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推し活市場はグッズだけではない|企業9事例と新規事業の勝ち筋

推し活市場は、グッズを増やせば取れるのか。
ファンとの関係を、どう事業に変えるのか。

結論は、商品より先に、ファンとの関係を長く育てる設計が重要です。企業9事例から、収益構造と参入機会を読み解きます。

この記事の結論

推し活は、公式商品だけでなく、自主制作、旅行、飲食まで広がる市場です。

  • 約3.8兆円の市場を、4種類の消費に分けます。
  • 企業9事例を、5つの価値連鎖で解説します。
  • 4つの参入ルートと、権利・データ・炎上の懸念を示します。

推し活とは?「好き」を関係と自己表現へ変える行動

推し活とは、好きな人物、キャラクター、作品などを応援する活動です。つまり、商品を買うだけではありません。

たとえば、配信を見る、現地へ出かける、ファン同士で交流する、自分で応援方法を工夫する行動まで含みます。

「推し」は、アイドルや俳優に限りません。たとえば、アニメ、ゲーム、スポーツ選手、動物、鉄道、企業のマスコットも対象になります。

つまり大切なのは、対象そのものより、生活者が特別な意味を感じていることです。

企業から見ると、推し活は一つの商品分野に収まりません。コンテンツ、会員、物販、イベント、旅行、飲食をまたぐ消費行動です。

一方で、ファンの気持ちは売上の道具ではありません。信頼を損なうと、数字以上の速さで関係が崩れます。

この記事の結論は、推し活の事業価値は、商品を増やすことより、ファンとの関係を長く育てる設計にあるということです。9社の事例から、利益が生まれる場所と、新規事業で参入するときの条件を読み解きます。

推し活市場は約3.8兆円。4種類の消費を分けて見る

推し活の市場規模は、どこまでを含めるかで数字が変わります。グッズとチケットだけを見るのか、遠征、宿泊、制作道具まで含めるのかで差が出るためです。

まず、推計の範囲を確認します。

公式以外の消費が約6割を占めるため、交通、小売、地域事業者にも機会があります。自社がどの消費を増やせるかを決めてから、提携先を選びます。

野村総合研究所(NRI)の2025年8月公表資料は、2025年3月時点の国内の推し活関連市場を約3.8兆円と推計しています。推し活人口は全国の15~69歳を対象とした推計で約2,600万人(32%)、そのうち40歳以上は約1,200万人です。

全年齢の人口に対する割合とは区別します。

NRIは消費を次の4種類に分けています。表の最後のコラボ消費は約0.3兆円です。

総額・内訳は原典の概数のため、表示額の単純合計は一致しません。

消費の種類 主な内容 推計額の目安 企業が見るべき点
公式消費 公式グッズ、チケット、会費、配信 約1.5兆円 公式の商品・体験への支出
自主消費 自作グッズ、応援広告、装飾、撮影 約1.0兆円 ファンが応援方法を作る
付随消費 交通、宿泊、飲食、通信、機器 約1.1兆円 異業種にも機会が広がる
コラボ消費 企業コラボ、限定商品、共同企画 約0.3兆円 新しい接点を作りやすい

約6割という数字が示すのは、IPの公式商品以外にも消費が広がっていることです。周辺事業なら許諾や権利料が不要という意味ではありません。

自社の売上予測は、市場全体の一定割合を置くのではなく、届くファンの人数、購入する割合、単価から積み上げます。

クリエイターエコノミー協会と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査は、国内クリエイターエコノミーを2024年に2兆894億円と推計しています。2021年の1兆3,574億円から年平均15.5%の成長ですが、創作者の収益に加え、創作を支えるサービスへの支出も含む市場です。

