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次世代地熱とは?8社の開発から読む、熱を電力に変える条件

次世代地熱は、地下の熱を取り出す場所や方法を広げる技術です。天然の熱水が十分にない場所でも、岩盤へ水を流したり、地下に閉じた流路をつくったりして、発電や熱供給を目指します。

ただし、地下に熱があることと、利益を出して電気を売れることは別です。熱を取り出せる井戸を、必要な費用と時間でつくり、運転を続けられるかが問われます。

新規事業を考えるなら、発電所を自社で持つことだけが入り口ではありません。掘削、耐熱部材、地下の計測、設備の運営、熱を買う顧客との調整にも仕事があります。

この記事では、国内外8社の取り組みを、何を提供する企業か、案件がどこまで進んだか、という順に説明します。参入を考える際は、「地下に熱があるか」だけでなく、「自社は誰の、どの未解決の仕事を引き受けるか」まで具体化することが重要です。

この記事の結論

地下の熱を取り出す方法と、顧客へ届ける仕事を分けて考えます。

  • EGSと閉じた循環で異なる、水の通り道を理解する
  • 送電開始、熱出力、計画容量、契約を分けて8社を読む
  • 材料・計測・施工・需要側の調整から自社の役割を選ぶ

目次

次世代地熱とは?「温水を探す」から「熱を取りに行く」へ

地熱発電は、地下の熱を使って電気をつくる仕組みです。次世代地熱では、自然に備わった熱水や水の通り道への依存を減らそうとしています。

従来の地熱は、熱・水・水の通り道がそろう場所を探す

従来の地熱発電では、高温の水や蒸気を地下から取り出します。必要なのは熱だけではありません。

十分な水があり、その水が流れる岩盤の割れ目があることも大切です。地表から見て有望でも、井戸を掘った結果、必要な量の熱水を取り出せない場合があります。

次世代地熱は、この制約を技術で変える試みです。大きく分けると、岩盤に水の通り道をつくる方法と、岩盤へ水を放出せずに熱を回収する方法があります。米国エネルギー省によるEGSの解説

EGSは、岩盤を通る水で熱を運ぶ

EGS(岩盤の水の通り道を人工的につくる・広げる地熱システム)では、井戸から地下へ水を送り込みます。熱い岩盤を通った水を別の井戸で取り出し、その熱を発電に使います。

イメージとしては、熱い岩盤の中に、水が流れる道を整える方法です。注入する井戸と取り出す井戸を掘れば完成するわけではありません。

水が狙った経路を通ること、十分な熱を得ること、送り込んだ水を回収できることが必要です。地中の圧力や小さな地震を監視する仕事も、開発と運転に含まれます。

クローズドループは、閉じた流路の中で水を循環させる

クローズドループ(地下につくった閉じた流路で熱を回収する方式)は、水を周囲の岩盤へ流すのではなく、流路の内側で循環させます。水は流路を囲む岩盤から熱を受け取り、地上へ戻ります。

岩盤に自然の水の通り道があるかに、左右されにくいことが特徴です。一方、流路を長く正確につくり、壁面の健全性を保つ必要があります。

周囲に熱があっても、流路へ十分に熱が伝わらなければ、期待する出力にはなりません。岩盤の中を水が通るEGSとは、確認すべき条件が異なります。資源エネルギー庁・エネルギー白書の次世代型地熱の説明

水の通り道が違うEGSと閉じた循環

両方とも地下の熱を回収。岩盤へ水を流すかで区別

EGS:岩盤を通す

地上:発電設備

水を送る ↓

↑ 熱水を回収

熱い岩盤の水の通り道

注入 → 岩盤で熱を得る→ 別の井戸で回収

確認:熱・水の回収圧力・周辺への影響

閉じた流路内で循環

地上:発電・熱供給

水を送る ↓

↑ 熱を回収

岩盤の熱が流路へ伝わる

確認:流路の施工・健全性十分な熱の回収

超臨界=高温・高圧の条件
水の経路とは別の分類軸
EGS等と組み合わせうる

出典:米国エネルギー省、資源エネルギー庁、NEDOの公表資料を基にイノベーション総研作成。流路の違いを示す概念図で、特定の発電所の設計図ではありません。

超臨界地熱は、水の経路ではなく、高温・高圧の条件の話

超臨界地熱は、非常に高温・高圧の地下を利用する考え方です。そうした条件では、熱を運ぶ水の性質も変わります。

ここで混同しやすいのは、EGS、クローズドループ、超臨界を、同じ基準で分けた三つの方式だと考えることです。前の二つは水をどこへ流すか、超臨界はどのような温度・圧力を使うかの話です。

