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特定技能、企業はどう受け入れる?19分野・8社の実例

特定技能は、採用できれば終わりなのか。
企業8社は、採用の前後で何を支えているのか。

結論は、教育、在留管理、生活支援、キャリア形成を採用後の業務として運営できるかです。制度の基本と具体例から、採用と新規事業の判断材料を整理します。

この記事の結論

特定技能は、安価な人材を採用する仕組みではありません。

  • 1号・2号、19分野、採用要件、企業と登録支援機関の責任を整理します。
  • 教育、採用、在留管理、本人確認、生活支援に取り組む企業8社を解説します。
  • 四つの参入方法と、制度・人権・個人情報・採算の懸念を示します。

目次

特定技能とは?人手不足分野で即戦力を受け入れる制度

特定技能は、人手不足の産業で、一定の技能と日本語力を持つ外国人材を雇用するための在留資格です。2019年4月に始まりました。

採用条件だけでなく、採用後に必要な支援も確認します。

2026年1月の方針変更でリネンサプライ、物流倉庫、資源循環が追加され、政策上の対象は19分野になりました。ただし、入管庁の受入れ可能分野の一覧(2026年6月1日現在)に掲載されているのはリネンサプライを含む17分野です。

分野への追加と実際の採用開始は別であり、新分野は最新の告示・試験・申請案内を確認します。

技能実習は技能移転による国際貢献、特定技能は日本の人手不足分野の人材確保を目的としています。ただし、厚生労働省のQ&Aが示すとおり、雇用契約に基づいて働く技能実習生にも労働関係法令が適用されます。

「技能実習なら労働者ではない」という違いではありません。

人材紹介だけでも、申請書類だけでも、長く働ける環境は完成しません。制度の基本、企業8社の取り組み、業界構造、新規事業の参入余地を順に見ていきます。

特定技能1号・2号と育成就労の違いを示す図
図1|特定技能1号・2号と育成就労の位置づけ。出入国在留管理庁の制度資料をもとにイノベーション総研作成。

特定技能1号と2号は何が違うのか

特定技能には1号と2号があります。このうち1号は、相当程度の知識や経験を持つ人材向けです。

一方、2号は、より熟練した技能と実務経験を持つ人材向けです。

比較項目 特定技能1号 特定技能2号
技能水準 相当程度の知識・経験 熟練した技能と実務経験
在留期間 原則として通算5年まで 更新回数に上限なし
家族帯同 原則不可 要件を満たせば配偶者・子が可能
受入れ企業の支援計画 必要 1号のような義務的支援の対象外
主な確認方法 分野別技能試験、日本語試験など より高度な分野別試験と実務経験
1号からの移行 ― 自動ではなく、分野ごとの要件を満たす必要がある

1号では、原則として分野別の技能試験と、JFT-Basicまたは日本語能力試験N4以上などの日本語要件を満たします。介護、バス・タクシー、鉄道の運輸係員などには追加要件があります。

技能実習2号を良好に修了した人は、対応する分野へ移るときに試験が免除される場合があります。ただし、修了した職種と希望する業務区分の対応確認が必要です。

どの分野へも無条件で移れるわけではありません。

1号の在留期間は原則通算5年です。入管庁の通算期間の案内では、2号試験に不合格でも、必要な試験で合格基準点の8割以上を得ていること、移行へ取り組む旨の誓約や企業の継続雇用・支援意思があることなど、所定の要件を満たす場合に通算6年まで認める例外を設けています。

試験予約が取れないという理由だけで延長できる制度ではありません。

1号から2号へは自動移行ではなく、対象業務・試験・実務経験等の条件を満たす必要があります。採用時から本人の希望を確認し、必要な経験と学習を積める配置を考えます。

特定技能の対象19分野と採用前の確認事項

特定技能の対象は次の19分野です。分野名が合っていても、実際に担当させる業務区分が対象外なら採用できません。

区分 対象分野
医療・生活支援 介護、ビルクリーニング、リネンサプライ
ものづくり・建設 工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、資源循環
交通・観光・物流 航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、物流倉庫
食・一次産業 農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業

特定技能2号の対象は11分野です。つまり、介護、リネンサプライ、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、林業、木材産業、資源循環は対象外です。

