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IBMとシーメンス、半導体の3次元積層技術を量産へ近づける共同研究
ニュースの要点
IBMは2026年10月14日、シーメンスと半導体の新しい構造「ナノスタック」の共同研究を進めると発表しました。トランジスタを上下に積み重ねる技術について、設計、シミュレーション、製造時の微細なパターン形成に必要な手法を開発し、将来の量産へ向けた準備を進めます。
IBMが半導体素子の構造に関する技術を、シーメンスが電子回路の設計自動化や製造工程のシミュレーション、製造用ソフトウエアなどの知見を持ち寄ります。実際に半導体を製造する前に仮想モデルで性能や設計を検討し、製造上の課題を見つける方針です。
IBMは同年にナノスタック構造の成立可能性を示したと説明しています。今回はそれを製造・量産へ近づける研究であり、量産開始や製品出荷を発表したものではありません。投資額、契約条件、量産開始時期は公表していません。
ニュース出典:IBM「IBM and Siemens Collaborate on Research to Advance Nanostack Architecture」(2026年10月14日)
イノベーション総研の考察
研究室で新しい構造が動くことと、顧客の回路を安定してつくれることの間には、設計や製造の道具を整える仕事があります。今回の提携は、その間を埋めるために異なる専門能力を組み合わせる動きと読めます。
積み重ねる構造は設計と製造の両方を変える
半導体の性能を高める方法には、同じ面積へより多くのトランジスタを収めることがあります。ナノスタックは、薄いシート状の構造を使うトランジスタを上下に積み、位置をずらして配置する仕組みです。IBMは、層ごとの材料の組み合わせも変えられると説明しています。
ただし、新しい形を示すだけでは、回路を設計する企業や製造する工場は利用できません。設計どおりの性能が出るか、製造工程に無理がないかを、共通のモデルで検討できる必要があります。
新構造を普及させるには、素子の性能だけでなく、設計・製造で使える道具が必要です。
今回IBMが挙げるシーメンスの役割は、電子回路の設計自動化や工程のシミュレーションです。研究成果を実際に使う側へ渡すための能力を、開発初期から組み込む狙いがあると考えられます。
IBMの構造技術とシーメンスの開発道具を接続する
両社が担当する仕事は同じではありません。IBMは素子の構造を考え、シーメンスはその構造を設計・製造する際の仮想モデルやソフトウエアに関わります。発表では、実物をつくる前に性能をモデル化し、製造上の問題に対処する方針を示しました。
今回の協業は、技術を持ち寄るだけでなく、研究成果を次の工程で試せる形へ変えるものです。
例えば、製造条件を少し変えたときに性能がどれほど変わるのかを予測できれば、試作する条件を絞る材料になります。ただし、実験回数や開発費が実際にどれだけ減ったかは未公表です。仮想モデルができたことと、試作結果を正しく予測できることも分けて評価します。
設計上の自由が増えても製造の難しさは残る
上下の層で材料を変えられることは、性能や消費電力を調整する選択肢につながります。一方、選択肢が増えれば、製造手順やばらつきの管理も複雑になる可能性があります。
イノベーション総研は、理想的な一個の性能だけでなく、繰り返し製造した場合にどれだけ条件を保てるかが、量産判断の焦点になると考えます。今回の発表は、その検討へ進む研究段階を示すもので、量産性の証明ではありません。
量産への評価では、性能の最高値と、安定してつくれる範囲を区別します。
自社の技術事業化でも、優れた試作品をつくった後に、製造・検査・設計変更の担当者を巻き込む必要があります。共同開発先は、同じ技術が得意な会社だけでなく、次の工程で使える状態へ変えられる会社から探すことが参考になります。
共同研究の次はモデルと試作の一致を追う
両社は量産開始時期や製造拠点を示していません。したがって、今回の提携から特定の製品出荷や売上増加の時期を推測することはできません。次の研究成果で、設計・製造手法がどこまで具体化したかを確かめます。
次の観測点は、仮想モデルの予測と実際の試作結果を照合する成果が出るかです。
その後、ほかの設計者が利用できる道具や手順として整備されるか、製造工程に組み込めるかを追います。新規事業担当者の方も、提携発表時に「研究成果」「試作での再現」「利用者への提供」を別々の節目として置くと、進捗を見誤りにくくなります。
まとめ
IBMとシーメンスの共同研究は、新しい半導体構造を、設計・製造で扱える技術へ近づける取り組みです。量産開始のニュースではなく、試作技術と量産の間を埋める提携として捉えることが重要です。自社の技術事業化でも、次の工程を担う相手と、検証すべき証拠を先に決めることが参考になります。
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