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小型モジュール炉(SMR)は電力不足を変える?国内外9事例と参入条件

SMRは、小型モジュール炉と呼ばれる原子炉です。大型原子炉より出力を小さくし、主要な機器を工場でつくりやすくする考え方が注目されています。

期待される理由は、電力需要の伸びです。たとえば、AIデータセンターは24時間動く電源を求めています。

また、化学、鉄鋼、製紙などの工場は、電気だけでなく高温の熱も必要です。さらに、再生可能エネルギーを増やすほど、天候に左右されない電源の価値も高まります。

ただし、SMRを「小さいから、早く安く建てられる原発」とだけ捉えるのは危険です。というのも、初号機には設計、審査、燃料、製造設備、人材への先行投資が集中するからです。

しかも、出力が小さいため、1基だけでは大型炉より発電コストが高くなる可能性もあります。

IEAの2025年版見通しでは、政策条件が変わると、SMRの2050年容量は40GWから120GWへ変わります。予測の幅が大きいからこそ、SMRは市場予測だけでなく、許認可・燃料・発注・買い手の条件から評価します。

本記事では関連する先進炉も含む国内外9事例と、設備投資の比較例を使い、炉を開発しない企業の参入条件まで整理します。情報確認日:2026年9月28日。

同じ設計を複数基へ展開する構想と、実際の受注・費用低減を分けて確認します。

この記事の結論

SMRの成否は、炉の小ささではなく、許認可、燃料、認定製造、買い手をそろえ、同じ設計を繰り返せるかで決まります。

  • 市場予測は大きくても、発表、審査、建設、運転を分けて案件を評価する必要があります。
  • 国内外9事例では、複数基の需要、燃料と長納期品の確保、需要家の参加が進展を左右しています。
  • 参入余地は、燃料・特殊材料、認定製造、設備統合、運転保守にあります。

目次

小型モジュール炉(SMR)とは?「小型」と「標準化」を分けて考える

SMRは一般に1モジュール300MWe以下と説明されますが、製品名と出力区分は必ずしも一致しません。 SMRはSmall Modular Reactorの略で、IAEAの説明では一般に1モジュール当たり電気出力300MW以下の原子炉です。

主要な機器を工場で製作・組み立て、設置場所へ運ぶ考え方を含みます。電気出力のMWeと、原子炉が生み出す熱出力のMWthは異なる量です。

日本の次世代革新炉開発ロードマップでは、小型軽水炉を「電気出力がおおむね30万kW以下の軽水炉」と整理しています。自然循環を使った冷却や、機器の簡素化によって安全性と建設の予見性を高める狙いがあります。

ただし、企業の製品名や「先進炉」という市場の扱いは、この出力区分と一致しない場合があります。後述するNatriumは345MWe、Rolls-Royce SMRは470MWeです。

本記事では標準化や供給網を比較する関連事例として紹介し、すべてを300MWe以下のSMRとして集計しません。

ここで重要なのは、小型とモジュール化が同じ意味ではないことです。出力が小さくても、現地で一品ずつ組み立てれば、工期短縮の効果は限られます。

反対に、主要部分を工場で同じ手順でつくり、現場作業を減らせれば、品質と日程を管理しやすくなります。

大型軽水炉、小型軽水炉型SMR、高温ガス炉型SMRの違い
比較項目 大型軽水炉 小型軽水炉型SMR 高温ガス炉型SMR
主な用途 大規模な発電 発電、石炭火力跡地、データセンター 発電、産業熱、水素製造
冷却材の例 水 水 ヘリウムガス
取り出す温度の目安 約300℃ 約300℃ 設計による。HTTRの原子炉出口は950℃
期待される強み 1基当たりの大出力 機器の簡素化、工場製造、段階投資 高温熱、固有の安全性、多目的利用
主な課題 巨額投資、長い工期 初号機コスト、量産数、国内規制 燃料量産、特殊材料、熱需要地との接続

表は用途を考えるための概略です。900〜950℃はHTTRなどの原子炉出口の温度であり、すべての高温ガス炉や工場への引き渡し温度を示すものではありません。

炉型ごとの設計値と、熱交換・配管後に顧客が使える温度・量を確認します。軽水炉でも熱利用は可能で、発電と熱利用を排他的に分ける分類ではありません。

SMRには、軽水炉、高温ガス炉、溶融塩炉、高速炉など複数の方式があります。そして、方式ごとに、燃料、冷却材、温度、審査項目、供給網が違います。

つまり実際には、用途と炉型を組み合わせた複数の市場があります。

同じ次世代電源として語られる核融合は、原子核を分裂させるSMRとは原理も事業化の段階も違います。部材や顧客が一部重なっても、同じ時間軸で評価しないことが大切です。

