新規事業の立ち上げ・事業化を支援するプロフェッショナルファーム

コリビング事業の現在地|国内外8社に学ぶ運営と収益

コリビングは、個人の居室とラウンジや仕事場などを組み合わせた住まいです。さらに、家具、契約、入居後の運営も一体で提供します。

なお海外では、短中期で都市を移る人向けの家具付き住宅も含めて、広い意味で使われています。

ただし、共用ラウンジをつくればコリビングになるわけではありません。交流を望む日も、一人でいたい日もあるうえ、設備を増やすほど、面積、清掃、騒音、防犯、入居者対応の費用も増えます。

コリビングは、私室と交流の選びやすさを設計し、その運営費を含めて採算を確かめる事業です。

本記事では、国内外8社の取り組みから、シェアハウスとの違い、収益構造、参入方法、運営責任を整理します。建物、運営、法人需要、ソフトウェアのどこを担うかを考える材料にしてください。

情報確認日:2026年9月28日。各社が公表する商品・運営方式と、当研究所が提案する確認事項を分けて紹介します。

部屋数や拠点数を、そのまま収益性の順位としては扱いません。

この記事の結論

コリビングは、私室と共用空間だけでなく、契約と入居後の運営を一体にした住まいです。

  • シェアハウスとの違いは名称ではなく、私室、契約期間、提供サービスで確かめます。
  • 国内外8社は、交流、赴任、柔軟な滞在、リモートワークという別々の摩擦を解いています。
  • 参入では、建物より先に顧客、運営単位、支払者、例外対応と見送り条件を決めます。

目次

コリビングとは?住居とサービスを一体にした暮らし

コリビングは、私室・共用部・契約・入居後サービスを組み合わせる住まいで、提供範囲は物件ごとに異なります。一般には、専用の居住空間と共用空間を持つ住宅を指します。

そして、家具、通信、清掃、入居者同士の交流などもまとめて提供します。

大切なのは、「共同で住むこと」だけではありません。むしろ、入居前の検索と契約、入居時の家具や光熱手続き、入居後の問い合わせ、交流、退去までが一つの体験です。

物件によって私室の範囲は異なります。寝室だけが専用で、水回りを共有するタイプもあります。

一方、キッチン、浴室、トイレまで私室に備え、ラウンジだけを共有するタイプもあります。後者は一般賃貸に近く、交流へ参加するかを入居者が選びやすい形です。

海外では、ホテル型、家具付きの中期滞在、一般賃貸に近い長期契約があります。同じ事業者が複数の形を扱うこともあります。

そのため、名称よりも次の四点を見る必要があります。

  • 私室に何が含まれるか
  • 契約期間と解約条件はどうなっているか
  • 賃料以外に何のサービスが含まれるか
  • 交流は自然発生に任せるのか、運営者が支えるのか

シェアハウスとコリビングはどこが違うのか

シェアハウスとの違いは名称ではなく、専用設備、滞在期間、料金に含むサービスで比較します。国土交通省は、親族ではない複数の人が住む住宅を「共同居住型賃貸住宅」として扱います。

これは、リビング、台所、浴室、トイレなどを共用する形です。コリビングと呼ぶ物件にも、設備や契約によって、この形に当てはまるものがあります。

両者を明確に二分する共通基準はありません。シェアハウスでも家具やイベント、仕事場を提供する物件があり、コリビングでも長期契約を重視する場合があります。

次の表は典型的な商品構成の整理であり、個別物件では設備と契約を確認します。

一般賃貸・シェアハウス・コリビング・サービスアパートメントの違い
比較軸 一般賃貸 シェアハウス コリビング サービスアパートメント
私的空間 住戸全体 主に寝室 寝室から完全住戸まで幅がある 住戸全体
共用空間 廊下などに限られる 台所・水回り・居間 ラウンジ・仕事場・キッチンなど ロビー・共用施設
契約 通常は中長期 中長期が中心 短期から長期まで 短中期が中心
家具・光熱 自分で用意・契約 含む場合が多い 一括提供が多い 一括提供が多い
交流支援 原則なし 物件ごとに異なる 運営機能として持つことが多い 原則は接客中心
主な運営力 賃貸管理 共同生活の管理 住宅・接客・コミュニティの統合 宿泊・接客運営