高温の地下をEGSで利用するなど、組み合わせる場合もあります。技術を比較するときは、まず「水の経路」と「利用する地下の条件」を分けると理解しやすくなります。

動きが広がっている理由は、発電の期待だけではありません。地下を掘る技術の蓄積、既存の発電事業者との提携、実証を支える政策が重なっています。

石油・ガスで蓄積した仕事を、地下の熱へ生かせる

地下の状態を調べる、狙った位置へ井戸を掘る、坑内の圧力や温度を測る。こうした仕事は、地熱だけに固有のものではありません。

IEA(国際エネルギー機関)は、次世代地熱と石油・ガス産業の技術や技能に共通する部分が多いと整理しています。既存の地下開発の経験を生かせる点は、新たな参入企業にとって重要です。

ただし、道具をそのまま持ち込めば済むとは限りません。より高い温度への耐久性、水を長期に循環させる条件など、地熱側の要求に合わせる必要があります。IEA「The Future of Geothermal Energy」

日本でも、方式ごとの研究開発が具体化している

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、次世代型地熱の研究開発に予算上限1,102億円を設定しています。対象は、超臨界、クローズドループ、EGSと、それらに共通する基盤技術です。

共通基盤には、地下の状態を把握するデータや、挙動を予測する技術などが含まれます。発電方式そのものを開発しない企業にも、役割を考える余地があります。

2026年度の公募期間は8月28日から11月10日正午です。これは研究開発への応募段階であり、国内での商用発電が完了したことを示すものではありません。NEDOの事業概要、2026年度公募

注目すべきは、市場予測より、顧客へ届くまでの進捗

次世代地熱の将来像を説明する資料には、大きな発電可能量が示されます。しかし、地下にある熱の量が、そのまま売上になるわけではありません。

案件ごとに、掘削、熱の回収、発電設備、接続先、買い手という仕事を進める必要があります。企業を見る際も、資金調達の額だけでなく、電気や熱を取り出し、顧客へ供給する段階まで進んだかを見ることが有効です。

以下では、その違いがわかる8社を取り上げます。同じ次世代地熱でも、井戸をつくる企業、発電所を持つ企業、技術を提供する企業では、提供物も事業の進み方も異なります。

次世代地熱を動かす8社は、何をしている?

まず、各社が引き受ける仕事を整理します。その後で代表的な案件を見ていくと、企業名だけを覚えるより、業界の構造を理解できます。

次世代地熱に関わる8社の仕事と案件の段階
企業 主に引き受ける仕事 提供先・事業の相手 確認できる段階
Fervo Energy EGSの開発、発電と売電 電力の購入者 Cape Stationの最初の設備が送電開始
Eavor 閉じた地下流路の技術、設計・運営の支援 地熱開発・発電・熱供給の事業者 ドイツ案件で一部運転、技術上の課題も公表
Quaise Energy 高温の深部を掘る技術と発電計画 地熱の開発・発電側 Obsidianは実証・開発計画、支援対象に選定
Sage Geosystems 圧力を利用する地熱・貯蔵技術 Ormatなどのエネルギー事業者 発電の実証を計画、貯蔵とは用途を区別
SLB 地下評価、井戸設計、精密な掘削支援 発電所の開発者・技術開発者 Ormatと実証候補地を選定、Eavorへの支援例も公表
Ormat 発電設備、開発、保有・運営 電力の購入者、発電事業者 既存事業を基盤に次世代技術の実証へ提携
中部電力 事業への出資、発電・熱供給の事業運営 現地の電力・熱の需要側 ドイツ案件の一部営業運転を公表
鹿島 地下施工の知見、技術の展開に向けた取り組み 地熱の開発・施工側 Eavorへ出資、国内での商用発電とは別

