投稿日:2026.09.09 最終更新日:2026.09.20
遺伝子の働きを抑えるRNA医薬(siRNA)は薬になる?国内外10社
遺伝子の働きを抑えるRNA医薬(siRNA)は、配列を設計すれば薬になるのか。
化学、材料、分析、製造を持つ企業は、どこから参入できるのか。
結論は、送達、合成、分析、品質をつないで薬にする工程に商機があります。国内外10社と4つの参入方法から、事業化の条件を整理します。
この記事の結論
siRNAの商機は、配列を体内で働く薬へ変える工程にあります。
- 配列、化学修飾、送達、製造、分析を一つにつなぎます。
- 国内外10社は、創薬だけでなく材料・装置・CDMOにも価値があることを示します。
- 参入企業は、顧客のどの手戻りを減らし、どの品質に責任を持つかを決めます。
siRNAは、病気に関わるたんぱく質をつくる前に、その設計情報を止める薬です。遺伝子そのものを書き換えるのではなく、細胞の中にあるメッセンジャーRNAを狙います。
狙う配列を変えれば、別のたんぱく質を抑えられます。この説明だけを聞くと、ソフトウェアのように薬を量産できる技術に見えます。しかし、配列を決めただけでは薬になりません。体内で分解されず、必要な臓器へ届き、細胞へ入り、十分な期間だけ働く必要があります。さらに、同じ品質で製造し、安全性を確かめなければなりません。
2018年に初のRNA干渉治療薬が米国で承認されて以降、肝臓を狙う送達技術は実用段階へ進みました。脂質異常症や血友病など、対象は希少疾患だけではありません。一方、肺、筋肉、脳、腫瘍などへ安定して届ける技術は、今も重要な開発課題です。
本記事では、siRNAの仕組みと核酸医薬の産業構造を、専門知識がない人にも分かる言葉で整理します。国内外10社の取り組みから、どこに商機があり、どの条件なら参入すべきかを考えます。
目次
遺伝子の働きを抑えるRNA医薬(siRNA)とは?病気に関わるたんぱく質の設計情報を止める薬
siRNAは、small interfering RNAの略です。短い二本鎖RNAで、細胞がもともと持つRNA干渉という仕組みを使います。
薬として入ったsiRNAは、細胞内でRISCと呼ばれる複合体へ取り込まれます。二本のうち片方が案内役として残り、相補的な配列を持つメッセンジャーRNAを見つけます。RISCがそのRNAを切ると、対応するたんぱく質がつくられにくくなります。
米国FDAは、patisiranを、体内のRNA干渉を使ってTTRというたんぱく質の産生を抑える医薬品として説明しています。効果を決めるのは、狙う配列だけではありません。
- 配列は、目的のメッセンジャーRNAを正確に見つけます。
- 化学修飾は、体内で分解されにくくし、不要な反応を抑えます。
- 送達技術は、必要な臓器と細胞へsiRNAを運びます。
- 製造と分析は、長さ、純度、二本鎖の組み合わせを一定にします。
重要なのは、siRNAを「配列を設計する創薬」とだけ見ないことです。配列、化学、送達、製造、分析を一つにつなぐ事業です。

mRNA医薬・ASOと比べると、siRNAの役割が分かる
核酸医薬には、siRNA以外にも複数の種類があります。名前が似ていますが、細胞へ渡す指示が異なります。
mRNA医薬は、細胞に「このたんぱく質をつくってください」と伝えます。ワクチンや、足りないたんぱく質を補う治療に向きます。siRNAは反対に、特定のメッセンジャーRNAを壊し、たんぱく質を減らします。
ASOはアンチセンス核酸とも呼ばれます。主に一本鎖で、狙うRNAへ結合します。RNAを分解させるものもあれば、RNAの読み方を変えるものもあります。siRNAは二本鎖で、RISCを利用する点が特徴です。
遺伝子治療やゲノム編集は、DNAや細胞へ長く残る変化を目指す場合があります。siRNAの効果は一般に可逆的です。投与をやめれば、時間とともにたんぱく質の産生が戻る可能性があります。長く効くことは投与回数を減らしますが、副作用が出たときにすぐ戻せない懸念もあります。
どの技術が優れているかではなく、増やすのか、減らすのか、読み方を変えるのか、効果をどの程度続けたいのかで選びます。
