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経営企画は新規事業にどこまで関わる?5つの役割と現場との分担

経営企画が新規事業で担うのは、全社戦略とのつながり、予算・評価、会議での判断、人と予算の配分、事業部への移管を整えることです。案件の中身をすべて決めるのではなく、誰が何を決めるかを明確にします。

「計画を詳しく出してもらえば、進捗を管理できる」。既に売れ方が分かる事業では有効ですが、顧客や収益の前提を探している段階では、資料を増やすだけで判断材料が増えるとは限りません。現場が確認することと、経営層が決めることを分ける必要があります。

本記事では、888名の独自調査を踏まえ、経営企画と新規事業部門の役割分担を整理します。5つの役割ごとに用意するもの、関わりすぎない範囲、次の会議で使える確認例を紹介します。

この記事のポイント

  • 経営企画は全社の条件を整え、現場は顧客と市場の事実を確かめる
  • 5つの役割ごとに、決める人・必要な情報・決定後の担当をそろえる
  • 追加資料ではなく、次の判断を変える確認事項を現場へ依頼する
  • 案件の進退と同時に、人・予算・得られた知見の次の行き先を決める

目次

経営企画の新規事業支援は「決められる状態」をつくる

新規事業で最も大きいと感じた障壁の上位4項目

意思決定スピードの遅さ22.1%
KPI・撤退基準の曖昧さ15.9%
経営層の理解・コミットメント不足15.1%
全社戦略における位置付け・方針の不明確さ14.4%
出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)。1位に選ばれた回答の割合。上位4項目を抜粋。

新規事業の停滞は、アイデアや担当者の能力だけでは説明できません。従業員1,000名以上の企業で新規事業に関わった888名の回答では、最も大きい障壁として、意思決定や判断基準に関する項目が上位に挙がりました。

イノベーション総研は、この結果を「経営企画がすべて決裁すべきだ」とは捉えていません。現場が確かめることと、経営が決めることをつなぐ仕事が必要だと考えます。たとえば顧客への追加確認は現場が進め、他部署の人員を動かす判断は経営層へ上げる。この分担がなければ、同じ会議を繰り返しても案件は動きません。

経営企画の仕事を、5つの役割で整理する

本記事では、経営企画の支援を次の5つに整理します。会社共通の公式な職務定義ではなく、役割の抜けや重なりを見つけるためのイノベーション総研の実務上の整理です。

経営企画が整える条件と、現場が次にできること
役割 経営企画が用意するもの 現場が次にできること
1. 目的と範囲 対象領域、投資する理由、今回扱わない範囲 試す顧客や事業案を絞る
2. 予算と評価 検証に使える費用・時間と、段階に合う評価基準 許可された範囲で顧客への確認や試作を進める
3. 判断会議 決める人、比較する案、必要な情報、判断日 会議後に何をするかを確定する
4. 人と予算の配分 案件ごとの優先順位と、部署をまたぐ配分案 実際に必要な人員や設備を使う
5. 移管と学びの保存 受入先の責任、引継ぎ条件、終了後の記録 事業運営を引き継ぐ、または次の案件へ知見を渡す

自社の案件が止まった場面を一つ選び、どの列が空いているかを確認してください。すべての制度を同時に作り直す必要はありません。たとえば予算はあるのに開発者を確保できないなら、最初に扱うのは計画書ではなく人員の配分です。

現場で決めてよい範囲まで、経営企画の承認待ちにしない

この整理は、特に経営層・事業部門・専門部署が分かれている組織に向いています。少人数の会社では一人が複数の役割を持っても構いません。ただし、案を作る立場と、その案への追加投資を決裁する立場は区別します。

OECD・Eurostatの「Oslo Manual 2018」も、イノベーションを支える管理の要素として、責任の設定、優先順位づけ、資源配分、活動の評価と学習を扱っています。本記事はそれを参考にしつつ、経営企画が各社の権限規程に合わせて整える実務へ落とし込んでいます。