発電する企業だけでなく、地下の技術を提供する企業や、事業を運営する企業も含まれます。自社の経験に近い役割を見つけてから、取り組みの中身を読むと参入の入り口を考えやすくなります。

Fervo Energy:井戸の実証から、電気を送る段階へ

Fervo Energyは、EGSを使った地熱開発を進める米国企業です。井戸の技術だけを販売するのではなく、発電と電力の販売までつなげる立場にあります。

2026年9月24日、米国ユタ州のCape Stationで、最初の33MW設備が電力系統に接続し、送電を始めたと公表しました。MW(メガワット)は、出力の大きさを示す単位です。

この発表は、実際に電気を系統へ送り出したという点で重要です。一方、33MWは設備の規模であり、その全量を常時送ったという実測値ではありません。

第1期の計画は約100MWで、約33MWの設備を3基組み合わせます。最初の設備の契約上の営業運転は10月1日、残り2基は2027年1月1日を予定していると説明しています。

予定日になっただけで、計画全体の達成とは判断できません。送電開始と、全設備の営業運転を分けて読む必要があります。FervoのCape Station送電開始の発表

Eavor:地下の流路をつくる技術と、運転からわかった課題

カナダのEavorは、Eavor-Loopというクローズドループ技術を開発しています。ドイツのゲーレツリートでは、発電と地域への熱供給を目指す事業に参加しています。

同社が2026年5月に公表した技術更新は、次世代地熱を理解するうえで特に参考になります。成功の説明だけでなく、掘削と流路の問題を具体的に記しているためです。

当初は複数の掘削を並行して進める設計でした。しかし、地下で干渉が起き、順番に進める必要が生じました。

掘りくずが流路へ入った問題もあり、計画通りの経路をすべて使えているわけではありません。同社は、現在の第1ループの熱出力を約8.5MWと説明しています。

ここでいう出力は、取り出した熱の大きさです。発電した電気の出力ではありません。

閉じた流路であれば、自然の熱水を探す制約を減らせます。一方、掘削の精度や流路の健全性が、費用と取り出せる熱を左右します。Eavorのゲーレツリート技術更新

Quaise Energy:高温の地下へ届く、掘削技術を開発する

Quaise Energyは、地下のより高温の領域を利用するため、ミリ波と呼ばれる電磁波を使った掘削技術を開発しています。通常の掘削と新技術を組み合わせ、深部の熱を取り出す構想です。

2026年9月、Obsidianという計画が、米国エネルギー省の支援対象に選ばれたと公表しました。3本の井戸で25MW以上の総発電容量を目指す内容です。

総発電容量は、発電所内で使う電力などを差し引く前の規模です。顧客へ売れる電力の量とは区別します。

支援の対象に選ばれたことも、商用発電が始まったこととは異なります。契約交渉や開発が残る段階として見る必要があります。

この事例で注目したいのは、高温の岩盤そのものだけでなく、そこまで井戸をつくる仕事です。深部へ届く能力が変わると、利用できる地下の条件も変わります。QuaiseのObsidianに関する発表、米国エネルギー省の選定説明

Sage Geosystems:地下で熱を得る仕事と、電気を貯める仕事

Sage Geosystemsは、地下の圧力を使う地熱技術を開発しています。同社の事業を見るときは、発電とエネルギー貯蔵を分けることが大切です。

貯蔵では、電気を使って水を地下へ送り、その後に水を戻して電気を取り出す仕組みを使います。発電では、地下から得られる熱を電気へ変えます。

どちらも井戸や圧力を利用しますが、電気を生む理由が異なります。貯蔵設備の出力を、地下の熱から発電できた実績として数えることはできません。

同社はOrmatとの地熱発電計画を紹介し、初期の発電を2027年に予定しています。将来の稼働を前提にせず、地熱発電として何が確かめられたかを追う事例です。Sageのプロジェクト一覧

