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極端紫外線(EUV)露光はなぜASMLしか作れない?10社と参入余地

極端紫外線(EUV)露光は、ASMLだけの事業なのか。
光源、鏡、マスク、材料、検査をつなげて見たか。

結論は、装置の外側にある量産課題を解けるかです。主要10社と4つの参入方法から、EUV周辺の事業機会を整理します。

この記事の結論

EUV完成装置はASMLに集中しますが、事業機会は光源、マスク、材料、計測、運用にもあります。

  • High-NAは解像度を上げる一方、焦点、熱、欠陥、露光範囲の管理を難しくします。
  • 主要10社は、完成装置から塗布・現像まで、異なる工程の量産損失を減らしています。
  • 日本企業は、汚染・停止、マスク寿命、材料・工程、量産データから参入できます。

EUVを調べると、「ASMLだけが装置を作れる」という説明がよく出てきます。これは間違いではありません。ただし、EUVを一社の独占装置として見るだけでは、産業の全体像も、新規事業の余地も見えません

EUV露光には、光源、鏡、マスク、保護膜、感光材、塗布・現像、欠陥検査が必要です。High-NAでは、その一つひとつに、さらに厳しい精度が求められます。

この記事では、EUVの仕組みを平易に説明します。さらに、主要10社の具体的な取り組みを比べ、日本企業が狙える4つの参入方法と、見送り条件まで整理します。

極端紫外線(EUV)露光とは、13.5nmの光で回路を描く技術

EUVは「Extreme Ultraviolet」の略です。日本語では極端紫外線と呼びます。半導体では、波長13.5nmの光を使い、ウエハー上に細い回路を描く露光技術を指します。

露光は、写真の引き伸ばしに似ています。回路の原版であるマスクを用意し、その像を感光材へ写します。光を当てた部分と、当てない部分の性質を変えます。現像と加工を繰り返すことで、回路を作ります。

従来のArF液浸露光が使う光は193nmです。EUVは、それより一桁以上短い波長を使います。短い波長ほど、細い模様を描きやすくなります。

ただし、EUV光は空気やガラスに吸収されます。そのため、装置内を真空にし、レンズではなく鏡で光を運びます。光源からウエハーまでの全工程が、一つの精密なシステムになります。

EUV露光で光がウエハーへ届く流れ
図1:スズの液滴からEUV光を作り、鏡、マスク、投影光学系を通してウエハーへ回路を描く流れ。ASML、ZEISS、TRUMPFの公式情報をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

なぜEUV露光装置はASMLしか作れないのか

理由は、一つの発明や特許だけではありません。数十年かけて、異なる企業の技術を一台の装置に統合したからです。

EUV光は、スズの小さな液滴へ強力なレーザーを当てて作ります。TRUMPFによると、毎秒5万個のスズ液滴へ、毎秒5万回のレーザーパルスを当てます。発生した光を、ZEISSの鏡で集めます。

この鏡には、原子に近い単位の精度が必要です。光を一度反射するたびに損失も出ます。装置は、光源、鏡、マスク、ウエハーの位置を高速で合わせ続けなければなりません。

ASMLは、光源企業Cymerを傘下に持ち、ZEISSと長期の戦略提携を結んでいます。部品を買って組み立てるだけではありません。顧客工場での保守、装置更新、工程条件の改善まで担います。

したがって、後発企業が完成装置で正面から競うのは合理的ではありません。設備、知財、人材だけでなく、量産現場で蓄積した運用データが足りないからです。

半導体製造装置の中でEUVが担う役割

半導体製造装置は、回路を描く装置だけではありません。成膜、露光、現像、エッチング、洗浄、検査、計測など、多数の装置で構成されます。

EUV露光装置は、そのうち「どこへ回路を作るか」を決めます。ただし、実際の線は、感光材の塗布と現像、膜の加工まで終えて初めて残ります。露光装置だけで半導体は作れません。

