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NTTデータ、電子カルテから治験候補者を探すサービスを開始

ニュースの要点

NTTデータは2026年9月30日、電子カルテなどの実際の診療データを使い、治験の条件に合う候補者を探すサービスの提供状況を発表しました。医療機関との契約と製薬企業からの利用申し込みは、同年7月に受け付けを開始しています。

製薬企業の依頼を受け、参画医療機関のデータから候補者を抽出します。診療経過などの文章情報も対象にしますが、治験参加候補者とするかは、医師らが確認したうえで医療機関が最終判断します。

9月末時点で20を超える医療機関と協議し、2医療機関が参画を決定しました。複数の製薬企業からも申し込みがあり、候補者探索の負担軽減と治験の円滑化を目指します。

ニュース出典: NTTデータ/原題「リアルワールドデータを活用した治験候補者の選定支援サービスを提供開始」/公開日:2026年9月30日/公式発表

イノベーション総研の考察

このサービスは、データを売るだけでなく、製薬企業の探索依頼と医療機関の確認業務をつなぐものです。イノベーション総研は、データ分析の技術を、二つの当事者が実際に使う業務へ変える事例として注目します。

データに患者が存在しても、治験の条件で探せるとは限らない

治験には病気の種類だけでなく、過去の治療、検査結果、重症度などの参加条件があります。カルテに必要な情報があっても、同じ項目名で整理されているとは限りません。医師が文章で残した経過を読まなければ分からない情報もあります。

従来の探索では、この確認が医師や治験コーディネーターの負担になっていました。今回のサービスが文章情報も扱うのは、単純な項目検索で見つからない候補者に届くためです。ただし、候補者を広く見つけることと、参加条件を満たす人だけを正しく選ぶことは、別々に確かめる必要があります。

データ活用の価値は、情報を集めることではなく、担当者が探しにくかった候補を確認可能にすることです。

技術検証を経て、製薬企業からの依頼を受ける段階へ移った

NTTデータと近畿大学病院は、2026年5月に候補者抽出の技術検証完了を発表しています。過去の治験・臨床試験の条件と診療データを用いた検証で、今回のサービス化に先立つ取り組みです。詳細な評価結果は学会で公表する予定としていました。

9月の発表では、医療機関と新たに業務委託契約を結び、製薬企業の依頼に基づく探索を支援する形が示されました。研究用データの分析経験を、そのまま患者募集の仕組みと同一視してはいけません。実際のサービスでは、医療機関が保有・管理するデータを使い、最終判断も医療機関に残しています。

技術検証からサービス化へ進む際は、データの利用目的と、業務上の判断責任を改めて設計する必要があります。

医療機関数だけでなく、依頼に応えられるネットワークが必要

製薬企業は、特定の治験条件に合う候補者を探したい立場です。医療機関は、探索や確認の負担を減らしながら、患者へ適切な機会を提供したい立場です。NTTデータは、その間で検索条件の設計と分析、調整を行います。

このため、参加施設が増えるだけでは利用価値は決まりません。依頼された疾患の診療実績があり、必要なデータを使え、抽出後の確認まで進められることが重要です。20超の協議先と参画決定済みの2施設は異なる段階であり、すべてでサービスが稼働していると読むべきではありません。

ネットワーク型の新規事業では、参加数より、顧客の依頼を最後まで処理できる組み合わせが重要です。

候補者の抽出件数と、実際の治験参加を分けて測る

候補者を多く抽出しても、医療機関による確認で条件に合わないと分かれば、再確認の負担が増えます。一方、絞り込みを強くしすぎると、本来参加できる人を見落とす可能性があります。抽出の速さだけでなく、その後の確認を含む評価が必要です。

事業として見るなら、依頼から候補者確認までの期間、確認に要した作業量、最終的な治験への組み入れを区別して追いたいところです。参加には本人への説明や意思確認など別の工程もあり、検索結果がそのまま参加数にはなりません。料金、受注件数、実際の期間短縮効果は今回の発表では明らかではありません。

抽出した人数ではなく、確認負担を減らし、実際の治験参加へつながったかを評価すべきです。

事業の継続性を見るなら、利用した製薬企業が次の治験でも依頼するかを確認したいところです。医療機関側でも、確認の負担に見合う価値が残る必要があります。双方が使い続ける理由を作れなければ、最初の申し込みがあってもネットワークは育ちません。

LLMの研究計画と、現在提供する機能を混同しない

NTTデータは、生成AIの一種である大規模言語モデルを使った共同研究の成果を、今後の精度向上や効率化に生かす方針です。ただし、この記載だけでは、現在のサービスのすべてを生成AIが担っているとは言えません。発表済みの仕組みと、将来の高度化は分けて理解する必要があります。

読者が専門データの事業化を検討する場合も、技術の名称より、利用を許された範囲と人が確認する工程を先に整理すると、導入先と話しやすくなります。キヤノンMJが出資するホテル運営AIと比べると、技術を既存業務へ接続する一方、専門家の責任をどこに残すかが、この事例の特徴です。

専門データのサービス化では、AIの名称より、利用できる範囲と人が確認する工程を明確にすることが先です。

まとめ

NTTデータは、医療データの分析経験と技術検証を基に、治験候補者探索を支援するサービスへ進みました。今後は、施設や申し込みの増加に加え、確認負担と治験への組み入れがどう変わるかを見たい事例です。

既存のデータを外部の業務へつなぐ視点では、NTTジオスペースの道路幅員APIも参考になります。

執筆:イノベーション総合研究所

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