新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

新規事業の推進組織とは|動かす3条件と体制設計

新規事業部をつくれば、案件は動き出すのでしょうか。

新規事業の推進組織とは、新しい事業の検証と事業化を、人・予算・意思決定の面から支える体制です。部署を新設しても、承認待ちや兼務の時間不足が解消されなければ、担当者は動けません。

まずは、決める人・使える時間・現場の権限をそろえることが必要です。この記事では、国内外10社の制度・組織運営を比較し、推進組織を動かす3条件、組織の置き方、既存部門との連携、体制設計書の記入例を解説します。

新たに部署を立ち上げる方だけでなく、専任組織があるのに案件が進まない方、少人数の兼務チームで始める方にも使える内容です。

この記事のポイント

  • 新規事業の推進組織は、部署の新設より「決める人・使える時間・権限」を先にそろえる
  • 組織の置き方は、既存部門の力を借りる必要性と、既存ルールから離れる必要性で選ぶ
  • 営業・技術・法務などへの依頼は、窓口だけでなく対応時間と期限まで合意する
  • 事業化の前に、販売・運営を引き継ぐ責任者と受入条件を決める

目次

新規事業の推進組織は、担当者が事業を進められる条件をつくる

新規事業の推進組織とは、新しい事業を探し、顧客に試し、事業化へ進めるために、人・予算・意思決定を支える体制です。新規事業部や事業開発室のような専任部署だけでなく、既存部門をまたぐプロジェクトチームも含みます。

案件ごとの担当者は、顧客の困りごとを確かめ、解決策を試し、次の行動を提案します。一方、推進組織の役割は、担当者だけでは動かせない予算、人員、専門部門の協力を使える状態にすることです。

小さな会社では同じ人が両方を担っても構いませんが、仕事の違いは分けて考えます。

ソニーの事例:挑戦する場に加え、事業化を助ける人を用意した

ソニーの2023年11月の公式インタビューでは、新規事業を支援するSSAPについて、挑戦しやすい環境を整えるだけではアイデアが育たず、事業化のノウハウを伝えて伴走する「アクセラレーター」を導入したと説明しています。つまり、資金や場所だけでなく、担当者が不足する経験を補う支援も用意した事例です。ソニーの公式記事

この事例を自社の体制づくりへ当てはめるなら、挑戦を任せることと、実行に必要な支援を渡すことを一組にすることが重要です。自社で専門チームを常設できない場合でも、顧客面談に同席する営業、試作を相談できる技術者など、必要な協力を先に確保できます。

専任部署を置く意味が大きいのは、複数の案件や部門間の調整が増え、案件担当者だけでは対応しきれなくなったときです。案件が少ない初期には、小さな横断チームでも始められます。

まず「担当者の仕事を、誰がどこまで支えるのか」を決めてください。

日本企業5社の新規事業組織|専門支援・段階審査・研究開発の連携

日本企業の事例では、企画者を専門家や既存部門につなぐ支援と、案件ごとの判断をどう用意するかに注目します。

以下は公開された組織・制度の事例です。採用した制度だけで成功が決まったとみなさず、自社で取り入れる条件を整理します。

ソニー|事業化の専門支援を企画者につなぐ

SSAPは2024年10月からSony Acceleration Platformへ名称を変更し、社外のパートナー連携や成長段階の支援を強化しています。たとえば、具体例のREON POCKETでは、アクセラレーターと共に試作支援を活用し、2019年のクラウドファンディングを経て2020年に一般販売へ進みました。

このように、専門支援を、製品を顧客へ届ける工程につないだ例です。

実務への示唆:企画者一人に調査・開発・契約を任せず、不足する専門機能へ相談できる窓口と利用時間を用意します。

出典:ソニー:REON POCKETの事業化

リクルート|起案と、進めるための協力をつなぐ

リクルートの2021年の公式記事は、Ringで2018年に仲間探しや役職者による支援、起案者以外が協力する仕組みを整えたと説明しています。また、記事には、採択後に事業化を検討し、撤退を経て別案に再挑戦した社員の例もあります。

つまり、採択件数だけでなく、検討を進める人と支援を用意する制度として参考になります。

実務への示唆:審査会の数より、次の審査までに誰が何を検証し、どの予算を使えるかを決めます。

出典:リクルート:Ringの公式紹介

サイバーエージェント|事業段階別に成長と継続を判断する

サイバーエージェントは、2022年10月にCAJJからCAKKへ移行し、事業の成長段階と将来の利益規模をもとに経営資源を見直す仕組みを公開しています。さらに、半期ごとの会議では戦略の見直しや統合・撤退も判断します。