比較の際は、使える私室・共用設備と、契約・料金・サービスを一組にします。名称が同じでも、想定する滞在期間や生活の仕方は異なります。

一般賃貸、シェアハウス、コリビング、サービスアパートメントの違いを比較した図
図:コリビングは、私室と共用部の組み合わせだけでなく、契約と入居後サービスを含めて設計します。出典:国土交通省および各社公式情報をもとにイノベーション総研作成。

コリビングを一律に「交流型のシェアハウス」と説明すると、個室型やホテル型を見落とします。反対に、家具付き賃貸をすべてコリビングと呼ぶと、共用体験の価値が見えません。

事業を比べるときは、私室、滞在期間、運営サービスの三つをそろえてください。

単独世帯44.3%の推計を、コリビング需要へどう読むか

単独世帯が多くても、全員が共同生活を選ぶわけではありません。コリビングでは、一般賃貸との差額を払って減らしたい不便と、入退去の理由から顧客を絞ります。

国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計では、一般世帯に占める単独世帯の割合が2020年の38.0%から2050年に44.3%になると見込んでいます。2020年の国勢調査を基にした将来推計で、人口全体に占める一人暮らしの割合ではありません。

単独世帯の増加は需要を考える背景であり、コリビングを選ぶ世帯数や支払額を示すものではありません。

単独世帯の数は2020年の2,115万世帯から2036年に2,453万世帯でピークを迎え、その後は減少して2050年に2,330万世帯となる推計です。比率が上がることと、世帯数がいつまでも増えることも区別します。

物件を長期保有するなら、全国平均に加えて周辺地域への転入、就業・就学先、競合住宅の供給を調べます。

自由、静けさ、プライバシーを重視する需要もあります。

顧客候補は「一人で住みたくない人」に限りません。次のような不便を減らすために、追加の料金を払うかを確かめます。

  • 転勤や赴任で、家具や光熱契約を短期間にそろえたくない
  • 新しい都市で、仕事以外のつながりを持ちたい
  • 一般賃貸では持ちにくいラウンジや仕事場を使いたい
  • 長い契約に縛られず、生活拠点を変えたい
  • 一人の時間を保ちながら、必要なときだけ人と関わりたい

在宅勤務の定着も、住まいに必要な機能を変えました。つまり、寝る場所だけでなく、集中、会議、休息、交流を切り替える空間が求められます。

働き方改革の記事で扱ったように、制度だけでなく、仕事が行われる場所の再設計も必要です。

一方、需要の大きさと採算は別です。たとえ単独世帯が多い地域でも、一般賃貸との差額を払える人が少なければ成立しません。

そのため、転入者、外国人、法人赴任者、学生、専門職など、入退去の理由まで絞る必要があります。

コリビングの収益は家賃だけでは決まらない

コリビングの売上は、部屋数と賃料で始まります。しかし、利益は「使える面積」と「運営の密度」で大きく変わります。

建物の総面積が同じなら、共用ラウンジを広げるほど私室に充てられる面積は減ります。共用部が入居の決め手になるかと、貸せる部屋が減る影響を同時に見ます。

さらに、家具、通信、清掃、イベント、問い合わせ対応を含めれば、一般賃貸より運営費も増えます。

収入と費用を改善する方法は、次の四つに整理できます。ただし、初期費用の値引きは収益源ではなく、入居の増加や空室短縮で回収できるかを確かめる施策です。

一つ目は、家具や光熱費を含む月額料金です。これにより、入居者は手続きの手間を減らせます。

二つ目は、敷金・礼金・仲介料などを軽くし、入居までの速さで選ばれることです。三つ目は、法人契約や赴任需要を取り込み、空室期間と集客費を抑えることです。

四つ目は、カフェ、仕事場、イベントなど、外部利用も含む複合収益です。

誰の採算を見るかも先に決めます。物件オーナーは賃料から維持費・管理料等を引き、運営受託会社は受託料から人員・システム費等を引きます。

一括借上げの場合は、入居者からの収入とオーナーへ払う賃料の差から運営費を回収するため、空室負担を誰が持つかが重要です。国土交通省のガイドブック(5頁)も、自主管理、委託、サブリースを分けて整理しています。