配列設計だけでは足りない。薬になるまでの4条件
第一の条件は、狙いが正しいことです。病気とたんぱく質の関係が弱ければ、発現を下げても治療効果につながりません。AI for Scienceの記事で扱う計算技術は候補探索を速めますが、患者のデータと実験で確かめる工程は残ります。
第二は、狙ったRNA以外への作用を抑えることです。似た配列へ結合すると、必要なたんぱく質まで減らす可能性があります。自然免疫がRNAを異物と認識する場合もあります。配列選定と化学修飾を一体で設計します。
第三は、必要な細胞へ届くことです。RNAは大きく、水になじみやすいため、そのままでは細胞膜を通りにくい物質です。血中の酵素にも分解されます。GalNAc結合体や脂質ナノ粒子などで保護し、細胞への入り口をつくります。
第四は、同じものを再現して作れることです。短い鎖でも、合成に失敗した配列、不要な塩、残留溶媒、異なる二本鎖が混ざり得ます。原料、合成、精製、二本鎖化、製剤化、保管までを管理します。
創薬会社の候補が良くても、送達や製造へ移せなければ臨床試験に入りません。製造会社の設備が大きくても、候補ごとの分析法をつくれなければ採用されません。事業価値は、工程をまたいで薬にできるかで決まります。
siRNA医薬品は、希少疾患から慢性疾患へ広がっている
転換点は2018年です。AlnylamのONPATTROが、米国で初のRNA干渉治療薬として承認されました。脂質ナノ粒子でsiRNAを包み、肝臓へ届けます。
その後、GIVLAARI、OXLUMO、AMVUTTRAなど、GalNAcを付けて肝細胞へ届ける皮下注射型が続きました。Alnylamのパイプラインには、承認品に加え、心血管、代謝、神経、血液の候補が並びます。
NovartisのLEQVIOは、PCSK9をつくるRNAを狙い、LDLコレステロールを下げます。初回、3か月後、その後は6か月ごとに医療者が投与する設計です。希少疾患で成立した技術が、患者数の多い慢性疾患へ移った例です。
2025年には、SanofiのQFITLIAが米国で承認されました。アンチトロンビンをつくるRNAを抑え、血友病の出血を予防します。FDAの承認資料は、12歳以上を対象に、最大2か月ごとの投与が可能と説明しています。
承認数だけを見ると、siRNAは実用化済みです。ただし、多くの製品は肝臓でつくられるたんぱく質を狙います。商用化の次の壁は、肝臓以外へ安全に届けることです。

市場規模の予測が大きく違うのは、核酸医薬の範囲が違うから
核酸医薬の市場予測には大きな幅があります。最終製品の売上だけを数える調査もあれば、オリゴ原薬、mRNA、遺伝子治療用DNA、LNP、研究試薬、CDMOまで含める調査もあります。
siRNA単独の市場でも、承認品だけを数えるか、開発中候補の将来売上を含めるかで数字が変わります。慢性疾患の承認確率と価格をどう置くかでも差が開きます。そのため、広い市場規模へ自社の想定シェアを掛けるだけでは、参入判断になりません。
代わりに、誰から、何の対価を得るかへ分けます。
- 完成薬は、対象患者、投与頻度、競合治療、販売体制から売上を考えます。
- 創薬基盤は、共同研究、契約一時金、開発段階ごとの対価、ロイヤルティを考えます。
- 送達技術は、製剤開発費とライセンス収入を分けます。
- CDMOは、候補数、臨床段階、バッチ数、設備稼働率から考えます。
- 原料と分析は、顧客候補数、採用期間、切り替えにくさを見ます。
市場規模は成長性を知る参考です。しかし、事業計画に使えるのは、自社が受け持つ工程まで絞った需要です。
核酸医薬の産業構造は、原料から品質まで5層で見る
第一層は、原料と試薬です。修飾ヌクレオチド、ホスホロアミダイト、酵素、脂質、担体などを供給します。原料の純度と供給の安定は、最終製品の品質へ直結します。
第二層は、合成と精製です。siRNAとASOでは化学合成が中心です。鎖を一つずつ伸ばし、目的の長さに達した後、失敗配列や残留物を取り除きます。長鎖RNAでは酵素を使う方法も広がります。