高温ガス炉は発電より「熱」で違いが出る

原子炉出口の温度と、工場へ渡せる熱の温度・量を分け、停止時の予備供給まで設計します。 高温ガス炉は、冷却材にヘリウムガスを使い、炉心に黒鉛と耐熱性の高い被覆燃料粒子を使う原子炉です。

水を冷却材に使う軽水炉より高い温度の熱を取り出せます。

日本原子力研究開発機構のHTTRは、熱出力30MWの試験研究炉です。原子炉出口の冷却材温度として950℃の高温運転が可能ですが、30MWの電力を販売する発電所ではありません。

水素製造や産業熱へつなぐ研究と、顧客へ継続供給する商用事業を分けて考えます。

原子力由来の水素と再エネ由来のグリーン水素は、電源・熱源の区分が異なります。ただし、需要家、供給量、貯蔵・輸送、価格を一緒に設計する点は共通します。

グリーン水素の事業化も参照し、供給する水素の環境属性と契約上の定義を明示します。

つまり、高温ガス炉を発電所としてだけ評価すると、強みを見落とします。工場が天然ガスや石炭でつくっている蒸気や高温熱を、どこまで置き換えられるかが重要です。

熱の供給には、距離に応じた温度低下、配管、熱交換の費用が伴います。工場近くに置く案も含めて評価しますが、原子炉の立地・安全・規制要件が前提です。

必要な温度と量だけでなく、工場の操業時間、停止時の予備熱源、地域との調整を同時に検討します。

高温ガス炉の新規事業では、炉の性能だけでなく、次の三点が問われます。

  1. 必要な温度と蒸気量を長期に買う顧客がいるか
  2. 原子炉と工場をつなぐ熱交換器、配管、貯熱設備を設計できるか
  3. 停止時の予備熱源と責任分界を決められるか

高温ガス炉の熱利用では、「どの設備へ、何℃・どの圧力の熱を、いつ届けるか」から事業の条件を整理します。発電と熱供給を組み合わせる場合も、双方の需要と停止時の影響を見積もります。

SMR市場は成長するが、予測値より案件の段階を見る

政策で見通しが変わる市場では、予測投資額よりも、対象案件の許認可・発注・供給契約を確認します。 IEA「The Path to a New Era for Nuclear Energy」(2025年)は、SMRの2050年容量を、既存の政策設定を反映するSTEPSで40GW、公表されたエネルギー・気候目標が期限どおり達成されるAPSで120GWと見込んでいます。

3倍の違いは政策などの前提の違いであり、達成確率を示す数字ではありません。

APSでは、SMRへの年間投資額は報告時点の約50億米ドルから2030年に250億米ドル超へ増え、2050年までの累計投資は6,700億米ドルという見通しです。設備投資額を電力販売の売上や、自社が受注できる金額へ直接置き換えず、対象国・炉型・工程を絞って検討します。

IAEAの2024年のSMR資料は、開発中の設計・構想を90超とする一方、同年時点の商用運転例をロシアの浮体式発電所と中国のHTR-PMの2設計として整理しています。設計数は集計対象で変わり、2026年の稼働数でも、設計が成功する割合でもありません。

以下では個別案件の公表状況を確認します。

市場を見るときは、案件を五つの段階に分けます。

SMR案件の段階と事業判断での読み方
案件の段階 確認できる事実 まだ確定していないこと
構想・発表 企業や政府が用途と候補地を示した 投資、許認可、発注
設計・事前協議 規制当局と設計の論点を整理している 建設許可、最終仕様
許認可審査 申請が正式に受理され、審査中 許可時期、追加対応、総費用
建設 許可に基づく工事が始まった 試運転、燃料装荷、商用運転
商用運転 顧客へ電気や熱を供給している 次号機での再現性とコスト低下

発表容量をすべて足しても、受注市場の大きさにはなりません。部材企業が見るべき数字は、設計が固まった基数、発注済みの長納期品、建設許可を得た案件、燃料の確保量です。

また、初号機と量産号機を分ける必要があります。というのも、初号機では、設計変更、審査対応、治具、工場設備、試験が重なるからです。

そのため、同じ設計を複数地点へ展開できて初めて、学習効果と工場量産が効きます。

事業化は許認可・燃料・量産の三つで止まる

建設許可、燃料の適合・供給、認定品質の製造を別々に確認し、変更が他の工程へ及ぼす影響を見ます。 SMRが止まりやすい場所は、発電技術そのものだけではありません。

許認可、燃料、量産の三つが、互いに影響します。

NRCの2026年3月の発表はNatriumの建設許可に関する承認であり、運転には別途申請・承認が必要です。同様に、設計の評価、敷地の準備工事、原子炉の建設、燃料装荷、商用運転は別の段階として管理します。