収入を増やす施策と、運営費を減らす施策を分け、同じ期間の収支で比較します。

家賃単価より、空室日数、平均入居期間、清掃回数、問い合わせ件数、解約理由を一緒に見ることが重要です。 高い賃料でも、短期退去や個別対応の費用が増えれば、手元に残る収支は小さくなります。

国内外8社のコリビング事例

8社を、交流型住宅、家具付き住宅、長期滞在ホテルなどの違いと、運営方式で比較します。具体的には、国内は、私室と交流を両立する住宅、家具付きの柔軟な住まいを選びました。

一方、海外は、リモートワーカー、都市間移動、大型運営、長期滞在ホテルのモデルを含めました。

UnitoとZokuは、狭い意味のコリビングだけを提供する会社ではありません。そのため、周辺のフレキシブル住宅として扱います。

比較することで、住居、宿泊、法人滞在の境界が事業機会になると分かります。

国内外8社のコリビングと周辺モデル
企業・サービス 主な利用者 商品設計 運営の特徴 事業への示唆
Global Agents「Social Apartment」 都市の単身者 個室+ラウンジ、水回りは間取り別 交流を前提にした住宅運営 共用部より距離設計が重要
ReBITA「SHARE PLACE/Well-Blend」 単身者・法人 私室+共用空間、物件により専用水回り 寮・団地の再生、清掃・防犯 既存建物の転用余地
Hmlet Japan 赴任者・専門職 家具付き住戸、最短1か月 オンライン契約、生活支援、イベント 法人・外国人の摩擦を減らす
Unito 都市滞在者・法人 家具付き住宅・ホテル 外泊日に家賃を下げる仕組み 稼働を契約商品にする
Habyt 都市間を移る人 家具付き住戸+共用設備 大型Habytと分散型Leazeを分離 物件規模に合う運営を選ぶ
Outsite リモートワーカー 仕事場付き共同住宅 会員コミュニティと都市間利用 顧客属性を先に絞る
Node Living 都市の専門職 私室・住戸+共用空間 地域デザインと運営担当者 物件横断で品質をそろえる
Zoku 赴任者・出張者 私的ロフト+共用仕事場 宿泊、仕事、飲食、交流を統合 住宅外の予算を取る

物件数、会員数、設計戸数は単位が異なります。各社の規模を並べるだけで優劣を判断せず、対象者・契約・運営負担を比較します。

国内3社は人との距離をどう設計するか

国内3社からは、専用設備と共用部の配分、法人との運営、入居前後の支援を学べます。一般賃貸のプライバシーを残しながら、共用空間と運営で人との接点を選べるようにしています。

Global Agentsは「ソーシャルとプライベート」を両立する

Global Agentsは、隣人交流型賃貸住宅「ソーシャルアパートメント」を開発・運営しています。同社の会社紹介では、直営50棟、約3,000戸と記載しています。

これは掲載時の事業規模であり、現在の空室率や個別物件の採算とは別です。

特徴は、入居者が自由に使えるラウンジと、一般のマンションに近い私室を組み合わせることです。また、水回りを共用する部屋だけでなく、1Kや1LDKなども用意します。

共有する設備の範囲を間取りごとに選べる設計で、プライバシーをどこまで確保したいかに対応します。

同社は住宅だけでなく、ホテル、飲食、仕事場も運営します。つまり、人が集まる場を住宅以外へ展開している点が事業上の強みです。

各物件で何を自社運営し、どこを外部へ任せるかは、別途確認が必要です。

この事例から学べるのは、イベント数ではありません。物件企画、内装、家具、通信、セキュリティ、入居後の管理を一体で改善できる組織を持つことです。

ReBITAは寮や団地をシェア型賃貸へ変える

リビタの「SHARE PLACE」は、独身寮や団地などを再生し、私室と大きな共用空間を組み合わせる事業です。清掃、防犯、運営者の顔が見えることまで商品に含めています。

たとえばウェルブレンド阿佐ヶ谷は、個室にシャワー・トイレ・洗面を備え、キッチンやラウンジは共用します。ウェルブレンド十条も、個室に浴室・トイレ等があり、キッチンは共用です。