第三層は、送達と製剤です。GalNAc結合体、脂質ナノ粒子、ペプチド、抗体などで、臓器と細胞を狙います。核酸そのものに加え、届ける材料の安全性と知的財産を確かめます。
第四層は、統合CDMOです。原薬、製剤、無菌充填、保管を受託します。複数の委託先をまたぐと、データの形式と責任が切れます。技術移管を減らせる一貫性が価値になります。
第五層は、分析、品質、薬事です。配列、分子量、純度、二本鎖の比率、残留物、粒子径、力価、安定性を確認します。顧客の申請資料へ使える方法にする必要があります。

一つの会社がすべてを持つ必要はありません。ただし、自社の工程の前後で、何を受け取り、何を保証して渡すかを決めます。採用される技術は、性能だけでなく、次の工程へ移しやすい技術です。
国内外10社で分かる、siRNAと製造基盤の役割
企業を比較するときは、開発品の数だけを並べないことが大切です。完成薬、創薬基盤、送達、原料、装置、受託製造では、顧客と収益モデルが異なります。
| 企業 | 主な取り組み | 担う層 | 事業上の注目点 |
|---|---|---|---|
| Alnylam | RNAi創薬、GalNAc・LNP、承認品とパイプライン | 創薬・送達・商業化 | 一つの創薬エンジンを複数疾患へ展開 |
| Novartis | LEQVIOを世界展開 | 商業化 | siRNAを慢性疾患と長い投与間隔へ広げる |
| Arrowhead | TRiM基盤、肝臓・肺・筋肉などへの送達 | 創薬・送達・提携 | 自社品とライセンスを組み合わせる |
| Silence Therapeutics | mRNAi GOLDとGalNAc-siRNA | 創薬・送達 | 肝疾患の候補を共同開発と導出へつなぐ |
| ReCode Therapeutics | SORT LNPで肺など肝外送達を開発 | 送達 | 第5の脂質で臓器選択を変える |
| 味の素 | AJIPHASEでオリゴ核酸を開発・製造 | 合成・CDMO | 液相技術を含め少量から商用へつなぐ |
| Nitto Avecia | オリゴ原薬、分析、製剤、充填 | CDMO | 多数の配列経験と工程の一貫性を持つ |
| Thermo Fisher Scientific | siRNA、修飾原料、分析機器を供給 | 原料・研究・分析 | 研究から品質管理まで接点を広く持つ |
| Precision NanoSystems | NanoAssemblrでLNP製剤化を支援 | 装置・送達 | マイクロ流路を研究から製造へ広げる |
| CordenPharma | オリゴ合成、LNP、無菌製剤を受託 | 統合CDMO | 原薬と製剤を一つの供給網で扱う |

Alnylamは、RNAiを一つの薬ではなく創薬エンジンにした
Alnylamは、2002年の設立からRNA干渉治療薬へ集中してきました。同社の科学紹介では、配列を替えながら基本化学と開発工程を再利用する「プラットフォーム型」を特徴に挙げています。
ONPATTROはLNPでsiRNAを肝臓へ運びます。その後のGIVLAARI、OXLUMO、AMVUTTRAなどは、GalNAcを使う皮下注射型です。GalNAcは肝細胞に多い受容体へ結合します。大きな粒子で包む方法から、小さな糖を直接つける方法へ進んだことで、投与と製造の形が変わりました。
同社は自社販売だけに絞っていません。LEQVIOはNovartisが販売し、複数の候補を大手製薬と共同開発しています。自社で持つ疾患と、相手の開発・販売力を使う疾患を分けています。
新規参入企業が学ぶべき点は、候補数の多さではありません。共通の化学、送達、分析、製造を再利用しながら、標的ごとの違いを臨床へつなげる仕組みです。
Novartisは、siRNAを半年ごとの慢性疾患治療へ広げた
LEQVIOは、肝臓でPCSK9というたんぱく質がつくられるのを抑えます。PCSK9が減ると、血液からLDLコレステロールを取り除く仕組みが働きやすくなります。
Novartisの承認発表では、初回と3か月後、その後は半年ごとの投与としています。毎日飲む薬とは異なり、医療機関での定期投与に変える考え方です。