推し活市場との重複範囲が不明なため、二つの金額を足して市場規模にはしません。

推し活の採算は、顧客接点と費用を分けて考える

市場が大きくても、参加すれば利益が出るわけではありません。制作費、出演料、在庫、物流、会場、決済手数料が重なるためです。

そのため、売上より先に、顧客接点と費用構造を見ます。

ファンとの接点には、SNS、配信、会員、EC、イベント、店舗があります。たとえば、SNSは人を集めやすい一方、表示ルールやアカウント停止の影響を受けます。

一方、会員や自社ECは立ち上げに手間がかかりますが、継続率や購入履歴を自社で把握できます。

次の表は、ファンが接する場と収益の関係を整理したものです。すべての人が順番に進むとは限らないため、自社が担う接点で何を改善するかを選びます。

関係の段階 代表的な接点 収益 見る指標
知る SNS、短い動画、検索 広告、送客 新規接触、視聴完了
好きになる 配信、作品、無料コミュニティ 広告、投げ銭 再訪、視聴時間
応援する 会員、限定コンテンツ、グッズ 月額、販売 継続率、購入率
会いに行く ライブ、店舗、旅行、地域企画 チケット、物販、周辺消費 来場、客単価、回遊
一緒に作る 投稿企画、二次創作、投票 継続、商品開発 参加率、再購入

すべての接点を自社で持つ必要はありません。購入と再訪を確認したいのか、問い合わせを減らしたいのかを先に決め、必要なデータだけを扱います。

提携先との共有は利用目的、必要な同意、閲覧権限を確認し、共通IDを導入すること自体を目的にしません。

架空例:受注生産のグッズは何個売れれば採算が合うか

以下は計算方法を示す架空例で、実際の会社の収益や相場ではありません。許諾を得た商品を受注生産し、販売価格を税抜3,000円、1個の製造費を900円、配送・決済等を300円、販売額に対する権利料を10%と仮定します。

企画・デザインなどの固定費は15万円とします。

架空例:販売個数による採算の違い
見る項目 計算 結果
1個売れるごとに固定費へ回せる金額 3,000円 − 900円 − 300円 − 権利料300円 1,500円
この企画の固定費を回収する個数 150,000円 ÷ 1,500円 100個
80個売れた場合 80個 × 1,500円 − 150,000円 3万円の赤字
120個売れた場合 120個 × 1,500円 − 150,000円 3万円の黒字

市場の大きさより、実際の購入数で費用を回収できるかを確認します。この計算は会社共通の管理費や税金を含まず、最低製造数量・最低保証の権利料がない仮定です。

返品、再製造、在庫が生じる契約ならその費用も足し、販売開始前に「何個までなら引き受けられるか」を決めます。

推し活の業界構造は5層で捉える

推し活ビジネスは、IP保有会社とグッズ会社だけではありません。以下の5層は当研究所による役割の整理です。

作品や演者を育てる層から、ファンの体験を生活圏へ広げる層まで、5つに分けると参入位置が見えます。

層 主な役割 代表的な売上 主な課題
1. IP創出・育成 作品、キャラクター、演者を作る 権利収入、広告、出演 ヒットの不確実性、育成負荷
2. 制作・運営基盤 配信、3D、編集、権利管理を支える SaaS、制作費、手数料 技術更新、属人化
3. 配信・発見 ファンが知り、見る場を作る 広告、課金、送客 外部基盤への依存
4. 会員・直接課金 コミュニティ、EC、チケットを運営 月額、販売、手数料 継続率、個人情報管理
5. 物販・体験・ライセンス 商品、ライブ、店舗、旅行へ広げる 物販、入場、ライセンス 在庫、安全、体験品質