この点が、事業機会を考えるうえで重要です。完成装置はASMLの領域です。一方、前後工程には東京エレクトロン、Lam Research、レーザーテック、JSRなどが入ります。

フォトレジストの記事では、光に反応する材料の競争を整理しました。EUVでは、材料、装置、計測を同時に合わせる必要があります。

High-NA EUVは何を変えるのか

High-NA EUVは、従来EUVをさらに高解像度にした世代です。NAは開口数を意味します。従来EUVの0.33から、High-NAでは0.55へ上がります。

ASMLは、EXE:5200Bの解像度を8nmと説明しています。また、従来のNXE世代より、小さい形を一回の露光で描けるとしています。工程数を減らせれば、位置ずれや加工回数も減らせます。

一方、NAを上げると、焦点が合う深さは狭くなります。ウエハーの小さな凹凸や、わずかな熱変形が欠陥につながります。露光できる範囲も半分になります。大きなチップでは、二つの像を正確につなぐ必要があります。

つまり、High-NAは単純な性能向上ではありません。解像度を上げる代わりに、材料、平坦化、検査、設計の難度を引き上げます。

従来EUVとHigh-NA EUVの違い
図2:従来EUVとHigh-NA EUVを、開口数、解像度、露光範囲、工程上の課題で比較。ASML、ZEISS、imecの公式情報をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

High-NA EUVは研究設備から量産工程へ進んだ

High-NAの扱いは、2026年に変わりました。ASMLは2026年7月、IntelがIntel 18Aの一部工程でHigh-NA EUVを量産利用したと発表しました。対象製品は、Core Ultra Series 3の一部です。

Intelは2024年、米国オレゴン州で最初の商用High-NA装置を組み立てました。その後、EXE:5200Bの受け入れ試験も進めました。2026年の発表では、従来EUVと同等の歩留まりで出荷したと説明しています。

これは、High-NAが研究だけの技術ではなくなったことを示します。ただし、全ての先端工程が一斉にHigh-NAへ移るわけではありません。従来EUVで複数回露光する方法との費用比較が続きます。

事業を見る際は、「いつ普及するか」だけでは不十分です。どの層で使うと工程数を減らせるか、追加の検査と材料費を含めて得になるかを確認します。

供給網は六つの層でつながる

EUVの供給網は、六つの層に分けると見通しが良くなります。完成装置、光源・光学、マスク、保護・検査、感光材、塗布・現像です。

EUVを支える六層のサプライチェーン
図3:EUV露光を支える企業を、完成装置から材料・工程まで六層に整理。各社公式情報と専用調査をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

ASMLは完成装置を統合します。ZEISSとTRUMPFは、光を作り、正確に運びます。AGCや三井化学は、マスクの土台と保護膜を支えます。

レーザーテックは、マスクの欠陥をEUV光で調べます。JSRとLam Researchは、新しい感光材と形成方法を開発します。東京エレクトロンは、塗布と現像を露光工程へつなぎます。

この構造では、競合だけを見ると判断を誤ります。隣の工程を担う企業が、評価先や販売協力先になるからです。

主要10社の取り組みを工程別に比べる

次の表は、主要10社を、役割、具体的な取り組み、今後の焦点で比べたものです。企業名を覚えるより、どの工程の損失を減らしているかを見ると理解しやすくなります。

EUVを支える主要10社の役割
企業・機関 役割 具体的な取り組み 今後の焦点
ASML 露光装置の統合 NXEとHigh-NAのEXEを開発・保守 解像度、処理量、稼働率の両立
ZEISS SMT 投影・照明光学 0.55 NAの大型反射光学系を供給 鏡の精度、熱変形、光損失
TRUMPF EUV光源用レーザー スズ液滴をプラズマ化するCO2レーザー 高出力と長期安定稼働
Intel 先端ロジック量産 Intel 18Aの一部でHigh-NAを量産利用 工程削減と費用の最適化
imec 共同研究・試作 ASMLとHigh-NA研究設備を運営 材料、マスク、工程の共通評価
レーザーテック マスク欠陥検査 ACTIS A300でHigh-NAマスクを検査 ペリクル越しの欠陥検出と処理量
東京エレクトロン 塗布・現像 LITHIUS Pro DICEをHigh-NAへ対応 材料変更と欠陥制御
JSR/Inpria 感光材 MORと次世代EUV材料を開発 高解像度、感度、欠陥の両立
Lam Research ドライレジスト・加工 Aetherで成膜から現像まで乾式化 薄膜化、材料削減、単一露光
三井化学 ペリクル High-NA向けCNTペリクルを量産準備 透過率、耐熱、寿命