これは、分子の性能だけでなく、治療の運用を変える事例です。投与回数を減らせても、患者を見つけ、予約し、投与し、効果を確認する仕組みがなければ普及しません。Novartisは大規模な心血管試験と医療システムへの導入を進めています。
慢性疾患を狙うsiRNAでは、希少疾患より大きな供給量が必要です。価格、原薬の生産性、医療機関での投与負担までが競争条件になります。
ArrowheadとSilenceは、送達基盤を提携で広げている
ArrowheadのTRiMは、標的へ結合する分子、リンカー、安定化したRNAを組み合わせる基盤です。同社の提携方針は、自社開発に加え、製薬会社の知見と資金を使って候補を広げる方法を示しています。
2026年には、PCSK9とAPOC3を一つのRNAi分子で同時に抑えるARO-DIMER-PAの第I/IIa相試験を開始しました。一つの遺伝子だけでなく、複数の経路を同時に狙う方向です。ただし、二つを抑える利点と、安全性を別々に説明する必要があります。
Silence TherapeuticsのmRNAi GOLDは、siRNAを設計・修飾し、GalNAcで肝細胞へ届けます。同社の技術紹介は、長く続く一方で可逆的な効果と、年に数回の投与を目指すと説明しています。
両社に共通するのは、送達技術を一つの候補で終わらせないことです。複数の標的へ展開し、自社開発と導出を組み合わせます。技術基盤の価値は、候補をつくる速さだけでなく、相手が臨床・製造へ引き継げる再現性で決まります。
ReCodeが狙うのは、肝臓以外へ核酸を届ける市場
現在のsiRNAで実績が多いのは肝臓です。肝臓は血液から多くの物質を取り込み、GalNAcが結合する受容体も豊富です。逆に、肺、筋肉、脳、腫瘍へ必要量を届けることは難しくなります。
ReCode TherapeuticsのSORT LNPは、一般的なLNPに「第5の脂質」を加え、体内で結合するたんぱく質を変える考え方です。同社の説明では、mRNA、siRNA、遺伝子修正の材料を、肺や脾臓などへ届けることを目指しています。
同社の臨床候補は現在mRNAが中心です。それでも、siRNA事業にとって重要な事例です。送達基盤が複数の核酸へ使えるなら、一つの薬の成功だけに依存しない収益モデルを組めるからです。
肝外送達の評価では、「届いた」という画像だけでは足りません。目的の細胞でたんぱく質がどれだけ下がったか。別の臓器にどれだけ残ったか。反復投与できるか。製造スケールを上げても粒子が同じかを確認します。
味の素とNittoは、核酸医薬を研究量から商用量へつなぐ
味の素のAJIPHASEは、オリゴ核酸の合成を受託する技術です。味の素の紹介では、固相法と異なる考え方を取り入れ、工程中の分析と大量製造、溶媒使用量の削減を特徴に挙げています。
同社のBio-Pharma Servicesは、研究用の少量からGMP原薬までをつなぎます。顧客にとって重要なのは、大きな設備があることだけではありません。初期に決めた工程を、治験用、商用へ移しても品質が変わらないことです。
NittoはAveciaを核酸医薬の中核に置いています。Nittoの設備投資発表では、1,200を超えるオリゴ配列の経験をもとに、工程・分析開発と商用原薬の能力を広げるとしています。原薬だけでなく、製剤、充填、分析も組み合わせます。
両社は日本企業が入りやすい一つの型を示します。製薬会社になるのではなく、化学合成、材料、品質管理を核に、顧客の開発段階をまたいで支える型です。
Thermo Fisher・Precision NanoSystems・CordenPharmaは、周辺工程を事業にする
Thermo Fisher Scientificは、研究用siRNA、修飾ホスホロアミダイト、合成用薬品、分析機器を提供します。同社のsiRNA製品は、配列設計、合成、HPLCや質量分析による確認を一つの研究導線にしています。創薬候補を持たなくても、研究者が繰り返し使う材料と測定に入れます。