ただし、介護には、別に長期就労が可能な在留資格「介護」があります。

採用前には、次の順で確認すると混乱を減らせます。

  1. 自社の事業が対象分野に入るか
  2. 任せる仕事が対象の業務区分に入るか
  3. 候補者が技能・日本語要件を満たすか
  4. 雇用形態、報酬、労働時間が基準を満たすか
  5. 分野別協議会への加入や追加手続が必要か
  6. 自社支援と登録支援機関への委託のどちらにするか

雇用は原則として直接雇用です。例外として派遣が認められるのは、現時点では農業と漁業に限られます。

そのため、農繁期だけ人材を増やす仕組みを他分野へそのまま持ち込むことはできません。

特定技能の受入れはどこまで進んだか

採用計画では「上限との差」だけでなく、候補者の現在の資格と申請区分を確認します。

出入国在留管理庁の2026年6月末速報では、特定技能1号は425,961人で、前年6月末から92,838人増えています。人数は増えていますが、受入れの余地は分野ごとに大きく異なります。

2号は別集計で、本稿が確認した2026年3月末速報では12,420人です。時点が異なるため合算しません。

6月末の1号在留者数は、2029年3月末までの受入れ見込数805,700人に対して52.9%です。この見込数は受入れ上限として運用されるもので、今後さらに805,700人を新たに採用できる人数ではありません。

また、この割合は各産業の人手不足が解消した割合でもありません。

特定技能1号の主要分野:2026年6月末速報
分野 在留者数 受入れ見込数(上限) 充足率
外食業 49,060人 50,000人 98.1%
飲食料品製造業 100,769人 133,500人 75.5%
建設 52,132人 76,000人 68.6%
介護 79,884人 126,900人 63.0%

外食業では2026年4月13日から在留資格認定証明書の交付を一時停止する措置が取られました。9月10日公表の審査状況でも申請日・在留資格による制限があり、新規受入れと、既に外食業の特定技能1号で働く人の転職・期間更新は扱いが異なります。

登録支援機関登録簿では、2026年9月17日時点で11,615件が登録されています(登録抹消を除く)。登録数は支援品質を示さないため、料金とともに、対応言語、緊急時の窓口、訪問範囲、担当人数、記録管理を比べます。

企業が特定技能人材を採用するための要件

本人の資格だけでなく、企業の賃金・労働条件・支援体制も受入れ要件です。入管庁の制度概要を基に、採用前に確認する主な項目を整理します。

  • 日本人と同等以上の報酬を設定する
  • 通常の労働者と同等の所定労働時間で雇用する
  • 労働、社会保険、税に関する法令を守る
  • 保証金や違約金を伴う契約に関与しない
  • 特定技能1号の支援計画を作る
  • 分野別協議会へ原則として申請前に加入する
  • 市区町村へ協力確認書を提出し、地域の共生施策を支援計画へ反映する
  • 在留、雇用、支援に関する届出を続ける

採用から就労開始までの基本は、対象分野と業務の確認、候補者の要件確認、雇用契約、1号支援計画、協議会と自治体の手続、在留申請、就労開始です。

ただし、技能試験と雇用契約の順番は常に固定ではありません。たとえば、海外の送出国側に独自手続がある場合もあります。

そのため、採用予定日から逆算し、分野別の最新資料を確認してください。

2025年4月からは、事業所所在地と外国人の住居地の市区町村へ「協力確認書」を提出する運用が始まりました。企業は自治体から共生施策への協力を求められた場合、必要な協力を行い、その内容を支援計画へ反映します。

この変更は、雇用と地域生活を別々に考えないという方向を示します。職場だけ整えても、住居、交通、医療、行政手続でつまずけば、働き続けることは難しくなります。

受入れ企業と登録支援機関の責任はどこで分かれるか

特定技能1号を受け入れる企業には、10項目の義務的支援が求められます。事前ガイダンス、入出国時の送迎、住居と生活契約、生活オリエンテーション、行政手続、日本語学習、相談・苦情、日本人との交流、本人の責任によらず契約が解除される場合の転職支援、定期面談です。