10社に共通するのは、単品の最高性能だけを売っていないことです。顧客の工程へ入り、隣接する装置や材料と組み合わせて、量産条件を作っています。

ASML、ZEISS、TRUMPFは光をどう作るか

TRUMPFのレーザーは、スズ液滴をプラズマに変えます。そこから13.5nmのEUV光が出ます。しかし、発生した光の全てを回路形成に使えるわけではありません。

ZEISSは、EUV光を集め、マスクの像をウエハーへ投影する鏡を作ります。High-NA向けの投影光学系は4万点を超える部品で構成され、約12トンあります。鏡の製造には約1年かかると説明しています。

ASMLは、光源、光学系、マスク、ウエハーステージ、制御ソフトを一つの装置にします。顧客工場では、装置の状態を監視し、部品交換と性能向上を続けます。

三社の例から分かるのは、EUVの強さが「最も優れた部品」ではなく、「部品間の誤差を閉じ込める統合」にあることです。新規参入企業にも、隣の工程と一緒に評価する力が必要です。

IntelとimecはHigh-NAを量産へどうつなぐか

Intelは、自社の研究開発拠点にHigh-NA装置を早く入れました。装置を所有するだけでなく、従来EUVの工程と同じ層を作り、結果を比べています。

2026年7月には、Intel 18Aの一部工程でHigh-NAを量産利用しました。これは、新技術を次世代ノードまで待たず、既存の量産工程で検証した例です。

imecは、特定の半導体メーカーではなく、複数企業が共同で試せる場を提供します。2026年3月には、ベルギーのルーヴェンにHigh-NA装置を設置しました。欧州NanoICパイロットラインの一部です。

部材企業にとって、imecのような場は重要です。顧客の量産設備を止めずに、感光材、マスク、エッチング、検査を組み合わせて評価できるからです。

レーザーテックはマスクの欠陥をどう見つけるか

EUVのマスクは、光を通す板ではありません。多層膜で光を反射する原版です。表面だけでなく、多層膜の内部にある欠陥も、ウエハーへ写る可能性があります。

レーザーテックのACTIS A300は、実際の露光と同じ13.5nmの光を使います。High-NA用マスクに対応し、保護膜であるペリクルを付けた状態でも、転写される欠陥を検出します。

この製品の価値は、欠陥を見つけることだけではありません。高価なマスクを装置へ入れる前と、使用中に確認し、ウエハーの連続不良を防ぎます。

High-NAでは、光がマスクへ入る角度が大きくなります。従来は見えなかった影や変形も問題になります。そのため、実波長での検査と、ウエハー上の結果を結ぶデータが重要になります。

EUV材料ではJSR、Lam、東京エレクトロンが協調する

感光材には、解像度、感度、線の滑らかさという三つの要求があります。細く描けても、多くの光が必要なら処理量が落ちます。感度を上げても、線が乱れれば不良が増えます。

JSRの子会社Inpriaは、金属酸化物レジストを開発しています。2025年にはLam Researchと協業し、2026年にはEntegrisとMOR特許の相互利用で合意しました。材料単体ではなく、成膜、加工、ろ過、供給までをつなぐ動きです。

Lam ResearchのAetherは、液体を回転塗布する代わりに、乾式で薄い感光膜を作ります。同社は、従来の炭素系材料よりEUV光を3〜5倍吸収すると説明しています。imecは2025年、2nm以下の配線工程で28nmピッチの直接描画を認定しました。

