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STP分析のやり方|新規事業で顧客を選び、検証へ進む5ステップ

「STP分析を作ったのに、営業は既存顧客を見て、開発は技術に反応する顧客を見ている」。この状態では、表を埋めても、誰に会い、何を確かめるかが決まりません。

STP分析とは、市場を分けるSegmentation、狙う顧客を決めるTargeting、選ばれる位置を決めるPositioningを一続きで設計する方法です。新規事業では、対象顧客だけでなく、選ばない顧客、顧客が使う比較軸、判断を見直す条件まで同じ資料に置きます。

STP分析は、顧客を選び、次の検証を決めるための意思決定表です。 本記事では、BtoBの架空例を通じて、S・T・Pの意味、5ステップのやり方、シートの書き方、8つの失敗と見直し方まで説明します。

この記事のポイント

  • STP分析は、市場を分け、狙う顧客と選ばれる理由を一続きで決める
  • BtoBでは企業属性だけでなく、課題状況・代替行動・導入権限で市場を分ける
  • 選ぶ対象と同時に、選ばない対象・反証・再検討条件を記録する
  • 作成後は商品・営業・メッセージ・提供へ反映し、顧客の行動で更新する

目次

STP分析の結論|誰に何を届け、何を確かめるかを決める

STP分析でセグメント・優先顧客・比較軸を整理する会議のイメージ
S・T・Pを一枚に置き、対象・比較軸・次の検証をそろえます。

STP分析の結論は、広い市場をきれいに分類することではありません。限られた資源をどの顧客へ置き、どの比較で選ばれる状態を作るかを決めることです。

S・T・Pは別々の資料ではなく、同じ顧客仮説を異なる角度から確かめる一組です。 三つを一枚に置くと、対象顧客と価値提案のずれ、営業が会っている相手と導入権限者のずれを早く発見できます。

STP分析で市場・優先顧客・選ばれる理由を一続きで決める方法
構成要素 決めること 証拠 次に確かめること
S:セグメンテーション 課題状況・代替行動・権限で分ける 顧客の行動、役割、非該当理由 同じ提案・購買・提供で扱えるか
T:ターゲティング 今回選ぶ対象と選ばない対象を決める 選択・不選択の事実 課題、接触、導入、提供条件が成り立つか
P:ポジショニング 比較対象と採用する比較軸を決める 顧客の選択行動・失注理由 その軸で顧客が理解し、行動するか
版管理 選択の有効期間を決める 更新日、反証、失効条件 どの証拠でS・T・Pを戻すか

イノベーション総研が大企業勤務者888名を対象に実施した調査では、新規事業の最大の障壁として「意思決定スピードの遅さ」が22.1%で最も多く選ばれました。また、経営層と現場の認識に「大きなギャップがある」「ややギャップがある」と答えた人は計76.1%でした。

この結果から、STP分析を市場の整理だけで終えると、優先顧客や次の検証を決める場面で再び認識が分かれるとイノベーション総研は考えます。S・T・Pを別々の資料にせず、「課題は強いが導入を決める人へ届かない」「対象顧客が使わない軸をPに置いた」といった矛盾を一つの表で確かめます。

出典:イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」(2026年4月、n=888、調査実施:株式会社マクロミル)

STP分析の成果は、現時点で誰を選び、誰を選ばず、どの証拠で選択を変えるかを決められたことです。 表を完成させることではありません。

STP分析とは

Segmentationは、顧客の違いによって市場を分ける工程です。Targetingは、分けた顧客群のうち、どこに資源を集中するかを決めます。Positioningは、その顧客から何と比べられ、どの理由で選ばれるかを設計します。

OpenStax「Market Segmentation and Consumer Markets」は、市場セグメンテーションを説明しています。定義、利点、複数の切り口を整理した資料です。同「Selecting Target Markets」は、標的市場とターゲット戦略を扱います。

OpenStaxの教材では、STPを市場の細分化、標的市場の選択、製品・サービスの位置づけという連続した流れとして整理しています。新規事業でも基本は同じですが、初期段階では前提が変わるため、確定事項ではなく更新可能な仮説として扱います。