後発企業は、自社の資産が効く一層から入るのが基本です。顧客接点まで持てない場合は、会員やECの事業者と役割を分けます。

大手IP(キャラクターや作品などの知的財産)企業は、複数の層をつなぎます。一方、新規参入企業は、最初からIPを作る必要はありません。

むしろ、物流、会員管理、旅行、店舗運営、権利確認など、自社が持つ機能を一つの層へ差し込めます。

ただし、便利な裏方だけでは価格競争になりやすい点に注意が必要です。特定ジャンルのファン行動を理解し、権利者とファンの双方に価値を返せる設計が差になります。

企業9事例で分かる、推し活ビジネスの作り方

ここからは、実際の企業が何をしているかを具体的に見ます。というのも、IPを作る会社、関係を支える会社、周辺消費を取り込む会社では、勝ち方が異なるからです。

また、計画と実施済みの取り組みも分けて読みます。

企業・サービス 主な位置 取り組み 実装段階
ANYCOLOR/にじさんじ IP、配信、物販、イベント 既存配信・物販と、2026~2027年の計画 商用運用
COVER/hololive production IP、配信、物販、ライブ 配信で得た支持をメディアミックスへ拡張 商用運用
バンダイナムコ IP、商品、ゲーム、施設 IP軸で商品・サービスを横断して展開 全社戦略
サンリオ IP、ライセンス、デジタル、施設 長寿IPを日常、ゲーム、映像、店舗へ展開 商用運用・計画
HYBE/Weverse 会員、配信、EC、ライブ コミュニティ・コンテンツ・商取引を統合 商用運用
note 制作、販売、会員 個人が記事や会員制で直接収益化 商用運用
THECOO/Fanicon 会員、配信、EC、チケット 有料コミュニティの運営を一体化 商用運用
JR東海/推し旅 交通、地域体験 移動中・現地限定の音声やARを提供 商用運用
Oshicoco 自主消費、商品、メディア 推し活用品、アーティスト商品、メディアを展開 商用運用

IPを持たない企業にも、関係を支え、生活圏へ広げる役割があると分かります。次の図では、各社が主に担う接点を並べます。

推し活の企業9事例を価値連鎖上の役割で整理した図
図1|9事例の主な役割を当研究所が整理。業績や施策効果の比較ではなく、提供する接点の違いを示しています。

ANYCOLORは、配信から物販と現地体験へ広げる

ANYCOLORは「にじさんじ」を運営し、配信、商品、ライブなどを展開しています。2026年5月17日のプロジェクト発表には、2026年夏のぬいストア巡回やライブに加え、2027年春の大阪常設店も含まれます。

ここで紹介するのは発表された計画であり、すべてが完了した実績ではありません。

配信で知った人物や世界観を、持ち歩ける商品や現地体験でも楽しめる構成です。小売企業が応用するなら、既存ファンの何を満たす商品なのか、権利者による確認と販売時期をどう合わせるかを考えます。

商品数を増やすだけで継続購入が増えるとは限らないため、購入後の反応も確認します。

COVERは、VTuberを長く使えるIPへ育てる

COVERは「hololive production」を運営し、事業紹介で、配信・ライブから商品、ライセンス、コミック、アニメへの展開を説明しています。2026年7月7日の台湾イベント出展発表では、同年9月のファンミーティングと限定商品を案内しました。

これは発表時の開催計画を確認したもので、集客や収益の結果とは分けて扱います。

配信者の人気だけに依存せず、キャラクター、音楽、物語、海外イベントへ接点を増やす考え方です。一方、出演者の稼働には限界があります。

運営会社には、休養、権利、品質、危機対応を支える仕組みが必要です。

バンダイナムコは、IPをゲームから商品・施設へ回す

バンダイナムコの統合レポート2025(8~9頁)は、IPを軸に商品・サービス、地域、投入時期を組み合わせる戦略を説明しています。なお、同年の社長メッセージにある「360度でつながる」対象は、IPファンだけでなく、株主、従業員、取引先、社会も含みます。

この事例から新規事業で参考にできるのは、自社だけで提供できない接点を、ほかの事業部や企業と組み合わせる考え方です。例えば、ゲームを知った人へ商品や施設を案内する場合も、権利の範囲、企画の時期、費用負担をそろえる必要があります。