第二は燃料です。多くの先進炉で使われるHALEUは「高濃縮度低濃縮ウラン」を指し、化学的な純度の高さという意味ではありません。

すべてのSMRがHALEUを使うわけではなく、炉型ごとに適合する燃料、加工・輸送・保管の供給体制を確認します。濃縮段階の生産量だけで、装荷できる完成燃料の供給量は判断できません。

第三は量産です。工場製作でも、要求された材料、溶接、検査、記録がそろわなければ検収へ進めません。

設計変更は治具や製造手順の変更につながるため、仕様が確定した範囲と、変更時の再評価・追加費用の負担を設計段階から確認します。

三つは独立していません。たとえば、燃料仕様が変われば、設計と審査が動きます。

また、設計が変われば、部材の認定試験がやり直しになります。さらに、量産が遅れれば、建設費の金利が増えます。

したがって、事業化の管理表には、技術性能だけでなく次を置きます。

  • 設計凍結の範囲と、変更できる項目
  • 規制当局との合意済み論点と、未解決論点
  • 初装荷と交換分の燃料確保
  • 認定済みサプライヤーと代替先
  • 初号機の費用と、量産時の目標費用
  • 電気、熱、水素を買う顧客との契約条件

SMRの供給網は六つの仕事でつながる

炉型ごとに必要な燃料・材料・機器が異なるため、共通化できる技術と専用投資を分けます。 SMRの事業は、炉メーカーだけで完結しません。

設計、燃料、機器、建設、運転、需要家をつなぐ必要があります。

六つのレイヤーは、次のように整理できます。

  1. 炉型を設計し、許認可を進める
  2. ウラン濃縮、燃料加工、黒鉛などを供給する
  3. 圧力容器、熱交換器、ポンプ、弁を認定品質でつくる
  4. 建屋、配管、電気設備を設計し、現地で統合する
  5. 発電所を保有し、運転、保全、廃棄物管理を担う
  6. 電気、蒸気、熱、水素を長期契約で買う

売上が立つ時期も違います。たとえば、設計会社は開発契約やライセンス料を得ます。

また、燃料会社は初装荷だけでなく、運転期間中の交換需要があります。そして、製造会社は部材を納め、保守会社は点検と交換部品で継続収益を得ます。

一方、発電事業者は長期の電力購入契約や熱供給契約を基礎に資金を調達します。

後発企業が炉型開発へ正面から入ると、長期の研究開発と許認可を負います。一方、既存の原子力品質、特殊材料、精密加工、プラント保全を持つ企業は、複数炉型へ供給できる場所を選べます。

燃料、材料、機器、設備統合、保守は参入候補ですが、炉型ごとに仕様と適合確認が異なります。別の炉型へそのまま転用できると決めず、共通に使える設備・技術と、専用の追加投資を分けます。

国内外のSMR事例|発電・産業熱・データセンターで進み方が違う

各社が達成したのが設計・環境評価・建設・生産・運転のどの段階かを、日付と対象で読み分けます。 ここからは、九つの事例を見ます。

炉型の新しさだけでなく、顧客、許認可、建設、供給網のどこまで進んだかを確認します。

国内外9社・組織のSMR事例
企業・組織 炉・案件 主な用途 段階 事業上の示唆
OPG・GE Hitachi BWRX-300 系統電力 建設 既存原発サイトで初号機と共通設備を整える
TerraPower Natrium 系統電力、出力調整 2026年3月建設承認、4月着工発表 原子炉と蓄熱を分け、需要変動へ対応する
Kairos Power・Google・TVA Hermes 2 データセンター向け電力 2026年4月起工、供給開始は計画 買い手を先に確保し、実証から同一設計を展開する
X-energy・Dow Xe-100 工場の蒸気と電力 2026年5月環境評価完了、建設許可とは別 高温ガス炉を需要家の工場へ組み込む
Rolls-Royce SMR・英国政府 Rolls-Royce SMR 系統電力 設計・立地 国が技術を選び、複数基と国内供給網を前提にする
中国・HTR-PM 高温ガス炉 発電 2023年12月に商用運転開始 運転実績と次案件への再現性を分ける
JAEA・三菱重工 HTTR・高温ガス炉実証炉 水素、産業熱 研究・実証設計 950℃の熱と安全実証を産業用途へ移す
Centrus Energy HALEU 先進炉燃料 実証生産の完了、商用増強計画 濃縮段階と完成燃料の供給を分ける
Doosan Enerbility SMR主要機器 原子炉モジュール製造 2025年12月に材料供給予約 複数炉メーカーへ製造能力を提供する