ただし、この3つは独立していません。

ターゲットを変えれば、顧客の比較対象と価値も変わります。 逆に、ポジショニングを検証してみたら、セグメントの切り方が違っていたと分かることもあります。新規事業では、SからPへ一方向に進むのではなく、検証結果に応じて戻ります。

なお、STPは市場に出ていくときの選択を扱います。全社の資源配分や事業領域を決める新規事業戦略の立て方とは階層が異なり、市場規模を測るTAM・SAM・SOMとも役割を分けます。

ここからは、「複数工場の設備点検記録を一元化するBtoBサービス」という架空の例を使います。実在する支援先や受注実績ではありません。Sで課題が起きる工場を分け、Tで最初に検証する企業群を選び、Pで表計算や個別システム開発と比べた価値を決める流れです。

S|セグメンテーションで市場を分ける

セグメンテーションでは、提案、購買、提供の方法が変わる違いで市場を分けます。属性が違っても同じ行動なら統合し、属性が同じでも課題状況や権限が違えば分けます。

セグメントは、属性の違いではなく、提案・購買・提供の方法が変わる違いで分けます。 セグメント名だけを書かず、「対象となる状況」と「非該当となる状況」を対にします。境界の証拠がなければ仮説と明記します。

BtoBのセグメンテーションは、企業属性より課題状況で分ける

BtoBでは、業種や規模だけでなく、課題が起きる状況、現在の代替行動、導入に関わる権限、提供条件を組み合わせます。次の表で、各切り口が提案・購買・提供の違いにつながるかを確認してください。

BtoB市場を課題・代替・権限・提供条件から分ける切り口
分ける切り口 扱う内容 検証で確かめる問い
企業属性 業種、規模、地域 課題の発生と関係があるか
課題の状況 課題が起きる場面・時期 切実さが共通しているか
現在の対処 手作業、外注、既存の手段 比べられる相手が共通か
利用・導入権限 使う人、推進する人、決裁する人 買い方と受入条件が共通か
非該当理由 課題なし、別手段で充足、権限なし 同じ提案を当てない境界になるか
提供条件 自社が導入・支援できる前提 同じ方法と原価で届けられるか

企業属性は調べやすい切り口です。ただし、同じ業種・規模でも、課題が起きる状況は違います。

そこでBtoBの新規事業では、「課題がいつ起きるか」「今どう対処しているか」を加えます。こうすると、顧客との対話や解決策の検証につながりやすくなります。

架空例でも「製造業・従業員1,000人以上」だけでは、会う相手を選べません。「複数工場の点検記録を表計算で集め、月次報告のたびに確認と転記が発生する企業」まで書けば、誰に何を聞くかが決まります。

一方で、切り口を増やしすぎると、1社ずつ別のセグメントになってしまいます。「この違いによって、価値・購買・提供のどれが変わるのか」を説明できない切り口は外します。ICPとはで、優先する企業の条件をさらに具体化できます。

セグメント仮説は、課題・代替・権限まで書く

「特定の属性の企業」で止めず、「特定の状況で課題が起き、現在は特定の方法で対処し、導入権限を持つ企業群」まで書きます。

セグメント仮説を検証可能な形で記録する項目
仮説の項目 記入内容
課題状況 いつ、どの業務で、何が起きるか
代替行動 現在は何を使い、なぜ変えないか
権限 利用者、推進者、決裁者は誰か
適合証拠 発言、観察、受注、利用など何を確認したか
非該当証拠 どの条件なら同じセグメントに含めないか
提供条件 自社が同じ方法で価値を届けられるか
更新日・失効 いつ確認し、何が変われば再分類するか

まだ確かめていない条件には仮説の印を付けます。同じ条件の顧客に会い、共通点だけでなく例外と非該当を記録します。

T|ターゲティングでは、今検証する顧客と見送る顧客を決める

ターゲティングでは、今の検証で資源を置くセグメントを選びます。同時に、選ばない対象と再検討の条件を残します。市場の魅力度だけでなく、課題への接近、購買、提供まで一連の条件を確かめるためです。