SLB:井戸の位置と、地下の状態を把握する仕事

SLBは、石油・ガスなどで培った地下開発の技術を、地熱へ提供しています。顧客になるのは、発電所の開発者や地熱技術を開発する企業です。

Eavorのドイツ案件では、地下で別々に掘った経路をつなぐための磁気測位を支援しました。地上から地下の位置を見通せないからこそ、狙った地点へ届く計測に意味があります。

また、2026年6月には、OrmatとのEGS実証でDesert Peakを優先候補地に選んだと公表しました。地下の地質や力のかかり方を調べ、井戸の配置や水の流し方を設計する取り組みです。

候補地の選定は、発電開始ではありません。それでも、発電所を自社で持たずに、地下の不確かさを減らす仕事で関与する例として参考になります。SLBのEavorへの測位支援、Ormatとの実証候補地の発表

Ormat:既存の発電設備と運営を、新技術の受け皿にする

Ormatは、地熱発電設備の設計・製造に加え、発電所の開発、保有、運営を行う企業です。地下から取り出した熱を電気へ変え、販売までつなげる仕事を持っています。

同社が扱うバイナリー発電は、地下から得た熱で別の液体を蒸発させ、タービンを回す仕組みです。井戸から熱を得る技術と、地上の発電設備は、同じ会社が必ずすべて開発する必要はありません。

2025年8月には、既存発電所でSageの技術を実証する戦略契約を発表しました。実証が成功すれば、同技術を使った発電所を開発・建設・保有・運営する権利を持つ内容です。

この提携は、技術開発者だけで業界が成立するわけではないことを示しています。既存設備、土地や接続先、運転経験を持つ側にも、新技術と組む役割があります。OrmatのSageとの戦略契約

中部電力:電気と熱の事業へ参加し、運営の知見を得る

中部電力は、Eavorなどとドイツのゲーレツリート事業へ出資しています。次世代地熱の装置を自社で一から開発するのではなく、実際の事業へ参加する方法です。

2025年12月には、同事業の一部営業運転の開始を公表しました。ここでも「一部」であることが重要です。

事業紹介にある電力約8.2MW、熱約64MWは、当初の全体計画の規模です。Eavorが公表した第1ループの運転状況と分けて読む必要があります。

同社の取り組みから見えるのは、発電だけでなく、地域への熱供給を考える事業の形です。電気を売る先に加えて、熱を届ける設備と買い手をどうつなぐかも事業の条件になります。中部電力の事業紹介、一部営業運転の発表

鹿島:地下をつくる経験から、新しい技術へ近づく

鹿島は、2023年12月にEavorへ出資したことを公表しています。グループ会社を含む地下施工の知見を、次世代地熱へ生かす取り組みです。

これは、発電所の所有だけとは異なる参入の考え方です。地中に必要な構造をつくる経験や施工技術を持つ企業が、技術開発者と組んで新しい市場を学ぶ形といえます。

ただし、出資が国内での商用発電の開始を意味するわけではありません。技術を学ぶこと、施工に関わること、発電事業として収入を得ることは別の段階です。

自社の経験と近い企業ほど、この違いを丁寧に読む価値があります。何を一緒に開発するのか、どの仕事を受けられる状態なのかを確認するためです。鹿島のEavorへの出資発表

次世代地熱の数字は、どこを比べればよい?