九つを並べると、計画の大きさより、許認可、建設、燃料、買い手がどこまで確定したかが重要だと分かります。以下では、各事例が事業化のどの壁を越えようとしているかを解説します。

OPGはBWRX-300を既存原発サイトで建設する

OPGのDarlington計画は、既存の原子力発電所の敷地でBWRX-300の導入を進めています。2025年4月に初号機の建設許可を取得し、2026年夏の進捗では基礎から原子炉建屋の工事へ進んでいます。

2026年3月には運転許可を申請し、系統接続の目標は2030年末です。

最大4基を見据えた共通設備を用意する構成ですが、後続の建設・運転には追加の承認が必要です。既存サイトの経験や基盤を使うことと、全4基の完成・費用低減が確定することは異なります。

この事例が示すのは、SMRの強みが「どこにでも置けること」とは限らない点です。初期案件では、既存サイトの資産を使い、立地と許認可の不確実性を減らす方が現実的です。

OPGの2025年5月の予算説明では、初号機に61億カナダドル、4基で使う共通設備・サービスに16億カナダドル、合計77億カナダドルを見込みます。全4基の209億カナダドルという総額には、金利、物価上昇、予備費が含まれます。

これは計画上の見積もりで、完成後の実績費用ではありません。

この予算から分かるのは、初号機単独の費用と、複数基のために先行する共通費を分ける必要性です。総額を基数で割るだけでは初期の資金負担を捉えられず、後続機が遅れた場合や共通設備の利用が減る場合も確認します。

SMR全般が安い・高いと結論づける比較には使いません。

TerraPowerは原子炉と蓄熱を分けて需要変動へ対応する

TerraPowerのNatriumは、電気出力345MWのナトリウム冷却高速炉と溶融塩の蓄熱設備を組み合わせる設計です。蓄えた熱を使い、一時的に発電出力を500MWまで高める仕組みで、原子炉自体の定格出力が500MWになるわけではありません。

NRCは2026年3月にKemmerer 1の建設許可の発給を承認し、TerraPowerは同年4月23日に着工を発表しました。2024年に始めた敷地準備・非原子力設備の工事とは段階が異なり、商用運転には引き続き別の許可が必要です。

蓄熱を使うことで、原子炉を急に動かさず、電力側の需要変動へ対応できます。事業機会は炉本体だけでなく、熱交換、溶融塩、貯槽、制御、石炭火力跡地の転用にも広がります。

蓄熱は熱のままためる仕組みで、電気をためる全固体電池とは役割が違います。どちらも需要の山をずらしますが、設備温度、応答速度、設置場所から使い分けます。

Kairos PowerはGoogleとの契約を実証炉へつないだ

Kairos Powerは、溶融塩を冷却材に使う高温炉を開発しています。Googleとは、2035年までに最大500MWを供給する複数炉の契約を結びました。

最初の電力供給案件となるHermes 2は2026年4月に起工し、2030年から最大50MWeを供給する計画です。電力の購入契約の相手はTVAで、TVAの系統を通じてGoogleのデータセンターを支える構成です。

Googleへの最大500MWeの展開計画と、最初の発電所の契約・工事を分けて確認します。

非原子力の試験設備、低出力のHermes 1、電力を供給するHermes 2と、確認する対象を段階的に広げています。2026年9月のETU 3発表では、縮小模型を使ってプレキャストコンクリートの構造や遠隔での保守方法を検証しました。

非原子力の模型試験の成果であり、実機の発電や商用運転の結果ではありません。

技術実証と同時に、買い手、系統、次号機を決めています。実証が研究で終わらず、同じ設計の展開へ接続している点が重要です。

X-energyとDowは工場の蒸気需要から高温ガス炉を選んだ

X-energyのXe-100は、1基80MW、4基で320MWの高温ガス炉です。Dowはテキサス州Seadriftの化学工場に導入し、電気と高温蒸気を供給する計画です。

2025年に建設許可を申請し、2026年5月には環境評価の完了と「重大な影響なし」の判断(FONSI)を公表しました。環境面の審査の成果であり、建設許可そのものの取得や、稼働開始を意味しません。

Dowは単なる電力購入者ではありません。むしろ、工場設計、蒸気需要、操業条件を持つ共同開発者です。

そのため、どの圧力と温度の蒸気を、どの設備へ、どの停止条件で供給するかを具体化できます。

この事例からは、需要家が必要な熱・電力の仕様を設計へ持ち込む進め方が参考になります。需要家の参加だけで事業化が保証されるわけではなく、許認可、工期、費用、予備熱源まで評価する必要があります。