経営企画・新規事業部門・経営層の役割を分ける

スーツ姿の二人が握手し、協力関係を確認するイメージ
協力することと、判断の責任を曖昧にすることは別です。

経営企画は会社全体の方針や配分を、新規事業部門は個別事業の成立を考えます。経営層は、委ねた権限を超える投資や撤退、部署間の優先順位を決めます。「協力して進める」だけで終えず、最終的に誰が決めるかを明記します。

同じ仕事に複数部門が関わるときは、作業する人と決裁する人を分けて見てください。下表は分担のたたき台であり、実際の決裁権は自社の規程に合わせます。

新規事業の主な判断を、誰が準備し誰が決めるか
判断の場面 新規事業部門 経営企画 経営層・権限を持つ責任者
顧客や提供価値を変える 顧客の事実を確かめ、変更案を作る 全社方針や承認済み範囲から外れないか確認する 大幅な方針変更の場合に決裁する
検証予算を追加する 不足する情報と、追加検証の費用を示す 他案件や予算枠との関係を整理する 追加投資の上限と条件を決める
他部門の人員を使う 必要な技能・時間・期間を示す 配属元と調整し、競合する仕事を示す 部門間で合意できない優先順位を決める
継続・変更・終了を選ぶ 根拠と複数の案を提示する 判断基準、参加者、決定記録を整える 権限に基づき進退と資源の扱いを決める
既存事業部へ移す 顧客対応・収支・運営の実態を説明する 受入条件と部署間の責任を整理する 受入責任者と資源移管を承認する

特に「人員を使う」「事業部へ移す」は、新規事業チームだけでは完結しません。経営企画が調整しても合意できない場合は、対立点と選択肢を経営層へ上げます。全員が賛成するまで現場を待たせないことが大切です。

顧客の反応は現場が確かめ、経営企画が会議室で結論を代行しない

誰が困っているか、現在はどう対処しているか、お金を払う条件は何か。こうした問いの答えは、顧客との対話や利用の観察から得ます。経営企画は「この案は売れそうだ」と判定するより、根拠が発言だけなのか、実際の利用や購入条件まで確認できているのかを問いかけます。

たとえば現場が対象顧客を変えたい場合、承認済みの領域・費用・期間の内側で試せるなら、その範囲は現場に任せます。対象業界や投資額を大きく変えるなら、確認した事実と変更理由をそろえて再承認へ進みます。

経営層の決断が必要な問題を、経営企画だけで抱えない

既存事業の売上に影響する値付け、重点部門からの人員異動、投資枠を超える支出は、調整だけでは決まりません。経営企画は「各部門と相談中」で止めず、何が両立しないか、どの案にどの影響があるかを示し、決める人と期日を確保します。

経営層を巻き込む事業責任者の役割は、新規事業部長の役割と責任も参考になります。部長が案件を率いる仕事と、経営企画が全社の条件を整える仕事を一人に集めすぎないようにします。

役割1|全社戦略の中で新規事業の目的と範囲を決める

「将来の柱をつくる」だけでは、現場は何を試してよいか判断できません。経営企画は経営層と、なぜ取り組むのか、どの顧客や領域を扱うのか、どこまで投資するのかを確認します。戦略は、案件を選ぶときにも、見送るときにも使える言葉にします。

経営層の期待を、現場が使える6つの条件にする

案件募集や計画作成を頼む前に、次の6項目を書き出します。まだ決まらない項目には、決める人と期限を添えます。空欄を現場の推測で埋めないようにしてください。

  • 目的:既存事業の補完か、次の収益源か、技術の用途開拓か
  • 対象:どの顧客、課題、事業領域を探索するか
  • 対象外:当面は扱わない顧客や領域、守る制約は何か
  • 時間:いつまでに何を確認し、次の投資を判断するか
  • 投資範囲:今回使える費用、人員、設備の上限はどこか
  • 既存事業との関係:営業、製造、ブランドなどをどこまで使えるか

この6項目は、最初から一つの事業案を固定するためのものではありません。現場が試せる範囲と、その範囲を変えるときの相談先を共有するためのものです。

「何をやるか」に加え、「何を選ばないか」を示す

たとえば、製造業が保守サービスの新規事業を検討する場面を考えます。これは説明用の例です。「デジタルで成長する」では範囲が広いため、「既存の設備顧客が抱える保守負担を減らす。新しい設備そのものの開発は今回の対象外」と置きます。すると現場は、保守の手間や故障対応の実態から顧客への問いを作れます。