東京エレクトロンのLITHIUS Pro DICEは、感光材の塗布と現像を担います。同社は、High-NAを含むEUV向けコータ・デベロッパーで、ほぼ100%のシェアを持つと説明しています。

三社の動きは、材料の勝敗が化学式だけでは決まらないことを示します。塗布の均一性、現像、欠陥、エッチング後の形まで、一つの工程として証明する必要があります。

AGCと三井化学はマスクをどう守るか

AGCは、EUV用マスクブランクスを、ガラス材料から成膜まで一貫して作ります。2023年には生産能力を増やし、2025年に従来比約30%拡大する計画を公表しました。

マスクブランクスは、回路原版を作る前の土台です。熱で変形しにくく、表面が極めて平らで、欠陥がほぼないことが求められます。

三井化学は、マスクを異物から守るペリクルを作ります。High-NAと高出力光源へ向け、CNTを使った次世代品を開発しています。公表値では、EUV透過率92%以上、1kW超の出力への耐性を目標にしています。

同社は、岩国大竹工場に年5,000枚の設備を設ける計画を公表しました。imecとも提携し、研究成果を量産仕様へ移す取り組みを進めています。

マスク周辺では、材料を売るだけでは足りません。寿命、交換時間、欠陥率、透過率の変化を、顧客の装置稼働率へ結び付けることが必要です。

EUV光源ではxLightの新方式も動き始めた

現在のEUV光源は、装置ごとにスズのプラズマを作ります。xLightは、自由電子レーザーで大きな光源を作り、複数装置へ光を配る構想を進めています。

同社は2026年6月、米国CHIPS法による1億5,000万ドルの支援契約を結んだと発表しました。現行方式をすぐ置き換える技術ではありません。大規模な施設と、長期の実機評価が必要です。

それでも、この例は重要です。EUVのボトルネックが固定されていないことを示すからです。光量、電力、汚染、保守費用が限界に近づけば、光源を共通設備として提供する事業が生まれる可能性があります。

自社はEUV周辺のどこへ入れるか

計測、材料、真空、データから近い入口を確認します。

01 真空・洗浄・センサーに強い

汚染の兆候を捉え、装置停止を短くする入口があります。

  • 真空中で連続測定できる
  • 誤報率と検出下限を測れる
  • 既存装置の保守手順へ入れられる
02 膜・炭素材料に強い

マスクとペリクルの寿命を延ばす入口があります。

  • 透過率と耐熱を両立できる
  • 欠陥の少ない量産膜を作れる
  • 検査企業と寿命を評価できる
03 感光材・表面処理に強い

材料と塗布、現像、加工を一つの工程で提案できます。

  • High-NA実機で評価できる
  • 欠陥密度と処理量を測れる
  • 装置企業と条件を固定できる
04 画像解析・生産データに強い

焦点、重ね合わせ、欠陥を工程間で戻す入口があります。

  • 顧客機密を分離できる
  • 別製品でも改善が再現する
  • 停止・廃棄の削減額を示せる

NEXT STEP

次のステップ

要素技術を、量産で選ばれる事業へ。

対象工程、不良損失、評価方法、提携先、品質責任を整理し、自社の参入余地を設計します。

日本企業が狙える四つの参入方法

EUV露光装置の完成機へ参入する必要はありません。日本企業が持つ精密計測、材料、洗浄、真空、熱制御、生産技術は、周辺工程で使えます。

EUV周辺で狙える四つの参入方法
図4:日本企業の参入余地を、汚染・停止、マスク寿命、材料と工程、量産データの四つに整理。専用調査と主要企業の実装例をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

