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新規事業の評価制度|売上だけで測らない3つの設計軸

「売上はまだ出ていない。でも、担当者の仕事を『成果なし』で終わらせてよいのだろうか」。

新規事業の評価制度は、事業の結果と担当者の仕事を分けて設計します。新規事業に関わる大企業勤務者888名への調査では、218名(24.5%)が「既存事業の評価指標では成果が正当に評価されないこと」を精神的な負担として選びました。

売上が出ない時期に何を任せ、何を評価すると説明していたかを、確認する手がかりになります。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

本記事では、仕事の質、撤退の扱い、経験を生かす次の役割という3つの設計軸を、企業の運用例と架空の評価シートで具体化します。挑戦しただけで高評価にせず、何を確かめ、どの判断を進めたかまで確認します。

この記事のポイント

  • 事業を続けるかどうかと、担当者の仕事の評価を分ける
  • 売上が出る前は、確かめた事実と次の判断への貢献を見る
  • 撤退の結論だけで減点せず、検証・報告・引き継ぎを確認する
  • 期初に目標をそろえ、経験を次の役割と育成につなげる

目次

新規事業の評価制度では、事業の結果と担当者の仕事を分ける

新規事業の評価制度とは、事業の段階と担当者の役割に合わせて、どの仕事をどう評価するかを決める仕組みです。「この事業に投資を続けるか」と「担当者が期待された仕事を果たしたか」は、関連しますが同じ問いではありません。

たとえば、顧客に支払いの意思がないと分かり、事業を止めることになったとします。それだけでは、担当者の仕事が不十分だったのか、必要な検証によって継続しない理由を見つけたのかは分かりません。

OECD/Eurostat『オスロ・マニュアル2018』は、イノベーション活動が当初の目標を達成しなかった場合でも、知識が得られることを整理しています。完成した製品や売上だけでは、活動で得たものを捉えきれないという視点です。

この資料自体が人事評価の方式を推奨しているわけではありません。そのうえで、本記事で実務に当てはめるなら、何を確かめ、その事実によってどの判断を進めたかを記録します。

これは「成果が出なくてもよい」という意味ではなく、結果に加えて本人の貢献を確かめるためです。

一方で、必要な検証を行わなかった、不利な情報を報告しなかった、といった仕事上の問題は別に扱います。事業の見込みが薄いことと、本人が約束した仕事を果たしていないことを混同しないのが出発点です。

担当者の評価を始める前に、まず評価票を見てください。「事業の結果」と「本人に任せた仕事」を別々に説明できなければ、欄を分けて記録するところから始めます。

売上が出る前は、次の判断に役立つ仕事を評価する

担当者に期待する仕事は、顧客の課題を探る段階と、販売を拡大する段階で変わります。初期から売上だけを求めるのも、売れる条件が整った後まで「学んだこと」だけを見るのも、実態に合いません。

評価項目を選ぶときは、今の事業で確かめたいことを先に決めます。以下は、段階に応じて「事業を見る項目」と「担当者の仕事を見る項目」を分けた設計例です。

事業の段階に合わせた評価項目と確認する記録
事業の段階 事業について見ること 担当者の仕事について見ること 確認する記録の例
顧客の課題を探る 誰が、どの場面で、どの程度困っているか 思い込みに合う声だけでなく、異なる事実も集めたか 顧客の具体的な行動、現在の対処法、課題の見直し理由
解決策を試す 試した方法が役立つか、使い続ける条件は何か 確かめる問いを絞り、結果を次の修正へつなげたか 試用時の観察、使われなかった理由、修正前後の変化
有償提供を始める 支払う顧客がいるか、提供に必要な費用を賄えるか 価格・導入・運用の条件を顧客と詰めたか 提案への回答、契約条件、提供原価、継続利用の状況
販売を広げる 売上、継続率、利益、提供品質を維持して伸ばせるか 販売と運用を、本人だけに依存しない形にしたか 収益の推移、解約理由、販売手順、担当者への引き継ぎ