各社の発表には、設備容量、熱出力、契約容量などが登場します。数字の大きさだけを比べると、案件の進み具合を誤解します。

「送電開始」「計画容量」「契約」は、それぞれ別の話

Fervoの最初の33MW設備の送電開始は、電気が系統へ届いたという出来事です。一方、第1期の約100MWは、複数設備を合わせた計画の規模です。

同社が示す約900MWの売電契約も、すでに全量を発電している意味ではありません。契約は将来の購入先が決まること、稼働は設備が動くことです。

収入につながる契約は重要ですが、工事や運転の条件も満たす必要があります。事業を比較する際は、買い手がいるかと、供給できるかの両方を確認します。

熱の出力を、そのまま発電容量と比べない

Eavorの約8.5MWは、第1ループで取り出す熱の出力です。この数字をFervoの33MW設備と同じ棒グラフへ並べても、発電事業の大きさは比較できません。

熱から電気へ変える過程が必要で、設備を動かすために使う電力もあります。熱を直接売る事業では、電気へ変えずに使う場合もあります。

資料でMWthと書かれていれば熱出力、MWeなら電気の出力を表しています。同じMWでも何の出力かを確認することが、技術の評価につながります。

数字は、単位と段階をそろえて読む

設備・熱出力・契約・目標は同じ数量ではない

Fervo:送電を開始

最初の設備:33MW
2026年9月24日に接続
第1期:約100MWの計画
売電契約:約900MW
全設備が稼働した
容量ではない

送電開始と契約上の営業運転を区別する

Eavor:熱の出力

第1ループ:約8.5MW
取り出す「熱」の出力
発電した電気ではない
当初計画:4ループ
掘削・流路の課題を公表

8.5MWの熱を、8.5MWの電気として数えない

Quaise:開発の目標

3本の井戸による計画
25MW以上の総発電目標
所内消費を引く前の規模
支援対象に選定
発電開始の実績ではない

出典:Fervo Energy、Eavor、Quaise Energyの公表資料を基にイノベーション総研作成。発電した電気、地下から得た熱、将来の設備目標は同じ数量ではないため、規模の順位を示していません。