一方、調査の結果、既存顧客より別の業界に強い課題が見つかることもあります。そのときは戦略に合わないとして即座に退けるのではなく、範囲を変更する価値があるかを経営層へ判断依頼します。現場の発見によって方針を変えられる経路も必要です。

期待する成果は、検証段階ごとに言い直す

短期売上を求めるのか、将来の投資判断に必要な情報を得たいのかで、行動は変わります。初期探索なら「誰のどの課題を扱うかを決める」、事業化前なら「有償提供と運営が続く条件を確かめる」と、今回の期間で決めたいことを具体化します。

経営企画が残すものは、分厚い戦略資料ではなく、この案件を続ける理由と範囲が分かる短い合意です。経営層と事業責任者が同じ内容を説明できるか、最初の会議で確認しましょう。

役割2|検証段階に合う予算と評価基準を整える

売上がまだない事業に既存事業と同じ利益目標を課すと、確かめるべき前提が残ったまま計画だけが精緻になることがあります。探索中は「何が分かれば次へ進めるか」を予算と評価に結び付けます。売上や利益を見なくてよいという意味ではなく、判断に使う順序を分けます。

段階ごとに、予算で確かめることを変える

初期の顧客確認と、本格提供のための投資を同じ申請で扱う必要はありません。次に何を決めるかに合わせ、支出の目的を整理します。

検証段階に合わせた予算の目的と、次へ進む判断材料
段階 予算で確かめること 次へ進むために確認すること
課題を探す 顧客の業務観察やインタビュー 優先して解決すべき課題と、現在の対処方法
解決策を試す 簡単な試作品や限定利用 解決策が役に立つ場面と、使われない理由
事業として成立するか確かめる 有償試行、価格確認、提供原価の把握 購入条件、採算を左右する前提、提供に必要な体制
継続して提供する 顧客対応、営業、品質管理の整備 継続利用と、無理なく提供し続けられる運営条件

先に進む条件は、件数だけで決めないようにします。インタビューを予定どおり実施しても、課題が弱いと分かったなら対象を変える判断が必要です。逆に件数未達でも、重要な前提を否定する事実が得られたなら、その情報には価値があります。

検証用の枠を設け、少額の試行まで毎回ゼロから稟議しない

経営企画は財務・法務などと協力し、期間、支出上限、責任者、対象行為、再承認が必要な条件を決めます。現場はその枠の中で実行し、重要な前提が変わったら報告する形にします。法令や安全、顧客情報の管理を省略するための例外ではありません。

たとえば、前章の保守サービスで顧客の業務を観察する段階なら、長期の開発計画より、訪問対象、取得する情報、費用、情報の扱いを具体化します。顧客データを使った試作に進むなら、利用許諾や社内の審査条件を改めて確認します。

事業の見込みと、担当者の働きを分けて評価する

仮説が否定されたことを、そのまま担当者の低評価に結び付けると、不都合な情報が出にくくなります。人事評価では、確認の進め方、事実の共有、方針変更の理由、他部署との協力など、本人が行った仕事を見ます。事業の継続判断では、顧客価値、採算、実行可能性を見ます。

ただし「学びがあった」と言うだけでは十分ではありません。何が分かり、その結果どの案をやめ、次に何を確かめるかまで記録します。制度の詳しい設計は新規事業の評価制度の作り方で整理しています。

役割や評価制度そのものが現場に合っていない場合は、イノベーション総研の組織・人材開発サービス Talentが関連します。個別案件の成否を判定する支援と、人が挑戦できる制度を整える支援を分けて検討してください。

NEXT STEP

次のステップ

報告はそろっているのに、経営判断が進まないときに

Compassでは、経営層と現場の認識差や、判断に必要な情報の不足を整理します。複数案件の比較や配分を見直したい場合にも、課題に合う診断を検討できます。

役割3|経営企画が新規事業の会議を「決める場」に変える

会議を開くことと、判断が進むことは別です。独自調査では、定量的な目標・指標を定期的に確認・見直ししていても、経営層との認識差があり、判断基準として機能していなかったという回答が45.5%でした。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