企業は支援を自社で行うか、登録支援機関へ委託できます。全部を委託すると、企業が満たすべき支援体制の基準を満たしたものとして扱われます。

しかし、雇用主としての責任は企業に残ります。

業務 受入れ企業 登録支援機関 外部サービス会社
雇用契約・賃金・労働時間 最終責任を持つ 状況確認や助言 労務管理ツールを提供
1号支援計画 自社実施または委託を決める 委託範囲を実施・記録 翻訳、住居、学習などを支援
在留申請・届出 必要情報と最終確認を担う 支援記録や実務を補助 管理システムを提供
日常の指揮命令(直接雇用の場合) 受入れ企業が担う 代替できない 代替できない
相談・問題発生時 職場の改善と雇用判断 多言語相談と状況把握 通訳、緊急窓口など

この表で先に決めるべきなのは、平常時の作業分担より、賃金の不一致、離職、病気、相談、在留期限切れなどが起きたときの判断者です。

入管庁の支援制度案内では、登録支援機関は委託された支援の実施をさらに委託できないとされています。一方、公式Q&AのQ84は、履行補助者として通訳人を使うことなどを認めています。

外部サービスの利用と支援責任の丸投げを分け、契約上の役割を確認します。

2027年4月1日施行の支援体制の改正では、事業所ごとの常勤の支援責任者・担当者、支援責任者の養成講習、登録支援機関の担当者数の基準などが定められています。ただし、登録・更新時期に応じた経過措置があり、講習も当分の間は未修了で差し支えないとされています。

施行日に全機関へ同じ条件が一斉適用されるものとせず、自社の申請時期を照合します。

また、公式Q&A(Q76・79・80)では、義務的支援にかかる費用を本人へ直接・間接に負担させることは認められていません。生活サービスの利用料金と、企業が負担すべき支援費用を混同しないことが必要です。

支援を委託しても、賃金、労働時間、配置、職場改善を決める雇用主の責任は受入れ企業に残ります。

特定技能を支える企業8社は、何をしているのか

企業事例は、何を提供しているか、どこまで実施したか、どの効果を測ったかの三つに分けて読みます。以下の8社は役割を比べるための例であり、ランキングや効果の優劣を示すものではありません。

企業 主な取り組み 主な事業レイヤー 公表段階
ONODERA USER RUN 海外教育、試験、紹介、入社後の定着支援 海外教育・紹介・支援 商用提供
ワタミエージェント 現地教育、紹介、登録支援、農業派遣、帰国支援 教育・紹介・就労 商用提供
PERSOL Global Workforce 農繁期に合わせた特定技能人材の派遣 農業派遣 商用提供
tokuty 特定技能の求人、面接、ビザ、入社後支援 越境マッチング 商用提供
Guidable 在留外国人・海外人材の採用プラットフォーム 採用・メディア 商用提供
SMILEVISA 在留申請、届出、面談、支援記録のクラウド管理 在留・支援管理SaaS 商用提供
GTN 住居、家賃保証、通信、金融、多言語生活支援 生活インフラ 商用提供
Liquid 在留カードIC読取、失効照会、期限管理 本人確認・RegTech 商用提供

8社は競合だけではありません。教育から生活支援までの間で、互いに不足する機能を補う提携候補でもあります。

特定技能を支える企業8社を5層で整理した図
図3|特定技能を支える主要8社の位置づけ。各社公式情報を確認し、主な役割を当研究所が整理。各社の全事業や成果の順位を示すものではありません。

ONODERA USER RUNは、採用前の教育から定着までをつなぐ

ONODERA USER RUNは、アジア8か国で自社の教育拠点を運営し、日本語と特定技能試験の教育、企業とのマッチング、入社後の生活・学習支援までを一体で提供しています。

同社は、2026年5月末に特定技能試験の合格者が1万人を超えたと公表しています。これは教育・試験の実績であり、全員の入社や長期定着を意味する数字ではありません。

採用企業は、合格者数に加え、希望業務との適合、実際の就業開始、就業後の状況を分けて確認します。

重要なのは、求人が出てから人を探すのではなく、海外の教育工程を自社で持つ点です。具体的には、候補者の日本語力や仕事への理解を企業へ伝え、入社後も継続学習を支えます。