「専用の水回りがある」と「台所まで個室にある」を分けて比較する必要があります。

法人入居の具体例|CCCは、暮らしの場から共創を試した

2026年公表のCCCへの公式インタビューでは、住宅の共用部や多様な入居者を理解し、新しい事業のヒントを得る目的で、2024年から社員がシェアプレイス HARUMI FLAGへ入居したと説明しています。単に部屋を借りるだけでなく、CCCと物件担当者が入居者の希望を聞き、3か月ごとの選書や店舗見学を企画しました。

選書は計8回行われ、本は約20冊から200冊近くへ増え、蔦屋書店のツアーには一般入居者10名以上が参加しました。CCCの担当者は、地域の祭りへの共同出店が部門を越えた交流にもつながったと振り返っています。

公開されているのは活動実績と関係者の評価で、離職率や利益の改善値ではありません。

ここから参考になるのは、共用設備を置いた後の担当者と更新作業を決めることです。法人向けに提案する場合も、交流を保証するのではなく、参加を望む社員の利用状況、参加しない社員の暮らしやすさ、担当者の運営時間を確認します。

遊休不動産を住宅へ変える場合は、見た目の改修だけでは足りません。リノベーションの記事でも整理したように、工事後の用途、運営、出口価格から逆算する必要があります。

Hmletは入居前後の面倒をまとめて減らす

Hmlet Japanは、東京と大阪で家具家電付きのフレキシブル住宅を展開しています。公式サイトでは1,500室以上を運営し、最短1か月から利用できます。

家具、寝具、調理器具、Wi-Fi、光熱費をまとめます。さらに、オンライン契約、英語対応、24時間の緊急支援も提供します。

また、住民票の登録ができる物件もあり、ホテルと一般賃貸の間にある面倒を減らしています。

交流は、共有ラウンジだけに依存しません。入居者向けの月例イベントを設け、異なる国籍や背景を持つ人の接点をつくります。

契約条件の比較も欠かせません。Hmletの公式案内は最短1か月としていますが、サービス料・清掃料は別途です。

一方、SHARE PLACEのFAQは、交流形成の観点から1〜2か月の短期入居を受けないと説明しています。同じ家具付きでも、滞在期間と総額をそろえて比べます。

このモデルは、転勤、海外赴任、プロジェクト配属など、企業が費用を負担する場面と相性があります。個人集客だけでなく、人事、総務、不動産会社との販売経路を持てるかが成長を左右します。

柔軟な住まい2社は契約の摩擦を減らす

UnitoとZokuは、柔軟な滞在と生活・仕事の機能を組み合わせ、住宅以外の需要にも対応しています。直接の競合になるだけでなく、コリビング運営者が取り込める機能を示します。

Unitoは使わない日を賃料設計へ入れる

Unitoは、家具家電付き住宅やホテルをオンラインで探し、契約できるサービスを展開しています。特徴は、外泊日を申請すると家賃が下がる「リレント」です。

これにより、居住者には固定費を減らす価値があり、運営者には空室日を宿泊へ振り替える機会があります。

提携例には、東急とのRe-rent Residence渋谷の発表(2021年)や、三井不動産レジデンシャルのPARK AXISへの導入発表(2024年)があります。東急との発表では、外泊時に私物を鍵付き収納へ移し、スタッフが清掃して宿泊向けに貸し出す運用を説明しています。

これは厳密にはコリビング専業の事例ではありません。しかし、「月額で部屋を押さえる」という常識を、滞在実績に合わせて組み替えた点が参考になります。

コリビングでも、法人枠、短期空室、ゲスト利用を一つの在庫として扱える可能性があります。

この方法を取り入れるには、居住者の同意、私物の管理、清掃費、予約の重複防止と、宿泊として提供できる権原・許認可を確認します。住居の空室を、契約変更なしで自由に宿泊へ振り替えられるわけではありません。

リレントの利用可否や減額条件も物件ごとに確かめます。

Zokuは宿泊・仕事・交流を一つの建物で売る

Zokuは、アムステルダム、コペンハーゲン、パリ、ウィーンで、長期滞在向けのホテルを運営しています。専用ロフトにはキッチンと仕事机があり、屋上には仕事場、レストラン、バー、会議室、イベント空間があります。