工場の脱炭素では、燃料転換だけでなく、回収した二酸化炭素を運び、貯留・利用するCCUSも候補になります。SMR、高温ガス炉、電化、CCUSを、必要温度と操業条件で比較します。

Rolls-Royce SMRは3基を見据えた設計・開発契約へ進む

英国政府は2025年、Rolls-Royce SMRを優先技術パートナーに選びました。さらに、2026年4月には、Great British Energy – Nuclearが同社と契約を結びました。

契約の第1段階では、ウェールズのWylfaを想定した設計、規制対応、計画を進めます。

計画は3基で合計1.4GW以上です。まだ最終投資判断の前ですが、国が技術選定と需要の束ね役になります。

つまり、1基だけの個別最適ではなく、複数基を前提に設計、工場、サプライヤー、人材へ投資します。

同社の設計上の電気出力は1基470MWeです。一般的なSMRの300MWe以下という区分を超えるため、本記事では標準化と複数基調達の関連事例として扱います。

2026年4月の契約は、立地固有の設計・規制対応・計画を進める段階で、最終投資判断と完成実績はまだ別です。

SMRの量産効果は、注文が続かなければ生まれません。英国の事例は、政府調達が初期の需要を束ね、供給網へ見通しを与える方法です。

中国のHTR-PMは高温ガス炉を商用運転へ進めた

中国のHTR-PMは、IAEAの2024年資料で、2023年12月に商用運転を開始した高温ガス炉として紹介されています。計画や審査の段階にある事例と違い、運転段階まで進んだことを確認できます。

ここで確認した商用運転の開始と、別の場所や規模で同じ費用を再現できるかは、異なる評価点です。熱利用へ展開する場合も、発電実績だけから顧客工場への供給条件や採算を推定せず、個別の契約と設備を確認します。

事業者・サプライヤーが参照する際は、建設や運転から得た知見を、どの部材・工程へ適用できるかを整理します。他国の許認可や別の設計へ、そのまま横展開できるという意味ではありません。

JAEAと三菱重工は950℃の熱を産業用途へつなぐ

JAEAの2024年3月の安全性実証試験では、HTTRを定格熱出力30MWで運転中に強制冷却が失われ、制御棒による停止を制限した条件でも、出力が自然に低下して安定することを確認しました。定めた試験条件での結果であり、あらゆる事故に対する安全性を一括して保証するものではありません。

三菱重工は2023年度、高温ガス炉実証炉の中核企業に選ばれました。同社は約900℃の熱を使う水素製造を含め、実証炉の設計を進めています。

日本の強みは、HTTRで高温運転と安全性の実績があることです。ただし、次の課題は、実証炉そのものより、製鉄や化学工場が必要とする熱条件へ接続することです。

そのため、熱交換器、配管、貯熱、予備熱源、保安管理まで含む共同設計が必要になります。

Centrus EnergyはHALEUの供給不足を事業に変える

実証で得た生産量、今後の増強能力、顧客への供給計画を分けて評価します。

Centrus Energyの2026年7月1日発表によると、米国オハイオ州の実証契約で求められた最後の900kgのHALEU UF6の生産を同年6月中旬に完了し、契約期間を通じた累計は1,900kg超となりました。UF6は六フッ化ウランの形態で、完成した原子炉燃料の重量と同じではありません。

同時に、商用規模の能力整備に向けた米国エネルギー省の9億米ドルの契約を公表しています。新たな能力の最初の立ち上がりは2029年を予定し、既存設備の商用利用への移行も協議する段階です。

先進炉の多くはHALEUを必要としますが、濃縮したウランだけでは燃料になりません。化学形態の転換、燃料粒子やペレットへの加工、被覆、輸送、保管が必要です。

炉の建設が進んでも、適合する燃料の量と納期がそろわなければ運転へ進めません。燃料会社にも先行投資が必要なため、政府支援や顧客との長期契約が投資を支える場合があります。

ただし、契約ごとに数量、開始時期、資金の条件を確認します。

Doosan Enerbilityは複数炉型の製造能力を押さえる

韓国のDoosan Enerbilityは、原子力向けの大型鍛造品や主要機器を供給する企業です。2025年12月の公表資料では、X-energyとの設計・エンジニアリング協力を2021年に始め、2023年に出資したことを説明しています。

同月、Xe-100の16基分に用いる主要材料の供給予約を締結しました。想定案件はDowとEnergy Northwestですが、後続の鍛造品・モジュールの製造契約へ進む計画です。