つまり、採用前と採用後でデータが切れにくいモデルです。

ワタミは、教育・就労・帰国後までを一つの流れにした

ワタミエージェントは、カンボジア、ネパール、バングラデシュなどで教育・送出しの体制を持ち、人材紹介、在留手続の支援、入社後の定期フォロー、帰国後の就職支援までをつないでいます。

農業では、グループのワタミファームと連携し、特定技能1号人材を農場へ派遣します。農業は繁忙期と閑散期の差が大きいため、通年雇用だけではなく、地域や時期に合わせて人材を配置する価値があります。

ワタミサスティナブルレポート2025(PDF2頁)では、2024年度の海外人材サポート人数を920人と公表しています。グループ外を含む支援規模であり、特定技能だけの人数や定着率ではありません。

教育から就労・帰国後まで支える設計は参考になりますが、成果は段階ごとに確認します。

PERSOL Global Workforceは、農繁期の波を派遣で埋める

PERSOL Global Workforceは、農業分野の特定技能人材を派遣しています。耕種農業と畜産農業に対応し、短期のスポット需要から通年需要まで支援します。

同社は2025年10月末時点で派遣実績300件以上を公表しています。農繁期の異なる複数の就業先を組み合わせる方法は、雇用を続けながら配置を変える事業設計の参考になります。

ただし、この件数は稼働率や利益の改善幅ではなく、住居・移動・生活支援の費用も含めた比較が必要です。

派遣できる分野の条件を確認したうえで、勤務先が変わっても支援と労務記録が切れない仕組みが求められます。

tokutyは、求人から入社後支援までを直接つなぐ

tokutyは、特定技能人材を採用したい企業と外国人を直接つなぐ求人プラットフォームです。求人掲載、面接、内定後のビザ申請、入社後のフォローを支援します。

同社は、在留カードの確認、期限アラート、自動翻訳などを備えた労務管理アプリ「Connectee」も提供しています。採用前の集客と、採用後の在留・コミュニケーション管理をつなぐ狙いです。

2025年6月24日の日清丸紅飼料の発表では、同社が人手不足の畜産・水産の生産者とトクティーをつなぐ契約を締結しています。日清丸紅飼料自身が人材紹介・派遣を行うものではありません。

業界の顧客接点と採用サービスを組み合わせる提携であり、採用人数や定着の改善実績はこの発表では示されていません。

Guidableは、採用データベースと外国人向けメディアを持つ

Guidableは、在留外国人向け求人、海外の特定技能人材採用、外国人向け調査・販促、生活情報メディアを展開しています。

公式の事業紹介は、調査・販促支援で229カ国・25万人以上の在留外国人データベースを掲げています。特定技能だけの求職者数でも、現在採用可能な人数でもありません。

求人企業は、登録規模よりも、勤務地・仕事・在留資格に合う候補者へ届くかを確認します。

2026年8月4日の発表によると、7月31日付で全株式をONODERA USER RUNへ譲渡しました。国内在住者との接点と海外教育・紹介を組み合わせる狙いで、国内採用と海外採用の両方を検討する仕組みです。

統合の事実と、その後の採用改善効果は分けて評価します。

SMILEVISAは、申請と支援記録を企業内へ戻す

SMILEVISAは、特定技能人材の在留申請、定期・随時届出、面談、相談、支援記録をクラウドで管理するサービスです。

公式サイトは導入300社以上、申請実績6,000回以上、管理人数8,000人以上を掲載しています(2026年9月27日確認、各数値の集計期間は記載なし)。社数・申請回数・人数は違う指標であり、申請の許可率や工数削減率は計算できません。

聖隷福祉事業団の導入インタビューでは、2024年にEPAから特定技能へ変更する職員1名をきっかけに、自社支援とシステム利用を始めています。その後、関連法人等も含めた一元管理へ広げました。

担当者は、初回から自社支援で管理委託の経験がないため比較はできないと説明しています。導入と管理体制の整備を、実測した費用削減率へ置き換えないことが重要です。

三島ファームの導入インタビューでは、2025年4月に3名を受け入れる準備で、画面の案内とサポートを使って必要書類をそろえ、目標の12月26日に申請できたと報告しています。少人数でも初回の手続を進められた事例ですが、支援の実作業は残るため、自社担当者の時間も導入費用に含めて考えます。

