投稿日:2026.09.28 最終更新日:2026.09.28
日立、AI投資の費用と成果を測る標準化活動を推進
ニュースの要点
日立製作所は2026年9月25日、AI投資の費用と成果の評価手法を整える「Tokenomics Foundation」への加盟と活動方針を発表しました。米国のグループ会社とともに、企業が異なるAIの経済性を比較できるよう、国際的な標準化活動に取り組みます。
同組織はLinux Foundationが8月4日に設立しました。AIが処理する情報の単位である「トークン」などを手掛かりに、計算資源、人員、運用にかかる費用と、業務で生み出した価値を把握する共通の方法づくりを目指しています。
日立は、企業でAIの本番利用が広がる一方、費用対効果の比較が難しいことを課題に挙げています。標準化活動で得た知見を、自社のAI運用サービスの改善にも活用する方針です。今回の発表は、評価規格の完成や費用削減の実績を示したものではありません。
ニュース出典:日立製作所「日立、日本企業で初めてTokenomics Foundationに加盟し、企業のAI投資の成果評価や価値管理の標準化を推進」(掲載元:PR TIMES、公開日:2026年9月25日)
イノベーション総研の考察
AIを試す段階では「回答できるか」が関心の中心になります。しかし毎日使う業務に組み込むと、「一件の仕事を終えるまでに、結局いくらかかるのか」が重要になります。この変化は、AIを作る企業だけでなく、顧客の導入を支援する企業にも新しい仕事を生みます。
安いトークンが、安い業務とは限らない
トークンはAIが文章などを扱う単位で、利用量を計算する手掛かりになります。しかし同じ資料の作成でも、短いやり取りで完了する場合と、何度も修正を重ねる場合があります。利用単価が安くても、やり直しが増えれば合計費用は膨らみます。
さらに、担当者による確認、データの整備、システムとの接続、エラー時の対応も必要です。Linux Foundationの設立発表も、トークン以外の費用を含めた総費用の把握と、業務成果との関係を測る方法を検討課題にしています。
AIの費用対効果は、利用単価ではなく、人の確認まで含めて一件の仕事を終える費用で比較する必要があります。
これは、単純な値下げ競争とは異なる比較です。少し高いAIでも、修正回数を減らし、顧客が受け取れる成果を増やせるなら選択肢になります。ただし、品質の基準をそろえずに費用だけ比べても、安さの理由は分かりません。
共通の測り方は、購入側にも提供側にも利益がある
顧客側は、複数のAIサービスを同じ尺度で比べられれば、予算を決めやすくなります。提供側にも、性能の説明だけでは伝わらなかった業務価値を示せる利点があります。共通の測定方法が、取引を始める前の説明や確認を減らす可能性があります。
日立が自社だけで指標を作らず、国際的な組織に参加する意味もここにあると考えられます。売り手が独自に作った採点方法より、複数の企業が使える方法の方が、顧客は比較に利用しやすくなるためです。
共通の評価方法が普及すれば、AIを買う側は比較しやすくなり、売る側は成果を説明しやすくなります。
ただし、これは民間の標準化活動です。法令で利用が義務付けられたわけではなく、加盟企業のサービスに効果が保証されるわけでもありません。指標が実際の調達や運用で使われるようになるかが、事業への影響を分けます。
日立の狙いは、AIの導入後を支える仕事にもある
日立は今回の発表で、得られた知見を「HMAX AI Operations」の高度化へ取り込む方針を示しています。これはAIを導入して終わるのではなく、その後の性能、安全性、費用を継続的に観測し、改善するサービスです。
イノベーション総研は、標準化への参加と運用事業をつなぐ点に注目します。共通指標が整えば、顧客が何を計測し、どこを改善すべきかも具体的になります。その実装や日々の改善を引き受ける仕事が、継続的な収益につながる余地があります。
AI市場の拡大は、モデルの販売だけでなく、導入後の費用と成果を改善する運用支援にも需要を生み得ます。
もっとも、加盟自体を新規受注や売上増加の証拠にはできません。今後見るべきなのは、評価方法を顧客の業務へ適用した事例や、品質を維持しながら総費用を減らした実績です。標準への貢献と、自社サービスの優位性は分けて確認する必要があります。
規格を待つ間も、一つの業務の採算は測れる
AI事業を担当する方は、まず一つの用途を選び、業務の開始と完了を決めると取り組みやすくなります。例えば問い合わせ対応なら、文章を生成した時点ではなく、利用者の問題が解決した時点を成果として扱う方法があります。
そのうえで、AIの利用料、人の確認時間、やり直しに必要な時間を記録します。従来の方法と比べる際は、案件の難しさや対応品質をそろえます。これは本稿の提案であり、同組織が確定した公式の評価基準ではありません。
標準の完成を待たず、顧客が受け取る成果と、その成果までの総費用を一組で記録することから始められます。
なお、8月4日の設立発表にも日立の名前があります。9月25日に新たに加入したと断定するのではなく、日立が自社の活動方針を公表したニュースとして読むのが適切です。今後は、標準の策定内容と顧客の採用状況を追うことで、今回の方針が実際の事業にどうつながったかを検証できます。
まとめ
日立の発表が示すのは、AIの競争が「何ができるか」から「いくらで、どれだけの仕事を完了できるか」へ広がる動きです。自社のAI事業でも、利用量だけを成果とせず、顧客が得る便益と運用全体の費用を結び付けることが、継続契約や新しい支援サービスの出発点になります。
執筆:イノベーション総合研究所
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