つまり、現在の売上額だけで全案件を並べず、育てる案件と資源配分を一緒に考える運用です。

実務への示唆:探索段階のチームには検証の進捗、拡大段階には収益性というように、審査で求める材料を切り替えます。

出典:サイバーエージェント:新規事業の創出

三井物産/Moon Creative Lab|別組織で事業づくりに集中する

Moon Creative Labの公開事例では、三井物産セキュアディレクションの社内ツールを起点に、サイバーセキュリティサービスCAAVの試作品を作り、顧客と検証しました。デザインや開発の専門性を持つ別組織が事業化を支え、2022年の公表時点で最初の有料顧客を獲得しています。

ここで確認できる到達点は有料提供の開始であり、黒字化や投資回収の報告とは分けて扱います。

実務への示唆:組織を外へ置くだけでは不十分です。顧客接点や事業資産を持つ本体側との協力責任者も決めます。

出典:Moon Creative Lab:CAAVの事業化

富士フイルム|研究開発の基盤を事業横断で使う

富士フイルムは、事業部直下で事業に近い開発を行う「ディビジョナルラボ」と、全社の基盤技術を担う「コーポレートラボ」の2軸を公開しています。さらに、技術と知を融合する先進研究所も置き、事業固有の課題と共通技術を扱う役割を分けています。

これは、新規事業専用部署だけでなく、既存の研究基盤をどう使うかを見る例です。

実務への示唆:既存部門の技術や設備を借りる際の窓口、優先順位、費用負担を先に決めると、新規事業が社内調整だけで止まりにくくなります。

出典:富士フイルム:研究開発体制

海外企業5社の新規事業組織|独立・自律・事業間連携の設計

海外企業の事例では、探索と事業運営を分ける形、同じチームが継続して担う形、複数事業をつなぐ形を比較します。

以下は公開された組織・制度の事例です。採用した制度だけで成功が決まったとみなさず、自社で取り入れる条件を整理します。

Alphabet X|探索した技術を独立した事業へ移す

Xからは、2016年に自動運転のWaymo、2015年にライフサイエンス領域のVerilyが卒業し、別の事業組織へ進みました。つまり、技術を試す場から、事業として育てる組織へ役割を移した例です。

ただし、組織移行という到達点と、その後の収益性・投資回収は区別して評価します。

実務への示唆:探索部隊を恒久的な置き場にせず、事業化の際に誰へ人員・予算・知財を引き継ぐかを設計します。

出典:X:Waymoの組織移行

Amazon|顧客の課題から、小さなチームで提案する

Amazonは、顧客から逆算したPRFAQで製品の価値と顧客の疑問を整理し、案を検討する方法を公開しています。AWSの小規模チームの解説では、特定サービスの開発から運用・改善まで、同じチームが責任を持つとしています。

つまり、人数を減らすだけでなく、責任を果たすための開発・運営の機能も持たせる設計です。

実務への示唆:顧客に何が変わるかを説明し、開発後の運営まで誰が担うかを決めます。小さなチームへ大きな責任だけを渡さず、必要な技能と時間を合わせて確保します。

出典:Amazon:顧客から逆算する取り組み

Bosch|新しい事業を育てる専用の仕組みを持つ

Bosch Business Innovationsの一覧は、前身の社内インキュベーターgrow platformから生まれた事業を紹介しています。例えばサイバーセキュリティの調達を支援するCyberCompareは、別部門が資金を担い、Bosch Business Innovationsが支援やネットワークを提供する形です。

過去の育成例を示す一覧であり、現在の全投資先や成果を網羅するものではありません。

実務への示唆:一つの案件の進捗だけでなく、各案件の検証状況と追加投資の必要性を並べ、限られた人材の配分を決めます。

出典:Bosch Business Innovations:育成事業の一覧

ハイアール|小さな事業単位を顧客の価値へ向ける

ハイアールの2020年の公式説明では、人単合一モデルの小規模な事業単位に、現場の意思決定・人事・資源配分の権限を与え、顧客への価値と損益に責任を持たせるとしています。「自律的に動く」という掛け声ではなく、判断できる範囲を組織設計に含める例です。