この表を一律の採点表にする必要はありません。たとえば、技術や安全性の確認に時間がかかる事業なら、その確認を優先します。

また、複数の段階が同時に進む場合も、本人の担当範囲に必要な項目を選んでください。

売上・利益を評価に含める場合は、事業全体の数字だけでなく、本人がどこに責任を持つのかを明らかにします。価格を決められない担当者に、価格変更の遅れまで一人で負わせるような評価は避けます。

指標の具体例を広く確認したい場合は、新規事業のKPI例も参考になります。指標を増やす前に「この数字が変わると、何を決め直すのか」を一つずつ確認することが大切です。

新規事業の評価制度をつくる3つの設計軸

評価項目だけを増やしても、撤退の扱いやその後の配置が曖昧なままでは、担当者は安心して不利な事実を報告できません。仕事の見方から、終了後の経験の生かし方まで、次の3つを一緒に決めます。

1. 仕事の質を、集めた事実と判断への貢献で見る

面談件数や作成した資料の枚数は、活動を把握する材料にはなります。しかし、件数だけでは、事業を前へ進めたかどうかは分かりません。

「顧客面談を行った」で終わらず、「どの問いに答えを得たか」「分からないことは何か」「次に何を変えるか」を確認します。顧客の発言をそのまま需要と見なさず、実際の業務や購入条件まで確かめたかも重要です。

たとえば、担当者が「便利だと思う」という声を集めた後に、購入を決める人が別にいると気づいたなら、次はその決裁者に導入条件を聞く必要があります。評価するのは、好意的な声の多さだけでなく、判断に足りない事実を見つけて確認した仕事です。

評価面談では、本人に「前回から何が分かり、どの判断を変えたか」を説明してもらいます。記録に根拠がなく、本人にも説明できない場合は、追加で確かめる仕事を明らかにします。

2. 撤退した事実だけで、担当者を減点しない

撤退した案件にも、適切に検証した結果、見込みがないと分かったものと、必要な仕事をしないまま終わったものがあります。この違いを確認せず、案件の結論をそのまま個人の点数に置き換えないようにします。

撤退を褒めるのではなく、撤退までに果たした仕事を評価します。合意した問いを確かめたか、結果が悪くても早く共有したか、継続と停止の選択肢を比較したか、顧客対応と引き継ぎを行ったかを見ます。

同時に、検証の放置、都合のよい数字だけの報告、決めた上限を相談なく超える行為まで「挑戦」として扱ってはいけません。仕事の問題がある場合は、具体的な事実と本人の説明を確認します。

停止の条件や判断者は、結果が出る前に決めておきます。詳しい設計は新規事業の撤退基準で解説しています。

そのうえで、事業の停止を決める会議と、担当者の評価面談では、同じ記録を使っても結論を分けて残してください。

3. 得た経験を、次に任せる仕事と育成につなげる

評価を点数の通知で終えず、担当者ができるようになった仕事と、次に必要な支援を確認します。事業が終了しても、顧客理解、価格交渉、他部署との調整などの経験を具体的に残します。

たとえば「調整力が高まった」だけでは、次の上司は何を任せられるか判断できません。「営業と開発で対立した導入条件を整理し、顧客との合意まで進めた」と記録すれば、次に任せる仕事を検討しやすくなります。

ただし、新規事業を経験しただけで昇進や特別な待遇を約束するのではありません。実際に果たした仕事、本人の希望、次の組織で必要な役割を、人事と上司が確認します。

着任時にも、終了した場合の相談先と、次の配置を検討する時期を伝えておきます。「終わったらどうなるか分からない」という状態を減らし、経験を社内で生かす準備を進めます。

企業の運用から学ぶ、新規事業の評価・報酬6事例

企業の取り組みを参考にする際は、制度名をまねるより、何を区別し、誰が見直す仕組みなのかに注目します。以下は、事業の段階と支援の組み合わせを考えるうえで参考になる公式事例です。