Precision NanoSystemsは、NanoAssemblrというマイクロ流路装置を展開します。核酸の水溶液と脂質を細い流路で混ぜ、粒子径をそろえたLNPをつくります。研究用の少量から製造工程へ移しやすくすることが価値です。装置だけでなく、カートリッジ、工程条件、品質データが継続収益になります。
CordenPharmaは、オリゴ核酸の合成からLNP、無菌製剤までを受託します。同社のサービスには、siRNA、オリゴ、pDNA、mRNAとLNPの工程が含まれます。顧客は複数の委託先を調整する負担を減らせます。
この三社が示すのは、siRNA事業が新薬開発だけではないことです。原料、装置、消耗品、分析、工程移管にも、繰り返し対価が発生します。

siRNA事業の価値は、送達・製造・分析へ移っている
配列設計は重要です。ただし、配列候補を計算で出すことは以前より速くなっています。顧客が不足しているのは、候補を体内で使える証拠へ変える機能です。
第一の価値は、肝臓以外への送達です。肺、筋肉、免疫細胞、脳、腫瘍に届けば、対象疾患が広がります。送達材料の知的財産と安全性データが参入障壁になります。
第二は、候補を早く落とす評価です。標的細胞への取り込み、標的RNAの低下、たんぱく質の低下、効果の持続、別臓器への分布を一つの試験系で比べます。オルガノイドの記事で扱うモデルも、患者差を調べる手段になります。
第三は、環境負荷と収率を改善する製造です。固相合成は実績がありますが、溶媒と原料を多く使います。液相、酵素、連続生産が、どの鎖長と量で有利になるかを実測します。
第四は、分析と品質データです。顧客が変わっても使える分析法、規制当局へ説明できる手順、工程変更の比較データは、長く残る資産です。
完成薬の成否に賭けなくても、複数候補が必ず通る工程を支える方法があります。ただし、単なる受託作業では価格競争になります。顧客の失敗や手戻りを、何日、何回、いくら減らすかまで示します。
自社はsiRNA事業のどこへ入れるか
創薬、肝外送達、合成・分析、開発統合から近い入口を確認します。
NEXT STEP
次のステップ
核酸・材料・分析の資産を、採用される事業へ。
顧客の開発工程、必要な証拠、送達、製造移管、提携先、品質責任を一つの事業構造に整理します。
siRNAの新規事業は、4つの入口から考える
一つ目は、疾患別の創薬基盤です。標的、配列、化学修飾、初期データをそろえ、製薬会社へ導出します。自社で臨床まで進める候補と、早期に提携する候補を分けます。
二つ目は、肝外送達の材料・製剤基盤です。脂質、ペプチド、抗体などで特定細胞を狙います。研究受託だけで終わらず、材料供給、製剤開発、ライセンス、商用ロイヤルティへつなげます。
三つ目は、合成・分析の専門サービスです。高純度化、溶媒削減、長鎖対応、不純物同定、安定性試験など、一つのボトルネックに絞ります。前後工程のCDMOが採用できる形にします。
四つ目は、開発統合サービスです。配列決定後の原料調達、製造委託先、分析法、製剤、薬事資料をまとめます。設備を持たなくても、工程の境目と品質責任を管理できます。

参入方法は、自社が持つ技術から決めるのではありません。顧客が最も困る工程と、自社が証拠をつくれる工程の重なりから決めます。
製造基盤へ入るなら、巨大な工場より一つの難所から始める
核酸医薬の成長を見て、最初から商用CDMOをつくる判断は危険です。設備、品質保証、査察対応、人材をそろえるまで売上が立ちません。顧客候補の臨床開発が遅れれば、設備が空きます。
先に、一つの難所を選びます。例えば、特定修飾RNAの高純度合成、二本鎖の不純物分析、肝外LNPの少量製剤化、凍結融解後の安定性、委託先間の比較分析です。顧客の候補で再現できれば、次の工程へ広げます。
商用設備は、需要が「市場全体」ではなく、具体的な候補と契約で見えた後に考えます。自社で持つのは差別化する工程と品質データです。大量生産、無菌充填、世界供給は、既存CDMOと提携できます。
この順番なら、早い段階で顧客の採用条件を学べます。失敗しても大型設備が残りにくくなります。成功した場合は、技術ライセンス、材料供給、受託開発、共同設備という複数の拡張先があります。