GTNは、住居・通信・金融を生活インフラとして束ねる

GTNは、登録支援に加え、外国人向けの家賃保証、住居仲介、携帯電話、金融、多言語相談を提供しています。

入国直後は、国内の信用履歴や銀行口座がなく、部屋や通信を契約しにくい場合があります。GTNは外国人向けの審査と多言語支援を組み合わせ、来日前から生活立ち上げを支えます。

同社の登録支援サービスでは、住居探し、通信、銀行口座開設への同行、定期面談などをまとめて案内しています。窓口を集約する設計は参考になりますが、契約の審査や本人の選択は各サービスで確認します。

導入前後で、生活準備に要する日数や未解決の相談を比べると、支援の効果を具体的に捉えられます。

LiquidのGPASSは、在留カード確認を継続業務へ変える

LiquidのGPASSは、在留カードのICチップ読取、失効照会、期限管理、人材情報の共有を行う外国人材管理システムです。

採用時に在留カードを目視確認するだけでは、期限切れや在留状況の変化を追えません。GPASSは本人確認を一回の作業ではなく、雇用中の継続管理に変えます。

Liquidの2026年7月28日発表では、はなまるうどんが全国の直営353店舗でGPASSを導入しました。採用時のカード確認を必須手順にし、店舗と本部で情報を共有する運用です。

353は導入店舗数であり、削減時間や不法就労を防いだ件数ではありません。

カードの読取りや有効性の確認だけで、任せる仕事まで自動的に適法になるわけではありません。在留資格で認められる活動、資格外活動の許可、勤務条件等と照合する判断は別に必要です。

2027年の制度移行に向けても、必要な管理項目と既存システムの不足を確認してから導入範囲を決めます。

8事例から見える、採用後に価値が残る領域

企業事例からは、教育・採用・書類管理・生活支援を分け、どの仕事の負担を減らすかを具体化する重要性が読み取れます。以下の四つは当研究所の整理です。

全社の成長率や定着効果を比較して導いた成功条件ではありません。

第一は、採用前の教育データを採用後へつなぐことです。日本語力、技能試験、希望職種、学習履歴が分かれば、配属と教育を個別化できます。

第二は、企業と本人の両方を顧客として見ることです。企業には採用と法令対応が、本人には住居、通信、相談、学習、キャリアが必要で、採用する側の都合だけでなく、本人の希望や相談のしやすさも確認します。

第三は、制度業務を記録可能な工程へ変えることです。というのも、在留期限、面談、届出、支援実績を担当者の記憶に置くと、人数が増えたときに漏れるからです。

そのため、導入後には、記録作業が減った分を相談や職場改善へ振り向けられたかを測ります。

第四は、分野の知識を持つ相手と組むことです。たとえば、農業なら季節と住居、介護なら日本語とケア現場、建設なら現場配置と安全、外食なら店舗教育が重要です。

つまり、外国人材という横断知識だけでは、現場の課題を解けません。

教育の試験合格、採用の成立、管理体制の整備、就業継続は、それぞれ別の成果です。例えば合格者が多くても、本人の希望と求人が合わず入社しない場合は、教育人数だけを増やしても課題が解けません。

採用後に残る未解決の仕事を把握することは、事業を広げる手掛かりになります。ただし、すべてを月額サービスへ変える必要はありません。

紹介、個別支援、システム提供それぞれの対価と原価を確かめます。

特定技能市場は五つの層で捉える

教育・採用・在留管理・本人確認・生活支援のうち、顧客が困る工程と自社が担える工程を対応させます。下表は公式情報を基に役割を五つへ整理したもので、互いに独立した市場規模の区分ではありません。

層 主な仕事 代表例 顧客が評価する点
1. 海外教育・送り出し 日本語、技能教育、試験、渡航準備 ONODERA USER RUN、ワタミ 合格だけでなく、仕事理解と定着
2. 採用・マッチング 求人、面接、紹介、配属 tokuty、Guidable、PERSOL 採用速度、候補者の適合、分野知識
3. 在留・支援管理 申請、期限、面談、届出、記録 SMILEVISA、登録支援機関 漏れの防止、担当工数、監査可能性
4. 本人確認・RegTech 在留カード、失効照会、権限管理 Liquid 不法就労防止、継続確認、情報共有
5. 生活・キャリア基盤 住居、通信、金融、日本語、2号移行 GTN、教育・金融事業者 定着、生活の立ち上がり、長期就労