イノベーション総研は、指標を増やす前に、その結果で誰が何を変えるかを確認することを勧めます。判断会議の成果は、説明資料ではなく、選んだ案と実行条件です。売上の報告が必要な段階でも、数字を読み上げる時間と、追加投資を決める時間を分けます。

会議前に「今回決めること」を一文にする

「進捗共有」「事業性の検討」では、何が決まれば終わりなのか分かりません。「有償試行へ進むか」「対象顧客を変えるか」「追加検証をせず終了するか」と、選択肢が分かる議題にします。経営企画は、決裁権のある人と、現場の事実を説明できる人が参加するかを確認します。

資料の先頭には、推奨する案、別の案、その違いを示します。既に合意した背景説明は別紙に置き、今回新しく分かった事実と、まだ不明なことを区別してください。都合の悪い反応も同じ資料で扱うことで、意見の強さではなく根拠を比較できます。

差し戻すなら、文章ではなく不足している事実を指定する

「もっと具体化してほしい」だけでは、現場が文章を長くする方向へ動きがちです。次の表は、保守サービスの有償試行を検討する説明用の記入例です。実在案件の成果や、必ず採用すべき金額・期間を示すものではありません。

曖昧な差し戻しを、次の判断に必要な確認へ変える例
曖昧な依頼 具体的に確認すること 会議で一緒に決めること
収益性を詳しくしてほしい 候補顧客の予算担当者に、支払う条件と利用範囲を確認する 確認担当と期限。費用負担の合意が得られなければ、価格か対象を見直す
実行体制を考えてほしい 保守担当部門に、対応可能な時間と通常業務への影響を確認する 引受責任者と試行範囲。人員を確保できなければ開始を見送る
リスクを洗い出してほしい 顧客の設備情報をどこまで取得・利用できるかを確認する 情報管理の相談先と利用条件。条件を満たすまで情報取得を始めない

ここで経営企画が確認するのは、依頼が「次の判断を変える問い」になっているかです。誰がいつ確認するか、どの結果なら選択を変えるかまで決めれば、次回の会議で同じ宿題を繰り返すのを避けやすくなります。

決められない場合も、追加確認の上限と次の判断日を残す

情報が足りないときに、その場で無理に継続か終了を選ぶ必要はありません。ただし「引き続き検討」ではなく、追加で確認する事実、担当者、費用・期間の上限、次の判断日を決めます。追加確認を重ねても結論を変えない情報なら、調査対象から外します。

議事録には、決定、採用した根拠、残る不明点、実行担当、期限を残します。会議中に反対意見が出た場合も、その懸念を打ち消したのか、条件として残したのかを記録します。段階ごとの判断の区切り方は新規事業のステージゲート運用を参照してください。

役割4|複数の案件を比べ、人と予算を配り直す

承認済みの予算があっても、開発者や営業担当の時間が取れなければ検証は始まりません。経営企画は「承認されたか」だけでなく、「必要な人と時間が動いたか」まで確認します。現場の要望を集め、複数案件の間で何を優先するかを経営層が判断できる形にします。

案件一覧に、費用だけでなく必要な技能と稼働時間を書く

案件ごとに、現在の段階、次に確かめること、得られる判断材料、必要な技能、稼働時間、利用期間を書きます。「開発支援が必要」ではなく、「顧客が使う試作品を作るため、どの技能を持つ人に、いつから何を頼むか」が分かる形にします。

保守サービスの例なら、現場で顧客を紹介できる営業担当、設備データを扱える技術担当、顧客対応を引き受ける保守担当がそれぞれ必要です。予算額が小さくても、これらの人の時間が取れないなら実行できません。配属元の責任者と、既存業務を何から減らすかまで調整します。

初期の探索と、本格化する案件を同じ基準だけで比べない

まだ顧客課題を探す案件を、売上が立ち始めた案件と同じ売上額だけで比べると、初期探索に資源が回りません。一方、すべての案件へ均等に配れば、有望な案件を進めるための人員が薄くなります。