一泊から数か月まで滞在でき、赴任や長期出張の利用を想定します。住宅の家賃だけでなく、宿泊、法人出張、仕事場、飲食、会議という複数の予算を取れる点が特徴です。

一方、宿泊と住宅では、許認可、消防、清掃頻度、接客体制が異なります。そのため、複合化するほど売上の入口は増えますが、現場運営も重くなります。

特に、ホテルのようなサービスを掲げるなら、住宅管理の人員だけで運営できるとは考えない方が安全です。

NEXT STEP

次のステップ

住まいの構想を、続けられる運営の設計図へ。

対象入居者、物件、契約、法人需要、清掃・修繕、コミュニティ、責任分界と見送り条件を整理します。

海外3社に見る住まい事業の拡大方法

海外事例は、リモートワーカーへの特化、地域性、大型・分散型の役割分担で比較します。部屋数を増やすだけでは、同じ品質を保てません。

Outsiteはリモートワーカーに顧客を絞る

Outsiteは、リモートワーカーやクリエイター向けに、仕事場を備えたコリビングを展開しています。同社のAboutページは5,000人以上の会員、50以上の拠点と紹介しています。

登録・利用規模の説明であり、全拠点の稼働率や利益を示す指標ではありません。

価値は、家具付きの部屋だけではありません。むしろ、利用者の属性をそろえ、オンラインの会員基盤と現地の共用空間をつなぎます。

移動先でも仕事環境や交流相手を見つけやすくする設計です。

顧客を「都市の単身者」と広く置かないことが特徴です。むしろ、「場所を選ばず働く人」と絞り、必要な通信、机、滞在期間、立地を決めています。

さらに、企業向けのチーム利用も用意し、個人会費以外の収益を持ちます。

Node Livingは地域の個性と標準運営を組み合わせる

Node Livingは、ロンドン、ダブリン、ニューヨークなどで事業を展開します。具体的には、家具付きの個室、スタジオ、アパートを提供しています。

そのうえで、共用の仕事場、屋上、パティオ、イベントと、地域ごとのコミュニティ担当者を組み合わせます。

同社のAboutページによると、6か国・30超の案件で、設計または運営した住戸は累計7,000戸超です。すべてが現在運営中の住戸という意味ではありません。

内装は地域の歴史や文化に合わせつつ、サービスを分かりやすくし、技術で入居者と運営者の手続きを支える方針を掲げています。

多都市展開では、すべてを同じ見た目にするより、契約、請求、問い合わせ、安全基準をそろえる方が重要です。地域性を商品に残し、見えない運営だけを標準化する考え方です。

Habytは大型物件と分散型コリビングのブランドを分けた

Habytは、家具付きの住宅と宿泊サービスを扱います。2026年5月11日の公式発表では、フランス・ポルトガル・スペインのコリビング事業を現地事業者へ売却し、Habytブランドはおおむね150戸以上、平均規模の目標を約300戸とする一棟型へ注力すると説明しました。

経営者は、300戸を15棟へ分散する場合と一棟で運営する場合では、管理やサービスの組み立てが異なると説明しています。これは戦略の理由を述べたもので、同じ条件で測定した費用削減率や、転換後の利益実績を示したものではありません。

さらに2026年5月21日には、別ブランドLeazeの開始を発表しました。地域の事業者が運営する共同住宅に、予約・契約・集客等のデジタル機能を組み合わせる構想です。