補助金の採択だけでは、民間顧客の購入を確かめられない

政策の支援は、技術を試す機会や費用の確保につながります。しかし、支援の対象に選ばれたことと、顧客が継続的に代金を払うことは別です。

発電であれば、電力を買う条件を具体化します。熱供給であれば、近くの施設が必要とする温度、量、時期を確認します。

部材や計測サービスの場合も、実証用の購入と、運転時に続く仕事を分けて考えます。技術評価の機会だけでなく、その後に何を販売できるかが事業の論点です。

自社の強みから、検討する入り口を選ぶ

近い状況を開き、確認する条件と本文の参入案を見てください。採点する診断ではありません。

01 耐熱材料・機器を持っている

開発・施工側が持つ実際の使用条件と、自社の試験結果を合わせます。

  • 温度・圧力・流体の条件を確認する
  • 故障時の交換方法と費用を整理する
  • 製品の性能と井戸全体の責任を分ける

部材の参入案を読む →

02 計測・データ解析に強みがある

運転側が何を判断するために使う情報かを決めます。

  • 温度・圧力・流量のどれを測るか
  • 異常時に確認する担当者を決める
  • 設置と継続解析の提供物を分ける

計測の参入案を読む →

03 掘削・地下施工の経験がある

技術開発者や元請けと、作業の範囲と変更時の扱いを合わせます。

  • 狙った位置へ届く仕事を具体化する
  • 地質による追加作業の条件を確認する
  • 自社の責任と提携先の責任を分ける

施工の参入案を読む →

04 電気・熱を使う顧客との接点がある

買い手の条件から、供給する事業の形を考えます。

  • 必要な量・温度・時期を確認する
  • 供給設備と接続の費用を整理する
  • 開発・運転の専門会社と組む

需要側の参入案を読む →

05 設備の保有・出資を考えている

収入が始まるまでの費用と、不測の工事を支える体制を確認します。

  • 売電契約と実際の供給条件を分ける
  • 費用の発生時点と資金を合わせる
  • 開発が長引いた場合の範囲を決める

資金と体制の条件を読む →

06 顧客も使用条件もまだ決まっていない

設備投資の前に、誰の何を引き受けるかを絞ります。

  • 自社の強みに近い仕事を選ぶ
  • 顧客側に残る課題を確認する
  • 条件が揃わない場合は投資を待つ

最初に確認する相手を読む →

NEXT STEP

次のステップ

材料・計測・施工の強みを、顧客が買う仕事へ

自社の技術を、どの開発者や運転側へ提供できるか。イノベーション総研は、提供物、対価、提携先、自社が引き受ける責任を整理し、参入する範囲を具体化します。

日本企業は、地熱のどの仕事へ入れるか

スーツ姿の二人が握手している写真

以下の4案は、各社の実際の契約条件ではなく、公表事例を踏まえたイノベーション総研の分析です。自社にある技術や顧客との接点から、引き受ける仕事を選びます。

1.耐熱部材・計測機器を、使われる条件まで含めて提供する

高温の井戸では、配管、接続部、シール、計測機器などに厳しい条件がかかります。材料や機器を扱う企業は、開発者や施工会社に提供する仕事を考えられます。

顧客が知りたいのは、カタログの最高温度だけではありません。どの圧力や流体の条件で、どの期間使え、交換が必要になったときにどう回収するかです。

提供物は、部材とその試験結果、現地で使うための条件をまとめたものです。対価としては製品の販売、評価試験、点検・交換の仕事などが考えられます。

必要な資産は、材料やセンサーの技術と、試験できる設備です。井戸の施工会社、研究機関、現場の運転側と組む必要があります。

参入を急がないほうがよいのは、実際の使用条件を知らないまま、耐熱という特徴だけで売ろうとする場合です。故障時の影響や交換費用を含めて確認できないと、顧客が採用を判断できません。

2.地下の計測と、運転で使う判断をつなぐ

井戸の温度や圧力、水の流量などは、開発・運転の状態を知る材料です。計測や解析に強みがある企業は、発電所の開発者や運転側へ提供できます。

ただし、数値を見せる画面だけでは、仕事の価値が伝わりません。温度が下がったとき、流量が変わったときに、誰が何を判断するための情報なのかを決めます。

提供物は、現地に合う計測の設計、データの整理、点検や運転の判断に使う報告です。設置時の費用と、運転中の解析・監視の継続費用を分ける形が考えられます。

必要な資産は、地下の現象を理解する人材と、現場のデータに触れられる関係です。地質や井戸の専門家、機器会社、運転会社との協力が欠かせません。

計測値から安全上の判断まで自動で任せる場合は、責任の範囲がさらに重くなります。最初は、何を観測し、どの判断を人へ返す仕事なのかを明確にするほうが現実的です。

3.掘削・設計の一部を、専門的な仕事として受け持つ

掘削や地下施工の企業は、井戸の経路、測位、施工管理など、自社の経験に近い部分を選べます。顧客は地熱の開発者や、全体の工事を担う企業です。

SLBの測位支援のように、井戸の位置を把握して経路をつなぐ仕事は、発電そのものとは異なります。地下で何を実現するかが具体的な提供物になります。

対価は、設計、測位、施工や工程の管理に対するものです。必要な資産は、地下の施工経験、人材、機器と、地熱の条件に適合させる能力です。

機器を貸すだけで足りる場合と、施工結果を引き受ける場合では、責任が変わります。技術開発者や元請けと、作業の範囲、やり直しの条件、地質による変更の扱いを合わせる必要があります。