まず全社として、初期探索に使う範囲と、事業化へ進める範囲を分けます。その中で、次の確認によって重要な判断ができるか、必要な人と費用が妥当か、今取り組む理由があるかを比較します。点数は議論の入口に使えても、段階の違いや重大な未確認事項を合計点だけで隠さないようにします。

経営層へは、配分案だけでなく、採らなかった案への影響も示します。「案件Aへ技術担当を振り向けると案件Bの確認が遅れる」と分かれば、優先順位を具体的に判断できます。整理方法は新規事業のポートフォリオ管理で詳しく解説しています。

終了・縮小を決めたら、空いた資源の行き先も決める

案件を止めても、担当者がいつまでも残務を抱えていれば次の仕事へ移れません。顧客への連絡、契約の整理、情報の保管、引継ぎに必要な期間を確認し、人と予算をいつ次へ振り向けられるかを決めます。終了した人の評価や次の配置は、人事と連携して扱います。

配分を見直す周期は、検証に必要な期間に合わせます。毎週の作業確認と、数か月単位の投資判断を同じ頻度にそろえる必要はありません。ただし顧客の利用停止や重大な安全上の問題など、前提を崩す情報が出た場合は、定例会議を待たずに報告・判断する経路を用意します。

役割5|事業部への移管条件と終了後の学びを残す

事業化が見えてから受入先を探すと、顧客対応や費用負担が決まらず、事業が宙に浮くことがあります。移管は組織図の変更ではなく、誰が事業を運営するかの合意です。経営企画は新規事業チームと受入部門の間で、引き継ぐ条件を早めに整理します。

移管前に、顧客・収支・運営・責任者を確認する

売上見込みだけで移管を決めず、次の内容を受入先と確認します。未解決の項目があれば、移管前に解決するのか、担当を決めて移管後に扱うのかを分けてください。

  • 顧客:誰が使い、誰が支払い、どの条件で継続するか
  • 収支:売上・提供原価・顧客対応費用を誰が把握し、負担するか
  • 運営:営業、提供、問い合わせ、品質管理を誰が担うか
  • 責任:売上目標、採用・配置、追加投資の判断を誰が持つか

たとえば新規事業チームの特定メンバーだけが顧客への説明やトラブル対応を行っている場合、売上があっても受入先だけでは運営できません。どの作業が属人的かを確認し、受入先が実際に行えるところまで引き継ぎます。

共同で運営する期間を設け、引継ぎを資料だけで終えない

手順書には、通常の作業に加えて、例外が起きたときの判断を残します。受入部門が顧客対応を担当し、元のチームが補助する期間を設ければ、説明だけでは伝わらなかった条件を確認できます。期間は一律に決めず、受入先が担う作業と習熟の状況で判断します。

共同運営のまま責任が曖昧にならないよう、最終判断者と切替日を明記します。移管後の数字が変わったときは、顧客の変化なのか、営業・運営方法の変化なのかを分けて確認します。組織の選び方は新規事業を推進する組織の設計で整理しています。

終了案件は「失敗談」ではなく、再検討に使える記録を残す

「ニーズがなかった」とだけ残すと、別の担当者が同じ顧客に同じ確認を繰り返すかもしれません。どの顧客の、どの課題を、どの方法で確かめ、何が成立しなかったかを記録します。見送った理由が価格なのか、導入手順なのか、提供体制なのかによって、将来の再検討条件は変わります。

記録には、再利用できる情報の場所、利用可能な範囲、連絡先、見直す条件を添えます。機密情報や顧客情報はアクセス権限を守り、誰でも見られる共有フォルダへ一括で置かないようにします。経営企画は保存件数ではなく、次の案件で使える形になっているかを確認します。

経営企画が新規事業で避けたい3つの関わり方

支援するつもりで増やした作業が、現場の確認時間を奪うこともあります。次の3つに当てはまる場合は、報告の量より、役割と依頼の仕方を見直してください。

1. 顧客を確かめず、会議室で事業案の正解を決める

経験や戦略との整合は大切ですが、それだけで顧客が買うかは分かりません。「この業界では売れない」と結論を代行せず、どの顧客へ何を確かめれば判断できるかを現場と整理します。規程違反や投資範囲を超える提案には制約を明示し、単なる好みと区別します。