紹介から始める方法も、既存の雇用における生活支援や管理から始める方法もあります。学習状況、相談、就業継続などの情報を改善に使う際は、利用目的、法的な根拠、共有先、閲覧権限、保存期間を定めます。

本人の同意があれば何でも共有してよいという扱いにはしません。

一方、五つの層をすべて自社で持つ必要はありません。自社の強い層を決め、隣の層との情報と責任の受け渡しを標準化する方が現実的です。

NEXT STEP

次のステップ

人材紹介ではなく、採用後も価値が残る仕組みを設計する。

対象分野、顧客課題、本人の体験、許認可、支援原価、自社に残るデータを整理し、現実的な参入方法へ落とします。構想の具体化や検証から事業化までの実行支援は、TeamPro Pilotsのサービスページで確認できます。

新規事業として考えられる四つの参入方法

参入先は、採用・育成、在留管理、生活支援、定着・キャリアの中から、顧客の未解決の仕事に合わせて選びます。四つの分類は当研究所の実務上の整理であり、必ず成功する事業領域を示すものではありません。

次の表は、顧客、商品にする業務、自社資産、提携先、最大の懸念を一度に比べるためのものです。

参入方法 主な顧客 商品にする業務 自社に必要な資産 主な提携先 最大の懸念
分野特化の採用・育成 介護、建設、食品、農業などの企業 現地教育、選考、配属、入社後研修 分野知識、採用チャネル、教育 現地学校、業界団体、登録支援機関 紹介条件と手数料・返金条件が合わない
在留・支援オペレーションSaaS 受入れ企業、登録支援機関 期限、申請、面談、届出、証跡 制度更新、業務設計、セキュリティ 行政書士、労務専門家、eKYC 画面外の手作業が残る
生活インフラの組み込み 受入れ企業、本人、自治体 住居、通信、口座、保険、相談 多言語顧客対応、審査、地域網 不動産、通信、金融、自治体 一人あたり対応費が高い
定着・キャリア基盤 受入れ企業、本人 日本語、技能、面談、配置、2号移行 学習・職場データ、分野別評価 教育機関、業界団体、転職支援 効果測定に時間がかかる

四つのうち、自社が顧客接点と責任の両方を持てる入口を選びます。足りない機能は、許認可を含めて提携先へ明示します。

分野特化の採用・育成は、現場の仕事から設計する

人材紹介会社が多い市場で、国籍と人数だけでは差別化できません。介護の記録、食品工場の衛生、建設現場の安全など、配属後の仕事を教育内容へ戻します。

売上は紹介手数料だけでなく、教育、試験、配置、定着支援を組み合わせます。ただし、本人へ不透明な費用を負担させるモデルは避けます。

採用企業が得る価値と負担する費用を明確にします。

在留・支援SaaSは、制度更新と現場運用を一緒に売る

在留期限の通知だけで足りる企業と、面談や書類まで一元管理したい企業では、必要な製品が異なります。面談が遅れたときの判断、退職や休業の随時届出、支援担当者の引継ぎ、自治体との連携までを業務として設計します。