単に同じキャラクターを載せることと、事業間の連携は別です。

サンリオは、キャラクターとの接点を複数の事業へ広げる

サンリオは、ライセンス、商品、テーマパークなどを展開しています。2025年の中期ロードマップ更新資料(25頁)には、ゲーム、アニメ、YouTube、Sanrio+などの2025~2028年度の計画が並びます。

既存の事業と、今後の開発・公開予定を分けて読む必要があります。

自社への応用では、すでに知っている人が再び参加できる企画と、初めて知る人向けの入口を分けて考えます。周年や投票が参加理由になるかは、対象者への確認が必要です。

ロードマップだけで、各施策が売上や再訪を増やしたとまでは判断しません。

HYBEとWeverseは、交流・視聴・購入を一つにまとめる

Weverseは、アーティストのコミュニティやコンテンツと、商品を買う導線を結びつけています。2024年3月の公式アップデート告知では、参加しているコミュニティから該当するShopへ移動する機能などを案内しています。

自社で参考にするなら、機能を増やす前に、参加から購入までどこで迷いや手間が生じるかを確認します。アカウント連携には利便性がある一方、配送先、決済、利用履歴などの管理も伴います。

共通IDの有無だけで利益の大小を説明せず、同意やアクセス権を含む運用費も比べます。

noteは、小さな発信を直接課金へ変える

参考になるのは、広告以外に直接課金の選択肢があることです。

noteは有料記事や月額メンバーシップなどを提供しています。2026年1月7日公表の分析が扱った約30万件は、実際に売れた有料記事の分析対象で、サイトの記事総数ではありません。

また、売上上位1,000人の平均年間売上約1,515万円は、2024年12月~2025年11月の値です。利益や一般利用者の平均所得とは異なります。

この分析は専門知識などの販売も含み、すべてが推し活による収益ではありません。

上位層の売上を計画に置くのではなく、支払う読者の人数と継続率、更新や質問対応にかかる時間を小さく確かめます。

Faniconは、会員・交流・販売を裏方から支える

THECOOのFaniconは、会員制のファンコミュニティを支えるサービスです。2026年9月27日に確認した公式サイトは、コミュニティ開設数3,800、ファン登録数485,000と表示しています。

開設・登録の規模であり、現在の有料会員数や日々利用する人数とは区別します。投稿、配信、チャットに加え、ECやチケットなどの機能を備えます。

複数の機能をまとめることで運営を支える事例ですが、この公表値だけでは継続率や利益改善の効果は分かりません。導入する側は、別々のツールを使う場合と比べた運営工数、手数料、必要なデータの取得範囲を確認します。

JR東海の「推し旅」は、移動時間まで体験に変える

JR東海の「推し旅」は、作品や人物とのコラボレーションを移動や旅先の体験へ組み込むサービスです。公式FAQには、東海道新幹線の車内限定音声・動画や、現地の位置情報を使う音声・ARの案内があります。

車内コンテンツには一定の速度を検知する条件などがあり、利用区間や参加方法は各企画で確認します。

付随消費に関わる企業が、移動自体に楽しみを加える事例です。地域で応用するなら、交通・店舗・宿泊をただ並べず、参加者がどの順で訪れ、各社にどの費用と売上が生じるかを決めます。

来訪が増えたかと、追加の運営・権利費を回収できたかは別に測ります。

Oshicocoは、ファンが自分で作る応援方法を商品化する

Oshicocoは、推し活用品の販売とメディア運営を行います。公式サイトには、トレーディングカードが見えるポーチ、ぬいぐるみ用の服、キーリングを使うカスタマイズなどが掲載されています。

SKE48の商品も案内されていますが、個別の許諾契約の内容までは公表情報から確認できません。

自主消費の特徴は、ファン自身が色、見せ方、持ち運び方を選ぶことです。そのため、権利者の公式商品と競うのではなく、公式商品を大切に使い、共有するための周辺用品を作れます。

