投稿日:2026.10.01 最終更新日:2026.10.01
NTTデータ、化学物質情報をつなぐCMP基盤の提供開始 製造業向け
ニュースの要点
NTTデータは2026年10月1日、製品に含まれる化学物質の情報を企業間で共有する「CMP」の基盤を、CMPコンソーシアムへ提供し始めたと発表しました。原料から完成品までの取引関係と成分情報を結び付け、指定した取引先へ必要な情報を伝えます。
化学物質の規制対象が変わった際、各社がメールなどで行う再調査や情報伝達の負担を減らす目的です。企業秘密を保護しながら情報を連携し、電機・電子や自動車産業から利用を広げます。
2025年6月のNEDO事業採択を経て、2026年4月から500社以上が参加する実証を行いました。コンソーシアムの会員は約580社です。利用拡大は同団体が推進し、NTTデータがシステムの提供、開発、保守を担当します。
ニュース出典: NTTデータ/原題「製品含有化学物質・資源循環情報プラットフォーム「CMP」のサービス提供を開始」/公開日:2026年10月1日/公式発表
イノベーション総研の考察
部品や原料を複数の企業から調達する製造業では、一社の情報だけでは完成品の成分を説明できません。今回の新しさは、個別企業の管理ソフトではなく、取引先をまたぐ情報の流れを基盤として提供する点です。先に紹介したNECの接続アプリケーションとは異なり、基盤そのものの提供開始です。実証から提供開始へ進んだ後は、参加企業が実際の業務を移せるかが重要になります。
再調査の負担は、一社の効率化だけでは解決しにくい
NTTデータは、規制対象の追加や変更のたびに、取引先同士で再調査が必要になることを背景に挙げています。自社の書類を整えても、上流の会社から情報が届かなければ回答はできません。企業間の受け渡しを改善する必要がある課題です。
CMPは、誰と取引しているかと物質情報を結び付けて伝達します。読者が業界向けサービスを考えるなら、自社内の作業と、取引先へ問い合わせる作業を分けると、単独の業務ツールでは解けない需要が見つかります。ただし、今回の提供で全社の再調査が不要になったわけではありません。
企業間の情報待ちが課題なら、一社の作業を速くするだけでなく、受け渡しの仕組みを変える必要があります。
秘密をすべて開かず、必要な相手へ伝えることが参加条件になる
成分や調達先の情報は、企業にとって競争力にも関わります。便利な共有機能があっても、取引先以外に情報が見える不安があれば、参加をためらう可能性があります。発表は、企業秘密を保護し、指定した相手との連携を可能にすると説明しています。
ここで重要なのは、共有する量を増やすことより、必要な情報を必要な相手へ渡せることです。自社がデータ連携事業を作る場合も、利用者が提供できる情報と、提供したくない情報を先に確認したいところです。機能の多さと参加のしやすさは必ずしも一致しません。
業界のデータ基盤は、何でも共有する便利さより、必要な情報だけを安心して渡せることが参加を支えます。
約580社の会員を、継続利用する顧客数と混同しない
今回の発表には、500社以上の実証参加と約580社の会員という数字が出てきます。実証参加にはアプリケーション開発事業者も含まれます。会員数は、有料で日常的に使っている顧客数ではありません。
ローンチ後に見るべきなのは、実際の取引で情報を送った企業数、継続利用、問い合わせや再入力の減少です。料金や利用実績の数値は未公表のため、収益モデルの成功はまだ判断できません。実証で操作できたことと、費用を負担して使い続けることを分ける必要があります。
大規模実証の参加数は関心を示しますが、継続利用と支払いが確認されて初めて事業としての定着が見えてきます。
既存業務を置き換えないと、共有基盤が二重作業になる
新しい基盤への移行では、既存資料を取り込み、日々の変更を反映する作業が必要になります。取引先の一部だけが利用していれば、従来のメール対応も残る可能性があります。導入直後には、業務が増える場合も考えられます。
そのため、最初からすべての情報を移すより、再調査が多い取引や製品を選び、実際に手間が減るかを確かめる方法が有効です。どの取引から始めるか、更新担当を誰にするか、既存システムとどうつなぐかが定着を左右します。機能を提供する側と、利用を広げる側の分担も重要です。
基盤の導入効果は、情報を登録した量ではなく、既存の問い合わせや入力作業をどれだけ置き換えたかで測れます。
次は、利用の広がりと情報が更新される仕組みを見る
コンソーシアムは普及を、NTTデータは開発・保守を担います。今後、各業界のアプリケーションや取引先へ利用が広がるか、情報が古いまま残らないかを追いたいところです。部品リユースや再生材料への拡大は将来の計画で、現時点の成果とは分けます。
NECの電力設備管理サービスと同様、日常の管理業務へ入るサービスは移行の負担も商品価値の一部です。NTTデータの治験検索とも比較し、データがあることと、現場が判断に使えることを区別すると、自社の提供価値を具体化できます。
提供開始後の観測点は、参加社数の増加だけでなく、情報が更新され、実際の取引で使われ続けるかです。
まとめ
CMPは、製造業の化学物質情報を企業間でつなぐ基盤として提供を始めました。今後は会員数だけでなく、継続利用、更新の負担、従来業務を置き換えた効果を確認する必要があります。
執筆:イノベーション総合研究所
CONTACT
お問い合わせ
業界基盤の利用定着を設計する
利用者、情報更新、既存業務からの移行負担を整理します。