16基の完成品を納入した、あるいは16基が稼働したという実績ではありません。

参入時に参考になるのは、製造性の検討へ早く関わり、長納期材料の確保を具体化する進め方です。予約の段階で工場投資を決める場合は、確定数量、変更・取消条件、追加資金、他案件へ転用できる範囲を確認します。

9事例から見える三つの競争軸

複数基計画、長納期品、買い手の契約を確認し、確定数量が減る場合の費用も見積もります。 九つの事例を見ると、競争は炉の出力や安全設計だけでは決まりません。

三つの軸があります。

一つ目は、同じ設計を繰り返せる見通しです。OPGは最大4基、英国はRolls-Royce SMRを3基、KairosはGoogle向けの複数炉を想定しています。

ただし、計画基数と確定発注は別で、各案件の許認可・資金・買い手を確認します。

二つ目は、燃料と主要機器を必要な時期に確保することです。Centrusの生産・増強計画やDoosanの材料予約のように、炉本体の工事より前から供給条件を具体化します。

契約の名称だけで判断せず、量、納期、適合性、変更時の負担を見ます。

三つ目は、初期需要と事業者の役割です。Google・TVAの電力調達、Dowの工場導入、英国の技術選定では、関与の仕方が異なります。

誰が契約上の買い手で、どの仕様・価格・期間を合意したかを確認します。

この三軸を使うと、発表の大きさに惑わされにくくなります。

  1. 同じ設計の2基目、3基目があるか
  2. 燃料と長納期品の供給契約があるか
  3. 電気や熱の買い手が、拘束力のある契約を結んでいるか

三つがそろわない案件は、技術として有望でも、売上時期を慎重に見積もる必要があります。

自社はSMRのどこへ入れるか

近い課題を開き、すでに持つ資産と不足する提携先を確認します。

01 24時間動く電源を必要としている

データセンターや連続操業の設備では、発電方式より供給条件から考えます。

  • 必要な電力と増設時期が決まっている
  • 系統電力、蓄電池、他電源と比較している
  • 20年以上の購入条件を検討できる
02 工場の高温熱を置き換えたい

高温ガス炉は、蒸気の温度、圧力、停止条件が合う場合に候補になります。

  • 年間の熱需要を時間帯別に把握している
  • 原子炉停止時の予備熱源を決められる
  • 配管距離と立地条件を確認できる
03 原子力品質の材料・製造を持つ

既存技術を、炉メーカーの認定と複数基の需要へ接続します。

  • 材料証明、溶接、検査記録を追跡できる
  • 設計段階から製造性を提案できる
  • 初号機だけに依存しない受注計画がある
04 プラント設備を一体で設計できる

原子炉と需要家の間にある、熱交換、配管、貯熱、受変電をまとめます。

  • 顧客の負荷と操業条件を測定できる
  • 原子力設備との責任境界を決められる
  • EPC、電力、需要家との体制を組める
05 保全・センサー・サイバーに強い

複数基を安全に動かすため、監視だけでなく人の判断と復旧を設計します。

  • 異常時に人へ渡す条件を定義できる
  • 安全系と業務系の接続を制限できる
  • 運転データの権利と利用目的を決められる
06 長期投資と不確実性を負えない

専用設備を先に持たず、共同実証、供給予約、転用可能な設備から検討します。

  • 許認可と確定発注を分けている
  • 設計変更の費用負担を合意できる
  • 撤退時に設備を他用途へ転用できる

架空例:6基を見込んだ専用治具が、2基の受注にとどまったら

以下はサプライヤーの投資判断を説明する架空例です。専用治具の投資6,000万円を、同一仕様の6基への納入で回収すると仮定します。

費用を均等に配分すると1基当たり1,000万円ですが、受注が2基にとどまると3,000万円になります。業界平均や実際のSMR価格ではありません。

架空例:確定数量が変わった場合の治具投資の配分
確認項目 6基で回収 2基で回収
専用治具への投資 6,000万円 6,000万円
1基当たりの配分 1,000万円 3,000万円