大型一棟へすべてを統一するのではなく、物件規模に合わせて運営方式を分けた点が参考になります。

コリビング8社の事例から確認する五つの設計条件

自社で検証するのは、顧客、私室、交流の運営、物件規模、法人需要の五つです。

第一は、顧客を生活状況で絞ることです。赴任者、若手社員、外国人、リモートワーカーなど、なぜ今の住まいでは困るのかを定めます。

第二は、私室で完結させたい生活を決めることです。水回りの共用は設備や面積を集約できますが、利用者の希望によって評価が分かれます。

専用設備を増やす場合も、工事・保守費に見合う料金を得られるかを確かめます。

第三は、交流を運営することです。具体的には、入居時の案内、日常の声かけ、イベント、迷惑行為への対応、退去者との引き継ぎを担う人が必要です。

そして、イベントを増やすより、関わらない選択を守ることが信頼につながります。

第四は、物件規模に合う運営単位を選ぶことです。一棟型は移動を減らせる一方、まとまった空室や固定費を抱えます。

分散型は地域の運営網と移動費を確認し、大型化か地域連携かを選びます。

第五は、法人需要を個人需要と分けて検証することです。赴任・研修などは一定室数をまとめて契約できる場合がありますが、異動時期への集中や契約終了後の空室も生じます。

個人と法人で販売経路と必要な契約条件を整理します。

コリビングの構想を、六つの詰まり方で整理する

顧客、面積、運営、規制、分散、例外対応の未確認条件を見つけます。

01 空室物件から発想する

最初の入居者と一般賃貸では解けない摩擦を先に決めます。

  • 誰が最初に住むか
  • 転居理由は何か
  • 差額を払う理由はあるか
02 共用部を広げ過ぎる

入居の決め手と賃貸可能面積の減少を同時に試算します。

  • 何平米を共用にするか
  • 賃料差で回収できるか
  • 外部利用は可能か
03 交流をイベント数で測る

参加しない自由、紹介、継続、苦情解決まで測ります。

  • 参加しない人は残るか
  • 紹介入居は増えるか
  • 苦情は早く解けるか
04 短期滞在を混ぜる

賃貸と宿泊の契約、許認可、清掃、消防を分けます。

  • 契約類型は何か
  • 必要な許認可は何か
  • 現場人員は足りるか
05 物件を分散して増やす

清掃、鍵、修繕、駆けつけの移動時間を原価へ入れます。

  • 一人が何棟を見るか
  • 移動費はいくらか
  • 品質をそろえられるか
06 アプリで運営を置き換える

騒音、事故、設備停止など人が解く例外を残します。

  • 夜間窓口は誰か
  • 退去判断は誰か
  • 記録を引き継げるか

コリビングで狙える4つの新規事業

物件再生、運営受託、法人住宅、運営ソフトから、自社が収益と責任を担う範囲を選びます。自社資産と負える責任に合わせ、四つの入口があります。

次の四つは参入の選択肢であり、資金や責任の大小を一律に順位づけるものではありません。

参入方法1:既存物件をコリビングへ再生する

社宅、寮、賃貸マンション、ホテルなどを持つ企業向けに、需要調査、設計、改修、開業、運営を提供します。売上は企画・設計料、工事管理料、運営受託料、成果連動報酬です。

必要なのは、広い共用部をつくる提案ではありません。誰を入居者とし、私室に何を残し、どのサービスへ追加料金を払ってもらうかを決めます。

提携先は設計会社、建設会社、家具、通信、賃貸管理会社です。用途変更、消防、避難、安全基準に対応できない物件や、改修後の賃料で投資を回収できない物件は見送ります。

参入方法2:コミュニティ運営を受託する

物件オーナーや管理会社に対し、入居案内、イベント、相談、ルール運用、退去理由の分析を提供します。売上は戸当たりの月額運営料と、開業支援料です。

この方法は建物を持たずに始められます。ただし、人柄だけに依存すると拡大できません。

対応記録、禁止行為、エスカレーション、夜間窓口、担当者交代を標準化します。

満足度だけでなく、平均入居期間、紹介入居、苦情解決時間、イベント非参加者の退去率を測ります。交流へ積極的な人だけを見ていると、静かに離れる人を見落とします。

参入方法3:法人向けの住居・研修を組み合わせる

人事・総務部門へ、赴任者、外国人社員、新卒研修、短期プロジェクト向けの住居を提供します。家具、Wi-Fi、請求、生活案内、仕事場をまとめ、契約窓口を一つにします。