ターゲティングでは、選ぶ理由と同じ解像度で、選ばない理由を残します。 「大きい市場だから選ぶ」「既存顧客がいるから選ぶ」といった一文で終えません。不選択は永久除外ではなく、特定の反証が出るまで検証順序を後ろへ置く判断です。

ターゲットは、需要・接点・代替・提供適合の4観点で選ぶ

需要・課題、会えるか、競争・代替、自社に合うかの4観点を、点数だけでなく証拠と判断に変換します。

ターゲット候補を需要・接点・代替・提供適合で比較する観点
評価観点 選択台帳へ置く証拠 不選択・保留を検討する条件
需要・課題 最近起きた課題と現在の代替行動 課題が起きない、既存手段で十分
会えるか 利用者、推進者、決裁者への到達経路 接点はあるが導入権限へ届かない
競争・代替 実際の比較対象と変更条件 変更しない理由を崩す証拠がない
自社に合うか 同じ品質・原価で提供できる条件 個別対応なしでは価値を届けられない

市場規模は可能性を示しますが、最初の顧客の課題や行動の代わりにはなりません。既存取引先に会えることも、課題の切実さや決裁への到達を保証しません。

そこで、各候補に「選択証拠」「不選択証拠」「未確認」「再検討の引き金」を置きます。評価点が同じでも、未確認の条件が違えば次に集める証拠は変わります。

たとえば、利用者には会えても決裁者へ届かない群は「会える」と断定しません。接点と導入権限を別の証拠にします。

優先するターゲットと不選択・再検討条件を残す項目
選択欄 記録する内容
今回選ぶ対象 どの課題状況・権限・代替行動を持つ顧客か
選択証拠 発言ではなく、観察・紹介・提案受入・有償行動のどれか
今回選ばない対象 どの条件が足りないため検証順を後ろへ置くか
未確認 選ぶにも外すにも証拠がない論点
再検討条件 新しい規制、提供能力、顧客行動など何が変われば戻すか
判断者・期限 誰がいつ選択を見直すか

ICPとはが企業単位の適合・除外条件を具体化するのに対し、本稿のTは複数のセグメントから今どこを検証するかを決めます。両方を使う場合も、ICPの適合判定を市場全体の魅力度と混同しません。

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P|ポジショニングは、顧客が使う比較軸から決める

ポジショニングでは、対象顧客が実際に使う比較軸を選びます。競合製品だけでなく、手作業、外注、内製、何もしないことも比較相手です。

OpenStax「Product Positioning」は、選んだ標的市場に対する位置付けと知覚マップを説明しています。これは一般教科書の枠組みであり、日本の大企業新規事業における位置付けの効果を示す資料ではありません。

ポジショニングは、自社が言いたい強みではなく、顧客が選択に使う比較軸から作ります。 基本の形は「対象顧客にとって、比較対象の代わりに、独自の価値を提供する」です。その後、採用した軸と捨てた軸を分けます。

顧客の比較行動からポジショニングを設計する項目
ポジションの項目 記録する内容
対象顧客 Tで選んだ課題状況・権限条件と一致するか
現在の比較対象 顧客が今使う手段、予算科目、何もしない選択
顧客の判断軸 顧客が比較時に使った言葉・行動
採用する軸 その軸で選ばれる証拠と提供条件
採用しない軸 強みでも顧客判断に使われない理由
価値の約束 誰のどの行動をどう変えるか
反証・失効条件 何が観測されたらPまたはTへ戻るか

ポジショニングマップの空白は、需要の証拠ではありません。競合がいない軸でも、顧客が比較に使わなければPの候補にすぎません。顧客の比較行動と、自社が約束を再現できるかを別に確かめます。詳しい比較軸の採否はポジショニング戦略の立て方で扱います。

新規事業でSTP分析を進める5ステップ

手順は5つです。ただし、順番どおりに一度で完成させるものではありません。行き来する前提で進めます。

最初の一周では、精緻さよりも「誰を選び、次に何を確かめるか」を決めます。 たたき台ができたら顧客へ持ち出し、戻って更新する前提で進めます。

1.顧客の課題状況と現在の対処を仮置きする

市場データが少なくても、誰が、どの状況で、何に困り、今どう対処しているかは仮置きできます。架空例なら「複数工場の設備管理責任者が、月次報告の前に各工場の表計算ファイルを集め、記入漏れと表記の違いを手作業で直している」という粒度です。