次の表では、四つの参入方法を、支払者、価値、提携先、最初の証拠で比べます。自社技術に近い方法から読み進めてください。

EUV周辺へ新規参入する四つの方法
参入方法 最初の支払者 提供する価値 必要な提携先 最初に確かめる証拠
汚染と停止の予兆検知 露光・加工装置企業、先端ファブ スズや金属汚染を早く見つけ、停止を減らす センサー、真空、洗浄、装置保守企業 検出下限、誤報率、停止時間の削減
マスク・ペリクルの寿命管理 マスク企業、ファブ 交換時期を予測し、連続不良を防ぐ 材料、検査、ハンドリング企業 透過率、欠陥、熱履歴と寿命の相関
感光材と工程の共同最適化 材料企業、装置企業、ファブ 材料変更を歩留まりと処理量へつなぐ コータ、露光、現像、エッチング企業 欠陥密度、線幅、感度、タクト
High-NA量産データ基盤 装置企業、ファブ、研究機関 焦点、重ね合わせ、欠陥を工程間で戻す EDA、計測、装置制御企業 別製品でも改善が再現するか

まずは、保有資産に近い一行を選びます。そのうえで、支払者と評価先へ届く提携関係を作れるかを確かめます。

汚染と停止の予兆検知

EUV装置と周辺工程には、スズ、炭素、金属化合物が蓄積します。停止後に原因を探すのではなく、真空中の成分、光量、温度、振動から異常を予測します。

価値はセンサーの精度だけではありません。予定外停止を何時間減らせるか、交換部品をどこまで延命できるかで示します。

マスクとペリクルの寿命管理

ペリクルは、マスク上の異物がウエハーへ写るのを防ぎます。一方で、EUV光を一部吸収し、高出力化で熱を持ちます。

材料企業は、透過率や耐熱温度だけを売るのでは不十分です。検査履歴と露光回数を結び、交換時期と不良リスクを予測するサービスへ広げられます。

感光材と工程の共同最適化

High-NAでは感光膜が薄くなります。材料、塗布、現像、エッチングの条件が少しずれるだけで、線が倒れたり、欠けたりします。

参入企業は、一つの材料を売るのではなく、装置条件と測定方法を含む工程として提案します。共同研究拠点で評価し、顧客の標準工程へ入ることが重要です。

High-NA量産データ基盤

High-NAでは、焦点、重ね合わせ、マスク、感光材の欠陥を別々に扱えません。装置ログと検査画像を結び、どの条件が不良につながったかを追います。

ただし、製造データは顧客の重要機密です。保存場所、利用目的、モデルの所有権、契約終了時の削除を決めます。データを集める前に、責任分界を設計します。

参入前に注意したいリスク

第一のリスクは、評価設備へ近づけないことです。EUVとHigh-NAの実機は限られます。自社設備だけで良い結果が出ても、顧客工程で同じ効果を示せない場合があります。

第二は、顧客認定が長いことです。材料や部品を変えると、歩留まりと信頼性を再確認します。採用前の共同評価費、少量生産、品質保証を事業計画へ入れます。

第三は、顧客と供給先の集中です。完成装置はASMLに集中し、先端ファブも少数です。一社専用の設備に投資する前に、検査、材料、DUV、先端パッケージへ転用できる部分を決めます。

第四は、輸出管理です。EUVは経済安全保障の中心にあります。販売国だけでなく、遠隔保守、暗号化、技術者の国籍、研究データの移転も確認します。

第五は、性能指標の誤りです。高い解像度や耐熱温度が、そのまま顧客価値になるとは限りません。欠陥密度、処理量、稼働率、交換時間、ウエハー当たり費用へ変換します。

見送るべきなのは、実機評価の道筋がなく、研究データだけで巨額投資を求める案件です。また、一社一工程にしか使えず、顧客変更時に転用できない設備も慎重に判断します。

High-NA EUVへの参入をどう判断するか

参入判断は、技術の新しさではなく、量産損失を減らせるかで行います。

EUV周辺事業への参入判断
図5:保有資産と量産証拠から選ぶ、EUV周辺事業の参入、提携、待機、見送り。専用調査と主要企業の実装例をもとにイノベーション総研作成。 スマートフォンでは左右に動かすか、画像を開くと拡大できます。