サイバーエージェントは、事業の段階と将来性を分けて見る

サイバーエージェントのCAKK制度は、各事業や子会社を成長段階と将来的な利益規模で整理し、経営資源の配分に活用する取り組みです。半期ごとの会議で、戦略の見直しや統合・撤退なども判断すると説明しています。

ここから評価制度へ取り入れたいのは、今の利益額だけでなく、事業の段階に合う見方を用意することです。これは事業管理の事例であり、そのまま同社の個人人事評価の方式を示すものではありません。

自社へ適用するなら、まず「初期検証中の担当者」と「販売拡大を担う担当者」が同じ評価項目になっていないかを点検します。異なる仕事を、同じ売上額だけで比べないための参考になります。

ソフトバンクは、貢献・担う役割・行動を分けて評価する

ソフトバンクの評価・報酬制度では、正社員を対象に、貢献度評価を年2回、ミッション評価とコア能力・バリュー評価をそれぞれ年1回行うと説明しています。このうち貢献度では目標の達成や組織への貢献を、ミッションでは担う役割と発揮した能力を見ます。

なお、これは新規事業担当者だけに適用される制度ではありません。

参考になるのは、短期の結果と、任せられる役割・仕事の進め方を別々に確認する点です。新規事業へ応用するなら「顧客条件を明らかにした仕事」と「次の段階を率いる力」を分けて記録し、目標設定時と評価時の面談で認識を合わせます。

同社の評価頻度を、そのまま自社の正解にする必要はありません。案件の検証周期、本人の権限、等級制度に合わせて、人事と事業責任者が確認する時期と対象を合意します。

事業を続けるかの評価と、担当者の仕事・処遇の評価を分け、どの制度を設計したいかを明確にします。

続いて、報酬、フィードバック、投資管理、社外での起業経験という異なる観点から4例を見ます。企業の成功を制度だけの効果とはせず、公開資料が示す範囲を区別します。

クレディセゾン|会社の成果と報酬をつなぐ

クレディセゾンは2022年度の経営説明資料で、年間計画を上回った利益の一部を決算賞与として還元し、株価に連動する報酬であるファントムストックも活用する方針を示しました。全社の業績と報酬を結び付ける構想であり、この資料だけで現在の運用条件や、新規事業担当者への効果までは分かりません。

実務への示唆:会社全体の報酬との連動と、探索中の担当者をどう評価するかは分けて設計します。売上のない段階でも、確認できた顧客課題や中止判断に役立つ仕事を評価対象にします。

出典:クレディセゾン:2022年度経営説明資料

Amazon|周囲からのフィードバックと、人材育成への責任を評価に生かす

AWSの公式解説では、Forteという仕組みを通じ、同僚から本人の強みと今後の成長についてフィードバックを得る運用が紹介されています。また、事業責任者は売上や運営実績だけでなく、人材の成長・定着などの指標にも責任を持つと説明しています。

指標は職務に応じて使い分ける考え方です。

同じ解説に登場するSingle-Threaded Leaderは、一つの取り組みに集中する責任者の設計です。これは査定の計算式ではなく、評価する仕事を遂行できる時間と権限を用意する仕組みとして区別します。

実務への示唆:担当者の評価に、協働した営業・開発などの具体的な観察も取り入れます。ただし人気投票にせず、任せた仕事への貢献を確認します。

上司側にも、判断待ちの解消やメンバーの育成という責任を置くと、進まない理由を担当者一人へ集めずに話し合えます。

出典:AWS:イノベーションを支える組織・人材

Alphabet|探索事業の収支を、主力事業と区別して見る

Alphabetは、Google以外の事業をOther Betsとして区分して開示しています。また、研究開発段階のXと商用展開を広げるWaymoなど、Other Bets内でも段階は異なります。