売上は法人の月額契約、一定室数の確保料、研修・交流プログラムです。自社で物件を持たず、複数の運営事業者を束ねる方法もあります。

提携先は不動産会社、ホテル、引っ越し、在留・生活支援、研修会社です。また、法人需要は空室を埋めやすい反面、採用時期や異動時期へ集中します。

そのため、一社への依存が高くなる場合は、契約終了後の空室を試算します。

参入方法4:複数物件を支える運営OSを提供する

運営OSは、予約、契約、本人確認、請求、鍵をつなぐソフトウェアです。さらに、清掃、修繕、問い合わせ、イベント、入居者データも扱います。

そして、最初の顧客は、表計算と個別連絡に限界を感じる運営会社です。

売上は一室あたりの月額、決済手数料、導入支援料です。既存の不動産管理システムと機能が重なるため、置き換える作業と連携する範囲を確認します。

具体的には、短中期契約、家具・備品、共用部予約、入居者同士の連絡、法人請求まで含みます。

システムだけで現場は動きません。そのため、鍵が開かない、騒音が続く、清掃が遅れるといった例外を誰が解決するかまで商品に含めます。

もし導入先ごとの受託開発が増え、共通機能を持てない場合は採算を見直します。

参入前に確かめたいコリビングの採算条件

採算は、空室を含む収入から、借上料・人員・清掃・入退去などの費用を引いて確認します。一般賃貸と比べ、収入と費用の差分を月単位で確認します。

見るべき指標は次の六つです。

  • 貸せる私室の面積と、直接の賃料収入を得にくい共用部の面積
  • 平均賃料だけでなく、空室を含めた一室当たり売上
  • 平均入居期間、更新率、退去後の空室日数
  • 集客、内覧、契約、清掃、修繕にかかる一室当たり費用
  • コミュニティ担当者一人が無理なく見られる入居者数
  • 法人契約、飲食、仕事場など、家賃以外の粗利

共用部の価値は、利用回数だけでは測れません。むしろ、入居の決め手になったか、継続理由になったか、紹介につながったかを聞きます。

また、使われない時間が長い場合は、外部会員や地域店舗との共用も検討できます。

価格は周辺のワンルーム賃料と比較されます。そのため、家具、光熱、通信、清掃を含む総額で説明し、何が追加費用になるかを明確にします。

逆に、安さだけで集めると、運営費を回収できず、設備とコミュニティの品質が落ちます。

架空例|30室でも、稼働率90%と70%では月収支が48万円変わる

一括借上げで30室を運営し、1室の月額収入を10万円、入居中の1室に応じて増える費用を2万円、建物の借上料や固定人員費などを月180万円と仮定します。満室時の収入は300万円ですが、空室を含めて計算すると次のようになります。

架空例:同じ賃料でも、空室で運営収支は変わる
項目 稼働率90% 稼働率70%
月平均の稼働室数 27室 21室
月収入 270万円 210万円
変動費(1室2万円) 54万円 42万円
固定費 180万円 180万円
差引の運営収支 36万円 ▲12万円

この条件の損益分岐稼働率は、180万円÷{30室×(10万円−2万円)}=75%です。初期改修費、減価償却、借入返済、税金等は含めていないため、75%を超えれば投資全体を回収できるという意味ではありません。

数字は説明用の仮定で、相場や推奨基準ではありません。

短期の入退去が増える場合は、清掃・募集・鍵の受渡しなどを変動費へ追加します。稼働率を上げるための値引きや短期受入れを行う際は、売上と追加費用を同時に計算し、手元資金がどれだけ残るかを確かめます。

住宅・宿泊・共同生活の責任を分ける

住宅と宿泊の区分、生活ルール、個人情報、緊急対応を、物件の実態に合わせて決めます。名称ではなく、実際の使い方に応じて必要な確認を行います。

住宅賃貸と宿泊の区別は、滞在日数や契約の名称だけで決めません。厚生労働省のQ&Aは、部屋の衛生管理の責任や、利用者の生活の本拠となるかなどの実態を挙げています。

宿泊として提供する場合は、旅館業の許可、住宅宿泊事業の届出等のどの制度に該当するか、所在地の保健所などへ確認します。

あわせて、建築・消防・用途・自治体条例、賃貸借契約の転貸条件、マンション管理規約を確認します。海外事例の滞在プランを、そのまま日本の物件で提供できるとは限りません。

次に、共用生活の責任を決めます。具体的には、騒音、清掃、来訪者、喫煙、撮影、共用物の破損、ハラスメントへの対応を、入居前に説明します。

ルール違反時は、注意・相談・被害者支援と、契約終了の手続きを分けます。退去や残置物の扱いは担当者だけで決めず、契約と法令に沿って専門家へ確認します。

安全面では、入退室、共用部の防犯カメラ、スマートロックの履歴を扱います。そのため、取得目的、保存期間、閲覧者、警察などへの提供条件を示します。

また、交流アプリを使う場合も、居室番号や生活時間が不用意に見えない設計が必要です。

最後に、緊急対応です。具体的には、火災、急病、鍵、設備停止、入居者間の事故について、24時間対応と翌営業日対応を分けます。

さらに、外部の警備、コールセンター、医療・福祉へつなぐ条件も決めます。

国土交通省の共同居住型賃貸住宅の運営管理ガイドブックは、契約、生活ルール、点検、苦情対応を整理しています。実際の物件では、自治体、建築士、消防、宅地建物取引業者などの確認を受けてください。