実際、ここには、収納、保護、撮影、交換、遠征といった細かな困り事があります。

推し活ビジネスで確認したい5つの設計ポイント

自社で提供する接点、扱うデータ、権利と運営の担当を具体化します。以下は9事例を参考にした当研究所の点検項目です。

9社の成功原因を同じ条件で検証した結果ではなく、自社の企画で不足する準備を見つけるために使います。

確認する点 具体的な設計 失敗しやすい状態
無料から有料への段階 SNS、配信、会員、商品、現地体験をつなぐ 最初から高額商品だけを売る
必要なデータと同意 目的に必要な情報だけを取得・共有する 外部SNSのフォロワー数だけを見る
参加できる余白 投票、投稿、色選び、現地回遊を用意する 企業が一方的に正解を決める
権利と安全の運用 ガイドライン、審査、通報、返金を整える 問題が起きてから担当を探す
続けられる供給 出演者、制作、在庫、物流を平準化する 一人の人気と稼働へ集中する

とくに重要なのは、ファンを「高く買う人」だけで見ないことです。というのも、投稿する人、友人を誘う人、現地へ行く人、長く見守る人は、それぞれ別の価値を作るからです。

逆に、客単価だけを上げる施策は、参加しにくさや疲れにつながります。

また、継続率はサービス品質だけで決まりません。実際には、推し本人の活動、作品の更新、ファン同士の雰囲気にも左右されます。

そのため、事業者は、自社で変えられる原因と変えられない原因を分けて見る必要があります。

NEXT STEP

次のステップ

ファンの熱量を、長く続く関係へ。

自社の顧客接点、場所、運営力を棚卸しし、推し活市場で担える一つの役割を具体化します。構想の具体化や検証から事業化までの実行支援は、TeamPro Pilotsのサービスページで確認できます。

推し活で狙える4つの新規事業

新規参入で大切なのは、人気IPを持っているかではありません。むしろ、既存の顧客、場所、技術、物流、専門知識を、ファンの困り事へ変換できるかです。

そこで、4つの参入方法を示します。

参入方法 顧客 提供価値 収益モデル 提携先 最初に確かめること
業界特化のFanTech IP保有者、芸能、スポーツ 会員、EC、チケット、分析を統合 月額+取引手数料 決済、物流、本人確認 一つの接点統合で継続率が上がるか
権利処理付きUGC基盤 IP保有者、ファン、広告主 二次創作や応援広告の許諾を簡単にする 審査料+ライセンス料 権利者、法律家、媒体 許諾時間と違反件数を減らせるか
推し旅・地域回遊 交通、自治体、施設、IP保有者 移動と現地体験を一つにする 企画料+送客+販売 交通、宿泊、店舗 来訪増と権利費を両立できるか
推し活運営のAI支援 事務所、クリエイター 問い合わせ、翻訳、在庫予測を支援 SaaS+運用支援 AI、CS、物流 人の確認を残して負担が減るか

4案に共通するのは、ファンの気持ちそのものを売らないことです。権利確認、移動、運営、問い合わせなど、応援を続けるための具体的な負担を減らします。

推し活で狙える4つの新規事業と参入条件を示した図
図2|当研究所が提案する4つの参入候補。需要や採算を実証済みの事業ではなく、自社の資産と顧客課題から検証する案です。

一つ目は、特定業界に絞ったファン基盤です。というのも、汎用コミュニティ機能だけでは、大手と競合するからです。

たとえば、スポーツなら座席、試合日程、選手別商品をつなぐなど、業務固有の機能が必要です。

二つ目は、利用者が作るコンテンツ(UGC)の権利確認を支える仕組みです。文化庁の二次創作に関する解説は、私的に楽しむ場合と、公開する場合を区別しています。

権利者ごとのガイドラインや契約を確認し、利用目的、媒体、期間、販売の有無を整理します。AIによる分類を使う場合も、許諾の可否を自動判定だけで確定せず、権利者や担当者が確認できる手順を残します。