これは主力事業と収支を区分する例ですが、個々の担当者の人事評価基準が公開されているわけではありません。

実務への示唆:探索事業の赤字を一律に失敗とせず、使った予算でどの不確実性が減ったかを確認します。同時に、追加投資の上限と継続条件は別途設けます。

出典:Alphabet:2025年年次報告・事業別開示

制度の参考例:社外で事業をつくる「出向起業」

出向起業は、大企業等の人材が社外で起業に挑む仕組みです。なお、経済産業省の過去の補助事業は終了し、現在はJISSUIが認定・助成プログラムを運営しています。

つまり、経済産業省の後援を受けた民間主体の取り組みであり、以前と同じ公的補助金が続いているという意味ではありません。そのため、利用条件は現在の募集要領で確認します。

実務への示唆:挑戦中だけでなく、終了・帰任した後の役割と経験の扱いを決めます。挑戦の結果だけでなく、得た顧客理解や事業運営の能力を次の仕事へつなげます。

出典:JISSUI:出向起業の認定・助成プログラム

自社では、①事業の継続判断、②担当者が実行した仕事、③報酬・昇格、④次の配置を一つの点数に混ぜず、それぞれの目的と判断者を定めます。

評価のどこで困っているかを確認する

近い状態を開くと、確認項目と記事内の説明・関連支援が分かります。

01 売上がないと評価できない

事業の段階に合う仕事と、確認する記録を決めます。

  • 今の段階を明記する
  • 確かめる顧客条件を選ぶ
  • 判断に使う記録を決める

段階別の評価項目を見る →

02 面談件数ばかり増えている

件数の達成と、顧客について分かったことを分けます。

  • 問いを具体化する
  • 発言と行動を分ける
  • 次の判断を記録する

仕事の質の見方を読む →

03 撤退すると必ず減点になる

撤退の結論だけでなく、そこまでの仕事を確認します。

  • 停止条件を事前に決める
  • 不利な事実の共有を確認する
  • 未実施の仕事と区別する

撤退時の評価を確認する →

04 兼務や社内調整の負担が見えない

本人が変えられることと、上司が整える条件を分けます。

  • 使える時間を確認する
  • 協力部署の責任者を決める
  • 変化した条件を記録する

面談での確認事項を読む →

05 経験を次の仕事に生かせていない

習得した力を確認し、任せる仕事と育成課題を具体化します。

  • 経験を具体例で残す
  • 次に任せる判断を選ぶ
  • 相談相手を確保する

組織・人材開発の支援を確認する →

06 人と事業の課題が混ざっている

まず事業が止まっている場面を整理します。無料診断は個人の査定用ではありません。

  • 止まった判断を挙げる
  • 不足する条件を分ける
  • 最初に扱う課題を選ぶ

新規事業のリスク診断を無料で試す →

NEXT STEP

次のステップ

評価の記録を、責任者の育成につなげる

次に任せる判断や、実務での支え方まで整えたい場合は、組織・人材開発の支援をご確認ください。また、事業全体の課題整理には無料診断も利用できます。ただし、診断結果を、そのまま個人の査定点にはしません。

新規事業の評価シートに、目標・事実・本人の貢献を残す

評価シートは、細かな点数を埋める前に、何を任せて、何が起きて、本人がどう動いたかを分かる形にします。「頑張った」「成果がなかった」という感想を、具体的な仕事の記録へ置き換えるためです。

次の表は、法人向けの予約管理サービスを検証する担当者の架空の記入例です。実在企業の実績や、全案件に共通する達成基準ではありません。

有償検証に進まなかった案件を、本人の仕事と分けて記録する例
記録する項目 記入例 評価面談で確かめること
期初に任せた仕事 予約の変更対応に困る企業へ、導入条件と有償で試す意思を確認する 何を確認できれば、次の投資を判断できると合意していたか
結果として分かった事実 対象企業は変更対応に困っていたが、既存システムとの連携が導入の前提だった 現場の希望だけでなく、導入を決める人の回答も確認したか
本人が行った仕事 現場と決裁者へ確認し、連携に必要な開発負担も整理して、当初案では有償検証に進めないと報告した 根拠を示し、不利な事実を判断に間に合う時期に共有したか
事業の判断 責任者は、当初案への追加開発を止め、連携が不要な顧客層を探すか別途判断することにした 担当者の提案と、責任者の決定を区別して記録しているか
次の育成課題 次回は早い段階で決裁者とシステム連携の条件を確認する 今回の経験を、次の検証の進め方へどう生かすか