材料費、人件費、金利、保管費、再設計費はこの計算に含めていません。設計変更で治具を作り直す場合や、発注が数年遅れる場合は別途追加します。

見積もりでは「6基ならこの価格、確定2基ならこの価格」と条件を分け、開発費の別払い、最低発注量、変更費の分担、設備転用を協議します。

NEXT STEP

次のステップ

「有望な炉を選ぶ」から、動く事業構造の設計へ。

許認可、燃料、認定製造、設備統合、需要家を一つの事業構造にし、参入・提携・待機・見送りの条件を明確にします。

SMRで狙える四つの参入方法

既存資産を使える仕事でも、規制・品質・人材・責任の要件を満たす期間と費用が必要です。 既存の原子力品質、材料、製造、設備統合、保全を生かす方法も候補です。

参入の容易さは一律ではなく、適合確認、専門人材、資金、契約上の責任によって変わります。

四つの入口を、自社が提供できる価値、使える資産、組む相手、最初に確かめる条件で比べます。

SMR市場への四つの参入方法
参入方法 提供する価値 生かせる既存資産 組む相手 最初に確かめること
燃料・特殊材料 HALEU、TRISO燃料、黒鉛、耐熱・耐食材を安定供給 化学、素材、セラミックス、品質管理 炉メーカー、燃料会社、研究機関 仕様、認定期間、需要量、輸送方法
認定機器・モジュール製造 圧力容器、熱交換器、弁、配管を同じ品質で量産 鍛造、溶接、精密加工、検査 炉メーカー、設計・調達・建設を担うEPC企業、認証機関 設計凍結、工場監査、最低発注基数
熱・電力の設備統合 原子炉を工場やデータセンターへ接続 プラント設計、受変電、貯熱、制御 電力会社、需要家、EPC企業、自治体 負荷、温度、予備系、責任分界
運転保守・デジタル 複数基を監視し、停止と人員を減らす 設備保全、センサー、サイバー、訓練 運転会社、保険、規制専門家 人が担う操作、データ権利、復旧時間

表の各候補について、既存資産を使える部分と新たな適合確認が必要な部分を分けます。顧客の要求、規制、仕様、試験、工場監査を満たせるかを確認し、期間と費用を見積もります。

燃料・特殊材料は適合確認の期間と費用を見込む

高温ガス炉では、TRISOと呼ばれる被覆燃料粒子、原子力用黒鉛、高温ヘリウムに耐える材料が必要です。ただし、材料をつくれるだけでは供給者になれません。

むしろ、照射後の性能、ばらつき、追跡可能性を示す必要があります。

素材企業は、量産設備を先に建てるのではなく、研究炉や試験設備で小さなロットを評価し、炉メーカーの認定計画へ入ります。顧客の設計が変わると認定をやり直すため、仕様の凍結条件も契約に含めます。

認定製造は設計変更を減らすところから始める

大型鍛造、熱交換器、ポンプ、弁、配管には、原子力向けの品質保証が必要です。参入企業は、試作品をつくるだけでなく、材料証明、溶接者資格、非破壊検査、製造記録をそろえます。

受注後の設計変更は重要なリスクです。寸法や材料の変更で治具、手順、検査の見直しが必要になるため、見積もりの前に設計の確定範囲と変更費用の分担を確認します。

同時に、発注延期や数量減少も別のリスクとして評価します。

設備統合は需要家の出力・温度・停止条件をそろえる

データセンターは電力の安定性、化学工場は蒸気の温度と圧力を重視します。原子炉の仕様を、そのまま顧客へ渡しても事業になりません。

設備統合企業は、顧客の負荷変動を測り、原子炉、蓄電池、貯熱、予備ボイラー、系統電力を組み合わせます。どこまでを原子力設備とし、どこからを需要家設備とするかも決めます。

高温ガス炉では、原子炉が停止したときの熱供給が特に重要です。工場を止められない場合、予備熱源の費用と排出量も含めて評価します。

運転保守は「完全無人」ではなく人の役割を設計する

SMRは小型でも、遠隔で自由に動かせる機械ではありません。実際には、運転員、保安、警備、燃料管理、規制報告が必要です。

また、複数基を一つの運転チームで扱えるかは、国の規制と設計によって変わります。

デジタル企業が参入する場合は、異常検知の精度だけでは足りません。誤報が出たとき誰が確認するか、制御へどこまでつなぐか、サイバー攻撃時にどう切り離すか、学習データを誰が持つかを決めます。

監視ソフト、点検、交換部品、訓練、記録作成支援などは収入源の候補です。ただし、組み合わせれば必ず安定するわけではなく、提供に必要な人材・承認・責任と、顧客が支払う範囲を確認します。

参入前に決める責任分界と見送り条件

設計変更・延期・供給停止と廃棄物・廃炉の責任を整理し、条件が不明なら投資を区切ります。 SMRは、失敗したときの影響が大きいインフラです。

役割分担が曖昧なまま進めると、設計変更、停止、事故対応の費用を押し付け合うことになります。

少なくとも、次の責任を契約前に分けます。

  • 設計変更を決め、追加費用を負担する主体
  • 燃料が遅れた場合の工程と補償
  • 部材の不具合を調べ、交換する主体
  • 発電や熱供給が止まった場合の予備供給
  • 運転データ、保守データ、改良知見の権利
  • 廃棄物、使用済み燃料、廃炉費用の負担
  • サイバー攻撃や情報漏えいへの対応