実務への示唆:自律を求めるなら、価格・提携・採用など現場が決められる範囲と、本社が担う共通ルールをセットで定めます。

出典:ハイアール:人単合一の組織運営

平安保険|本業と周辺サービスを組み合わせる

平安グループは、金融と医療・高齢者ケアを組み合わせた事業構成を公開しています。単独の新サービスだけでなく、既存顧客や複数の事業をつなぐ組織・サービスの組み合わせを見る例です。

実務への示唆:顧客を共同で支援する場合は、紹介件数だけでなく、担当部門、データ利用の範囲、費用と収益の分担を決めます。

出典:平安グループ:事業構成

推進組織を動かす3条件は、決める人・時間・権限

組織図を描く前に、意思決定者との距離、担当者が使える時間、現場に渡す権限を決めます。ここでいう「距離」は、役職の上下ではなく、相談が届いて結論が返るまでの経路です。

当研究所の調査では、PoCや検証から事業化・スケールへ進む際の障壁として、「経営層の継続的なコミットメント・後ろ盾不足」を3位までに挙げた回答は253名(28.5%)、「事業化を担う人材・組織を確保できなかった」は206名(23.2%)でした。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

この数字は組織形態ごとの成功率ではなく、回答者が感じた障壁です。そのうえで、体制の設計へ当てはめるなら、経営の応援表明に加え、予算・人員の判断をいつ返すか、実際に動く人を確保したかを確認します。

たとえ部署名が決まっていても、この二つが空欄なら実行条件はそろっていません。

そして、3条件を次のように具体化すると、設置後にどこで止まるかを見つけやすくなります。

1. 決める人と、回答を返す期限を決める

役員直下でも、報告を聞くだけで結論が別の会議へ持ち越されるなら、判断は速くなりません。そのため、追加予算、部門間の人員調整、事業の継続・停止について、最終的に誰が答えるかを確認します。

なお、経営側でこうした支援を担う責任者を、本記事では「スポンサー」と呼びます。

担当者からは、今回決めてほしいこと、確認できた事実、選択肢、希望する回答日を渡します。これに対してスポンサーは、承認か否認だけでなく、条件や追加確認事項を返します。

そして、「検討しておく」で終えず、誰がいつ返答するかまで残すことが大切です。

例えば、来週の顧客テストに必要な費用を判断するのに、翌月の定例会議まで待つ運用では間に合いません。会議外で決められる範囲や、責任者が不在のときの代行者を用意します。

ただし、必要な専門確認を省略してよいという意味ではありません。

2. 担当時間を確保し、その分の既存業務を減らす

「新規事業を兼務する」と決めるだけでは、顧客への訪問や試作に使う時間は増えません。そこで、担当する曜日・時間、今月の成果物、減らす既存業務を、本人と兼務元の上司で合意します。

あわせて、予定が重なったときに、どちらを優先するかも決めておきます。

例えば週2日を使う計画なら、その2日を会議や資料作成だけで埋めず、顧客との対話や検証に必要な時間を予定へ入れます。なお、これは時間配分の例であり、どの案件にも週2日を推奨するものではありません。

むしろ、必要な活動から時間を見積もり、実際に使えた時間とのずれを確認します。

予定どおりに時間を使えない状態が続くなら、担当者の残業で補うのではなく、扱う案件を絞る、既存業務を移す、専任者を置く、のどれかを上司が判断します。初動の具体的な仕事は、新規事業担当がやるべきことで整理しています。

3. 現場で決めてよい範囲と、承認が必要な範囲を分ける

顧客への質問内容を変えるたびに役員承認が必要では、検証が進みません。合意した対象・予算・期間の中で担当者が決めてよいことと、それを超えた場合に承認を求めることを分けます。

具体的には、通常の質問修正や承認済み予算内の試作は担当者が進める一方、追加投資、事業の対象変更、本番提供の開始などは責任者へ相談する、といった分け方です。金額や契約の境界は、自社の決裁規程と案件のリスクに合わせます。

権限を渡すとは、確認をなくすことではなく、誰が何を確認して決めるかを明確にすることです。たとえば、個人情報、安全性、品質に関わる確認は、少額のテストでも必要になる場合があります。

そのため、分からないことを担当者だけで判断させない相談先も、権限と一緒に渡してください。

新規事業の推進組織は、自社の条件に合う置き方を選ぶ

基本条件をそろえたら、既存部門内、全社横断の独立部門、子会社などの社外型から置き方を検討します。ただし、これは代表的な整理であり、横断チームと専任部署を併用する設計もあります。