この例では、有償検証の成立という結果だけなら未達です。一方、本人が導入を妨げる条件を確かめ、追加開発を止める判断に役立つ情報を届けた仕事は、分けて確認できます。

ただし、この記録だけで高評価と決めるわけではありません。あわせて、期初に合意した仕事の範囲、報告までの時間、上司の指摘に対する対応なども確認します。

たとえば、得られた事実が同じでも、必要な確認を長く放置していた場合は、その点を振り返ります。

複数人のチームなら「チームが達成したこと」と「本人が担った部分」も分けます。売上や顧客獲得を一人の手柄にせず、調査、開発、社内調整などの貢献が説明できる記録を残してください。

評価面談は、期初・途中・期末で確認することを変える

スーツ姿の二人が握手する手元

期末だけで振り返ると、途中で仕事や条件が変わったことを見落としがちです。新規事業では、最初に目標を決める場、条件を見直す場、結果と貢献を確認する場を分けて持ちます。

期初は、任せる仕事と会社が用意する条件をそろえる

本人と上司で、事業の段階、担当範囲、確認する記録、見直し時期を決めます。兼務なら新規事業に使う時間を確認し、既存業務で何を減らすかを兼務元の上司とも合意します。

評価票に「主体性」「挑戦」とだけ書くのではなく、「顧客の導入条件を確認し、継続する案と見直す案を責任者へ提案する」のように、期待する仕事を具体的にします。

人事は、等級との整合性や処遇への反映方法を確認します。また、最終評価者と、評価が食い違った場合の調整者も決めます。

そして本人には、この記録が育成だけに使われるのか、正式な人事評価にも使われるのかを伝えてください。

途中は、役割や使える時間が変わっていないかを確認する

事業の方向が変わった、協力部署の開発が止まった、兼務の割合が増えた場合は、残り期間に期待する仕事を見直します。会議の回数を一律に増やすより、こうした変化を報告する条件を先に決めておきます。

変更前の目標を消して書き換えるのではなく、変わった事実、変更理由、合意した日を残します。「結果が悪かったから目標を下げた」のか、「業務の条件が変わったから期待を調整した」のかが分かるようにするためです。

社内の判断待ちや協力不足まで、担当者の能力の問題にしないことも重要です。そのため、本人が適切に相談したかは確認しつつ、上司が引き受ける調整は上司の仕事として扱います。

分担の考え方は、新規事業部長の役割も参考にしてください。

期末は、仕事の事実を確認してから、次の役割を決める

期末は、まず本人に「任された仕事」「起きた結果」「自分の貢献」「できなかったこと」を、記録に沿って説明してもらいます。上司も日々の観察を持ち寄り、印象だけで評価を決めないようにします。

そのうえで、次に任せる仕事と支援を具体化します。たとえば、「引き続き頑張る」ではなく、「次の検証では決裁者との面談設計を任せる。その前に責任者と質問内容を確認する」といった形です。

事業が終了する場合も、この面談は省きません。顧客への対応、記録の引き継ぎ、本人の希望、次の配置を検討する担当者と時期を確認し、結果を次の上司に渡せる状態にします。

新規事業の評価制度で避けたい3つの運用

制度の書式が整っていても、日々の運用で意図が崩れることがあります。特に次の3つは、担当者が何を優先すべきか分からなくなる原因になります。

1. 面談件数や実験回数を、そのまま個人の点数にする

件数を増やすだけで評価が上がると、同じ答えが出る相手ばかりに聞いたり、小さな作業を細かく数えたりする動きが生じかねません。

件数は進み具合の確認に使い、評価面談では「どの事実が次の判断に役立ったか」を確認します。十分な根拠が得られたなら、同じ調査を続けず次へ進む判断も認めます。

2. 期末になって、売上や撤退の評価ルールを後付けする

顧客課題の検証を任せていたのに、期末に売上だけで判定すると、本人は何を基準に仕事をすればよいか分からなくなります。撤退を提案したことを、事前の説明なく減点する場合も同様です。