受注できることと、利益が残ることは別です。未知の地下条件まで自社の責任として一括で受けると、追加作業が収益を圧迫します。

4.電気や熱の買い手を起点に、事業を組み立てる

エネルギー事業者や地域の施設との接点を持つ企業は、技術の販売以外から参入できます。開発側と買い手をつなぎ、供給事業を組み立てる仕事です。

電気の場合は、PPA(電力を長期で売買する契約)などで、購入先や条件を決める方法があります。熱の場合は、工場、暖房設備などで必要な温度や量、距離を確認します。

熱は、地下から取り出せれば遠くの顧客へ簡単に売れるものではありません。届ける設備の費用や、顧客が使う時期も考える必要があります。

必要な資産は、需要側との関係と、事業を調整する能力です。技術開発者、施工・運転会社、金融機関、土地や地域に関係する人たちと組みます。

設備を保有する場合は、開発が長引いても支えられる資金が必要になります。出資が難しい企業は、買い手の条件整理や熱供給の検討など、提供する範囲を絞る方法もあります。

発電所の保有以外にも引き受けられる仕事

4参入案:当社の分析各社の実際の契約ではない

1 耐熱部材・機器

顧客:開発・施工側
納品:部材+耐久評価
対価:販売・点検料
資産:材料・試験技術
提携:施工側・研究機関
見送る:使用条件が不明

2 地下の計測・解析

顧客:開発・運転側
納品:計測+判断の材料
対価:設置・継続解析
資産:地下とデータの理解
提携:地質・運転の専門家
見送る:使う判断が未定

3 掘削・設計・測位

顧客:開発者・工事元請け
納品:狙う位置と施工
対価:設計・施工の費用
資産:地下施工の経験
提携:技術開発者・元請け
見送る:追加費用が未定

4 需要側から事業を組む

顧客:電気・熱を使う側
納品:需要条件と供給計画
対価:調整・供給の仕事
資産:顧客接点・資金
提携:技術・運転・金融
見送る:買い手条件が不明

出典:本文の企業・機関の公表資料を踏まえ、イノベーション総研作成。参入案は当社の分析であり、各社の受注条件や料金を示すものではありません。

設備保有、部材販売、継続解析では、投資や収入が発生する時点が違います。自社の強みがあっても、収入までの期間を支えられるかを確認します。

新規事業の役割や収益の組み立てを整理する際は、新規事業の企画書の構成も参考になります。技術説明だけでなく、顧客へ何を届け、対価を得るかまで書くことが大切です。

次世代地熱で採算を崩しやすい5つの条件

次世代地熱では、技術が動いたことだけで参入を決めないほうがよい場合があります。費用を負担する仕事と、収入につながる仕事の間に、未確認の条件が残るためです。

1.井戸が掘れても、必要な熱を取り出せない

井戸の完成と、安定した熱の回収は別の達成です。EGSでは水の通り道、クローズドループでは流路と岩盤の熱の伝わり方が重要です。

掘削技術の説明だけを読んで、発電の採算まで確かめたと考えると危険です。温度、流量、循環を続けた際の変化を、発電や熱供給の条件と照合します。

部材の企業も、井戸全体の成功まで保証する仕事と、自社の製品の性能を確認する仕事を分ける必要があります。責任を持てない範囲まで販売時に約束しないことが重要です。

2.地中の問題で、掘削と手直しの費用が増える

Eavorの公表内容では、掘削の干渉や流路の問題が、工程と運転へ影響しています。設計通りの形ができる前提だけで計画をつくると、追加の費用に対応できません。

事業者は、掘る期間だけでなく、問題を調べ、流路を直す場合の費用も考えます。施工側は、地質の変化や作業の追加を、契約の中でどう扱うかを確認します。

掘削速度が上がることは重要ですが、それだけで事業全体の費用が下がるとは限りません。必要な井戸をつくり、使える状態にするまでの全体を見る必要があります。

3.水の回収、井戸の健全性、周辺への影響を監視できない

EGSでは、水の回収や地下の圧力の変化を把握する必要があります。クローズドループも、流路が閉じているという設計だけで、補充する水や設備の管理が不要になるわけではありません。