書類作成には行政書士法などの業務範囲が関係します。SaaS、行政書士、受入れ企業の役割を契約と画面で分ける必要があります。

生活インフラは、入国直後の不便を束ねる

住居、通信、銀行、保険は、それぞれ別市場です。しかし、外国人材にとっては入国直後に同時に必要になります。

来日前の本人確認と勤務先情報を、目的と共有範囲を明確にして各サービスへ連携する設計を検討します。実際の時間短縮は、審査や追加確認を含めて測ります。

重要なのは、受入れ企業が契約者なのか、本人が契約者なのか、料金と解約条件を分かりやすく示すことです。囲い込みではなく、本人が選べる状態を作ります。

定着・キャリア基盤は、1号から次の選択肢を見える化する

1号の採用時点から、技能、日本語、現場経験を記録します。2号、在留資格「介護」、他の職種など、本人が目指せる経路と要件を見える形にします。

企業にとっては、離職率だけでなく、欠勤、教育時間、配置変更、試験合格、現場評価を見られます。定着を感覚で語らず、職場改善へつなぐサービスです。

顧客、収益、提携先を一枚にまとめる方法は、新規事業のビジネスモデル設計も参考になります。

参入前に確認したい制度・人権・収益の懸念

外国人材の事業では、制度に従うだけでなく、本人の選択と生活を守る必要があります。参入前に少なくとも六つの懸念を分けます。

第一は、制度変更です。実際、対象分野、上限、試験、届出、支援体制が変わります。

そのため、法改正ニュースを出すだけでなく、顧客の業務とシステム設定へ反映する担当が必要です。

第二は、業務範囲です。というのも、職業紹介、労働者派遣、登録支援、在留申請書類の作成は、それぞれ許可や資格、役割の制約があるからです。

そのため、提携先へ任せる業務と自社が担う業務を分けます。

第三は、人権と費用です。たとえば、候補者が保証金や過大な借金を負っていないか、母国語で条件を理解したか、転職や退職を不当に妨げていないかを、採用人数より先に確認します。

第四は、個人情報です。というのも、在留カード、顔画像、住所、家族、健康、相談内容は機微な情報だからです。

そのため、採用会社、支援機関、住居会社、金融会社の間で、目的を決めずに共有してはいけません。

第五は、支援原価です。というのも、夜間の相談、地方への訪問、住居探し、職場との調整は人手がかかるからです。

そのため、月額を安く見せても、担当人数が増えるほど品質が下がるモデルは続きません。

第六は、収益と契約範囲です。紹介手数料型なら採用までの費用と返金条件、継続支援型なら毎月の相談・訪問・記録の費用を含めます。

月額売上があること自体は、利益が出る保証にはなりません。

検討初期には、新規事業の失敗原因も参考になります。顧客課題を確かめ、サービスの機能と実際に払う理由を結び付けます。

個別の受託支援も、その範囲と対価が合えば事業の選択肢です。

架空例:支援の月額売上と、実際に残る金額を分ける

以下は相場や企業実績ではなく、費用の数え方を示す架空例です。支援契約20人、1人あたり月2万円なら、月額売上は40万円です。

一方、相談・訪問・記録等が月80時間、福利厚生等を含む人員費を1時間3,000円、交通・通訳・システム費を月10万円と仮定すると、提供費用は34万円になります。

この例で残る6万円は、営業費や本社費、税金等を引く前の金額です。相談対応が月30時間増えれば人員費は9万円増え、提供費用だけで売上を3万円上回ります。

支援事業の採算は契約人数だけでなく、一人あたりの対応時間と必要な支援品質を両方確認します。

自社は参入・提携・待機・見送りのどれか

顧客の需要、合法に提供できる体制、本人の権利、必要費用を踏まえて、参入・提携・待機・見送りを選びます。外国人材の人数が増えることだけでは、個別サービスの採算は決まりません。

参入は、対象顧客の課題と支払意思、自社または提携先の実行体制、提供費用を確認できた場合の候補です。資産の数を数えて決めず、受け持つ仕事に必要な能力がそろうかで判断します。

提携は、顧客接点はあるが、許認可、多言語支援、在留管理、生活インフラの一部を持たない場合です。紹介会社、登録支援機関、行政書士、教育機関、自治体との役割を明文化します。

待機は、対象分野の運用開始や2027年の制度変更など、必要な前提を確認し切れていない場合です。制度が変わるまで何もしないのではなく、既存顧客の業務量と困りごとを測ります。

見送りは、必要な許認可・支援品質を確保できない、本人の権利を守れない、必要費用を含めると採算が合わない場合に検討します。専門機関への適切な委託や提携そのものを、見送りの理由にはしません。

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専門家へ相談する前に整理したい七つの情報

相談前に、対象業務・人数・時期・雇用条件・支援方法・現在の負担・提供したい価値を整理します。制度の確認は入管庁や分野の担当機関、許認可・申請実務は適切な専門家へ照会し、事業の検討と区別して進めます。