組織の置き方は、既存部門の力を借りる必要性と、独立して判断する必要性から選びます。

次の表は、各形態が向く状況と、運営を始める前に解いておきたい課題を比べたものです。

新規事業の組織形態と、選ぶ条件・運営上の注意点
置き方 向いている状況 先に決めたいこと
既存部門内のチーム 既存の顧客、技術、販売網を使い、現在の事業に近い領域を試す 既存事業の目標とは分けて確保する時間・予算と、現場の決定範囲
全社横断の独立部門 複数部門の技術や人材を組み合わせる、または複数案件を育てる 各部門が協力する範囲、経営への相談経路、事業化後の受入先
子会社などの社外型 採用、提携、運営などを本体と異なる条件で進める必要がある 親会社の技術・顧客・ブランドを使う条件と、親会社に承認を求める事項

例えば、自社営業が持つ顧客接点を使わなければ検証できない案件は、独立させる前に協力の取り決めが必要です。一方、既存事業とは異なる採用や提携の仕組みが不可欠なら、部門内で対応できるか、別組織が必要かを検討します。

社内ルールが合わないという理由だけで社外化しても、親会社の承認が毎回必要なら、期待した速度は出ません。法人を分ける場合は管理負担も増えるため、まず現行組織で変えられる権限や運用を確認します。

体制で困っていることから、次の確認先を選ぶ

近い状態を開くと、確認項目と記事内の説明・関連支援が分かります。

01 承認待ちが長い

何を誰に決めてもらうか、期限とともに整理します。

  • 今回の判断事項
  • 最終的な決定者
  • 回答を受け取る日

判断を返す経路を確認する →

02 兼務で検証の時間が取れない

減らす既存業務と優先順位を、上司と合意します。

  • 実際に使える時間
  • 移管する既存業務
  • 衝突時の優先順位

担当時間の決め方を読む →

03 現場で決めてよい範囲が分からない

現場で進める事項と承認が必要な事項を分けます。

  • 予算と期間
  • 対象顧客と変更範囲
  • 専門部門への相談条件

権限の分け方を確認する →

04 既存部門に協力を頼めない

相手に依頼する仕事と時間を具体化します。

  • 依頼する仕事
  • 協力窓口と責任者
  • 回答・対応の期限

協力と責任の分け方を読む →

05 事業化の引き継ぎ先が決まらない

販売・提供を続けるための条件を先に確かめます。

  • 販売と運営の責任者
  • 必要な人員と予算
  • 引き受ける条件

事業化前の受入条件を確認する →

06 検証の実行を支える人が足りない

仮説整理から検証の実行まで、支援内容を確認できます。

  • 社内で担う仕事
  • 不足する経験・専門性
  • 支援を頼む期間

新規事業立ち上げ支援を見る →

NEXT STEP

次のステップ

体制を決めたら、実行できる検証計画へ

役割や時間を整理しても、顧客への検証を進められない場合は、新規事業立ち上げ支援の内容をご確認ください。事業の現在地とつまずきリスクを整理したい場合は、無料診断も利用できます。

既存部門の協力と、事業化後も提供を続ける体制を決める

円形のデジタル画面に触れる指と、つながる六角形のイラスト

推進組織を独立させても、顧客接点や技術など既存部門の協力が必要な場合があります。また、事業化後は別部門へ移管する形のほか、Amazonの例のように同じチームが販売・運営も担う形があります。

自社に合う形を選び、提供を続ける責任者と必要な機能を確保します。

「営業部に協力してもらう」では、誰がどこまで動くか分かりません。そこで、「対象顧客へ面談を打診する」「試作品の利用条件を確認する」のように仕事を切り分け、窓口、使える時間、回答期限を合意します。

また、協力を頼まれた部門の通常業務との調整は、担当者任せにせず、部門長同士で行います。

推進組織の事務局、案件の実行責任者、経営側の判断者が混同されると、資料を集める人に投資判断まで求められます。次のように仕事を分けると、誰に何を頼むかが明確になります。

案件を進めるために分ける責任と、具体的な仕事
責任を持つ人 主な仕事 混同しないこと
案件の事業責任者 顧客・技術・収益の情報をまとめ、次の行動と必要な支援を提案する 全ての専門実務を一人で抱える役割ではない
推進組織の事務局 会議、案件情報、専門家への相談、決定後の対応を管理する 会議を開いたことを、投資が承認されたことにしない
経営側のスポンサー 予算・人員・部門間の衝突を調整し、権限の範囲で判断する 励ますだけで、担当者へ問題を戻さない
営業・技術・法務などの担当者 依頼された専門事項を確認し、実施できる条件と残る課題を返す 専門上の了承と、事業全体の投資判断を分ける
事業化後の受入責任者 販売・提供・保守などを引き継ぐ条件を確かめる 「事業化したら営業へ渡す」の一言で済ませない