方式ごとに課題が違うため、「水の問題は解決済み」と一括して判断しないことが大切です。監視する対象、異常時に確認する人、停止・再開の判断を具体化します。

周辺への影響を調べる仕事と、地域の関係者へ説明する仕事も必要です。技術の期待だけで、合意の形成を後回しにすることはできません。

4.発電できても、売れる量や価格が計画と合わない

発電設備の規模と、外へ売れる電気の量は同じではありません。ポンプなどが使う電力や、運転できない期間を考える必要があります。

PPAがあっても、契約の供給条件を満たせるかが残ります。価格だけでなく、いつ、どれだけ供給する約束かを確認します。

熱供給では、買い手の近さや必要な温度も重要です。熱の量が十分でも、顧客の用途や配管の費用が合わなければ、販売する事業にはつながりません。

5.開発期間に対して、資金と体制が足りない

次世代地熱は、設備を買って短期間で同じ商品を売り始める事業とは異なります。地下の評価、掘削、各種手続き、設備や需要側との調整を進めます。

費用を払う時点が先にあり、売上が後になる役割もあります。自社が負担する費用と、その期間を支える資金・人材を具体化します。

支援制度があることだけで、事業の継続を判断しないほうがよいでしょう。採択後にも残る費用、顧客からの支払い、運転時に必要な仕事を整理する必要があります。

自社の強みから、最初に確認する相手を選ぶ

技術の可能性を調べた後は、自社が誰と何を確かめるかを決めます。以下の分岐は採点する診断ではなく、検討を具体化するための入り口です。

材料を持つ企業は、実際の使用条件を持つ開発・施工側へ進みます。計測に強い企業は、どの判断を助けるかを運転側と合わせます。

掘削や施工の経験がある企業は、作業と責任の境界を技術開発者や元請けと確認します。地域や顧客の接点がある企業は、電気や熱を使う側の条件から検討します。

大切なのは、企業の強みを次世代地熱の言葉へ置き換えるだけで終わらないことです。「耐熱」「データ」「地域との関係」という特徴を、顧客が買う提供物へ変えます。

たとえば、センサーを持つなら、どの場所で何を測り、交換時にどんな作業が必要かを説明します。熱需要のある施設を知っているなら、必要な温度と時期、既存設備へのつなぎ方を整理します。

顧客も使用条件もまだ決まっていない場合は、設備投資の前に、その二つを確かめるほうが有効です。今は見送るという判断も、取り組むべき仕事を絞るために意味があります。

次世代地熱についてよくある質問

方式や案件を比較する際に、混同しやすい点をまとめます。用語を知ることより、何を確かめれば判断できるかが重要です。

Q. 次世代地熱と従来の地熱発電は、何が違いますか?

A. 従来の地熱は、地下の熱、水、水の通り道がそろう場所を探します。次世代地熱は、岩盤の通り道を人工的に整えるEGSや、閉じた流路で熱を回収する方式などで、利用できる条件を広げます。どの場所でも同じ費用で発電できる意味ではありません。

Q. クローズドループなら、水や地下の問題はなくなりますか?

A. 岩盤へ水を流す方式とは、確認する対象が変わります。ただし、長い流路を正確につくること、十分な熱を回収すること、流路の健全性を保つことは必要です。閉じた流路という設計だけで、監視や補充する水、維持管理が不要になるわけではありません。

Q. 発電所を持たない企業も参入できますか?

A. 耐熱部材、地下の計測、掘削・設計、熱を使う顧客との調整などが考えられます。重要なのは、自社の強みだけでなく、提供先、納品する仕事、対価、必要な提携と責任を具体化することです。これらは参入案であり、実際の受注や採算は個別に確認します。

Q. 日本で次世代地熱の商用化は進んでいますか?

A. NEDOは超臨界、クローズドループ、EGS、共通基盤の研究開発を進めています。また、中部電力や鹿島のように、海外の技術や事業へ関わる日本企業もあります。国内の公募、海外案件への参加、国内での商用発電は、それぞれ別の段階として確認する必要があります。

地下の熱を、継続して売れる仕事へ

次世代地熱を理解する鍵は、地下の熱の大きさだけでなく、取り出す方法と顧客へ届ける仕事を見ることです。Fervoの送電開始、Eavorの運転からわかった課題、各社の提携は、異なる段階を示しています。

自社の参入を考えるなら、発電所の保有だけに絞る必要はありません。材料、計測、施工、需要側の調整から、提供できる仕事を選べます。

その際は、誰が買うか、どこまで引き受けるか、何を他社へ任せるかを合わせて整理します。技術の期待と事業の条件を分けることが、投資する、提携する、範囲を絞る、見送るという判断につながります。

他の領域と参入の役割を比較したい場合は、イノベーション事業機会マップ2026を活用できます。自社の強みをどの顧客と仕事へ結びつけるかは、イノベーション総研の新規事業立ち上げ支援でも整理しています。

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次世代地熱の、どの仕事から始めるか

発電所の保有に限らず、材料、地下の計測、施工、熱を使う側との調整から、自社に合う役割を探せます。技術の期待と事業の条件を分け、提携する相手と見送り条件まで一緒に整理しませんか。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

米国エネルギー省、資源エネルギー庁、NEDO、IEA、Fervo Energy、Eavor、Quaise Energy、Sage Geosystems、SLB、Ormat、中部電力、鹿島の公式資料。本文の該当箇所に出典。参入案はイノベーション総研の分析。

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