三つ目は、交通や地域への展開です。具体的には、IP保有者には新しい体験と収益を、地域には来訪と回遊を返します。

そして、会場だけでなく、駅、商店街、飲食店まで体験をつなげる運営力が差になります。

四つ目は、クリエイター運営のAI支援です。翻訳、問い合わせ分類、商品需要の予測、配信の切り抜き候補などを補助できます。

ただし、本人になりすました返信や、権利未確認の学習・生成は避けます。AIエージェントの記事で解説したように、AIへ任せる作業と、人が持つ判断・責任を分ける必要があります。

参入前に解くべき権利・データ・炎上の懸念

推し活は感情と権利を扱うため、一般のECより運用上の論点が多くなります。売れる企画を考える前に、誰が止め、説明し、補償するかを決めます。

懸念 起きること 予防策 主な確認担当
著作権・商標・肖像 無許諾販売、削除、損害 許諾台帳、用途別審査、期限管理 商品・企画の運営者
ステルスマーケティング 広告であることが伝わらない PR表示、依頼記録、投稿確認 表示を依頼した事業者
個人情報 行動履歴や会員情報が漏れる 最小取得、同意、権限制御 データ管理者
炎上・誹謗中傷 本人とファンが傷つく 行動規範、通報、迅速な仲裁 コミュニティ運営者
過度な課金 未成年や生活者の負担が増える 上限、年齢確認、返金説明 販売・決済事業者
在庫・転売 廃棄、不足、不公平感が出る 受注生産、抽選、購入制限 商品事業者
出演者の負担 稼働過多、休止、品質低下 休養、代替企画、公開ルール 所属・制作事業者

消費者庁のステルスマーケティングQ&Aでは、事業者が内容の決定に関与した表示について、広告であることが明瞭かを確認する必要があります。投稿を依頼する場合は、報酬や指示の記録を残し、本文から広告だと分かる表示を確認します。

「PR」をリプライにだけ書けばよいとは限りません。

表は運営上の確認担当の目安です。契約で分担を決めても法的責任が一人・一社に限定されるとは限らず、権利・広告・個人情報の個別の扱いは、契約や実態に応じて専門家と確認します。

子どもや若者が参加する企画では、焦りをあおる販売にも注意が必要です。たとえば、ランダム商品、期間限定、順位競争を重ねるほど売上は伸びても、長期の関係が傷むことがあります。

そのため、年齢、累計金額、返品、問い合わせを設計に入れます。

推し活への参入を4つに分けて考える

参入:固有の顧客・場所・運営力がある

一ジャンルと一接点に絞り、権利者と始めます。

提携:顧客接点はあるが、IPや権利運用がない

権利者、FanTech、物流と組み、自社の現場を活かします。

待機:人気は見えるが、継続率や採算が分からない

小さな共同企画で、粗利と再訪を確認します。

見送り:流行語だけが参入理由になっている

ファン不在の企画は、短期の物販で終わりやすいと考えられます。

自社は参入・提携・待機・見送りのどれか

市場の成長だけで参入を決めると、自社の役割が曖昧になります。そのため、自社が持つ資産と、引き受けられる責任を照らして判断します。

その際は、次の4分類が実務的です。

判断 当てはまる条件 次の行動
参入 ファンの未解決課題と、自社固有の接点がある 一ジャンル・一接点へ絞る
提携 顧客や場所はあるが、IP・運営・権利がない 権利者、FanTech、物流と組む
待機 人気は見えるが、継続率や採算が分からない 小さな共同企画でデータを得る
見送り ファン不在で、流行語だけを根拠にしている 既存顧客の別課題を優先する

見送りは失敗ではありません。むしろ、一度のイベント売上だけが根拠の場合、毎年新しいIPを探し続ける事業になります。

そのため、権利費、在庫、集客費を引いた後に利益が残るかを確認します。

逆に、既存事業にファンの集まる場所、移動、保管、決済、専門知識があるなら、IPを保有していなくても機会があります。提携で始め、運営データを蓄積し、自社の強みを深める方が安全です。

