する、再生油の買い手がいない、化石原料との差額を誰も負担しない場合です。
ケミカルリサイクルでは、「処理できるか」より、「規格を満たす原料を集め、設備を動かし、売れる製品へ戻せるか」を判断します。
ケミカルリサイクル事業の責任分界をどう決めるか
廃棄物会社、技術会社、化学会社、ブランド企業の間で、責任を先に決めます。
| 論点 | 廃材供給・前処理 | 変換・化学設備 | 製品・ブランド企業 |
|---|---|---|---|
| 原料品質 | 組成を測り、規格内で納める | 受入基準と検査方法を示す | 回収しやすい製品を設計する |
| 稼働・数量 | 最低供給量を守る | 歩留まりと停止を管理する | 最低引取量を決める |
| 製品品質 | 異物と履歴を伝える | 再生原料の規格を保証する | 用途認定と品質試験を行う |
| 由来証明 | 重量と発生元を記録する | 投入・変換・割当を記録する | 表示と顧客説明を管理する |
| 価格 | 選別品質に応じて変える | 原料・電力・停止を価格へ反映する | 再生価値の負担を決める |
| 事故 | 異物混入を通知する | 停止、回収、再発防止を担う | 製品影響と顧客対応を担う |
特に重要なのは、規格外原料を誰が引き取るかです。受入時に返却するのか、別処理へ回すのか、費用を誰が負担するのかを決めます。
長期契約も、数量だけでは不十分です。原料品質、再生原料の価格、化石原料との連動、設備停止時の扱い、規制変更を契約へ入れます。
ケミカルリサイクルについてよくある質問
仕組み、環境性、国内での利用状況、新規参入について、よくある疑問を短く整理します。
まとめ:ケミカルリサイクルは、反応炉の外で勝敗が決まる
ケミカルリサイクルは、扱いにくい廃プラスチックを化学原料へ戻し、高品質な用途へ再び使う可能性を持ちます。油化、ガス化、解重合、溶解では、対象廃材と出力が違います。
国内外の事例から分かるのは、反応技術だけでは事業にならないことです。原料を規格へ整え、既存設備へ接続し、再生材を買う顧客と長期契約を結び、由来を証明する必要があります。
新規事業では、高度選別・前処理、樹脂別の閉ループ、既存設備への接続、追跡・認証データに参入余地があります。自社が持つ廃材や顧客から入り、設備を作る前に品質基準と引取条件を固めます。
最後に問うべきなのは、「廃プラスチックを分解できるか」ではありません。「規格を満たす原料を集め、安定して製品へ戻し、その価値を買い手と分け合えるか」です。
参照文献
制度、統計、企業事例は、次の一次情報と公表資料を確認しました。
- プラスチック循環利用協会「2024年プラスチック再資源化フロー図」
- 欧州委員会「Packaging and Packaging Waste Regulation」
- 三菱ケミカルグループ「サステナビリティ説明会2026」
- 出光興産「2025年度第3四半期 決算説明資料」
- JEPLAN「PETケミカルリサイクル技術」
- JEPLAN「繊維to繊維リサイクルプロセスを商用規模で実証」
- 住友化学「アクリル樹脂のケミカルリサイクル品を販売開始」
- マイクロ波化学「再生アクリル樹脂をHonda N-ONE e:へ採用」
- ExxonMobil「Baytown Advanced Recycling」
- Eastman「Tennessee Molecular Recycling Facility」
- LyondellBasell「MoReTec」
- Mura Technology「Hydro-PRT」
- Carbios「Longlaville PET Biorecycling Plant」
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