事業の変化に応じた目標の更新は必要ですが、変更理由と残り期間に期待する仕事を、その時点で合意します。期末に新しい基準を持ち出す運用とは分けてください。

3. 事業の診断結果や上司の印象だけで、人を判定する

事業のリスクが高いことと、担当者の能力が低いことは同じではありません。事業の状態を整理する診断や、育成のための振り返りを、そのまま個人の査定点へ置き換えないようにします。

「向いていない」「熱意がある」といった印象で結論を急がず、任せた仕事、本人の行動、組織が用意した条件を確かめます。複数の評価者の見方が違う場合は、平均点を出す前に、どの事実の見方が違うのかを確認します。

よくある質問

売上目標、撤退、評価者、兼務、制度の始め方について、運用時に迷いやすい点を整理します。

Q. 新規事業の評価制度では、売上目標をなくすべきですか?

A. なくす必要はありません。顧客の課題を探る段階では、確認できた事実と次の判断を中心に見ます。有償提供や拡大の段階では、売上・継続率・利益なども加えます。事業の段階と、本人に任せた仕事に合わせて項目を選び、後から一方的に変えないことが重要です。

Q. 事業から撤退した担当者は、高く評価するのですか?

A. 撤退しただけで高評価にも低評価にもしません。合意した検証を行ったか、不利な事実を適時に共有したか、停止の理由と引き継ぐ知見を残したかを確認します。検証の放置や事実の隠蔽とは分けて扱います。

Q. 新規事業の評価項目は、誰が決めればよいですか?

A. 本人、日々の仕事を把握する上司、事業責任者、人事が役割を分担して決めます。上司と事業責任者が担当業務と確認する記録を整理し、人事が等級や処遇との整合性を確認します。最終評価者と、意見が分かれたときの調整者も事前に明らかにします。

Q. 既存事業との兼務者は、どのように評価しますか?

A. 新規事業に使う時間と、既存業務で減らす仕事を両方の上司と確認します。それぞれがフルタイム相当の成果を求めないよう、担当範囲と配分を記録します。途中で稼働条件が変わった場合は、理由と残り期間の目標を合意して更新します。

Q. 評価制度をすべて作り直さないと始められませんか?

A. 全面改定の前に、既存の評価票へ新規事業の段階、本人に任せる仕事、判断に使う記録、次の育成課題を補足して試せます。ただし、正式な評価や処遇への反映方法は人事と合意し、試行用の記録がどのように使われるかを本人に伝えてから始めてください。

まとめ|次の評価面談で、仕事の事実を一枚に整理する

新規事業の評価制度は、売上以外の項目を増やすだけでは整いません。仕事の質、撤退の扱い、経験を生かす次の役割をつなげて考え、何を任せて何を確認するかを事前にそろえることが大切です。

まずは一つの案件で、事業の結果と本人の貢献を分けて書いてみてください。期初に任せた仕事、確認できた事実、本人が行った判断や調整、次に任せる仕事を並べると、不足している評価項目が見えてきます。

その記録を人事・上司・本人で確認し、正式な評価にどう反映するかを決めます。書式の全面改定から始めるのではなく、今の評価で見落としている仕事を、一つずつ説明できる状態にすることから進めましょう。

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ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

本文の該当箇所に、OECD/Eurostat、サイバーエージェント、ソフトバンク、クレディセゾン、AWS、Alphabet、JISSUIの一次資料へのリンクを記載しています。2026年9月27日確認。過去の導入方針、現行の説明、個人評価とは別の事業管理を区別しています。

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