  1. 対象分野と実際に任せたい仕事
  2. 必要人数、採用地域、希望時期
  3. 国内在住者と海外在住者のどちらを想定するか
  4. 賃金、労働時間、住居、通勤の条件
  5. 自社支援と外部委託の考え方
  6. 採用後に困っている業務と現在の担当者
  7. 継続事業として残したい顧客接点やデータ

この七つが分かれば、採用を先に進めるのか、受入れ体制を整えるのか、支援サービスとして事業化するのかを分けられます。

イノベーション総研では、市場規模だけでなく、顧客課題、既存プレーヤー、責任分界、収益、提携先、見送り条件まで整理します。新規事業コンサルティングの進め方もご覧ください。

特定技能に関するよくある質問

制度の基本と、企業からよく出る疑問を短く整理します。

Q. 特定技能1号は何年働けますか

A. 原則として通算5年までです。2号試験に不合格でも合格基準点の8割以上を得たことなど、所定の要件を満たせば通算6年まで認められる場合があります。試験予約が取れないという理由だけで延長できる制度ではありません。個別の要件は出入国在留管理庁の案内で確認します。

Q. 特定技能2号なら家族と暮らせますか

A. 要件を満たせば、配偶者と子の帯同が可能です。2号を取れば自動的に永住できるわけではありません。

Q. 特定技能はどの業種でも採用できますか

A. できません。対象は19分野ですが、実際の採用では分野ごとの業務区分、受入れ基準、協議会、試験と運用開始時期を確認します。

Q. 登録支援機関へ委託すれば、企業の責任はなくなりますか

A. なくなりません。1号支援の全部を委託できても、雇用契約、賃金、労働時間、職場環境など、雇用主としての責任は受入れ企業に残ります。

Q. 技能実習2号を修了すれば、試験なしで移れますか

A. 対応する職種・作業と特定技能の業務区分が一致するなど、要件を満たせば試験免除になる場合があります。別分野へ無条件で移れるわけではありません。

Q. 特定技能人材は転職できますか

A. 同じ在留資格で認められる分野・業務区分などの条件を満たし、在留資格変更など必要な手続を行えば転職できます。自由に別業種へ移れるという意味ではありません。

Q. 育成就労は特定技能とどうつながりますか

A. 育成就労は2027年4月に始まる予定で、原則3年間で特定技能1号水準まで育成する制度です。1号へ移るには、原則として技能と日本語の試験に合格する必要があります。

まとめ|特定技能は採用後の運営で差がつく

特定技能は、外国人を採用するためだけの制度ではありません。企業が雇用主として責任を持ち、1号では生活と就労の支援を続ける仕組みです。

政策上の対象は19分野ですが、分野ごとに上限、業務区分、試験、追加手続が違います。1号と2号、技能実習と育成就労も混同しないことが重要です。

企業事例では、海外教育と国内採用、申請と支援記録、本人確認と店舗運営、住居・通信との接続が見られます。ただし、提供機能や導入件数を定着・採算の改善と同一視せず、自社で解く課題に対応する成果を測ります。

新規事業として検討する場合は、自社が強い分野と工程を決めてください。持たない許認可、支援、生活インフラは提携し、異常時の責任まで契約へ落とします。

特定技能の採用・支援市場で、自社が参入、提携、待機、見送りのどれに当たるか整理したい企業は、イノベーション総研へご相談ください。制度説明ではなく、具体的な顧客、サービス、収益、責任分界まで一緒に設計します。

情報確認日:2026年9月27日。制度は確認時点の公表資料による概要です。

申請時は最新の分野別要件と個別事情を出入国在留管理庁等へ確認してください。事例は企業自身の公表に基づき、提供規模と測定した効果を分けています。

支援原価の計算は架空例です。

参考文献・一次情報

制度・人数は出入国在留管理庁等、事例は各社の公式発表を確認しました。主な参照先は次のとおりです。

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特定技能を、制度説明で終わらない事業判断へ。

対象分野、主要企業、採用後の未解決業務、提携先、許認可、支援原価、責任分界を整理し、参入・提携・待機・見送りの条件へ落とします。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

出入国在留管理庁と、ONODERA USER RUN、ワタミ、PERSOL、tokuty、Guidable、SMILEVISA、GTN、Liquidの公式情報。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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