これらは必ず5人を配置するという意味ではありません。また、兼任する場合も、議事録に「何の立場で、何を決めたか」を残します。

なお、別部門へ移す予定がない場合は、受入責任者を新設するのではなく、同じチーム内で販売・運営の担当を明確にします。推進組織の責任者の仕事を詳しく確認する場合は、新規事業部長の役割も参考になります。

本番提供の前に、売る人・運営する人と受入条件を合意する

顧客への試作品テストを担当した人が、そのまま契約、販売、問い合わせ対応まで続けられるとは限りません。本番提供に進む前に、価格や契約条件、品質、提供原価、問い合わせ先、障害時の対応を誰が引き受けるか確認します。

例えば、試作品を使った顧客の反応がよくても、利用者が増えるたびに開発担当者が個別対応する状態なら、販売拡大より先に運営体制を整える必要があります。受入部門が断る場合も、「協力的でない」と扱わず、足りない人員、予算、手順を具体化します。

移管する場合は受入条件を、同じチームが続ける場合は運営を担う条件を、事業化の前に決めます。検証で分かったことを事業計画へつなぐ方法は、仮説検証の進め方で確認できます。

新規事業の推進組織が止まったら、直近の案件から原因を探す

体制が機能しているかは、部署の人数や会議の回数だけでは分かりません。そこで、直近で止まった案件を一つ選び、「何を待っていたのか」をたどります。

というのも、原因によって、直すべき相手と仕組みが変わるからです。

承認待ちが続くなら、判断者と必要な情報を確かめる

相談の相手に決定権がないのか、判断材料が足りないのかを分けます。そして、前者なら決定者へ届く経路を直し、後者なら必要な情報と追加確認の担当者を決めます。

つまり、資料を増やす前に「何が分かれば判断できるか」と聞くことが出発点です。

検証が進まないなら、確保時間と協力の約束を見直す

顧客面談が予定どおりできなかった理由を確認します。というのも、既存業務で時間を使ったのか、営業への紹介依頼が届いていなかったのかで対策は異なるからです。

そのため、担当者の予定表と依頼の記録から、実際に止まった箇所を探してください。

案件の継続だけが決まるなら、次に進む条件を置く

「もう少し検証する」を繰り返している場合は、次回までに確認することと、その結果で変える判断が曖昧かもしれません。そのため、活動件数だけでなく、顧客の購入条件、提供上の制約、収益の前提など、今回の段階で必要な情報を選びます。

新規事業のKPI設計では、段階に合う指標の考え方を紹介しています。

同じ問題が複数の案件で繰り返されるなら、個別の進め方だけでなく、権限配分や部門間の業務分担を見直します。反対に、顧客の需要が確かめられない案件を、組織再編だけで立て直せるとは限りません。

案件の問題と体制の問題を切り分けることが重要です。

体制設計書は、今の案件を使って1枚から始める

全社共通の制度を完成させる前に、一つの案件で運用できる設計書を作ります。組織図だけでなく、今回の目的、役割、時間、権限、協力先、判断日を同じ紙面に置きます。

以下は、既存顧客向けの点検支援サービスを検証する架空の例です。実在の支援実績ではなく、人数・期間・予算は記入方法を示すための例です。

点検支援サービスの検証に向けた体制設計書の記入例
設計する項目 記入例
今回の目的 現場の点検担当者だけでなく、費用を負担する部門が導入する条件を確かめる
事業責任者と協力者 企画担当Aが検証を統括。営業Bが面談を打診し、技術Cが試作への質問に対応する
確保する時間 4週間、Aは週2日を担当。定例集計を他担当へ移し、営業Bは面談調整に週2時間を確保する
現場の権限 承認済みの対象顧客・予算・情報管理条件の中で、質問と画面案を修正する
経営側の判断者 スポンサーDが追加費用と部門間の調整を判断。自分の権限外の事項は所定の決裁者へ上げる
次の判断 4週後に、導入条件の確認結果と提供費用の見積もりを基に、次の検証・修正・停止を決める
事業化に向けた宿題 営業部門と運営部門の責任者が、販売・問い合わせ対応を引き受ける条件を提示する

この設計書で大切なのは、担当者名を埋めることだけではありません。たとえば、営業Bの時間が取れないと分かったら、面談対象を減らすのか、ほかの営業が協力するのかを判断できます。