自社に合う参入ポジションを判断する

参入判断は、空き物件があるかではなく、特定の入居者に対して運営を続けられるかで行います。

参入に向くのは、次の条件を持つ企業です。

  • 赴任者、学生、若手社員、外国人など、最初の顧客群へ継続して届く
  • 一棟または近接物件で、清掃と問い合わせ対応を集約できる
  • 私室と共用部の面積を、賃料と運営費から設計できる
  • 交流へ参加しない人も含め、入居者の安全と距離を守れる
  • 建物、運営、法人販売、システムの不足を補う提携先がいる

顧客接点はあるが物件運営がない企業は、既存事業者との提携が向きます。一方、建物はあるが顧客像が曖昧な企業は、改修前に待つべきです。

そして、空室を埋めたいだけで、共用部と運営人員の費用を置けない場合は見送ります。

イノベーション総研では、顧客、物件、収益、運営、責任を一枚の事業構造にします。そのうえで、参入、提携、待機、見送りを整理します。

生活支援を組み合わせる場合は、家事代行の記事も参考になります。

コリビングに関するよくある質問

契約期間、空き家の転用、建物を持たない参入方法について、判断の際に混同しやすい点を整理します。

Q. コリビングとは、簡単に言うと何ですか?

A. 私室と共用空間に、家具、通信、契約、入居後のサービスを組み合わせた住まいです。共同生活の形だけでなく、住み始めやすさと運営までを商品にする点が特徴です。

Q. コリビングとシェアハウスの違いは何ですか?

A. 日本では重なる部分が多く、法的に名称だけで分かれるわけではありません。コリビングは、柔軟な契約、仕事場、イベント、アプリなどを含む運営サービスとして使われることが多い言葉です。

Q. コリビングは短期でも利用できますか?

A. 物件によります。最短1か月の家具付き住宅もあれば、短期入居を受けない住宅もあります。賃貸と宿泊の区別は日数だけで決まらないため、実際の管理方法や生活の本拠に応じ、所在地の保健所などへ確認します。

Q. コリビング事業は空き家活用に向いていますか?

A. 立地、建物用途、避難経路、居室面積、水回り、改修費が合えば候補になります。ただし、空室があるだけでは成立しません。対象顧客、運営人員、改修後の賃料、出口まで確認します。

Q. コリビングへ建物を持たずに参入できますか?

A. 可能です。コミュニティ運営、法人の入居者送客、家具・通信・清掃、契約・鍵・請求をつなぐシステムなどがあります。現場の例外対応を誰が担うかは、物件オーナーと明確に分けます。

まとめ:コリビングは空間より運営を設計する

コリビングは、私室と共用空間、家具、柔軟な契約、入居後のサービスを組み合わせる住まいです。シェアハウス、一般賃貸、長期滞在ホテルとの境界に複数の事業機会があります。

国内外8社は、私室の独立性、短期・長期の契約、法人需要、大型・分散型の運営を組み合わせています。共通の成功方式があるとみなさず、対象者が払う理由と、運営に残る収支を物件ごとに確かめます。

参入方法は、物件再生、コミュニティ運営、法人住宅、運営OSに分かれます。自社が持つ建物や顧客接点だけでなく、清掃、苦情、安全、退去まで負えるかを確認してください。

参照した主な資料

CONTACT

お問い合わせ

コリビングの空間案を、採算が続く事業へ。

自社の物件、顧客接点、法人販売、地域パートナーを整理し、参入ポジション、運営単位、収益、責任と見送り条件を具体化します。

ARTICLE INFORMATION

この記事の執筆・監修

執筆

イノベーション総合研究所 編集部

監修

長尾 浩平(株式会社イノベーション総合研究所 代表取締役)

外部出典

国立社会保障・人口問題研究所、国土交通省、Global Agents、ReBITA、Hmlet Japan、Unito、Habyt、Outsite、Node Living、Zokuの公式サイト・公表資料。根拠は本文中のリンクから確認できます。

この記事をシェアする