顧客から確認した事実、公開情報、社内推測を別欄にします。市場全体を精密に分類したように見せず、根拠のない境界には「未確認」と記します。

2.仮のS・T・Pを一枚に置き、矛盾を見つける

セグメント候補、優先対象、比較対象、価値仮説を同じ版に並べます。Tで選んだ対象とPの対象が違う場合、会議で表現を整えず矛盾として残します。

確信度が違っても構いません。「課題は共通だが決裁者が違う」「Pの軸を顧客が使っていない」といった不一致を、顧客に確かめる問いへ変えます。

3.顧客対話で、課題・比較・導入権限を確かめる

対象顧客に最近の課題を聞きます。現在の対処、過去に選んだ手段、その判断基準も確認します。利用者の回答を決裁者の回答とみなさず、話者の役割を記録します。

回数だけを目標にせず、Sの境界、Tの選択条件、Pの比較軸のどれを確かめる対話かを決めてください。質問の作り方はBtoB顧客インタビューのやり方を参照してください。

4.得られた反証に合わせてS・T・Pを直す

同じ属性でも課題が違えば、Sを変えます。課題は強いのに会えない・届けられないなら、Tの順番を変えます。顧客が想定と違うものと比べていたなら、Pを変えます。

変えたときは旧版を消さず、変更日、変更前後、根拠、影響する欄、次の検証を記録します。Tを変えたのにPだけ旧対象のまま、といった版ずれを防ぎます。

5.優先顧客と次の検証を決め、施策へ渡す

優先顧客、選ばない対象、提供価値、次の対話、必要なMVPを決めます。各決定に責任者、期限、再検討条件を付けます。

分析資料の完成を関門にしません。どの証拠を得れば現在の選択を維持・変更するかを決め、顧客の行動を得られる施策へ移します。

架空例を5ステップで一周すると、次の判断まで書けます

  • S:複数工場の点検記録を表計算で集め、月次報告前に確認と転記が発生する企業
  • T:3工場以上を運営し、設備管理責任者と本社の安全管理部門へ話を聞ける企業を先に検証する
  • P:表計算の様式統一や個別システム開発と比べ、工場ごとの記録を変えすぎずに本社確認をそろえられるかを確かめる
  • 次の判断:設備管理責任者への対話で、直近の集計手順・比較案・導入確認者を聞き、想定と違えばS・T・Pを更新する

この記入例は説明用の架空例です。数値や効果を事実として示すものではありません。

データが少ない段階では、顧客選びを仮説として扱う

データが少ない段階でも、仮説として使えます。ただし、精密な市場分類のように見せてはいけません。

データ不足を保留の理由にせず、仮説・事実・未確認を分けて小さく選びます。 精度が低い段階ほど、S・T・Pの各欄に根拠の種類と更新条件を記載することが重要です。

例えば、市場規模は公開情報で確認できても、課題が起きる状況や実際の比較対象は顧客との対話が必要です。逆に、一社の発言だけで市場規模やセグメント全体の共通性を決めることもできません。情報の種類に合った検証方法を選びます。

データが増えたら、最初の仮説を正当化する材料だけを選びません。受注、失注、利用、提供負担を、支持・反証・例外に分けてS・T・Pへ戻します。

STP分析シートには、選択・証拠・見直し条件を書く

一枚のシートに、選択だけでなく不選択と失効を置きます。各欄へ情報源、取得日、対象、顧客事実か社内解釈かを記します。

STP分析シートで選択・証拠・失効条件を一元管理する項目
管理欄 判断会で決めること
版・適用期間 どの市場仮説へ、いつまで使う版か
判断・責任者 今回何を選び、誰が決めるか
Sの包含・非該当 価値・購買・提供が変わる境界は何か
Tの選択・不選択 今どこへ資源を置き、どこを後回しにするか
Pの採用・不採用軸 何と比較され、どの軸を使わないか
証拠・情報源 誰のどの行動、資料、観察に基づくか
矛盾 S・T・Pの対象、権限、提供条件がずれていないか
次の検証 何を確かめれば選択が変わるか
失効・再検討条件 いつ、どの反証で旧版を閉じるか