2. 判断に使わない資料まで、共通様式で集め続ける

案件間の比較に共通項目は必要です。ただし初期探索に詳細な長期損益計画を毎回求めても、顧客の前提が未確認なら数字の修正が続くだけです。資料の各項目について「この情報で誰が何を決めるか」を確認し、今回使わない情報は別紙や参考資料へ移します。

3. 部門間の対立を抱え込み、経営判断を先送りする

既存事業と新規事業の双方が同じ人材を必要とする場面では、担当者同士の努力だけで解消できないことがあります。経営企画は調整の期限を決め、両案の影響をまとめて権限者へ上げます。「現場に任せる」と言いながら、現場には動かせない資源まで任せきりにしないことが重要です。

共通する確認点は、経営企画が作業を引き取った結果、誰のどの判断が進んだかです。資料や会議が増えても答えられない場合は、次の一件から依頼の内容を変えてみてください。

経営企画と新規事業についてよくある質問

ここでは、役割の兼務、少人数での始め方、現場との関わり方など、運用時に迷いやすい点に答えます。

Q. 経営企画が自分で新規事業の案件を持ってもよいですか

A. 構いません。専任の新規事業部門がない会社では、経営企画が顧客確認や試作まで担う場合もあります。ただし、案を作る責任と、追加投資・終了を決める責任は分けます。自部門の案件だけ審査基準が緩くならないよう、決裁者と判断基準を他案件とそろえてください。

Q. 経営企画の担当者が少ない場合、何から始めればよいですか

A. 進行中の案件を一つ選び、次に決めること、決める人、不足する情報、確認担当、判断日をそろえるところから始めます。最初から全案件の台帳や制度を作り込まず、その一件で止まる理由を確かめます。同じ理由が他案件にもある場合に、共通のルールへ広げます。

Q. 経営企画は顧客インタビューにも参加すべきですか

A. 毎回参加する必要はありません。ただし資料だけでは顧客の使い方や反対理由をつかめない場合は、現場と目的を合意して同席する方法があります。経営企画が顧客の答えを誘導したり、同席した一件だけで市場全体を判断したりせず、現場が集めた他の事実と合わせて確認します。

Q. 経営企画の新規事業支援は、どの指標で評価しますか

A. 会議の回数ではなく、判断依頼から決定までの時間、理由の曖昧な差し戻し、決定した人員・予算が実際に使えたか、移管後に残った未解決事項などを確認します。ただし早く決めることだけを目標にせず、必要な確認を省いていないかも併せて見ます。案件の売上は別に追い、経営企画の支援だけの成果と決め付けないようにします。

Q. 既存事業部が新規事業の受入れに反対する場合はどうしますか

A. 反対の理由を、顧客対応の負荷、費用負担、評価目標、人員不足などに分けます。調整で解消できる項目には担当と期限を置き、部門間の優先順位が対立する項目は経営層へ上げます。合意のないまま名目だけ移管せず、共同運営を続ける条件や別の受入先も含めて判断します。

まとめ|次の会議で「誰が何を決めるか」を一つ確定する

経営企画は、事業案の細部をすべて管理する部署ではありません。目的と範囲、予算と評価、判断会議、資源配分、移管と学びの保存を整え、現場の確認結果が経営の判断につながるようにします。

まずは止まっている一件について、事業責任者と次の順で確認してください。

  • 今回決めたいことを、「進捗確認」ではなく具体的な選択肢で書く
  • 現場が確かめる情報と、経営層が決める条件を分ける
  • 確認担当、使える人と予算、次の判断日を決める

次の会議の議題を見て、「この会議が終わると、誰が何を実行できるか」と答えられるでしょうか。答えが曖昧なら、報告資料を増やす前に、決めることと決める人をそろえるところから始めましょう。

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ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

OECD・Eurostat「Oslo Manual 2018」第5章(2026年9月8日確認)

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