次の条件に当てはまる場合は、参入を急がない方がよいでしょう。

  1. 炉型や顧客が変わるたびに、設備を大きく作り直す
  2. 初号機の受注だけで専用工場の投資回収を見込んでいる
  3. 燃料の量、納期、輸送方法が決まっていない
  4. 建設許可と運転許可を同じ確度で扱っている
  5. 電気や熱の買い手が、長期契約を結んでいない
  6. 設計変更と遅延の費用負担が決まっていない
  7. 事故、停止、廃棄物、廃炉の責任を下流企業へ任せている

とくに注意したいのは、将来の基数を前提に先行投資するケースです。というのも、量産効果は、複数基が本当に発注されて初めて現れるからです。

そのため、覚書、基本合意、供給予約、確定発注を分け、投資額を段階化します。

最初の検討では、炉の市場規模を推計する前に、自社が担う部品やサービスの検収条件を確認します。必要な認定、顧客の支払意思、最小発注量、代替技術との価格差が分かれば、参入、提携、待機、見送りを判断しやすくなります。

SMRに関するよくある質問

SMRを検討するときに生じやすい疑問を、事業判断の観点から短く整理します。

Q. SMRは大型原子炉より必ず安くなりますか?

A. 必ず安くなるわけではありません。1基当たりの初期投資を抑えやすい一方、出力が小さいため、1kW当たりの費用は高くなる可能性があります。同じ設計を複数基つくり、工場と現場の作業を繰り返せるかが重要です。

Q. 小型モジュール炉は日本ですぐ建設できますか?

A. 日本では小型軽水炉向けの規制整備や、具体的な立地、事業者、費用負担の検討が必要です。海外案件で供給網へ参加する道と、国内の制度整備を待つ道を分けて考えます。

Q. 高温ガス炉もSMRに含まれますか?

A. 出力が小さく、モジュール化を想定する高温ガス炉はSMRの一種として扱われます。ただし、すべてのSMRが高温ガス炉ではありません。小型軽水炉、溶融塩炉、高速炉など複数の方式があります。

Q. SMRはデータセンターの電力不足をすぐ解決できますか?

A. 短期の電力不足をすぐ解決する手段ではありません。許認可、建設、燃料、系統接続に年単位の時間がかかります。長期の電力需要を持つ事業者が、実証と初号機のリスクを分担すると進みやすくなります。

Q. 日本企業は炉を開発しなくても参入できますか?

A. 参入できます。燃料、黒鉛、耐熱材料、鍛造、熱交換器、弁、制御、EPC、保全、訓練、サイバー対策などに機会があります。ただし、原子力向けの認定、記録、責任分界を満たす必要があります。

まとめ:SMRは炉型より、繰り返せる事業構造を見る

SMRの参入判断は、炉の性能と、仕様・発注量・燃料・許認可・買い手の条件を合わせて行います。 SMRは、大型原子炉を単に小さくしたものではありません。

工場製造、簡素な設備、段階投資を使い、同じ設計を複数基へ広げる考え方です。

国内外の事例は計画から商用運転まで幅があります。OPG、TerraPower、Kairosは建設に関する工程へ進み、Dowは環境評価の成果を公表しました。

英国は複数基を見据えた設計・開発契約、中国のHTR-PMは商用運転の段階です。生産・供給予約などの成果も、今後の納入や継続運転とは区別します。

新規参入企業にとって、現実的な機会は炉心設計だけではありません。燃料・特殊材料、認定製造、需要家との設備統合、複数基の運転保守にあります。

事業判断では、市場予測より先に、次の三点を確かめます。

  1. 同じ設計が2基目、3基目へ続くか
  2. 燃料と長納期品を確保できるか
  3. 電気や熱の買い手が、リスクを分担するか

市場の成長を前提に置く場合も、自社の設備投資は確定した仕様・数量・時期から判断します。設計変更や延期を織り込み、許認可、燃料、品質、廃棄物・廃炉を含む責任を、専門家や契約当事者と確認します。

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素材、製造、プラント設計、保全、デジタルの資産を整理し、誰が支払い、何を自社で持ち、誰と組むかを設計します。

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この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

IEA、IAEA、経済産業省、資源エネルギー庁、JAEA、NRC、OPG、Kairos Power、X-energy、三菱重工、Centrus Energy、Doosan Enerbilityの公式サイト・公表資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

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