判断会では、データがそろうまで保留せず、仮説のまま小さく選ぶことがあります。その場合も「未確認」を事実に書き換えず、追加調査で何が分かればTまたはPを決め直せるかを残します。

STP分析シートには、選択結果だけでなく、選ばなかった理由と次に覆す証拠まで書きます。 これにより、環境や提供能力が変わったときに、過去の判断をたどって再検討できます。

ワークショップでは、意見集約より次の判断を決める

部門横断のワークショップでは、意見を集める時間と選択する時間を分けます。参加者は、営業、プロダクト、顧客支援、事業責任者などです。顧客事実を持つ人と、選択後の実行責任を負う人の双方を含めます。

ワークショップの目的は意見を集め切ることではなく、現時点の選択と次の検証を決めることです。 開始時に判断者を明示します。参加者全員の納得を完成条件にすると、不選択が消え、広い市場名だけが残ります。

事前準備

顧客ごとに、企業属性、課題状況、代替行動、比較対象、導入権限、選択理由を同じ証拠カードへ記入します。発言には話者と役割、行動には観測日、公開情報には出典時点を付けます。

社内推測には印を付け、顧客事実と分けます。成功した顧客だけでなく、失注、利用中断、非該当の顧客も準備します。

Sを仮に置く

証拠カードを並べ、提案、購買、提供の方法が変わる違いを探します。企業属性で説明できない場合は、課題状況と代替行動を確認します。

候補ごとに「なぜ分けると次の行動が変わるか」を書きます。説明できない切り口は保留にし、セグメント名を増やしません。

Tを1つ選ぶ

魅力的なセグメントが複数あっても、直近で検証する対象を1つ決めます。需要・課題、会えるか、競争・代替、自社に合うかの4観点を使います。

選択理由だけでなく、選ばなかった理由と再検討条件を残します。判断者が追加資源を配分できない場合は、選択を確定せず仮決定として期限を置きます。

Pを一文にする

対象顧客、比較対象、採用軸、価値の約束を一文にします。参加者の好みではなく、顧客が比較時に使った言葉から作ります。

社内で有名な強みでも、顧客の選択行動に現れなければ「不採用軸」へ置きます。Pの対象がTと一致しない場合は、文章を丸めずTかPへ戻します。

次の検証を決める

最後に、誰に何を聞き、何を見せ、どの行動で判断するかを決めます。担当者、期限、判断会、支持・反証の扱いも置きます。

イノベーション総研の支援では、終了時に次の矛盾検査を行います。

S・T・Pの矛盾を見つけて次の検証へ戻す方法
矛盾の例 戻る欄 次に必要な証拠
Sで課題は共通だが購買権限が違う SまたはT 推進・決裁経路
Tで選んだ対象がPの軸を使わない P 実際の比較行動
Pの約束を同じ原価・品質で届けられない SまたはT 提供工程と受入条件
不選択理由が社内の印象だけ T 非該当顧客の事実
新しい証拠を得ても旧版を上書きした 版管理 変更前後と判断日

成果物は整った表ではありません。顧客へ持っていく仮説、選ばなかった条件、次の判断を同じ版で渡すことです。

STP分析を商品・営業・メッセージ・提供へ反映する

STP分析の選択を商品・営業・メッセージ・提供へ反映する検討のイメージ
選択したSTPを商品、営業、メッセージ、提供の実務へ反映します。

選択したSTPを、商品、営業・顧客接点、メッセージ、提供へ渡します。各施策に同じ版IDを付けます。対象やPを変えたとき、旧版の施策だけが走り続けるのを防ぐためです。