参入できるのは、対象工程の損失を数値化できる場合です。例えば、マスク廃棄、装置停止、再露光、欠陥、薬液使用量です。その損失を減らす証拠を示します。

提携を選ぶのは、自社に材料や計測技術はあるが、EUV実機を持たない場合です。imecのような研究機関、装置企業、マスク企業と組みます。

待機すべきなのは、顧客が従来EUVとHigh-NAのどちらを使うか決めていない場合です。設備を先に買わず、共通して必要になる検査や汚染管理から入ります。

見送るのは、性能の良さを、歩留まり、処理量、稼働率へ変換できない場合です。評価先が一社だけで、共同開発契約もないなら、投資額を抑えます。

EUV周辺で最も価値のある資産は、単体部品の仕様ではありません。どの条件で欠陥が起き、どう直したかという工程データです。そのデータを隣の工程へ戻せる企業が、長く選ばれます。

よくある質問

EUVの仕組みと事業機会を検討するときに、出やすい疑問を整理します。

Q. EUVとは何の略ですか

A. Extreme Ultravioletの略です。半導体では、波長13.5nmの光を使って、ウエハー上に微細な回路を描く露光技術を指します。

Q. EUV露光装置はなぜASMLしか作れないのですか

A. 光源、反射光学、超精密ステージ、制御ソフト、保守を一つの量産システムに統合する必要があるからです。ASMLはCymer、ZEISS、TRUMPFなどとの長期連携と、顧客工場の運用データを蓄積しています。

Q. High-NA EUVと従来EUVの違いは何ですか

A. 開口数が0.33から0.55へ上がります。より細い回路を一回で描きやすくなります。一方、焦点が合う深さと露光範囲が狭くなり、材料、平坦化、検査の難度が上がります。

Q. High-NA EUVはもう量産に使われていますか

A. はい。ASMLは2026年7月、IntelがIntel 18Aの一部工程でHigh-NA EUVを使ったと発表しました。対象製品は量産出荷されています。ただし、全ての先端工程がHigh-NAへ移ったわけではありません。

Q. 日本企業はEUV露光装置を作らないと参入できませんか

A. 完成装置以外にも参入できます。マスク、ペリクル、感光材、塗布・現像、欠陥検査、汚染管理、工程データに事業機会があります。

Q. EUV周辺の新規事業で最初に確かめることは何ですか

A. 顧客が損失を負う工程と、量産相当の評価先を確認します。次に、欠陥、停止時間、処理量、交換費用のどれを減らすか決めます。

まとめ:参入余地は装置の外側にある

EUVは、13.5nmの光で微細な回路を描く技術です。ASMLは完成装置を統合しますが、光源、鏡、マスク、感光材、塗布・現像、検査は、多数の企業が支えています。

High-NAは、開口数を0.55へ上げ、解像度を改善します。一方、焦点、露光範囲、熱、欠陥の管理を難しくします。2026年にはIntelが一部工程で量産利用し、研究から実装へ進みました。

日本企業が狙えるのは、汚染と停止の予兆検知、マスク寿命、感光材と工程の共同最適化、量産データ基盤です。完成装置に挑むより、工程間の損失を減らす方が現実的です。

CoWoSの記事では、露光後のダイとHBMを一つにする後工程を解説しています。チップレットの記事と合わせると、微細な回路を作る工程から、複数ダイを製品にする工程まで見通せます。

参考文献

EUVの仕様、企業の取り組み、High-NAの量産状況は、次の一次情報を中心に確認しました。

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顧客工程、装置停止、欠陥、評価環境、提携先、データ権限を一つの事業構造にし、参入・提携・待機・見送りを判断します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

ASML、ZEISS SMT、TRUMPF、Intel、imec、レーザーテック、東京エレクトロン、JSR、Lam Research、AGC、三井化学、xLightの公式資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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