また、予定より費用が必要になった場合も、誰に何を相談すべきか分かります。

未決の欄は隠さず、決める人と期限を書きます。そして、初回の検証が終わったら、承認待ち、予定と実際の稼働のずれ、引き継げなかった仕事を振り返り、設計書を更新してください。

なお、確認の抜けを探すときは、新規事業チェックリストも使えます。

イノベーション総研の支援事例|役割と成功基準を整え、チームを動かした例

推進組織を動かすには、担当の名前に加え、各人が担う仕事と、経営から現場まで共通して見る基準を決めます。役割を設計した例と、成功基準をそろえた例を紹介します。

5人の役割を組み直し、30社の顧客ヒアリングへ

大手製造業では、5名のチームが役割の曖昧さから3か月間動けていませんでした。イノベーション総研は顧客開発など5つの役割を定め、外部の事業開発経験者も配置。

支援約3か月で30社への顧客ヒアリングと仮説検証報告を完了しました。

この支援事例の詳細を見る:5人の役割を組み直し、30社の顧客ヒアリングへ

経営・ミドル・現場の成功基準をそろえ、停滞案件を再始動

大手BtoB企業では、予算と人員があっても新規事業が半年間停滞していました。イノベーション総研は経営・ミドル・現場の成功基準の違いを可視化し、共通の基準とマイルストーンを合意。

成功の定義をそろえた後、3週間で次のマイルストーンへ到達しました。

この支援事例の詳細を見る:経営・ミドル・現場の成功基準をそろえ、停滞案件を再始動

役割が曖昧なら仕事の分担を、目標が食い違うなら次の判断基準を確認します。組織図を変える前に、直近の一案件で止まっている仕事と判断を特定してください。

自社でも同じ課題がある場合:現在の関連サービス「TeamPro Pilots」で支援範囲を確認できます。
チームの役割と実行体制を整える支援を見る / チームが動けない理由と体制を相談する

新規事業の推進組織でよくある質問

人数、社長直轄、経営企画との兼務、評価の考え方を補足します。

Q. 新規事業の推進組織には何人必要ですか?

A. 一律の適正人数はありません。顧客への確認、試作、収益の検討、社内調整に必要な仕事と時間を洗い出して決めます。兼任できる役割はまとめても、誰が事業全体を判断し、誰が実行するかは明確にしてください。

Q. 推進組織は社長直轄にするべきですか?

A. 複数部門にまたがる人員や予算の判断が必要なら、社長や担当役員へ直接相談できる体制は選択肢になります。ただし、直属であることだけでは十分ではありません。決める事項、回答期限、不在時の代行者も決めます。

Q. 経営企画部が新規事業の推進組織を兼ねてもよいですか?

A. 兼ねることは可能です。ただし、計画の取りまとめや審査だけでなく、顧客への確認や検証を実行する人と時間を別途確保します。管理する仕事と、案件を動かす仕事を同じものとして扱わないことが大切です。

Q. 新規事業担当者を売上だけで評価してよいですか?

A. 販売前の検証段階では、売上だけで仕事の進み具合を捉えるのは困難です。確かめるべき前提を検証し、事実を共有し、次の判断につなげたかを確認します。販売を始めたら、売上・原価・継続利用・運営負荷なども段階に合わせて評価へ加えます。

まとめ|まず一つの案件で、決める人・時間・権限を合わせる

新規事業の推進組織は、担当者が事業を進めるための体制です。意思決定者との距離、確保する時間、現場の権限をそろえたうえで、自社に合う組織の置き方を選びます。

独立性を高める場合も、営業や技術などの協力を切り離してはいけません。依頼する仕事と対応期限を決め、事業化の前には販売・運営を引き継ぐ責任者を置きます。

最初の確認は、「今止まっている案件で、誰のどの判断、またはどの協力が足りないのか」です。一つの案件で確かめると、部署を新設する必要があるのか、既存の役割や権限を直せばよいのかが見えてきます。

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新規事業の検証が進まない、社内の役割分担が曖昧、実行を支える人材が不足しているといった課題をお聞かせください。現在の案件と体制に合わせた進め方を無料相談で整理します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

ソニー、リクルート、サイバーエージェント、Moon Creative Lab、富士フイルム、X、Amazon・AWS、Bosch、ハイアール、平安グループの公式資料を、各事例から参照できます。確認日:2026年9月27日。公表された組織・制度と、本記事の実務への提案を区別しています。

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