STP分析は、商品・営業・メッセージ・提供の条件が変わって初めて実務で機能します。 資料を共有するだけでなく、各施策の責任者と見直す指標を決めてください。

商品・サービスはどう決めるのか

ターゲットの課題と価値仮説に直結する範囲を優先します。要望をそのまま機能にせず、どの顧客群のどの行動を変えるのかを記します。

対象外セグメントからの要望は、同じ開発一覧へ混ぜません。再検討条件を満たすまでは別欄へ置きます。

営業・顧客接点

ターゲットが情報を探す場所と買い方に合わせます。接点数だけでなく、Sで定めた状況の顧客へ届いたか、Tの権限者へ進んだか、Pの比較軸が使われたかを返却します。

メッセージ

対象顧客の状況、代替手段、価値仮説を一貫して示します。反応の良い表現だけでPを確定せず、誰がどの比較で行動したかを確認します。

顧客が別の言葉を使った場合は、変更前後と対象を残します。全市場向けの抽象文へ薄めません。

提供・導入

ターゲットが価値を得るために必要な導入支援、運用、社内合意を設計します。受注しやすくても、例外対応なしでは提供できないならSまたはTへ返します。

施策の役割はSTPを正当化することではありません。どの選択が支持され、どこが反証されたかを同じ台帳へ返すことです。

顧客行動や提供条件が変わったときに、選択を更新する

更新は月次などの定例日に加え、選択を支えた前提が崩れたときに行います。顧客対話、受注・失注、利用、提供負担は更新の入力です。

更新日はカレンダーだけで決めず、選択を支えた前提が崩れたときにも設定します。 旧版を消さず、変更前後と判断理由を残すことで、商品と営業が異なる対象を参照する事故を防げます。

顧客行動・提供負担・環境変化からSTP分析を更新する条件
更新トリガー 戻る欄 旧版へ残すこと
同じ群で課題・購買・提供条件が分かれた S どの境界が変わったか
課題はあるが権限者へ進まない T 選択理由のどこが反証されたか
比較対象・選択理由が想定と違った P 採用軸と不採用軸の変更
提供例外が増えた SまたはT 原価・品質を崩した条件
規制・競争・自社能力が変わった 失効条件 不選択を再検討する理由

ただし、1件の例外ですぐ全体を変えません。同じ条件の顧客でも起きるかを確かめます。逆に、例外だからと捨てず、対象、役割、時期を残します。

更新時は旧版を上書きしません。変更前後、根拠、判断者、次の検証を並べます。方向転換の説明だけでなく、過去の不選択条件が満たされたときに戻れるようにするためです。

指標は、セグメント・顧客・比較軸のどこを見直すかで分ける

分析表の完成度ではなく、各選択を支える証拠を見ます。一つの総合点にせず、未確認の場所を特定します。

指標はSTP分析を正当化するためではなく、S・T・Pのどこを見直すかを決めるために使います。 反応率だけで終えず、対象条件、接触した役割、比較対象、提供負担まで分けて記録します。

S・T・Pと提供条件を検証する指標・判断の対応
台帳の欄 検証する事実 判断例
S 同じ状況で課題・代替・購買・提供が共通するか 分ける、統合する、保留する
T 選択対象へ届き、権限者が次の行動を取るか 維持、順番変更、不選択へ移す
P 顧客がその比較軸を使い、価値を行動に移すか 軸を維持、別軸を検証する
提供 同じ条件で品質・原価を再現できるか 対象条件を狭める、提供を直す
変更理由と施策が同じ対象を参照しているか 旧版を閉じる、影響先を更新する

反応が弱い場合、STPを一括変更しません。つまり、対象、課題状況、権限、比較、提供のどこで止まったかを切り分けます。判断が変わらない指標は、集計を続ける前に用途を見直します。

STP分析で起きやすい8つの失敗と直し方

STP分析は、やり方を間違えると「作ったのに使われない資料」になります。

失敗の多くは、分類の精度ではなく、選択・不選択・更新条件が曖昧なことから起きます。 次の8項目で、止まっている場所を確認してください。

1.セグメントを細かく切りすぎ、施策の違いがなくなる

分類の表は詳しいのに、顧客価値も施策も変わらない状態です。たとえば、地域で6つに分けたものの、提案内容も価格も同じまま、というケースです。

切り口ごとに、提案・購買・提供の何が変わるのかを確かめます。変わらなければ統合します。

2.全セグメントを選び、検証の優先順位がなくなる

市場を失う不安から、すべてをターゲットにしてしまう状態です。価値も検証も薄まります。

初期は優先順位を決めて、選ばない理由と見直す条件を残します。

3.分析して終わり、顧客対話や施策へ進まない

マップや表が経営報告に載るのに、顧客対話・MVP・営業につながらない状態です。実際に、STPの資料は完成しているのに、まだ1社にも会っていないという状況が起こります。