イノベーション総研は、推し活を事業構造から評価する

イノベーション総研では、テーマの話題性だけで新規事業を選びません。顧客の行動、価値連鎖、競合、権利、必要な提携、撤退条件まで一つの判断表にします。

推し活では、次の問いを重視します。

  • 誰の、どの応援行動に未解決の不便があるか
  • 公式・自主・付随・コラボのどの消費を扱うか
  • ファン、推し、権利者、地域の誰へ価値を返すか
  • 顧客接点とデータを、同意の上で誰が持つか
  • 在庫、返金、通報、出演者保護を誰が担うか
  • 権利費と運営費を引いても継続できるか

人気IPを使えることは、参入条件の一つにすぎません。そのため、自社が持つ顧客基盤や現場を棚卸しし、提携によって不足機能を補います。

新規事業の無料診断は、案件の現在地や停滞要因を整理する入口として活用できます。その結果も材料に、本稿の権利・採算・運営条件を確認し、参入や提携の判断につなげます。

推し活ビジネスでよくある質問

推し活市場に参入するときによく出る疑問をまとめます。言葉の定義より、事業判断に必要な点へ絞ります。

Q. 推し活とは、どこまでの行動を指しますか?

A. 好きな人物や作品を応援する行動全般です。公式商品やチケットの購入だけでなく、自作グッズ、投稿、ファン交流、遠征、飲食、撮影なども含みます。

Q. 推し活の市場規模はどれくらいですか?

A. NRIは2025年3月時点の国内関連市場を約3.8兆円と推計しています。公式、自主、付随、コラボの4種類を含む数字で、グッズだけの市場や、自社が獲得できる売上を表すものではありません。

Q. IPを持たない企業でも参入できますか?

A. 可能です。交通、宿泊、店舗、物流、収納、決済、権利管理など、既存の強みをファンの行動へつなげます。権利者との提携と役割分担が前提です。

Q. 推し活グッズは、自由に作って販売できますか?

A. 他者の著作物、商標、肖像などを使う場合、原則として権利確認が必要です。権利者が公開するガイドラインの範囲と、個人利用・商用利用の違いを確認します。

Q. 推し活ビジネスで最初に見るKPIは何ですか?

A. 事業に合わせて、再訪率や会員継続率と、権利料・製造・配送・運営などを差し引いた採算を組み合わせます。問い合わせ、返品、出演者の負担も確認し、売上が増えても継続できない状態を見逃さないようにします。

まとめ|推し活は、ファンとの関係を育てる事業である

推し活は、グッズだけで約3.8兆円になる市場ではありません。公式、自主、付随、コラボの消費を合わせた広い行動です。

そのため、IP企業だけでなく、交通、地域、小売、SaaS、物流にも参入余地があります。

一方、ファンの熱量を短期売上へ変えるだけでは続きません。確認したいのは、接点に合う収益、必要なデータ、参加の余地、権利と安全、継続できる供給体制です。

新規事業では、人気IP探しから始めず、自社が持つ接点と未解決の困り事を確認します。その上で、参入、提携、待機、見送りを決めることが重要です。

具体的な機会領域や提携先を整理したい場合は、イノベーション総研へご相談ください。

情報確認日:2026年9月27日。市場・企業の数値は、各資料の対象・期間・定義に沿って記載しています。

公表された事実、計画、当研究所の提案、架空の計算例を分けて紹介しました。

参照した主な資料

市場の定義と企業の実装を確認するため、次の公的資料・企業公式情報を参照しました。推計値は各資料が定める対象範囲に沿って記載しています。

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推し活の熱量を、信頼される新規事業へ。

市場、企業動向、自社資産、提携先、権利と運営の責任を整理し、参入・提携・待機・見送りの条件へ落とします。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

野村総合研究所、クリエイターエコノミー協会、文化庁、消費者庁、ANYCOLOR、COVER、バンダイナムコ、サンリオ、HYBE、note、THECOO、JR東海、Oshicocoの公式資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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