参入前に見るべき懸念は、知財・安全・品質・設備の4群
知的財産では、siRNA配列だけでなく、化学修飾、標的リガンド、脂質組成、製造法を確認します。研究で使えた材料が、商用ではライセンスできない場合があります。顧客へ提案する前に、どの用途と地域で使えるかを整理します。
安全性では、標的外作用、自然免疫、肝毒性、血小板、補体、投与時反応などを候補ごとに見ます。長く効くことは利点ですが、問題が起きたときの回復にも時間がかかります。停止条件と観察方法を先に決めます。
品質では、原料の変更、スケール変更、委託先変更が製品特性へ与える影響を見ます。研究用とGMP用で製法が大きく変わると、初期データをやり直す可能性があります。採用時点から変更管理を設計します。
設備では、需要の時間差が問題です。候補は臨床試験の結果で止まり、次のバッチが消えることがあります。一社一候補へ依存せず、複数配列と複数製法へ切り替えられるかを見ます。
さらに、責任の境目を契約で決めます。送達材料の不具合か、製剤条件か、保管か、投与かを後から争うと、原因究明が遅れます。試料、データ、逸脱、回収、損害の責任を工程ごとに置きます。
参入・提携・待機・見送りは、証拠と責任で決める
参入を選ぶのは、顧客の候補を使って性能を再現でき、必要な品質を保証し、前後工程へ渡せる場合です。自社の強みを「純度が高い」ではなく、「再合成の回数を減らす」「治験用製造へそのまま移せる」と顧客の損失で説明します。
提携を選ぶのは、差別化した材料や分析法はあるものの、動物試験、GMP製造、無菌充填、海外薬事を持たない場合です。自社ですべてを抱えず、顧客が一つの開発計画として使える体制を組みます。
待機を選ぶのは、性能は見えるものの、標的顧客、用途、支払条件が決まっていない場合です。大型投資を止め、研究用案件で採用条件と品質要求を集めます。
見送りを選ぶのは、既存技術との差が小さい、知財を避けられない、安全性を測れない、設備稼働の根拠がない場合です。市場が伸びることは、自社の事業が成立する証拠ではありません。

判断の中心は、siRNA市場へ入るかではありません。どの工程の失敗を減らし、どこまで責任を持つかです。
siRNAに関するよくある質問
まとめ:siRNAの商機は、配列を薬へ変える工程にある
siRNAは、病気に関わるたんぱく質の設計情報を狙って減らす薬です。2018年以降、肝臓を狙う送達技術は複数の承認品へつながりました。慢性疾患にも対象が広がっています。
一方、配列を決めただけでは薬になりません。化学修飾、送達、合成、精製、分析、品質保証をつなぐ必要があります。国内外10社を見ると、価値は完成薬だけでなく、肝外送達、原料、装置、専門CDMOへ広がっています。
新規参入では、巨大な商用工場を先につくるより、顧客が困る一つの難所から始めます。再現できる証拠と品質データを持ち、前後工程は提携でつなぎます。
配列設計の新しさではなく、顧客の開発をどこで止めずに済むか。この問いに答えられる企業に、siRNA事業の参入余地があります。
参照した主な一次情報
- FDA:New Class of Drugs Fulfills Promise of RNA-based Medicine
- FDA:QFITLIA承認発表
- Alnylam:RNAiの科学
- Alnylam:臨床開発パイプライン
- Novartis:LEQVIO承認発表
- Arrowhead Pharmaceuticals:提携方針
- Silence Therapeutics:mRNAi GOLD
- ReCode Therapeutics:SORT LNP
- 味の素:AJIPHASE
- Nitto:核酸医薬製造事業への投資
- Thermo Fisher Scientific:Custom siRNA and miRNA
- CordenPharma:Sterile Liquid Manufacturing
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