各項目に、次の顧客の行動と判断日を対応させます。

4.S・T・Pを一方向に固定し、反証を反映しない

Pの検証で別の顧客群から強い反応があったのに、最初のSとTにこだわってしまう状態です。学びを失います。

変更の理由を記録しながら、3つを行き来します。

5.利用者だけを見て、導入を決める人を確認しない

利用者の反応は強いのに、推進者や決裁者へ進む条件がない状態です。利用者の課題を否定せず、購買経路が同じセグメントかを分けて確かめます。

6.不選択理由を残さず、あとで判断を見直せない

選ばなかった市場が「対象外」とだけ記され、環境が変わっても戻れない状態です。欠けている証拠、再検討の引き金、判断期限をTへ残します。

7.自社の強みを、顧客が使う比較軸だと決めつける

技術の優位性や理念を、そのままPへ置く状態です。顧客が実際に比較した手段、発した言葉、選択行動へ戻して軸を採否します。

8.更新時に旧版を消し、変更理由を追えなくする

変更理由が残らず、商品と営業が別の対象を参照する状態です。旧版を閉じる日と、影響する施策を変更ログに残します。

STP分析に関するよくある質問

最後に、STP分析を選択台帳として使うときの疑問に答えます。

Q. STP分析と4P・3Cはどう関係しますか

A. STPは「誰に、どの価値で選ばれるか」を決めます。4Pはその方針を商品・価格・流通・販促へ具体化します。3Cは顧客・競合・自社の状況を整理するために使います。 目的を分けたうえで、同じ顧客仮説でつなげます。

Q. BtoCとBtoBで違いはありますか

A. BtoBでは、企業属性だけでなく、課題が起きる状況、今の対処、複数の関与者の購買条件を重視します。 BtoCでも、属性だけでなく状況と行動で分ける考え方は使えます。

Q. テンプレートを埋めれば完了ですか

A. テンプレートは、仮説と反証を共有するための道具です。 優先する対象、選ばない対象、ポジショニング、次の検証を決めて、顧客の事実で更新する。そこまでやって初めて実務で機能します。

Q. セグメントはいくつ作ればよいですか

A. 一律の正解はありません。提案、購買、提供が変わらない切り口は統合します。分ける理由を説明できても、直近で検証しない群はTの不選択欄へ置きます。

Q. 選ばなかったセグメントは、いつ見直しますか

A. 市場規模が大きいという理由だけでは戻しません。導入権限へ届く、自社の提供能力が上がる、代替手段が変わるなど、不選択理由を崩す証拠が出た時点で再検討します。

まとめ|STP分析は仮説で決め、顧客対話で更新する

STP分析は、市場を分け、狙う顧客を選び、比較上の位置を定めるフレームです。新規事業では、選んだ対象だけでなく、非該当、不選択、採用しない軸、失効条件を同じ版へ置きます。

課題状況と代替行動でSを切り、権限と提供条件を含めてTを選び、顧客の比較からPを作ります。 顧客の行動で一つの欄が反証されたら、影響する欄と施策も更新します。

最初の行動は、一つの顧客候補について「どんな状況で課題が起き、何と比べ、誰が導入を決めるか」を書くことです。書けない欄を次の顧客対話で確かめ、選択台帳へ戻してください。

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STP分析を、商品・営業・提供の判断へつなげる。

顧客課題、優先対象、比較軸、導入権限をそろえ、部門ごとに異なる顧客像を一つの判断へまとめます。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

主な出典

イノベーション総合研究所「新規事業の実態と意思決定に関する調査」とOpenStaxのマーケティング教材。参照箇所に出典・リンクを記載しています。

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